ひろがるスカイ!プリキュア Imaginary Episodes 作:パイシー
スカイランドでの騒動がひと段落し、数日ぶりにましろは自分の家に帰ってきた。
ミラーパッドを使えば1分と経たずに移動できるので、あまり遠くへ出かけた実感はないが、見慣れた景色を見ると安心する。
「ねえソラちゃん、このミラーパッドって色々できるの?」
ましろは机の上に置かれたミラーパッドを見て色々とボタンを触っている。
「はい!こうしていろんな場所を写したりもできますよ!ここを触ると……」
2人でミラーパッドを操作しながらいろんな景色を見せる。
ましろにスカイランドの事を隠している間は、ミラーパッドも隠していた。
だからこそ、こうして2人で触っていると少しだけ日常が戻ってきたような気分になる。
「まだ使ってない機能もあるみたいだし、他にも色々できそうだね」
ましろは目新しい道具を前に、画面を適当に触ってみたりしてどんな機能が隠されているかを見ている。
そんな折、画面に表示されたダンベルのようなマークが目に入り、ましろはそのマークに触れる。
「待って!それって……!」
近くにいたエルは何の操作をしたのか分かったようで、ましろを止めにかかる。
しかし時すでに遅く、エルを含めた3人がミラーパッドから強烈な光が放たれ、周囲にいた3人を呑み込んだ。
気が付くと、ましろの家のリビングとは違う異空間が目の前に広がり、周囲を見渡しても他のメンバーがいる様子はない。
「ましろさん、大丈夫で―――」
まずはましろの無事を確認しようとソラが口を開いたが、最後まで言葉を発せなかった。
何故なら……
「う、うん」
「なんとかね……」
ましろが2人に増えていたからである。
目の前で起こっている出来事が呑み込めず、エルとソラは思わず言葉を失っていた。
「あれ?」
「なんで『私』が目の前にいるの……?」
「でもこれって、私たち2人一緒に何かができるって事だよね!」
「うん!普段はどっちかしか表に出れないもんね!」
2人のましろはこの状況をあっさりと受け入れて喜んでいる。
一方のソラ達はやっぱり状況が受け入れられず、2人で肩を組んで相談する。
「これって、どういう状況……?」
「多分ましろさんの中にいる2人のましろさんが両方とも出てきちゃってるだと思います。ほら、目の色が違いますし」
ソラに言われてエルが背後のましろ達に目を向けると、確かに目の色が違った。
片方は琥珀色の目をしていて、もう片方はエルもよく見慣れた緑色の瞳をしている。
「じゃあどっちかがいつものましろってこと?」
「多分緑色の目をしている方がそうですね。こうしてみると違いが分からないんですが……」
エルがもう一人のましろと出会ったのは以前ましろの家に遊びに来たである。
あの時は殺気のようなものを感じたが、今の彼女達からはあの時のようなトゲトゲしい雰囲気は感じない。
「とにかく、トレーニングモードに入っちゃったってことは、課題をクリアしないと……」
エルは周囲を見渡して課題を告げてくれる妖精を探すが、肝心の姿が見当たらない。
代わりに頭上に課題の書かれたホワイトボードのようなものが浮いている。
「連休だから妖精さんもおやすみなのかな?」
「課題も1つしか設定されてないみたいですね。前みたいに全員分ってなったら大変でした」
ソラが課題の書かれた板を手に取って、書かれた文字に目を通す。
「えっと、2人のましろさんで協力してお題をクリアするみたいですね。お題は……2人でパンケーキを作る。随分と簡単ですね」
板に書かれた文字をソラが読み上げると、2人のましろの前にキッチンが出現した。
広さや設備も2人入るとちょうどいいサイズで、3人以上で作業するには少し小さい広さだ。
「ましろさん達がパンケーキを作ればいいみたいです!作り方は分かりますか?」
「うん、レシピはちゃんと置いてあるみたいだから大丈夫」
「待っててね!おいしいの作るから!」
2人は意気揚々とキッチンに向かい、パンケーキのレシピを確認する。
役割分担もすぐに決まり、さっそくパンケーキを作り始めた。
「すごい、2人とも息ぴったり」
