ひろがるスカイ!プリキュア Imaginary Episodes   作:パイシー

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Ch.1-4「キュアスカイVSキュアプリズム!もう一度手をつなぐために!」

「おいで!アンダーグエナジー!」

 プリズムの影から次々と黒い腕が伸び、スケッチブックのページを引きちぎっては次々と周囲のモノと混ざり怪物を生み出す。

 先ほどの亀の他にコウモリやクモ、骸骨の巨人や牛のような怪物まで現れ、スカイはためらわずに拳を振るう。

「すごいすごい!やっと戦ってくれる気になったんだね!」

 少し離れたところで、プリズムが喜んでいる声が聞こえる。なんとしてもプリズムに近づきたかったが、怪物に阻まれて近づけない。

(これじゃ埒があきません……)

 全部を倒そうと戦っていたが、先にプリズムを止めなければ、また彼女は怪物の群れを作り出すだろう。

 スカイは足と拳に力を込めて跳ぶ。勢いを乗せたスカイパンチで怪物をなぎ倒しながらプリズムへ手を伸ばす。だがスカイが拳を開いたのを見て、プリズムは不機嫌な顔をして影の中へ身を隠す。

 そして遠くの影から再び現れ、呆れたような顔でこちらを見ている。

「どうしてそのまま私を倒してくれないの?手を開いてちゃ攻撃できないでしょ?」

「当たり前です。私はプリズムを助けたくて今ここにいるんですから」

 スカイはプリズムに対しては拳を握らないと決めた。もし握るとすれば、それはたった一度、彼女を浄化できると確信した時だけ。

 ましろともう一度話がしたい。その為にもスカイは何度でも手を伸ばすと決めたのだ。

 恐らく彼女の力の根源になっているものは、スカイミラージュにセットされている黒いスカイトーン。アレを取り上げてましろを正気に戻せるかは分からないが、彼女を止める為にできる手はすべて打とうとスカイはもう一度駆け出す。

 先ほどと比べて数の減った怪物の合間を潜り抜け、もう一度プリズムに迫る。

(もう一度……!)

 スカイはもう一度手を伸ばしプリズムを掴もうとするが、プリズムは鬱陶しそうにその手を払いのけ、スカイを蹴り飛ばす。

 受け身を取れたお陰でスカイがダメージを受ける事は無かったが、プリズムはスカイの狙いを察したようで、スカイミラージュを取り出して見せつける。

「もしかしてスカイが狙ってるのって、これ?」

 黒いスカイトーンのセットされたスカイミラージュ。驚いたスカイを見て、プリズムの口元が歪む。

「スカイって本当に分かりやすい。ただまっすぐでひたむきな私のヒーロー。本当、大好き」

 プリズムがスカイへ向けてスカイミラージュをかざすと、昏い光が放たれて、スカイの足元の影から黒い泥のようなものがせり上がり人の形に練り上げられていく。

「でも戦ってくれないスカイは嫌い。私が大好きなスカイは最強のヒーローなの。だから、あなたにはちょっとお休みしててもらうね」

 黒い泥人形は少しずつスカイの形を作っていき、夢の中で見た、もう一人の自分とソックリの姿になる。

 黒いキュアスカイはすぐさまスカイにとりつき、スカイの体を泥で覆い尽くそうとする。スカイが突き放そうとしても、自分の手がめり込むだけで手ごたえがなく、逃げ出そうにも自分の足は影の中に吸い込まれてこの場から動けない。

(まずい、このままじゃ……!)

