ひろがるスカイ!プリキュア Imaginary Episodes   作:パイシー

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Ch.1-5「心の中に隠した願い!漆黒のキュアバタフライ!」

 それは、何気ない日常の会話だった。

 シャララボーグの一件が片付いて、シャララ隊長をスカイランドに送り届けた後、みんなで少し遅めの七夕をやろうという話になった。

 ツバサがスカイランドの王城に帰った時に、どこから聞きつけたのか両親が会いに来て、偶然居合わせたあげはを両親に紹介した。

 ましろを紹介した時は妻と間違えられたが、あげはとの話をしたら、今度はフィアンセなのか?と聞かれたりもした。

 まさかまたその手の勘違いをされるとは思わなかったが、あげはも満更でもなさそうな顔でやんわりと否定したのを覚えている。

「少年のご両親、すごい立派な人だったよねー。もしかして、良い所のおぼっちゃん?」

「そんなことないですよ、僕は普通の家の子です」

 ソラシド市に帰ってきた時、あげはと向こうで買ったお菓子をつまみながら交わした会話。扉の向こうでは、短冊にどんな願いを書くかでソラとましろ、エルが盛り上がっている声が聞こえる。

 ふいにツバサにとある疑問が浮かび、ただなんとなく、特に理由もなく口にした。

「そういえば、あげはさんの親御さんの話って聞いたことないですね。その、片親ですけど」

 あまり深く立ち入っては失礼だとはツバサも知っている。あげはが答えたくないなら、この話は終わり。そう思って聞いた疑問だった。

「私?普通といえば普通だよ?ママは仕事で忙しかったけど、ちゃんとクリスマスとか誕生日はお祝いしてくれたし。でも中学に入ってからはほとんど一人暮らしみたいな感じだったかな」

 意外だった。繊細な話題であるにも関わらず、あげははすんなりと答えてくれた。

「だから少年がちょっとうらやましい。地元に帰れば必ず親御さんが会いに来てくれるんだし」

 ツバサとは目線を合わせずに次のお菓子に手を伸ばす。ツバサとは全く違う環境で育ってきたあげは。それはある意味、どこにでもあるような特徴も無いような家庭に憧れているようにも見えた。

「正直さ、私家族が大事だとか言われても正直ピンと来ないんだよね。頭じゃ分かってるつもりなんだけど」

「僕だってそういうのはよく分かんないですよ。両親はいつまでも僕を子ども扱いして……。この前だって、グライダーを作ろうとしたら危ないからやめなさい!って怒られましたし」

「……そっか」

 夕暮れ時の、特別な意味を持たない会話。

 日が暮れ始め、少し薄暗くなってきたからか、あげはの表情は良く見えなかった。

 

 

 

 今のバタフライと正面から戦えば昨日と同じことを繰り返すだけ。自分やマジェスティまでも正気を失えば、それこそ終わりだ。

 ウィングは有効な手立てを考える為にも、マジェスティの手を引いて走り出す。幸い、ウィングがぶつかった透明な『何か』は地上にはそれほど狭くは張られておらず、バタフライの視界から外れるのは造作も無かった。

「あのウィング、反転してるって……?」

 茂みに身を隠し、周囲を伺っていると、戸惑った様子でマジェスティが尋ねた。ウィングもバタフライが探しに来ていないのを確認すると、マジェスティの方を向いて、自身の仮説を告げる。

「まだ確証はありませんが、バタフライの裏側が表に出てきてるんです。あげはさんが見て見ぬふりをしてきた、もう一人のあげはさん。それがあの黒いキュアバタフライだと思うんです」