「元々ましろさんはくもパンとか作ってましたから、身体が覚えてるんだと思います。2人とも元は同じですし」
1つしかない道具を取り合うようなことも無く、器用に道具とスペースを使いながら作業を進めていく。
ソラとエルは手伝った方が良いかとも考えたが、結局は杞憂に終わりそうだったのでそのまま行く末を見守ることにした。
周囲を見渡せば、1人だけ外から助っ人を呼べる権利や、外と連絡する為の小窓が用意されているが、もう必要はないだろう。
そうこうしている内に少し形は歪ながらもパンケーキが完成して皿に載せられた。
「できたよ!」
緑色の瞳のましろがそういうと、今度は2人のましろの前に2枚の鏡がやってくる。
「どうかしました?」
「食べてもらう人を選んでください、だって。その人に食べてもらったらオッケーみたい」
最後の工程として、食べてもらうというフェーズがあったようで、2人のましろが鏡を見つめて相手を決めている。
2人とも既に決まっていたようで、同時に口を開く。
「じゃあ―――」
「
たったそれだけの一言で、その場の空気が一変した。
あれほど仲良く作っていた2人のましろの表情が一気に曇り、険しい表情で互いを見つめる。
「ねえ、なんでここでひかるちゃんの名前が出てくるの?私たち、ソラちゃんの為に作ってたんだよね?」
「そっちこそ、ソラちゃんには一番おいしいパンケーキを食べてもらいたいでしょ!だったらまずはひかるちゃんに手伝ってもらった方がいいに決まってるよ!」
「それじゃひかるちゃんが好きな味になっちゃうよ!これはソラちゃんが食べるの!」
「ソラちゃんにこんなの食べさせられないよ!ひかるちゃんにも手伝ってもらうの!」
「こんなのって何?ソラちゃんはちょっとくらい形が変だったりしてもおいしく食べてくれるよ!」
「そっちの『私』こそソラちゃんに甘えすぎ!私はちゃんとしたものを作って、ソラちゃんに満足してもらいたいの!それに、もうちょっと小さかったら形も綺麗にできたよ!大きく作りすぎ!」
「だってソラちゃんにはいっぱい食べてもらいたいでしょ!」
2人のましろの喧嘩が収まる様子はなく、挙句の果てには皿に乗ったパンケーキの取り合いまで始めてしまった。
「落ち着いてください!私、ちょっとぐらい形が変でも大丈夫ですから!」
ソラが割り込んで喧嘩を仲裁しようとするが、2人のましろに声は届かず、皿に載ったパンケーキを取り合っている。
今でこそ口喧嘩で済んでいるが、このままではいつ取っ組み合いに発展してもおかしくはない。
「どうしよ!?変身した方がいいかな!?」
「一旦外に連絡して助けを求めましょう!ツバサ君達なら何かいい案を出してくれるかもしれません!」
このまま2人を取り押さえて、無理やり落ち着かせることは可能である。
しかしそれでは根本的な解決にはならないような気がして、ソラは外にいる仲間に助けを求めることにした。
「なるほど。つまり、ましろん同士で喧嘩しちゃって、4人とも外に出られないんだね?」
『はい。何度か説得しようとはしてるんですが、私たちの事は眼中にもないみたいで……』
あげは達は姿を消したソラ達を探していたのだが、ミラーパッド越しにソラからコンタクトがあったので、事態を聞いていた。
『1人だけなら助っ人でこっちに入ってこられるそうなんですが、私たちの説得も聞かないとなるとどうすれば……』
ソラは困惑の表情を浮かべていて。あげは達も解決策がすぐには出てこない。
「ましろさん同士で喧嘩ってするのね……。同じ女の子なのに」
リコもどういう状況か呑み込みきれず、さあやの作ってくれたレポートに目を通しながら解決策を考える。
反対にみらいはこの事態の解決策に心当たりがあるのか、スマホを取り出してどこかにかけ始めた。
「あっ、もしもし。いちかちゃん?久しぶり!元気?……うん、あのね、ちょっとお願いしたいことがあるんだけど、今どこでお店開いてるの?……そっか、ウィーン。起こしちゃった?……ううん、大丈夫!こっちで何とかしてみるよ。じゃあまたね!」
みらいは電話を切って、小さく肩を落とす。この状況を解決してくれる人物に心当たりがあったようだが、アテが外れてしまったようだ。
