ひろがるスカイ!プリキュア Imaginary Episodes   作:パイシー

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Ch.4-6「共鳴する2つの心、私が描く憧れの私!」

 遡ること少し前。スカイランドの王城前では、兵士や青の護衛隊が姿を現した大サソリに備えていた。

「いいか!ここを死守しろ!我らの背中には民の命があることを忘れるな!」

 隊長であるシャララはまだ動ける兵士を集めて鼓舞するが、この戦いの結末は分かっている。

 ここにいる人間ではあの大サソリには勝てない。犠牲を出さずに守り切るのは不可能だろう。

 辛うじて戦える戦力を集めた結果、新兵や訓練兵が大半を占めているのがその核心に拍車をかけている。

 だが幸いソラ達がこちらに来ていたのが幸いした。ましろの体の都合でカイゼリンの店にいるそうだが、使いを出したのでもう間もなく来るはずだ。

 少しずつ聞こえてきた足音が徐々に大きくなり、やがて大サソリが目に見えるほどに大きくなっていた。

 最初スカイランドに姿を現した時はあまりにも無機物すぎる見た目に戸惑ったものの、今回は違う。

 その機体は大きく歪んでいて、鉄の板で覆われていた胴体も剥がされて、中に乗っている人間の姿がよく見える。

 シャララはその男に見覚えがあった。

「お前、アンドレか……?」

 襲撃者の正体は、かつて青の護衛隊に所属していた男。スカイランドでも有数の富豪の生まれで、周囲から期待された存在だった。

 だが当人の性格は非常に粗暴で入隊後も素行が悪く、民間人への恐喝や、被害を顧みないずさんな態度が理由で除隊処分になった。

 当然実家からも絶縁され、餞別にいくらかの資金を持たされて王都から追い出されたと聞いていたが、まさかこんな物に乗っていたとは思わなかった。

「久しぶりだな、お山の大将は楽しいか?シャララ」

 アンドレは薄ら笑いを浮かべながら銃口をこちらに向ける。

 機械独特の臭いをあたりに漂わせながら、まるで品定めをするかのように鉄の銃身がこちらを見下ろす。

「それをどこで手に入れた?スカイランドでそんなものは見たことが無い」

「向こうの世界で買ったんだよ。金って良いよなぁ。なんでも買える。異世界に行き来し放題のこの機械だってな!」

 アンドレの頭上、サソリの尻尾に当たる銃身から何か音がしたかと思えば、いきなり黒い液体が射出された。

 いくら新兵が多いとはいえ、鈍重な動きで飛んでくるそれは簡単に避けられてしまい、ただ周囲に飛び散っただけの結果に終わった。

 それでもアンドレは辺り一帯にその液体をまき散らしていると、流石にいくらかは隊員に当たる。

 けれども当たったからと言って何もなく、ただ変な臭いのするシミができただけだ。

「お前には国家転覆を目論んだ罪がある。しっかり償ってもらうぞ」

「知らねえなぁ。そんなの」

 レバーを操作すると同時に、何かのガスが噴き出るような音と共に大サソリの両バサミから新たに銃身が姿を現す。

 相手が完全な機械なら勝ち目のない戦いだが、向こうが人間なら問題ない。露出しているアンドレを真っ先に狙うだけだ。

 一方のアンドレは弱点である自分の体が露出しているのに、相変わらず余裕の態度を崩さない。

 

「だってよぉ、全部燃えちまうんだからなぁ!」

 

