ようこそデュエルアカデミア   作:るーるーる

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人間は取り引きをする唯一の動物である。カードを交換する犬はいない1

 

 あの日からしばらく後、あの場を何とか生き延びたオレ達は櫛田の再召集に応じた須藤達と共に食堂で勉強会を開いていた

 

 集合時は渋っていた三人だったが、高得点を取った者への櫛田とのデート権利をちらつかせなんとかテーブルに着かせることに成功する。

 

 試験まで残り一週間。

 昼休みと放課後は一堂に集まって勉強会を開くのが日課となっていた。

 

 現在は昼休み中

 昼食を早めに済ませ、勉強に集中するべき所なのだが。

 

「うおおお! タマゴパン!」

 

 食堂の一画にできた大勢の人混みの中に突撃していく遊城

 他クラス、果ては上級生までも巻き込んでの争奪戦。

 通称、黄金のタマゴパン争奪戦はもはや食堂の名物となっていた

 

「遊城テメエ! いい加減に俺らにも黄金のタマゴパン食わせろ!」

「いっつもお前がかっさらって行きやがって! なんかズルしてんじゃねえのかよ!」

 

 争奪戦に参加するCクラスの男子生徒が遊城に悪態を放つ

 

「うるせえ!! そんなに食いたきゃ自分で引き当てりゃ良いじゃねえか!」

 

 人海を掻き分けながら進撃し続ける遊城。

 引き当てれば良いとあっさりと言うがそんな簡単なことではない。

 黄金のタマゴパンは学園で飼っているニワトリが一日に一個しか産まない黄金の卵から作り出す幻の一品。

 購買のドローパンの山の中からそのたった一個を引き当てるのは相当な幸運の持ち主だろう。

 食べた人間はその日幸運になれるとか

 意中の相手に渡せば恋が実るだとか……そんなジンクスまで生まれている始末だ。

 

 そして遊城はそのタマゴパンを十日連続で引き当て続けている

 遊城の驚異的な引き運がこの食堂で遺憾なく発揮され、あいつは食堂でもすっかり有名人となっていた。

 

「全く……中身がわからないパンのために毎日よくやるわね」

 

 遠巻きでその光景を見守る勉強会のメンバー。

 堀北お手製の問題集に苦戦する須藤達を脇目に堀北と櫛田の二人の雑談に耳を傾ける。

 

「堀北さん、ドローパン苦手だった?」

「中身がわかっている普通のパンを買えば良いじゃない。

 くさやなんて入ってたりする物を買う必要性を感じないわ」

 

 ごもっともだな。

 オレも以前カレーライス食べた後に

 カレーパンを引き当てたこともあった。

 って、くさや? 

 

「なんだ、堀北も試したことあるのか」

 

 冗談交じりに聞いてみるが

 

「……」ツーン

 

 軽く無視された……。

 

「……綾小路くん、堀北さんに何かした?」

 

 櫛田がこっそりオレに耳打ちする

 何かしたもなにも、オレ自身はむしろ被害者でしかない案件だ。

 

「以前の夜私にした仕打ちの事、忘れてないから」

「だからそれは違うと言っているだろう……。オレだってお前に傷物にされたんだぞ」

 

 根に持ってる堀北に無罪を訴える

 いい加減機嫌を直して欲しいのだが。

 

「以前の……夜……?」

「仕打ち……?」

「キズモノ……!?」

 

 静かに問題集と格闘していると思っていた三人が

 オレと堀北を交互に見ながらうわ言のように何か呟いている

 

「あ、綾小路くんと堀北さん、夜に一体ナニを……!?」

 

 櫛田までもオレ達二人を驚愕の表情で見ている。

 ……何か勘違いされてないか? 