「どこにかけてたの?」
「世界中を飛び回ってるパティシエの友達。助けになるかなって思ったんだけど、今オーストリアだって。今から飛行機に飛び乗ってもこっちに来るのは明日になっちゃうかな」
「みらいちゃんの友達ってそんなすごい人がいるんだ……。流石は国際人……」
以前から海外に行った経験があるとは聞いていたが、まさかそんな友達がいるとは思わなかった。
電話で話していた様子を見るに、みらいとそう年の変わらない女性のようだが、どういう経緯で知り合ったのかが少し気になった。
「ねえツバサ。オーストリアって、コアラさんとかカンガルーさんがいるところだよね?」
「似てますけど違いますよ。確か地球の反対側にある国で、音楽の都って呼ばれてる街だって、この前テレビでやってました」
「そっかぁ。動物さんに囲まれて羨ましいなぁって思ったんだけど」
ことはが遠い国に思いを馳せていると、突然ミラーパッドから爆音が鳴り響き、一同の目線がミラーパッドに集まる。
「どうしたの!?」
『ましろさん達が魔法でケンカを始めちゃいました!なんとか落ち着かせますから、あげはさん達はなんとか解決策を探してください!』
ソラとエルはミラーパッドの向こうでブラックホールやら斧やらを振り回しているましろの所へ向かっていく。
リコやあげはも解決策に頭を抱えるが、答えは出ない。
「困ったわね。これじゃいつまでたってもソラさん達がミラーパッドの中から出られないままだわ」
「1人だけしか行けないってなると、みらいちゃん達は行けないし、少年やはーちゃんじゃ止められないだろうし……」
あげは達がこの場にいる面々で何とかしようと考えを巡らせていると、事態を静観していたユニが小さくため息を漏らした。
先ほどまでスカイランドで貰ったお菓子を口にしていたが、一旦それを脇に置いてあげはが持っていたミラーパッドを取り上げる。
「ちょっと!どこ行くの!?」
「ここにいる人間に解決できないなら、外から連れてくるしかないじゃない」
あげはに止められ、ユニは振り返るとそう呟いた。
「……やっぱり、そうなるわよね。今ましろさんに言う事を聞かせられるとしたら、一人しかいないわ」
リコもユニがやろうとしている事に心当たりがあるようで、苦い顔をしつつもユニを肯定する。
「いいわ。私の箒に乗っていきましょう。どこに行こうとしてるのか、大体わかるもの」
ミラーパッドの中でケンカを続ける2人のましろを止める為、ユニとリコを先頭に、この問題を解決できる人間の下へと飛び立った。
ミラーパッド内部の空間では、マジェスティとスカイが、エスカレートする一方の喧嘩を続けるましろの仲裁を続けていた。
最初はアンダーグエナジーを固めて武器にしたり、ブラックホールを投げつけたりとそれぞれの魔法を駆使したものだったのだが、やがてそれぞれ違う怪物を呼び出して戦わせ始めたのだ。
『ヨクバァァァァル!』
『ノットリガァァァァァ!』
琥珀色の瞳のましろがヨクバールの頭に乗り込み、対する緑の瞳のましろはヨクバールとは違う怪物に乗り込んでいる。
強さを考えればほぼ同格のはずだが、こうなってしまっては力技で解決せざるを得ない。
「マジェスティはヨクバールをなんとかしてください!私はもう片方を何とかしてましろさんを落ち着かせますから!」
「うん、分かった!」
二手に分かれて、暴れまわる2対の怪物を相手にする。
さながら怪獣映画のように滅茶苦茶な光景を何とかしなければならない。
こんな状況でもパンケーキを食べてもらう事は忘れていないのか、キッチン周りだけは無傷である。
「いい加減パンケーキを渡してよ!ひかるちゃんに食べてもらうの!」
「私はソラちゃんの為だけに作ってたの!他の人に食べさせるなんて絶対いや!」
片方はヨクバールの頭の上に乗り、もう片方はノットリガーに乗り込んでいる。
ヨクバールはましろの身体が露出している為、様々な状況に対応できるマジェスティの方が向いている。
対するノットリガーはましろの身体が中にある分、加減をすれば自分でもなんとかできるはずだ。