 もう既に腕の自由は利かない。プリズムの手を取ろうとした手も、固く握りしめ、敵を打ち砕かんとしている。

「別に怖がらなくていいよ」

 もう一人の自分に呑まれかけているスカイを見て、プリズムは優しく語りかける。

「私と同じになるだけ。みんな自分がやりたい役をやるだけだから。ソラちゃんは英雄(ヒーロー)になりたいんだよね?だから、悪者(わたし)を倒す役になるの」

「みんな、ってまさか……!」

「昨日私にやられたあの人の事?今日は来ないってことは、何かあったんじゃないかな」

 プリズムはあげは達に興味はなく、スカイの変異をひたすらに待っているようだった。もう既にスカイの上半身は吞まれ、黒いスカイと同化するのも時間の問題だった。

 それでもスカイは諦めまいともう一人の自分に抵抗するが、もう体はスカイの言うことを聞かない。プリズムを敵として打ち倒そうと動き出している。

 いつかはこの心もプリズムを憎むようになってしまうのか、スカイが諦めかけた時だった。

「キュアップ・ラパパ!影よ、消えて!」

 突如スカイを強烈な光が照らし、足元の影が消えて拘束が解ける。

 スカイが一歩引いて黒い自分から逃れようとすると、杖を持ったみらいが文字通り飛び込んできて、憑りついていた黒いキュアスカイを引きはがした。

「大丈夫?ちょっと遅くなっちゃった!」

 みらいは黒いキュアスカイを引きはがしたせいで少し手が泥で汚れてしまったが、全く気に留めていない。少し遅れて、放棄を持った女性が箒にまたがって降りてくる。

「ありがとうございます。みらいさん……と?」

「私はリコ。あなたがソラちゃんね?私がもう少し早くましろさんを見つけられていたら、こんなことにはならなかったのに。本当、ごめんなさい」

 いきなり謝られてスカイは戸惑うが、リコはスカイの手を取り、銀縁の装飾が施されたアメジストを握らせる。

「だからましろさんを救いたいっていうあなたを全力で応援するわ。このリンクルストーンがあなたを導いてくれるはず」

 スカイがアメジストを受け取ると、一筋の光が伸びてスカイの目の前に金色の扉を描き出す。

「この扉がましろさんの心まで繋いでくれるはず。ましろさんがましろさんでいられるうちに、助けてあげて」

「……はい!」

 スカイはアメジストを握りしめて、扉の向こうへと走り出す。プリズムはスカイを追いかけようとするが、みらいとリコに阻まれる。

「いくよ、リコ!モフルン!」

「ええ!」

「モフ!」

 みらいとリコ、そしてみらいのバッグの中で準備していたモフルンが手をつなぎ円を作る。

「「キュアップ・ラパパ!ミラクル・マジカル・ジュエリーレ!」」

 モフルンの首のリボンから、ダイヤの光が放たれて2人を包む。桃と紫。2色の光が降り立ち、プリズムの前に立ちはだかった。

「2人の奇跡、キュアミラクル!」

「2人の魔法、キュアマジカル!」

 かつて闇の魔法つかいやと戦い、2つの世界の秩序を守った。伝説の魔法つかい。それがスカイを救った2人の正体だった。

「またプリキュア……。どうしてプリキュアって私の邪魔ばっかりするの」

「だって、それが私たちだもの。友達が困ってる時は何度だって立ち上がってきた。あなたもそうでしょ?」

 プリズムは持っていたスカイミラージュを握りしめて、手当たり次第に怪物(ヨクバール)を作る。最早ましろの描いたスケッチとは無関係に、周囲の物を片っ端から合成して生み出していく。

「スカイ以外のプリキュアはいらない。これだけ作ったんだもん、あなた達なんてすぐに倒せる」

「そういうあなただってプリキュアでしょ!?あなたがその力を使えば使うほど、ソラちゃんが悲しむってわからないの!?」

「……うるさい!」

 ミラクルの説得も聞かず、プリズムは生み出したヨクバールを差し向ける。だがミラクルやマジカルは慣れた様子で攻撃をかわし、簡単にいなす。

「本当はソラシド市に近づかないプリキュアは放っておくつもりだったけど、もういいや。スカイ以外のプリキュアはいらない。スカイ以外のプリキュアは見つけたら全部倒しちゃおう」

 プリズムの合図でヨクバールの群れが一斉にミラクルたちに襲い掛かる。かつての戦いでも経験したことが無いような数を前にしても、2人の魔法つかいは臆さない。

「後はソラちゃん次第、だよね?」

「ええ。ここが最後の正念場よ」

 マジカルはソラ・ハレワタールという少女をよく知らない。だがマジカルは、みらいが信じた彼女を信じていた。

 

 