 

「ただいまー」

 

 話している間にドローパン戦争を勝ち上がってきた遊城が席に戻ってくる。

 

「いやー、今日は一段と妨害が激しかったぜ」

 

 遊城の手元には無料で提供されている山菜定食とドローパン一個

 金欠の今、昼食はこれで何とか食い繋いでいく

 食べ盛りの高校生男児に取っては物足りないかもしれないが

 こればっかりはどうしようもない。

 

「遊城君、そろそろ遊んでいる暇はないと言う事を自覚して欲しいのだけれど?」

 

 堀北が溜め息交じりに遊城に勉強を促す。

 

「わかってるって。頭を働かせる為には栄養が必要なのさ」

「貴方は……」

「兄貴に認められたいんだろ? ちゃんとやるって」

 

 再び深い溜め息を吐きながらノートに向き直る堀北

 遊城と会話しながらも須藤の何度目かのミスを指摘し修正する。

 文句を言いつつも自分の仕事は欠かさずこなす辺り、本当に根から生真面目な性格なんだろう。

 

「お、あれって……?」

 

 山菜定食を平らげて、食堂の近くを見て呟く遊城。

 

「ちょっと、いい加減に……」

「カイザー! それに生徒会長!」

 

 ビクッと堀北の身体が揺れる。

 遊城の視線の先には以前会った三年の二人が定食を持って席に着くところだった。

 

「あまり騒ぐな十代、埃が立つ」

「あぁ、悪い。食堂で見るなんて珍しいなと思って」

「新年度早々、色々立て込んでいたからな……実際来るのは久しい」

「立て込んでいた?」

 

「そうだ。最近だと黄金のタマゴパンが特定個人の生徒に渡るように裏取り引きされているんじゃないかと訴えが届いている。

 確認した所、そんな取り引きは影も形もなかったのだがな」

「あれか。そうなると、その個人がずっと引き当て続けていることになるんだがな」

「フ、まさか。私達でも実物を見たことがないのだ。

 十日連続で引き当て続けるなど……」

 

「あ、多分それ俺の事」

 

 遊城の発言に二人の時が止まる

 

「なん……」

「だと……?」

 

 驚愕の表情を浮かべる二人

 よく見るとうっすらと冷や汗をかいている。

 

「多分今日買ったのもそうだぜ」

 

 手に持ったドローパンを二人の前に出す。

 

「欲しいんだったら譲ってもいいけどな~?」

「……何が望みだ」

 

 その言葉を待ってましたとばかりにデュエルディスクを取り出す。

 

「俺とデュエルだカイザー! 今日こそリベンジしてやるぜ!」

「遊城君……! 貴方は本当に……!」

 

 話を聞いていた堀北が慌てて遊城を席に戻るように促す。

 

「も、申し訳ありません兄さん、それに先輩……昼食の時間にお邪魔を……」

「いや、構わない。むしろ丁度良いタイミングなのかもしれない」

「丁度良い……ですか?」

「ああ、そのデュエル私が受けよう」

 

 立ち上がり端末を取り出す生徒会長

 まさかの事態に堀北も驚いている。

 

「亮からお前の事は聞いている。入試試験でクロノス教諭を破り亮にも肉薄したという貴様の実力、確かめたくなった」

 

 まさかの相手に遊城は一瞬退くが、直ぐに闘志を燃やす。

 

「へぇ、生徒会長サンが相手か……ま、悪くねえか」

 

 遊城も了承し場所を変えるために外へと向かっていく。

 話の流れに着いていけず途方に暮れる堀北、そんな堀北を見かねたのか先輩が声をかける。

 

「行かないのか? 兄のデュエルを見るのは久しいだろう」

 

 言葉に詰まる堀北

 ゆっくりと言葉を紡ぐ。

 

「私は……試験の為にクラスメイトの勉強を見なければいけませんから……それに、私が行っても兄さんにとっては迷惑と思います……」

「なら、俺が代わりに見ておいてやろう」

「えっ……?」

 

 丸藤先輩が教師役を買って出る。

 

「せっかくあいつのデュエルが見れるんだ、行って損はない。それに、あいつが今まで妹を迷惑と言った事はない」

 

 暫くの沈黙。

 だが、堀北は一歩を踏み出した。

 

「……わかり、ました……行ってみます」

「ああ」

「ありがとうございます、その……」

「丸藤亮だ」

「あ、ありがとうございます。丸藤先輩」

 

 そうして遊城達に続いて外に向かっていく

 せっかくだし、オレも行ってみるか。

 

 

 外に出ると物珍しいのか既にギャラリーが集まっている。

 

「あんたが俺に勝ったらあのドローパンを差し出すぜ」

「私に勝てばお前に10万pptを与えよう」

 

 10万……そんな価値があのパンに……? 