 次の瞬間、いきなり隊員の一部が火だるまになった。

 それどころか一気に周囲に火の手が回り、王城の門を火の手が襲う。

 いきなり全身が火にくるまれてパニックになった隊員たちが次々と火に抱かれ、混乱が広まる一方だ。

「貴様、まさか……!」

「追加オプションだよ。向こうじゃ簡単に手に入るらしいぜ?」

 無事だったシャララを叩き潰そうと、大サソリが大きく跳躍してシャララに襲い掛かる。

 空に浮かんでいるスカイランドでは化石燃料である油は非常に貴重である。

 これまで多くの任務に赴いてきたシャララでさえ、使われてる所は1度や2度しか見たことがない。

 必死に集めた隊員は、いずれも王都内で警護を務めて来た者たちばかりだ。水が燃えるという現象を想像できるはずもない。

「落ち着け!早く油が付着した服を脱ぎ捨てるんだ!」

 1人でも兵士の命を守ろうと声を上げるが、既にパニックに呑まれた彼らには届かない。

 最初の襲撃を生き延びた手練れの兵士に、城内の警備を任せたのが裏目に出てしまった。

 こんな状況では彼らを呼んで共にアンドレの捕縛は無理だろう。

「俺は昔から何でも手に入れてきた。おかしいと思わないか?そんな俺に手に入れられないものがあるなんて。俺は国だって手にできるはずなのによ!」

 大サソリの両バサミからミサイルが放たれ、その発射と同時に更に火の手が広がる。

 既に兵士の中には倒れている人間もおり、シャララも引火したマントを脱ぎ捨ててアンドレに切りかかる。

「なっ……!?」

 しかしその刃は本人の目の前で止まり、見えない壁に阻まれて勝手に剣筋が逸らされる。

「電磁シールド。最初聞いた時は意味が分からなかったが、こりゃ便利だな」

 そのまま操縦桿を手放したアンドレに殴り飛ばされて、大きく後ろに吹き飛ばされる。

 勝てない。

 その4文字が脳裏をよぎる。

 向こうが使っている機械は、こちらが訓練で補える範囲をゆうに超えるほどの技術が投入されている。

 手練れの兵士100人が束になっても、目の前のこの男に傷一つ付けられない。

「さて、ご自慢の剣が通らなくて、どうする?隊長さんよぉ!」

 こうしている間にもアンドレは油をバラまいて火の手を広げている。

 何か武器はないかと周囲に目を配ると、パニックになった兵の1人が大砲をアンドレに向けていた。

「待て!早まるな!」

 シャララの静止も空しく、大砲の導火線に火がついて弾が発射される。

 それだけでも更に火の手を上げることになったのに、大サソリの胴体で炸裂した大砲の弾の衝撃でシャララまでもが火に包まれる。

 想像を超える熱と火傷の痛みにひざまずきそうになるが、気力を振り絞ってアンドレを睨む。

「たとえ、この命が果てるとしても、貴様の破片だけでも貰っていく!」

 最期のひと時まであがこうと決死の覚悟で立ち向かおうとしたその時だった。

 

「リンクル、アクアマリン!」

「温度の力、アゲてこ!」

 