「そこどいて!今ソラちゃんに美味しいパンケーキを食べさせてあげるから!」
スカイがノットリガーの前に立ちふさがると、払いのけるようにノットリガーの腕がスカイを薙ぎ払う。
「だからってやりすぎです!落ち着いて話し合いましょうよ!」
こちらのましろも完全に頭に血が登ってしまっているようで、スカイの言葉に耳を貸してくれる様子はない。
スカイはなんとか止めようとノットリガーを殴り飛ばし、中のましろが苦しんでいる様子が無いと分かると、一歩踏み込む。
「ヒーローガール―――」
拳を握りしめ、拳に金色の光を宿す。
あまり時間はかけていられないが、狙う場所は慎重に決めなければならない。ましろの身体が埋まっている場所から遠い場所でなければ、彼女の体を傷つけてしまう。
「スカイ、パンチ!」
短い時間でスカイが攻撃箇所として選んだのは、頭部だった。
ノットリガーの中枢にましろがいると仮定するならば、心臓部から最も遠く、身体の軸に近い頭を殴り飛ばした。
スカイの一撃を受けたノットリガーは崩れ去り、スカイの読み通りに胸の所にいたましろの身体も宙に放り出される。
すぐにましろの身体を受け止め、スカイがマジェスティがいる方を振り向くと、ヨクバールを退治してもう一人のましろを捕まえたマジェスティが地面に降り立った。
2人の喧嘩は一旦中断できたものの、2人のましろは互いを睨み合い、今にも殴り合いを始めてしまいそうな勢いである。
「えーっと、そっちのましろさんもこっちのましろさんも落ち着きましょう?」
スカイが取り繕って、落ち着いて話し合うように諭すが、スカイの拘束が緩んだ隙にましろがもう一人のましろに襲い掛かる。
対するもう一人のましろもマジェスティの手を離れて立ち向かう。
このまま再度あの流れを繰り返すのかと思われた時、上から一人の人影が舞い降り、2人のましろの間に割って入る。
「ストーップ!2人とも落ち着いて!」
割り込んできたのはキュアスターで、両手にバリアを展開して激突しようとしていた2人を受け止めた。
『なんとか間に合ったみたいね……』
繋げっぱなしにしていた通信口から、ユニの声が聞こえる。
このまま延々と続くと思われた喧嘩は、ひかるが乱入したことで半ば強引に中断させられた。
「ひかるちゃん……?」
「なんでここに?」
いきなりこの場にスターが現れ、驚いた2人のましろの動きがやっと止まる。
「ユニ達が教えてくれたの。ましろちゃん同士でケンカしてるって」
スターはすぐに変身を解いて、ましろが一旦大人しくなったのを見たスカイとマジェスティも変身を解除する。
ひかるは2人のましろを説得しようと試みるが、ここに来てとある事に気がついた。
「えーっと、まずは名前、付けない?どっちもましろちゃん、じゃ分かりにくいし」
とにかくソラにパンケーキを食べてもらいたい琥珀色の瞳のましろ。
ソラには最高のパンケーキを食べてもらいたい緑の瞳のましろ。
2人のましろの言い分を聞こうにも、区別が出来なければ別々に話を聞くことは難しい。
「とはいっても、どっちもましろさんなんですよね?目の色に因んで、黄色い方の、とか緑の方の、とかにします?」
「そんなんじゃなくて、もっとはっきりと別の名前でいいんじゃないかなって。ボルクスとカストル……は男の人だし、フォボスとダイモス……は女の子っぽくないかな」
「くろ」
ひかるとソラが名前の候補を考えていると、黄色い瞳のましろが口を開いた。
「元々、あなた達の前に出てたのはそっちの私だから、そっちの私がましろでいいよ。代わりに私はくろとか、そんな感じの名前で呼んで。スカイランドで変身した時も、私は黒いのに変身したし」
素っ気ない態度で自分の名前を決めたもう一人のましろに対し、ひかるとソラは一瞬戸惑ったが、エルは喜んで
「じゃあ、あなたは
元のましろをもじって、まくろ。そう名付けられたもう一人のましろは困惑したようだが、エルの無邪気な笑顔がその緊張をほぐす。
「えっと、じゃあ、まくろさんは私に食べてほしいんですよね?」
「だってソラちゃんの為にパンケーキを作ったんだよ!ソラちゃん以外に食べるなんておかしいよ!」