 ツバサは落ち込んでいるであろうヨヨを気遣って、朝食を一人分取り分けて持ってきていた。まだショックから立ち直れていないのか、今朝の食卓に姿を見せていない。

 こんな状況でもあげはは気丈に振舞い、いつものような笑顔を見せていた。彼女の明るさが無ければ、きっと自分たちはもっと早く壊れていたかもしれない。

「ヨヨさん。入りますよ?」

 ツバサが扉をノックするが、ヨヨの返事はない。寝てるのかと思い、せめて食事だけでもおいて帰ろうと扉をゆっくり開けた。

「え……?」

 確かにヨヨは部屋の中にいた。だが、何かの結晶体の中に囚われ、その中で眠っていた。

「誰がこんなことを……」

 持ってきた食事を一度机の上に置いて、結晶体に触れる。軽く叩いてみても割れる様子はなく、本当にただの水晶だ。

 もしこの混乱に乗じてエルを狙って襲ってくるなら理解できる。だが、一介の学者にすぎないヨヨをこうして閉じ込める理由が分からない。

 正確にはこの状況が起こりうる可能性に心当たりがないわけではないが、ツバサはそれはありえないと否定する。

「きれいでしょ」

 不意にあげはの声が聞こえて背筋が凍った。いつの間にかあげはが部屋に入ってきており、ツバサの体に腕を回す。

「ヨヨさんってば酷いんだよ?ましろんなんか(・・・)を助けるためにスカイランドに行くって言ったんだから」

 あげはが耳元でささやき、考えたくなかった最悪の可能性が現実味を帯びてくる。

「外は危ないよ。ここでみんなでずっと暮らそう?ソラちゃんも後で迎えに行くから、きっと寂しくない」

 あの晩、攻撃的な性格になったソラにばかり意識が向いていたが、あげはにも同様の変化が起こっていた。それもソラとは真逆の、臆病な性格へ。

「大丈夫。私が皆を守るから。ツバサ君は何も考えなくていいの。エルちゃんも私がちゃんと育てるから」

 どこか蠱惑的なささやきを続けるツバサはあげはを振りほどいて、自分の部屋で休ませていたエルの元へ向かう。

「プリンセス!大丈夫ですか!?」

「ツバサ、どうしたの!?」

 エルはいきなりツバサが駆け込んできたことで異常事態を察したようだが、具体的な説明をしている暇はなかった。ツバサはエルの身には異変が起こっていないことを確認すると、戸惑っているエルの手を引いて窓から外に出ようとする。

(開かない……?)

 いつものように鍵を開けて外に出ようとするが、窓を軽く押してもびくともしない。部屋の外からはあげはがこちらに向かってくる声が聞こえる。

 あげはに捕まってはいけないと本能が告げている。やむを得ないとツバサはスカイミラージュを展開してキュアウィングへと姿を変える。

「プリンセス、掴まってください!窓を破って外に出ます!」

「う、うん、分かった!」

 ウィングは壁を突き破り、開けた穴から外へ逃げる。やがて開けた穴からあげはがこっちを見上げ、感心したような顔でこちらを見ている。

 あげはの身には異変は起こっていない。ウィングはそう思っていた。そう思いたかった。

 思えば昨晩どこかに逃げようと言ったのは、あげはの身にも異変が起こり始めていたのを、彼女自身が分かっていたからではないだろうか。

 一度安全な場所まで逃げて、そこで体勢を立て直そうと一気に空へ向けて加速する。

 だが見えない『何か』に激突し、そのはずみで抱えていたエルを手放してしまう。

 エルもすかさずスカイミラージュを構え、落ちながらキュアマジェスティに変身して優雅に着地した。

 ウィングはマジェスティが無事に着地できたことに安心し、マジェスティを守るように彼女の前に着陸する。

「どうして逃げるの?ここでずっと暮らそうよ。スカイランドのゲートを開けるヨヨさんは封印したし、ここに入ってこられるのは私だけ。危ない外より安全だよ?」

 屋敷の扉を開けたあげはが普段と変わらぬ歩調で出てくる。その手にはスカイミラージュと、ウィングの予想通り漆黒に染まったスカイトーンが握られている。

 あげはの声はいつもと変わらない。いつもの優しいあげはだ。だが今は、それがただならぬ悪意のように感じられて、ウィングとマジェスティの顔がこわばる。

「もし、僕たちがここを出て、ましろさんたちを探す、って言ったらどうします?」

「オシオキかなぁ。完全に私色に染めて、いらない記憶は消しちゃおうかな。だって嫌な記憶は無い方が幸せでしょ?」

 あげははスカイトーンを使い、キュアバタフライへと姿に変える。そして変身が完了すると同時に、鮮やかな彼女の衣装を黒い泥のようなものが塗りつぶす。

「閉ざして守るワンダホー。キュアバタフライ」

 黒く染まったバタフライは、淡く光る瞳でこちらを見て笑う。閉ざして守る。その言葉の通り、ウィングたちはこの巨大な鳥かごの中に囚われていた。

「ウィング、あれ……」

「昨夜のソラさんと同じです」

 マジェスティが不安そうな表情でこちらを見ている。ウィングは必死に頭を回して考える。他の仲間たちに起こった異変の正体を見破らなければ、自分だってマジェスティの敵に回ってしまうかもしれない。

 確証こそないものの、ウィングが一晩考えて導き出した、とある仮説を口に出す。

「反転、しているんです。バタフライは僕らが大切だからこそ、僕たちと戦うつもりなんです」

 まだ確証はない、だがこの異変に名前を付けて呼ぶなら、その名前がふさわしい。

 漆黒の絵の具に染まったミックスパレットを手に、こちらへ向かってくるバタフライ。

 せめて異変の兆候が出ていないマジェスティだけでも逃がそうと、ウィングはずっと戦ってきた相棒(かぞく)に立ち向かった。

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