 昨日のソラやましろに起こった変化を考えて、たどり着いた結論。

 ソラが目指す悪を倒すヒーロー、それが反転して悪であれば情け容赦なく戦う悪の敵となった。

 ましろのソラと別れたくないという思いが反転して、ソラが自分から離れて行かないようにソラの最大の障害として立ち塞がった。

 ヒーローになりたい、大事な友達と一緒にいたい。その願いを叶えたいという本質的な思いは変わらない。ただその方法が、正道か邪道であるかの違い。

 少なすぎる情報の中で、ツバサはそう結論付けた。

「でもバタフライの夢って……」

「最強の保育士になりたい、それよりももっと深いところ、十何年も抱えてた、あげはさんの願い。恐らくは―――」

 家族が欲しい。無条件で自身を愛してくれて、また自分の愛を注げるような人間が欲しい。

 シャララボーグの一件の後、みんなで笹に短冊を下げた時の事。

 たった一言、『お嫁さんになりたい』とだけ書かれた短冊が目立たないような場所に下げられていた。

 女の子であれば大体の子が思い描く、ごく普通の当たり前の夢。ツバサはましろがこっそり吊るしたものだと思っていた。

 だが今にして思えば、アレはあげはの短冊だったのだ。

 あげは本人が一番欲しいと思っていても、もう手に入らないと諦めて、心の底にしまっていた夢。

 ウィングはマジェスティを連れて一度ソラシド市街に逃げ込もうとしたが、ましろの家がある丘の麓まで来ると、先ほどのように透明な『何か』に阻まれた。

 足を止めて軽く叩くと『何か』はガラスのような質感で、試しにマジェスティの電撃を流しても傷一つ付かなかった。

「ウィング……」

 マジェスティは未だ状況が呑み込めず、不安そうな顔でウィングを見る。

 もしかしたら自分もああなってしまうかもしれない、であるならばマジェスティに託せるだけの情報を託して、このソラシド市から逃がすつもりでいた。

 だが、この透明な壁に阻まれてはそれもできない。ウィングは可能な限り避けたかった、最悪の選択肢に踏み切る。

「……あのバタフライを倒します。この壁を解除させるには、それが一番手っ取り早いでしょうから」

 逃げる自分たちをバタフライが走って追ってこないのはこの壁があるから。ソラシド市にすら逃げ出せないのだから、逃げた方向さえ分かればいる範囲も簡単に探し出せる。

「みーつけた」

 故に、自分たちがバタフライに見つかるのも時間の問題だった。

「鬼ごっこの次はかくれんぼ?いいよ。付き合ってあげる」

 もう色を混ぜることもできなくなったにも関わらず、バタフライはミックスパレットから絵の具を取って筆を振るう。黒い絵の具は空中で姿を変え、カラスのような姿となって襲い掛かる。

「鬼は多い方が楽しいでしょ?私がいくらでも作ってあげる」

 ウィングとマジェスティは簡単にカラスの攻撃を避けて、バタフライから距離を取る。黒いカラスは地面や壁に当たると元の絵の具に戻り、辺りに黒いシミを作る。一方のバタフライは攻撃が当たらなかったことを気にせず、次の攻撃の準備をしている。

「ウィング、バタフライの事、お願いしてもいい?私のマジックアワーズエンドは、強すぎるから」

 バタフライをどうやって大人しくさせるか考えていた時、マジェスティが口を開いた。

 プリキュアの技なら黒いプリキュアを変身解除させられることは分かっている。だが、マジックアワーズエンドがかつてのカイゼリンに致命傷を与えたのを知っている以上、生身の相手に使う訳にはいかなかった。

「ええ。少し怪我をさせてしまうとは思いますけど、ウィングアタックでどうにかなると思います」

「じゃあ私が囮になるから、後はお願い」

 マジェスティはウィングの前に出て、バタフライへ向かって走り出す。

 プリキュアがどういう条件で『反転』を起こすのかは分かっていない。交戦したことがきっかけになるのであれば、バタフライと戦った自分にも兆候が出ていなければおかしい。

 黒いプリズムショットを受けたのが原因ならば、攻撃を受けていないソラに影響が出始めた説明がつかない。

 昨日の戦いで、自分だけがとっていない行動。

 マジェスティがバタフライの作った黒いシミを踏みしめた時、ほんの僅かにブーツの底が黒ずんだのを見て、ウィングはようやく今回の現象の全体像が見えた。

 真相に気が付いた時には、バタフライがマジェスティを迎え撃とうと放ったカラスを、マジェスティが手で振り払おうとしていた。

「マジェスティ!それに触ってはダメです!」

 その声を聴いたマジェスティは咄嗟に電撃で黒いカラスを薙ぎ払い、その体を構成していた黒い絵の具を蒸発させる。

 昨日の戦いで自分とバタフライ、スカイの2人との違い。それは怪物を浄化した時に、ウィングだけがプニバード状のエネルギーに身を包んでいたこと。恐らく触れた際に、2人の体には怪物の一部が付着したのだろう。

 泥、と呼ぶべき物質に宿った呪い。それがバタフライやソラの身に起こった異変の元凶だった。

 直接触れた者の願いを歪めた形で実現させる呪い。マジェスティのように触れずに攻撃ができればなんてことないただの攻撃に過ぎないが、何も知らずに攻撃すればいとも簡単に『反転』してしまう。

(マズい、非常にマズいぞ……)