 その声と共に氷の塊が出現し、みるみるうちに解凍されて水の塊となって周囲に降り注ぐ。

 周囲にバラまかれた油を押し流す程の強さは無いが、火だるまになっていた隊員たちやシャララの火を消すには十分な量だ。

「何これ、ガソリン臭っ!?」

「ガソリンってあの車に入ってる……?」

「ええ。気化したガソリンはとても燃えやすいんです!ライター程度の火でも大爆発を起こします!」

 バタフライ、フェリーチェ、ウィングの3人が降りてきて、シャララ達を守るように大サソリと相対する。

「助かった。アンドレ……あの男は任せていいか?」

「もちろん!こっちだってせっかくの旅行を台無しにされて頭に来てるんだから!」

 シャララは3人に後を任せて下がる。

 3人はすぐに大サソリに飛びかかるが、大サソリも大きく跳躍して距離を離す。

 大サソリの両バサミが火を噴くと、気化したガソリンに引火して周囲が再び炎に包まれる。

 空中から迫るフェリーチェの拳がアンドレに向けられるが、防御した大サソリのハサミが少しへこんだ程度で砕ける様子はない。

「やっぱりお前ら、コイツの装甲は突破出来ねえんだな。あの牛頭、よく分からねえことばっかり言ってたが、こんないい物を売ってくれるなんていい奴だよなぁ!」

 続いて死角からウィングやバタフライが奇襲を仕掛けるも、今度はアンドレ本人が操縦席から立ち上がって2人の攻撃をいなす。

 その隆々とした見た目に違わず、アンドレの腕力はウィング達に引けを取らない。

 シャララ達と違い、火を使わずに大サソリと戦えるが、それはあくまで同じステージに立ったというだけである。

「やはり正面突破は難しいようですね」

「ソラさん達が来るのを待つしかありません。できるだけ部品を破壊して、相手の攻撃手段を減らしましょう」

「オッケー、私が援護するから、後は任せた!」

 バタフライがミックスパレットを取り出し、フェリーチェとウィングの力を増幅させようとした時、アンドレも何かのスイッチを取り出した。

「作戦会議は終わったな?面白いもんを出してやるよ」

 アンドレがスイッチを押すと次々とメカノットレイ達が現れて、バタフライ達に立ちはだかる。

「やはりあのノットレイはあなたの差し金だったのですね!」

「あぁ。俺だけの軍隊も買ったんだ。キュアプリズムだったアイツを売ればもっといいのが買えたんだが、お前らが邪魔したせいでこれしか買えなかった」

 アンドレの合図でメカノットレイ達は一糸乱れぬ動きでバタフライに襲い掛かる。

 フェリーチェやバタフライの攻撃力でもメカノットレイ達は簡単に破壊できるが、迫る火の手が攻撃の手を中断させる。

 それとは対照的に相手はどれだけ体が火にくるまれても止まることは無いし、徹底的に破壊するまで止まらない。

「マジックアワーズエンド!」

 メカノットレイの対処に手をこまねいていると、ましろを見ていると残ったはずのマジェスティが割り込んできて、ウィングに迫っていた一機の頭部を破壊する。

 残った胴体はウィングに襲い掛かろうとしたものの、マジェスティの貫手で胴を貫かれて動きを止めた。

「マジェスティ?ましろさんはどうしました!?」

「ユニに取られた!ソラもこっちに向かってる!」

「一体何があったんですか……」

「知らない!」

 マジェスティはとにかく機嫌が悪く、メカノットレイを殴り飛ばす拳も普段より力がこもっているように見える。

(ユニさん、悪い人じゃないんだろうけど、結構過激な事言うしなぁ……。大丈夫かな)