「じゃあもっとしっかりしたの作ってよ!あんなのソラちゃんに食べさせられないよ!」
「だからってソラちゃん以外に食べてもらう必要はないでしょ!」
「落ち着いてよ2人とも!それで、ましろちゃんはちゃんとしたのを食べてほしいと……」
再びケンカを始めそうな2人をなだめ、ひかるは改めてキッチンの方を向く。
魔法を持ち出したせいかキッチンの設備は滅茶苦茶にはなってしまったものの、作ったパンケーキは綺麗なままで残っている。
「これってさ、1人で全部食べなきゃいけないのかな」
皿に載ったパンケーキを見て、ひかるがつぶやいた。
「だってそれが原因でましろ同士でケンカが始まったんだし、1人じゃないとダメなんじゃない?」
「こうすれば丸く収まるんじゃないかなって思うんだけど、どうかな?」
ひかるはナイフを取り出して、ましろの作ったパンケーキを切り分ける。
「はい!こっちは私が食べるから、そっちはソラちゃんの分!」
比較的形が整っている方と、崩れている方の2つに分け、整った方をソラに差し出す。
まるまる1つ食べてもらえない事に2人のましろは不満そうな顔をしているが、またケンカを始める様子もない。
「……やっぱり、味は変わらないんですね」
ひかるが切り分けたパンケーキを一口食べて、ソラは言葉を漏らす。
「そうなの?」
「はい。ましろさん、前はパンとかよく焼いてくれてたんですけど、最近はさっぱりで……。でも味はあの頃と同じ、優しい味がします」
作った分を全部ソラに食べてもらえず、ましろ達は不満げな顔をしていたが、ソラが満足そうに食べているのを見て、少し顔が綻んだ。
すると辺り一帯に光が溢れ、ソラ達のいる異空間が徐々に崩壊していく。
「これって……!」
「やっぱり1人に食べてもらう必要はなかったんだよ!」
自分の推測があたってひかるは喜び、無事にクリアできた事が分かったソラは安堵する。
周囲を覆う光は次第に強くなり、あっという間に全員はミラーパッドの外へ転送された。
「ましろさんに、まくろさん、ね……」
無事にトレーニングモードを終えて、ミラーパッドであった出来事を聞いていたリコがつぶやいた。
「そっか、今までもう一人のましろんに名前つけてなかったもんね。皆バラバラの名前で呼んでたし、結構良い案かも」
あげははもう一人のましろにあだ名をつけることに好意的で、あっさりと受け入れた。
「それにしてもましろがノットリガーに変身できるようになってたとはね……。ましろ、もう1度変身できるかしら?」
「今は無理かも。あの時は無我夢中だったし……」
ユニはましろに再度召喚を頼むも、ましろ自身、どのように召喚したのかはあいまいで、この場での再変身はできそうになかった。
「そう。じゃあこれ、あなたに預けておくわ。失くすじゃないわよ」
懐から何かを投げ渡し、慌ててましろが掴むと、かつて自分がユニから奪ったレインボー鉱石が手の中に納まっていた。
「それがあれば少なくとも自分の身は守れるでしょ?前はどうやって変身してたのかは知らないけど」
「以前はましろさん専用のスカイトーンがあったんですけど、元に戻った時に無くなってしまって……」
ましろが以前変身していた時に持っていた白のスカイトーンは、ホープダイヤの一件が片付いた後に無くなっていた。
未だに所在は分からないが、またレインボー鉱石を素材に作り出せばましろは不完全ながらも変身ができる。
「あっ、そうだ。だったら!」
話を聞いていたエルは何か思いついたようで、ましろの手を優しく取った。
すると2人の手が光に包まれると、ユニから預かったレインボー鉱石とは別に、1つのスカイトーンが握られていた。
「ましろの新しいスカイトーンだよ。これならちゃんとしたプリキュアに変身できるはず」
エルが作り出したのは白と黒が混ざり合ったような色のスカイトーンだった。
以前自分が魔法で作り出したものとは違う、本物のスカイトーン。以前自分が作った贋作とは違う、本物の重みがましろの手にはあった。
「うん。ありがとう。大切にするね」
今度は、力の使い方を間違えない。そう決めたましろは、これから踏み出そうとする自分達への贈り物を強く握りしめた。