 まだ騒動が起こってから1日しか経っていないが、ソラシド市の異変を聞きつけて、あちこちからプリキュアがやってくるのは容易に想像ができる。

 そして彼女たちは何も知らずに戦い、『泥』でできた怪物を次々と倒し、次々と汚染されていく。

 放っておけば世界中のプリキュアが反転し、世界の秩序なんて無視して暴走し始めるのだろう。最悪、プリキュア同士が殺し合うような地獄絵図が繰り広げられるかもしれない。

 ウィングが何かに気付いたのを察したようで、マジェスティがウィングの傍に戻ってくる。バタフライもからくりを見抜かれたのを察したのか、黒い絵の具を空中へバラまき、ダーツの矢のように変化させてウィング達へ差し向ける。

 だが対処法を学んだマジェスティの相手ではなく、いとも簡単に電撃で防ぐ。

「あのバタフライの絵の具。アレと同じものを昨日のプリズムが操っていました。そしてソラさんもバタフライも、何を知らずに攻撃した。異変に原因があるとすれば、あの黒い絵の具です」

「わかったわ。もし私がおかしくなったら、ウィングに全部を任せるしかないんだ」

「そんなことはありえません。ここであげはさんを救います」

 ようやくバタフライを攻略する糸口が見え、マジェスティとウィングの表情が和らぐ。

 マジェスティはウィングにすべてを託し、まっすぐバタフライへ向かう。マジェスティはわざと電撃を広げて、バタフライに牽制をかけるように見せ、ウィングが超低空へ飛び立ったのが見えないようにする。

 ウィングはバタフライの背後に回り込み、一気に高度を上げる。あの絵の具は厄介だが、見る限りでは実体化するまでの間は重力には逆らえない。

 全身に力を込めて、一撃でバタフライの変身を解除させるために、急降下してバタフライへの攻撃を放つ。

「ウィングアタッ――!」

 

「ざんねんでした」

 

 ウィングの体当たりが届いた時、バタフライの全身が歪む。

 形が崩れたバタフライの影は、そのまま黒い絵の具となってウィングの全身を呑み込む。 

 想定外の事態にマジェスティが呆然としているが、バタフライを構成していた黒い絵の具はあっという間にウィングの体へ染み込み、その影響でウィングの変身が解除されてしまう。

「ツバサ!」

 着地の勢いを殺しきれず、地面に転がったツバサにマジェスティが駆け寄る。ツバサは急速に呪いが進行しているのか、頭を抱えて苦しそうにうめいている。

「マジェスティ、逃げて、ください……。この事を、早く伝えないと……」

「駄目よ!一緒に逃げようよ!」

 ツバサはズボンのポケットから折りたたんだチラシを取り出して、マジェスティに握らせる。

「どうしてもダメになった時は、ここに逃げて体勢を立て直すつもりでした……。すこやか市にある、温泉旅館のチラシです。ましろさんのお友達がこの町に住んでる、そうです」

 ツバサは消えそうになる意識を必死に保ちつつ、マジェスティを逃がす方法を考える。今この状況で異変の正体にたどり着いたのはマジェスティと自分だけ。少しでも仲間を増やしておかなければ、最悪の事態を招く。

「マジェスティが全力で何度か攻撃をすれば、あの壁に穴ぐらいは開けられるかもしれません。とにかく、逃げてください……」

「逃がさないよ?だってその為に少年を先に狙ったんだし」

 放った偽物が倒されたのを察したのか、バタフライがこちらへやってくる。偽のキュアバタフライは一人ではなかったのか、さらに2人、3人と姿を表す。

「先にツバサ君を塗っちゃえば、マジェスティはツバサ君を守ろうとする。後は逃げられなくなったマジェスティも私色に塗れば、3人仲良くずっと暮らせるでしょ?」

 バタフライが筆を操り、巨大な口のようなものを描くと、それが実体化してマジェスティを襲う。

 マジェスティはツバサから離れて、回避すると、涙をこらえて走り出す。あの数を相手に戦える程の体力はマジェスティにはない。

 ツバサの言う通りマジェスティにはこの場から逃げる以外の選択肢がなかった。

「少年も逆らわないで、そうすれば楽になるから」

 背後の方で、バタフライがツバサを抱えて優しく諭している。ツバサもマジェスティを逃がせたことで安堵したのか、苦しそうにしていた様子が消えていく。

 この1年、一緒に過ごしてきた仲間たちはもういない。彼女たちはもう、世界の敵だという事実がただただマジェスティの胸に刻まれた。

 

 

 マジェスティはバタフライの追跡を振り切り、先ほどとは違う場所の壁の前で泣いていた。もうバタフライの所へ向かい、ツバサと同じようにしてもらった方が良いのではないか。そう思うほどマジェスティの心は折れかけていた。

