ようこそデュエルアカデミア   作:るーるーる

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切り札を隠すのにも卓越した才能がいる3

 

 アリーナから出ると外はすっかり日が暮れて夜になっていた

 部屋に戻ってしばらく、何をする訳でもなく過ごして時間をつぶす

 そういえば飲み物を切らしていたなと思い出す。

 

「……何か買いに行くか」

 

 外の自販機の前までやってきた所で暗がりから声がすることに気づく。

 声の元まで近づきその声に聞き耳を立てた。

 

「鈴音。ここまで追ってくるとはな」

「もう、兄さんの知っている頃のダメな私とは違います……。

 追いつくために来ました……」

 

 堀北と……誰だ……? 

 

「追いつく、か……」

「すぐに、Aクラスに上がってみせます。そうしたら……」

「無理だ」

「っ……絶対に、辿り着きます……」

 

 堀北に一歩近づく影。

 街灯に照らされたその姿にオレは見覚えがあった。

 生徒会長、堀北学。

 あれが堀北の兄であり、堀北の目標とした人物……。

 

「聞き分けのない妹だ」

 

 堀北の手首をつかみ強く寮の外壁へと押し付ける。

 おぉ、あれが世に言う『壁ダァン』とかいう奴か……。

 そんなことを考えていると生徒会長が掌を構え突きの態勢を取る

 咄嗟に飛び出し、生徒会長の腕を掴み取り動きを制限する……筈だったのだが、会長の腕にオレとは別の人間の腕も伸びていた。

 

「「あっ……」」メトメガアウー

 

 その腕の持ち主はオレのよく知る人物だった。

 

「……綾小路」

「……小波か」

 

 しばしの沈黙。

 

「……貴方たち、何してるの……?」

 

 気まずい空気が流れ、

 思わず腕を拘束していた力を緩めてしまう

 

「ふッ!」

 

 止まった空気を切り裂くように生徒会長が無言の蹴りをこちらに放ちギリギリの所で回避する。

 

「っぶね……」

 

 そのままの勢いで今度は小波に裏拳を繰り出し

 バシッ、と鈍い音が響く。

 顔面にクリーンヒット……かと思ったがすんでのところを手で受け止めていた。

 

「兄さん! やめて!」

 

 堀北妹の叫び。そんな声は初めて聞くな。

 そんな妹の声も無視して続けて攻撃しようとする生徒会長。

 これ以上はやり過ぎと思い後ろに回り込み、振りかぶった右腕を掴み動きを封じる。

 

「アンタ、やり過ぎだ」

 

 これで生徒会長は俺達二人に両腕を掴まれ前後に囲まれた状態となった。

 大人しくしてくれよ……? 

 

「……良い動きだ、貴様ら。何か習っていたのか?」

「ピアノと書道を」

「昔は地元最強でした」

 

 なんだそれ。

 

「フッ、そうか」

 

 生徒会長は両腕を脱力させ構えを解く

 続行する意思なしと判断し、そのまま二人で押さえていた両腕を離す

 

「そういえば今年は面白い生徒が二人入ったと聞いた。入試の際、筆記テスト全教科50点。それでいて実技ではライフを無傷で通過した者が二人いると。お前達がそうか」

 

 笑みを浮かべこちらを見る生徒会長。

 

「偶然て怖いすね」

 

 無駄と思うが一応誤魔化しておく

 

「フッ、偶然……か」

 

 目立たないようにするための調整だったが、逆に目をつけられる要因になってしまったか。

 実技の方は仕方ない

 こっちは合格に必死だったのだ。

 

「人違いすね」

 

 オレの隣で小波が堂々と発言する。

 

「フッ、人違い……か」

 

 何でだよ、そんなにすんなり受け入れるなよ変だろ。

 

「鈴音、お前に友人が二人もいるとは驚いたぞ」

 

 振り返って妹に語りかける兄。

 目を合わせることができずに妹は弱々しく返す。

 

「彼らは……友人なんかじゃありません……」

「……相変わらず孤高と孤独を履き違えているようだな。

 それはお前を助けに来たこいつらに失礼じゃないのか?」

「それ、は…………」

 

 容赦ない生徒会長に押し黙る堀北。

 その辺にしておいてくれないと明日の勉強会に支障が出かねないので堀北を庇うために一歩前に出ようとする、が……。

 

「綾小路、俺に良い考えがある」

 

 こちらの考えを察したのか前に出ようとした俺を制して小波が前に出る。

 そう言うなら、とオレは小波にこの場を任せる。

 

 

「生徒会長、俺と綾小路は……」

 

 

 小波はどうする? 

