聖域への道中、ガーフィールとある意味衝撃的な出会いをした後、スバルたちは久しぶりに再会したラムに連れられてロズワールのもとに向かった。もちろん今まで何をしていたのか問い詰めるためだ。スバルが何度も死に戻りをしてそして一度はあきらめかけて、それでもあの子のおかげで立ち直ってようやくギリギリのところで抜け出せた死のループ。それはロズワールさえ動いてくれていれば、すべて解決とまではいかないもののいくらか状況はマシにはなっていたはずだった。
そう...それこそレムがああなってしまうことも防げていたかもしれないのだ。ロズワールのせいにするのはお門違いだとわかっていながらも、スバルはそう思わずにはいられなかった。
しかし、見るも無残な様子でベットに横たわるロズワールから満足な返答を聞けないまま、スバルとエミリアはガーフィールに連れられて「魔女の墓場」、墓所へと向かった。
どうやら試練とやらがおこなわれるらしい墓所の中へ、エミリアをどうぞどうぞと入ってもらうには危険すぎると判断したスバルは、自分がまず先陣を切ることにしたのだが、入った瞬間意識を失い強欲の魔女「エキドナ」となかなかスリル満点なお茶会をし、墓所内で目覚めてから言いつけを破ったことでラムからちくちくと口撃を受けて...
そして今、スバルはロズワールを尋問して、その返答に激しい怒りを覚えていた。
発生した問題全部を俺がうまいことやると信じて、なにもかもほっぽりだした!?
そんなバカな話があるかと思うスバルをよそにロズワールは寂しげにつぶやいた。
「どうやら、今日の話し合いはここまでのようだーぁね」
「お前がまともに話す気がない以上、何を言ったって無駄だろうよ。もう信じる気になんねえぞ」
「君の中で私の評価が大暴落したのが非常に残念でなーぁらないとも。...それと、今夜のことエミリア様には」
「言うわけねえだろ...いや、ちょっと待て、あともう一つだけ聞くことがあった]
「私を信じられないのにかーぁね?」
もちろん、スバルの中でロズワール評は地に落ちている。それでも、スバルには怒りを堪えてでも聞かなければならないことがあった。それは屋敷を去り際にフレデリカから聞いたことで、
「ここに来る前に、フレデリカからガーフィールについては名前だけ聞いていた。気をつけろと言われていたからどんな奴かと怯えていたんだが、早々に会うことができて少しは性格なんかを把握することができたんだが」
「ふむ、それで?ガーフィールについてききたいのかな」
「いや、そうじゃない。まあそれについても聞きてえけど...俺が今聞きたいのはガーフィールじゃなくて、もう一人の方で」
もちろんガーフィールについて興味はありありなのだが、これからのためにそれはいったん保留しなければならない。
「セレスって人について聞きたいんだが、知ってるか?」
「...もちろんだとも。フレデリカに何と言われたのか知らないけれど、セレスがどうかしたかーぁね?」
「聖域に今いるんだよな?セレスって名前からして...女性か?」
「どちらも間違ってないねえ。セレスはこの聖域内にいる実力者のうちの一人だよ...まあガーフィールよりは理性的で話しやすいんじゃあないかーぁね」
話しやすいということは、急に現れて竜車を吹っ飛ばすようなやつではないだろう。少なくともぶっとんでる奴ではないようだ。
「聖域にいるってことはこれから鉢合わせる可能性もあるってことだよな?どこにいるんだよ」
「それは私にはなんとも。聖域にいるとしか言えないねえ」
「そうかよ」
あとはロズワールに聞かずとも会えばおのずとわかることか...
とりあえず鉢合わせた瞬間殺されるようなことはなさそうでなによりだ。
「それじゃあこんどこそ話は終わりだ」
そう言って、スバルは部屋を後にした。
*
聖域は無駄に面積だけ広い。だが、人が住んでいるのはごく一部のだけで他は森に覆われている。そんな森のはずれの小屋にひとり女が住んでいた。
ハイ、私のことです。セレス=ティンゼルといいます17歳です。父親違いの兄妹が二人いてどっちも獣人とのクォーター。そしてこの私もクォーターとして産まれましたので、もちろん獣化できます。
それはさておき、何で私がこんな辺境に住んでいるかと言いますと...
スバル君と鉢合わせないためです!!
...そうなんです。お察しの通り、私転生者なんですよね。なので、ここがあのリゼロの世界であることはわかってますし、なぜか原作にいないはずのガーフの姉かつフレデリカの妹とかいう、どう考えても重要そうなポジションに産まれてしまった私は、スバル君の方「から」接触されるわけにはいかんなと思ったので、とりあえず森のはずれに小屋を構えているというわけです。
それまではリューズさんとガーフと三人で暮らしてたもんだから、ガーフを説得するのは大変でしたよ...