「なんで泣いてるの?」

 いきなり誰かに話しかけられ、マジェスティは顔を上げる。先程まで誰もいなかったはずなのに、ソラやましろぐらいの少女が心配そうな表情でこちらを見ている。

「あなたは……?」

「私、花海ことは!はーちゃんでいいよ!」

 ことはは花が咲いたような笑顔を見せる。

「エル……キュアマジェスティ。私の仲間が、みんなおかしくなって、さっきも襲われたばっかりで……」

「もしかすると、この町によくない感情が集まりかけてるのと関係あるのかな。どこにいるか分かる?」

 マジェスティは涙を拭いて頷く。ツバサを家族にしたがっていたバタフライが向かうとすれば、ましろの家。マジェスティは黙って、丘の上に見えるましろの家を指さした。

「ありがとう!もしかしたらあなたの仲間の事、何とかしてあげられるかも。一緒に行こうよ!」

 ことははポケットから箒を取り出して跨る。どこか見覚えのあるそれにマジェスティも後ろに座り、丘の上へ向けて飛び立つ。

 空から見下ろすと、丁度バタフライがツバサを連れて戻ってきたばかりのようで、バタフライもこちらに気付いたようだった。

 ことははましろの家の前に降り立ち、箒を小さくしてポケットにしまう。

「戻ってきてくれたんですね、マジェスティ。さあ、こちらへ」

 瞳を黒く塗りつぶされたツバサがマジェスティに手を差し伸べる。既にバタフライの支配下におかれているようで、もうこの事態を解決しようとする意志が見えない。

「そっか、心のよくない部分が無理やり出てきちゃってるんだね。これだったら私に何とかできるかも」

 ことははスマホのようなものを取り出し、エメラルドをセットすると、杖で宙に『f』を描く。

「キュアップ・ラパパ!フェリーチェ・ファンファンファン・フラワーレ!」

 辺り一面に花が咲き誇り、ことはの姿が変わる。あどけない少女の姿から、女神のような女性の姿へ変わり、黒く変異したバタフライ達を見据える。

「あまねく命に祝福を、キュアフェリーチェ」

 フェリーチェの登場は意外だったようだが、バタフライが目くばせをすると、ツバサは喜んでキュアウィングへ姿を変える。

「そっちの子も私の家族にしてあげる。丁度ましろんがいなくなったから、部屋も空いてるし」

「マジェスティも一緒なら4人家族ですね!」

 ウィングはマジェスティを捕らえるべく、一直線に向かう。マジェスティはウィングの体を受け止め、フェリーチェはバタフライに立ち向かう。

「どうしてバタフライを悲しませることをするんですか?一緒に僕たちと暮らしましょうよ?嫌なことは考えなくていいんですよ?ずっとずっと幸せな気持ちのまま暮らせるんです」

 マジェスティはウィングに対して攻撃ができず、そのまま取り押さえられる格好になる。だが、フェリーチェがバタフライからミックスパレットを取り上げようとしているため、バタフライの注意がこちらへ向いていない。

(……ごめんなさい!)

 マジェスティは心の中でウィングに謝罪しつつ、拳に電撃をまとわせて殴りぬける。ウィングもマジェスティが反撃してくるとは思わなかったのか、マジェスティが拘束から逃れるのを許してしまった。

「いきなり殴るなんてひどいですよ。僕はあなたのナイトなのに」

「後で何度だって謝るよ。だから、少しの間だけ、大人しくして!」

 フェリーチェにバタフライを任せ、マジェスティはウィングと戦う覚悟を決める。先ほどウィングがバタフライと戦うことを決めたように、自分も望む未来を掴むのだ。

 

 

 一方のフェリーチェも、バタフライと相対していた。だがバタフライの一撃は思っていたより重く、攻撃を受け止めるだけ手一杯だった。

「私を止めるつもりで来たのかもしれないけど、悪いけど止まるつもりはないから!」

 バタフライの蹴りを受け止め、フェリーチェは反撃しようとするも、バタフライに紙一重でかわされる。

 2つの世界の狭間から様々な命を見てきたフェリーチェは、彼女の身に起こった異変について察しがついていた。

 外側から注がれた力で暴走状態にあるプリキュア。悪意ではなく、善意から仲間を襲う。これ以上彼女のような存在を増やすわけにはいかない。

 フェリーチェはバタフライの放った蹴りを受け止めて、そのままバタフライの体を投げ飛ばす。宙へ放り出されたバタフライは、蝶の形のバリアを展開し、フェリーチェを押しつぶそうとする。