 ましろを貰うと言ったユニと、それを追いかけたエルとが言い争いをしていたのは知っている。

 それよりも先に伝令が来てしまったので話の内容は聞けなかったが、2人の仲が険悪になってしまったことは想像に難くない。

 だがマジェスティが加勢したお陰で大サソリを攻める余裕もわずかに生まれた。総合力の高い彼女を前に出せば、きっとこの状況を打開できる。

「バタフライ!フェリーチェ!マジェスティを前に出します!援護してください!」

 最低限の情報に絞って自分の考えを伝える。マジェスティを前に出す目的を言う時間は取れなかったが、2人なら意図をくみ取ってくれるはずだ。

 バタフライはすかさずミックスパレットの色を混ぜて、マジェスティの力を増幅させる。

 迫るメカノットレイ達をフェリーチェが押し返し、周囲の状況を即座に理解したマジェスティがまっすぐにアンドレに立ち向かう。

 急に飛び込んできたマジェスティにアンドレは一瞬対処が遅れたものの、すぐに大サソリを後ろに下げてハサミで身を守る。

 しかしマジェスティの力の前にはそんな守りも意味はなく、右のハサミは簡単に叩き切られてしまった。

「クソッ!プリンセスは特別製かよ!」

 鉄壁の防御と思われた大サソリを傷つけられ、アンドレは悪態をついたがすぐに左ハサミでマジェスティをけん制する。

 マジェスティはそのまま追撃しようとしたが、大サソリの尻尾に薙ぎ払われて距離を開けさせられる。

 ウィングはこのまま押し切れるかもしれないと思ったが、マジェスティの身体に稲光が見たバタフライが表情を一変させた。

「待って!落ち着いてマジェスティ!」

 変身するようになってから成長したとは言え、マジェスティの内面はまだ未発達である。

 感情的になってしまえば、簡単に周囲を見失ってしまう。

 バタフライの制止も空しくマジェスティは感情のままに電撃を炸裂させ、周囲に残っていたガソリンが次々と引火する。

 マジェスティも何が起こったのか分からず、思わず防御姿勢をとってしまった。

 その隙を逃すアンドレではなく、残ったハサミからミサイルを放つ。

 自分に飛んでくるミサイルを見てマジェスティックヴェールを出そうとするも、それよりも先にミサイルが起爆し、マジェスティの体が宙へ投げ出される。

「マジェスティ!待ってて!すぐ治すから!」

 バタフライはすぐにミックスパレットでマジェスティの傷を癒そうとしたが、残っていたメカノットレイに阻まれて筆を落としてしまう。

 吹き飛ばされたマジェスティはウィングが回収した為大事には至らなかったが、マジェスティを回復させなければ再度攻勢に出るのは難しい。

 フェリーチェはウィングの援護に向かってしまった為、自分で何とかするしかない。

「どいて!」

 迫るメカノットレイを殴り飛ばし、落とした絵筆を拾い上げる。

 すぐにウィング達の下へ向かおうとするが、続々と呼び出されるメカノットレイの壁がそれを拒む。

 破壊し損ねたメカノットレイ達も立ち上がり、次々とバタフライに狙いを定める。

「やっば……。次狙われてんの、私じゃん」

 この場で状況をコントロールできるのは自分だけである。

 もし自分が倒されればマジェスティの傷は癒せないし、フェリーチェやウィングだけではアンドレに勝てない。

 支援や防御に特化した自分で、どうやってこの状況を突破できるかと考えを巡らせる。

 一対一なら勝てない相手ではないが、数が多すぎる。一機を相手にしている間に他の機体に攻撃されてしまう。

 必死に考えを巡らせている間に、メカノットレイの壁が自らを押し潰そうと襲い掛かり、咄嗟にバリアで防ぐ。

 その重さに潰されてしまいそうになるも、膝をついて必死に耐える。

 一手、足りなかった。今までのような力任せに暴れまわる相手だったら勝てていた。

 このまま分断されたまま全滅するかと不安がよぎった時、ノットレイの一団が殴り飛ばされてバタフライの視界に2人の少女が入る。

 

「面白いことになってるじゃない。私たちも混ぜてもらおうかしら」

 

 バタフライを助けたのはキュアスカイで、次々とメカノットレイたちを破壊して機能停止に追い込んでいく。

「大丈夫ですか!?」

「えっ、うん。でもユニちゃんがあの姿ってことは……」

「ましろさんに何か考えがあるみたいです。大丈夫です。ユニさんの言いなりにはなってないみたいですから」

 自分たちの下から逃げる直前の言葉、アレは紛れもなくましろの意思だった。

 ましろの魔法は彼女の意思が無ければ発動しない。故にスカイはましろが何故ユニとの融合に踏み切ったのかを知りたかった。

 スカイが目を向けた少し離れたところにユニが立っていて、ソラ達より後に追いかけて来たのか、箒に乗ったみらいとリコも程なくして降りて来た。

「全員揃ったわね。後は自分の言葉で言いなさい、ちゃんと聞いてもらうのよ」

 ユニは自身に香水を振りかけながら姿を変える。

 それは初めてユニがツバサ達の前に現れた姿とほぼ同じ、ましろの姿。

 だがしかしその息遣いや目つき、立ち方はユニとはまるで別物で、姿だけではなく人格までもましろのものに変わっていた。

 ましろの表情にはこれまでのような不安げな色は無く、いつか見たような覚悟の決まった凛とした表情である。

「私ね、ずっと分からなかった。何も覚えてない私に、なんでみんな優しくしてくれるんだろうって」

 ましろが告白している間も敵の攻撃は止まらない。

 しかしスカイが彼女の決意を邪魔させないため、襲い来るメカノットレイ達を蹴散らし、襲い来るミサイルも蹴り上げてましろの遥か頭上で爆発させる。

「だから私、何かお返ししなくちゃ一緒にいちゃいけないんだって決めつけてた。でも何にもない私に返せるものなんかなくて、そんな私が嫌いで、せめてみんなを守れるぐらい強くならなきゃって、ずっと思ってた」