まあ別に隠れているわけじゃないので、場所を知っていれば普通に会えるんですけどね。なのでガーフは当たり前のように私の小屋でお茶飲んでいくし、たまにリューズさんもやってくる。私はその間魔法の鍛錬をしたり本を読んだりして、結構楽しく過ごしてました。
魔法と言えば、私の魔法の腕は結構高いと思う(自画自賛)。属性は陰と陽だったものだから珍しすぎてまともに教えることができる人がいなかったのはちょっと困った。ほとんど独学で練習する羽目になってしまったわけだけど、たまに聖域にやってくるロズワールに、ちょっと魔法を教わったりして何とか形にしていた。あのピエロは人に教えるのも意外とうまいのだ。
武闘派のガーフとは戦闘スタイルが真逆なんだけど、たまにガーフのサンドバックになってたから打たれ強さだけは鍛えられましたよ、ええ。ただ、残念ながら私はそっち方面がからっきしダメだった。母さんのお腹の中に全部おいてきて、ガーフにその辺の才能全部吸われたのかもしれん。
と、私の自分語りはここまでにしといて、今の状況なんだけど...
スバル君が聖域にやってきました。
ええ、ええ。とうとうやってきてしまいました。原作4章「聖域編」の始まりでございます。
侵入者にガーフィールが気づいてカッ飛んでいったからね。何事かと気づかれないように覗いてみたら、なんとびっくり主人公がいるではありませんか。
この日を待ちわびていたといっても過言ではないこの状況なんですが、今私がするべきことは...
特にないんですよね、これが。
ちなみに今回の聖域編での私のコンセプトは「ミステリアスな女」です。スバル君にはよくわからない私の行動とかで存分に怯えてほしいですね!
私はある程度の原作の流れは覚えているので、スバル君の行動で今何ループ目かは予測できます。しかし、やっぱり私という不確定要素を含んでいますから、原作と違う流れになってしまうこともあるでしょう。ですので、そんな時のための確認ツールとして私はある魔法の練度を死ぬほど上げました。これでリゼロの世界をちゃんと楽しめるようになりましたね!
ということで、とりあえずこの場はなんのアクションもおこさず退散です。まだ謎の女でいたいので。
あ、ガーフ、まだ私のことスバル君に詳しくは話さないでね...
スバル君の聖域での死に戻りのセーブポイントは墓所の中だ。他にもターニングポイントがだいたい墓所内であることが多いので、墓所から出てきたスバル君の行動を観察していれば現在進行形で何が起きているかを把握できる。
さて、今回のスバル君はまだ1ループ目のようでまだ顔に余裕がありますね。これからいろいろ起こりすぎて殺気立つようになりますから要注目です。
1ループ目ということで、エミリアちゃんが試練を連日受け続けているんだけど、もちろん毎回失敗していて空気がすごい重いのが現状。長い聖域滞在でアーラム村の人たちもそわそわしてるしあんまり状況はよろしくない。
ということで、とりあえずアーラム村の人たちを村に返すためにスバル君がガーフを説得している現場を覗き見してきました。まあ、まだ会ってないどころか顔も見てない私の影響がそんなにあるわけもなく、概ね原作通りの流れで進んでたね。屋敷へ村人たちを返す条件として、エミリアちゃんの代わりにスバル君が試練を受けることになり、交渉が終了。お婆ちゃんにあとから聞いたら、明日の朝帰るみたいなのでとりあえずお見送りにいってきます。
「ガーフ」
「...ン、なんだ?」
「明日スバル君たち屋敷に戻るんだよね?」
「あァ、まあすぐ戻るように釘さしてっから心配することはねェと思うぜ?」
「うん、心配はしてないんだけど...私も明日スバル君たちに着いていこうと思う」
「あァ?なんでだよ。それに姉ちゃんが聖域から出れるって知られたら面倒なことになんだろうが」
「もちろん、スバル君たちにはバレないように後をつけるよ。多分、私の存在もまだ知らないだろうし」
「...それならいいけどよ」
フレデリカの名前は出してほしくなさそうだけど...でもまあガーフも鈍い子じゃないし気づいてるだろうな。
「じゃ、明日朝早そうだしもう寝るね。ガーフも早くお婆ちゃんのとこに帰りな」
「あァ、わかってるよ」
しばらくして、小屋から帰るガーフを見送ってから床についたが、明日が楽しみでそわそわしてなかなか寝られない。久しぶりに姉さんに会えるしね...あれ、なんか重要なことを忘れてるような気がする...?まあ、いっか。なんとかなるでしょ。