 対するフェリーチェも花のバリアを展開して対抗するが、やはりバタフライの力は強く、ほんの少しだけフェリーチェのバリアにヒビが入る。

 バタフライはこれを見て好機とより一層力を込めたが、フェリーチェはバリアを解除してバタフライから距離を取る。

 拮抗していた力が無くなり、バタフライは地面に着地したが、力を殺しきれずにわずかに体勢が揺らぐ。バタフライが建て直すより早くフェリーチェの蹴りがバタフライに向けられる。

 当然バタフライは攻撃を受け止めようとするが、無茶な姿勢で受け止めたせいで大きく後退し、地面に膝をついた。

「あっぶな……。危うく吹っ飛ばされるところだったじゃん」

「頭を使っているに見えて、本当は力任せに暴れているだけ。もう少しあなたが冷静だったら、きっと私は負けていた」

 最初の数撃で、フェリーチェはバタフライが力任せに戦っているだけと見抜いていた。

 だからこそ敢えて派手に反撃もせず、バタフライが全身の力を込めて攻撃するのを待っていた。ほぼ捨て身の攻撃である為、全身の力を使い切ってしまえば、攻略するのはそう難しくはない。

 後は大きく隙を晒したバタフライを攻撃すればいい。フェリーチェはそのためにずっと耐えていたのだ。

「フラワーエコーワンド!」

 フェリーチェは取り出した(ワンド)にエメラルドをセットしてバタフライに狙いを定める。

「これで、終わりにしましょう」

 バタフライが立ち向かってくるより早く(ワンド)に込めたエネルギーを解放し、フェリーチェの放った光がバタフライの体を包み込む。

「エメラルド・リインカーネーション!」

 光に包まれたバタフライの体から黒い泥が一斉に排出され、元の色鮮やかな姿へと戻っていく。

 マジェスティと戦っていたウィングも、突如糸が切れた人形のように動きが止まり、変身が解除されてマジェスティに受け止められる。

 バタフライを包んでいた光が消えると、ウィング同様に変身が解除されて全身の力が抜けたあげはが倒れ込む。

 フェリーチェが慌てて受け止めると、あげはの手から漆黒のスカイトーンが落ち、同時に黒いモヤが抜けて元のピンクに戻った。

「よかった、上手くいったようですね」

 フェリーチェとマジェスティはましろの家に入り、2人を入ってすぐの場所にあるソファに寝かせた。間もなくして外からガラスが砕けるような音が聞こえた。

 マジェスティ達が外を確認すると、外を覆っていた透明な壁がひび割れ、砕け散ると同時に光の粒子となって消えていく。

「ありがとう。お陰で私たちの仲間……も……」

 マジェスティはフェリーチェに礼を述べようとしたが、途中で変身が解けて元のエルの状態に戻ってしまった。緊張の糸が切れたお陰で、エルは安らかな表情で眠っている。

「本当、お疲れさまでした。1人でよく頑張りましたね」

 フェリーチェはあげは達の傍にエルを寝かせると、ソラシド市へ向けて飛び立つ。

 この町に異変が起きているを知っているのなら、みらいとリコも来ているはずだ。

 そう思い、フェリーチェは2人を探す為にソラシド市の空を駆けた。




『泥』

反転したキュアプリズムの操る触れたプリキュアの性質を反転、暴走させる呪い。
呪われたプリキュアは自身の負の側面と向き合わされるという過程を経て、本人の意志とは無関係に正負の側面が反転する。
一方で弱点も非常に多く、マジェスティの電撃のように触れずに攻撃ができれば簡単に対処できる。
この呪いの真に恐ろしい点は、何も知らずに戦えば簡単に汚染されてしまう点と、反転した仲間との戦いを強要される点にある。


キュアバタフライ(ネガ)

『泥』に汚染され、反転してしまったキュアバタフライ
あげはが無意識下に閉じ込めていた、『誰かを愛し、愛されたい』という願いを叶える為に行動している。
黒く染まったミックスパレットを操り、対象を水晶に閉じ込める、記憶を操作する、人格を塗りつぶすといった能力は多岐に渡る。 
また本人のバリアを展開する能力も結界を張る能力へと昇華し、ツバサとエルを閉じ込めた。
しかし彼女が愛というもの本質的に理解していない為、その向けられる愛は一方的で、歪なものであるとは気づいていない。

 願い:『あたたかいあたりまえ』が欲しい
  どこにでもあるような、なんてことの無い家族を作る能力
  彼女が思い描く理想を実現するための役者を揃える。
  ミックスパレットを媒介として『泥』を黒い絵の具に変換して振るい、触れた者から意志を奪い去り、彼女の考える役割で上書きする。
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