 ポケットからユニのスターカラーペンを取り出して握りしめる。

「でも違うんだよね。みんなは何かしてほしくて私に優しくしてくれたんじゃない。私に笑っててほしかったんだよね」

 思い返すのは、ひかると出会う前の自分。

 ソラがいない日は部屋に閉じこもり、ずっと俯いていたあの日々。

 あげははあちこち連れて行ってくれたし、ツバサも前の自分が好きだったものを教えてくれた。

 けれども、何も返せない自分はみんなの重荷にしかならない。負担にしかならないなら消えるしかない。そう思い込んでいた。

「スカイランドに来れば何か変わるかもって思ったけど、何も変わらなかった。だって私、自分の事ばっかりで逃げてばっかりだったんだもん」

 首に下げられたペンダントを見つめて、最後の一歩を踏み出す。

 自分には価値がないなんて結局は自分の思い込みだった。自分から変わろうとすれば、自分の価値なんていくらでも変わる、そう思って、目の前の敵に目を向ける。

「だから私は逃げない。私は進む。私ひとりだけの力じゃなくて、みんなと一緒に!」

 今はまだ借り物の力かもしれない。

 だがそれでも、ましろは前に進むと決めた。たとえそれが以前の自分とは違う形であったとしても、これが今の虹ヶ丘ましろであると胸を張る為に。

「スターカラーペンダント、カラーチャージ!」

 ましろの体から2人の少女の幻が現れ、三角形を描いて再度一人の姿に溶け合う。

 きらめく星の力を集め、ましろは憧れの自分の姿を描き出す。

 

「銀河にひろがる優しい光!キュアプリズム、ユニゾニックスタイル!」

 