 

「それでも友達だ」

「堀北の被害者なんです」

「実は……」←

 

 

「堀北を取り合っている二人です」

 

 

 ……は? 

 

「……何?」

 

 呆気に取られるオレと生徒会長。

 

「な、なっ……何を言っているの貴方は……!?」

「ちょっと待て、オレはそんなつもりは……」

「そんなに冷たくしないでくれ堀北、俺達は本気なんだ……!」

 

 オレと肩を組みながら最高のキメ顔で宣言する小波。

 おいやめろ、こんなところを知らない人間に見られたらとんでもない誤解が……。

 

 

「そうか……鈴音も遂に色を知る歳か……」

 

 

 いたよ、目の前に知らない人間が。

 

「ま、待ってください兄さん! 私は恋愛に興味はありません!」

「照れることはない。独りだったお前を好いてくれる者が二人も居るんだ。こんなに嬉しいことはない」

「いや、ですから……!」

 

 あーあー、もう滅茶苦茶だよ。

 収拾がつかなくなってきたと頭を抱えていると背後から声がかかる。

 

「よー、お前ら。何やってんだこんな所で」

 

 現れたのは遊城ともう一人の生徒。見たところ上級生のようだ。

 

「珍しいな学。お前がこんな時間に下級生と一緒にいるなど」

「亮か。なに、妹の彼氏候補を見定めていた所だ」

「兄さん!」

「ほう」

「え!? お前らそうなの? マジ!?」

 

 遊城が驚愕の表情で俺達を見る

 まずいぞ、どんどん話が大きくなっていく

 

「い、いや……オレは別に……」

「ああ。堀北が兄貴に殴られそうになってたから、

 いてもたっても居られずにな」

 

 余計なこと言うな

 飛び出したのは本当だから余計に質が悪い

 

「へー……ま、頑張れよ」(この二人そんな趣味だったのか)

「遊城君! 簡単に信じないで!」

「なるほど、それは男らしいな」

「先輩まで……!」

「それで亮。お前はどうしたんだ?」

「ああ。なに、先輩として後輩とささやかな交流をしていただけだ」

「へっ、次はギャフンと言わせてやるぜカイザー……!」

「フッ、楽しみにしているぞ、遊城十代」

 

 アリーナの時の話か。

 どうやら、ただ仲良く話していた訳では無さそうだ。

 というかこの時間までずっとデュエルしていたのか……? 

 

「とにかく鈴音、Aクラスに這い上がりたければ死に物狂いであがけ!」

「兄さん……」

 

 堀北兄は帰路に向かう。

 

「あと、ちゃんと2人の気持ちには答えてやれ」

「だからそれは誤解なんですー!!」

 

 最早涙目の妹を置いて寮に戻っていく。

 

 遊城と一緒に来た上級生も寮に戻り

 この場に残ったのは一年生四人だけとなった。

 

「酷い目にあったな」

 

 一件落着と言った様子の小波

 

「そうだな。しかし、その台詞はまだ早いんじゃないか?」

「そうだぜ小波。骨は拾ってやるよ」

 

 オレと遊城は少しづつこの場から距離を取り始める。

 

 振り返るとそこには阿修羅すら凌駕する存在となった

 堀北が抜き身のコンパスを握りしめていた。

 

「貴方……覚悟、しているのよね……?」

「やべっ」

 

 猛ダッシュでこちらに逃げる小波

 ああ、明日の勉強会は一人脱落だな……。

 

「しゃあっ綾小路ガードっ」

「なにっ」

 

 ブスッと鋭い痛みがオレの腕を走り抜ける

 

 

 いつか覚えてろよお前……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 堀北自室

 

 自室に戻りシャワーを浴びながら堀北は一人語る。

 

「やっぱり、覚えてないのね……。それで、良いのだけれど……」

 

 堀北の言葉はシャワーの流れる音と共に消えて失くなっていった。

 

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