 ましろが選んだのは、黒いプリキュアとしての自分。

 だが漆黒の衣装の中に新たにきらめく星の模様が現れ、さながら1つの銀河を見にまとうようなきらびやかな姿を取る。

 そのままプリズムは勢いを付けて駆け出し、手のひらに小さいブラックホールを作る。

 まるでパンチグローブのように右手とブラックホールを一体化させ、そのままメカノットレイをなぎ倒す。

「私も戦う。みんなが私の笑顔を守ろうとしてくれたみたいに、私もみんなの笑顔を守りたいから!」

 ブラックホールの超重力には勝てず、圧倒的な堅牢さを誇ったメカノットレイ達が次々と押し潰されていく。

「上出来よ。よく言ったわ」

 今度はプリズムの姿が藍色のキュアコスモに変わり、空中に跳び上がり、かかと落としでメカノットレイの頭部を破壊する。

 燃え盛る火の手もものともせずに突き進み、アンドレに肉薄する。

「あなたには感謝してるわ。この子の晴れ舞台を作ってくれて。引き立て役ご苦労様」

 コスモは不敵な笑みでアンドレを挑発し、そのままアンドレを踏みつけて大サソリの真上へ跳ぶ。

 対するアンドレもすぐに操縦桿を握り、コスモを迎撃しようと狙いを定める。

「そうやって狭い世界に引きこもってなかったら、あなたの未来も変わったかもしれないのにね。残念だわ」

 コスモは指鉄砲を作り、大サソリの胴体の下に視線を向けた。

 あのカタログを見て、目の前の敵のどこが弱点なのかは既に把握している。

「キュアップ・ラパパ、そこで大人しくしてなさい」

 次の瞬間、大サソリの真下にブラックホールが出現し、金属がきしむ音を立てながらその機体が歪んでいく。

 至近距離で空いたブラックホールに残ったハサミも吸い込まれ、すぐに自立すらできない程無残な姿になっていく。

 アンドレはもう動かせないと早々に悟り、大サソリを乗り捨ててメカノットレイを集めて自分を守らせる。

「なんなんだよいきなり!プリキュアの攻撃じゃ壊れないんじゃねえのかよ!」

「当たり前でしょ。地球で売る商品なのに、なんで地球の何百倍もの重力を想定しなきゃいけないのよ」

 コスモはブラックホールを閉じて大サソリの残骸の上に飛び乗り、アンドレが乗っていた操縦席の後ろを踏み砕き、中からバスケットボール大のレインボー鉱石を取り出す。

 動力源となっていた鉱石が外され、わずかに駆動音を鳴らしていた大サソリは完全に沈黙した。

「やっぱりこれで動いてたのね。さて、返して欲しいものは返してもらったし、後は任せるニャン」

 欲しいものが手に入って上機嫌なコスモはレインボー鉱石を懐にしまい、今度はふたご座のペンを取り出した。

「スペシャルサービス。白黒つけなさい」

 ふたご座のペンをペンダントに挿し、コスモは別の姿に変わりながら星の模様を描く。

 星の模様がコスモの体を包み込むと同時に2人の少女に姿が変わり、アンドレを見据える。

「あれって……」

「キュアプリズム……!」

 現れたのは、白と黒、2人のキュアプリズムだった。

 頭のリボンがネコミミになっていたり、スカートの下から尻尾が伸びていたりと微妙に差異はあるものの、ほぼあの時のプリズムと変わらない。

「大丈夫」

「今度は間違えないから」

 2人のプリズムはお互いを見つめ合って手を繋ぎ、メカノットレイ達を見据える。

「ヒーローガール―――」

「プリズム・プレデーション!」

 白いプリズムが空中に無数のブラックホールを開くと、黒いプリズムの操作で大蛇の姿をしたアンダーグエナジーが現れ、次々とメカノットレイ達を食い荒らす。

 生身では敵わない強大な敵を前に、アンドレも戦意を喪失して逃げ出そうとする。

 しかしノットレイ達をすべて駆逐した大蛇から逃れることはできず、そのまま丸呑みにされてしまった。

 2人のプリズムが1つになり、最初のキュアプリズムの姿に戻ると同時に、大蛇も球体のエネルギーに姿を変える。

 中にはアンドレが囚われていて、叩き割ろうとあがいてたがすぐに諦めてうなだれた。

「逮捕だニャン♪」

 プリズムはらしくない口調でイタズラっぽく笑い、為す術なく敗北したアンドレは地面を転がった。

 事態が終息した為プリズムが変身を解除すると、ユニとましろの2人に分離し、ふらついたましろをユニが支える。

「ましろんはこっち」

 すぐにバタフライが駆け寄り、ユニがましろを連れ去らないようにましろの身体を引き寄せる。

 続いてマジェスティもユニの事を警戒し、ましろを守ろうとユニの前に躍り出る。

「助けてくれたことは感謝してる。でも、ましろは渡さない」

 ユニも完全に敵とみなされることには何の感情も抱いていないようで、当然のように受け入れてその場から去ろうとした。

「ううん。違うよ」

 ユニとはここで決別すると全員が思っていた中、ましろはバタフライの体から離れてユニの方に歩み寄る。

「ユニちゃんも大事な仲間だよ。だって私、ユニちゃんが励ましてくれたからここにいるんだもん」

 ましろはユニに向けて手を差し伸べる。

 今まで誰かの後ろに隠れていることも多かった彼女が、誰よりも前に出て自分の意見を口にしたことにバタフライやマジェスティは目を丸くした。

 対するユニはましろの変化を好意的に受け止め、強張っていた表情がわずかに和らぐ。

「ありがとうユニちゃん!私、ユニちゃんのお陰でやっと頑張れるよ!」

 周囲の目も気にせずそう言った少女の顔は、これまで見た事のなかった、まぶしい笑顔そのものだった。

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