 

「行くぜ!」

 

「「デュエル!」」

 

 

 遊城十代 LP 4000

 VS

 堀北学 LP 4000

 

「私のターン」

 

 先行は生徒会長から

 

「まずは手札からドラグニティ-ファランクスを捨てて《調和の宝札》を発動。デッキから2枚ドローする」

 

 早速手札を入れ換える生徒会長

 自分の手札を減らさずにカードを墓地に送り、手札を整える。

 

「よし、続けて私は手札のドラグニティ-レムスを捨てて効果発動。デッキからフィールド魔法《竜の渓谷》を手札に加えそのまま発動する」

 

 小型の竜のカードを墓地に捨て、フィールド魔法を発動する。

 周囲は文字通り渓谷の光景となり、空には竜の姿を見る。

 

「ん、ドラグニティか。先行を取られたのは痛いかもな」

 

 いつの間にか隣に居た小波がドローパンを齧りながら呟いた。

 

「先行に強いカテゴリなのか?」

「ああ、強力なドラゴンが大量に出てくるテーマだ。制圧をかけて相手の攻め手を封じ、ドラゴン軍団のビートダウンで一気にライフを刈り取る。そんな感じだ」

 

 成る程、先行であれば攻撃ができない変わりに召喚や罠の設置など安全に行えるため十分に展開する事が可能、ということか。

 

 

「……パンの中身なんだった?」

「イベリコ豚のカツパン~三種の珍味をそえて~だった」

「イベリコ豚のカツパン~三種の珍味をそえて~かぁ……」

 

「《竜の渓谷》の効果発動。手札のクーゼを捨てレベル4以下のドラグニティを手札に加える。私はレガトゥスを手札に」

 

 どんどんと手札を墓地に捨てて、デッキからカードをサーチし続けている。

 展開への布石、ということか。

 

「手札のドラグニティ-レガトゥスの効果により、このカードを特殊召喚する。来い、レガトゥス」

 

 ドラグニティ-レガトゥス ATK 1800

 

 現れたのは巨大な翼を背負った人型のモンスター。

 ドラゴンを主力とするデッキと聞いたが、コイツは一見して鳥人間といったイメージを受ける。

 

「更に墓地のレムスの効果を発動。場にドラグニティが存在する場合、墓地から特殊召喚が可能。甦れ、レムス!」

 

 ドラグニティ-レムス ATK 800

 

 なんと。

 自身の効果で墓地に行ってカードをサーチし、

 そして更に自分自身を蘇生させる効果……

 こいつ1枚に詰め込みすぎじゃないのか? 

 

「私はレベル4のレガトゥスにレベル2のチューナーモンスター、レムスをチューニング」

 

 レムスが2つの光の輪となりレガトゥスを包む

 

「シンクロ召喚! 

 駆けろ、ドラグニティナイト-ヴァジュランダ!」

 

 ドラグニティナイト-ヴァジュランダ ATK 1900

 

 風と共に現れたのは橙色の装甲を纏ったドラゴンとそれに騎乗する鳥人のモンスター。

 チューナーまで持つとは、あのドラゴンどこまで優秀なんだ。

 

「自己蘇生したレムスは場から離れる時除外される」

 

 流石に毎ターンの蘇生は出来ないか

 だとしても十分過ぎるほど強力なモンスターだが。

 

「ヴァジュランダの効果発動。シンクロ召喚時、墓地からレベル3以下のドラゴン族ドラグニティをこのカードに装備する。私はクーゼをヴァジュランダに装備」

 

 墓地からクーゼが小さな槍となってヴァジュランダに騎乗する鳥人の手に装備される。

 

「モンスターを装備か。ステータスに影響はなさそうだが、

 わざわざ装備したってことは何か狙いがあるんだろうな」

「当然よ。兄さんが無意味なことをする筈がないもの」

 

 神妙な顔で話す堀北。

 兄の戦術は当然よく知っているか。

 

「装備状態となったクーゼの効果を発動。このカードをモンスターとして特殊召喚する」

 

 さっき装備した槍を上空に放つと四肢と翼が展開されドラゴンとしてフィールドに舞い戻る

 

 ドラグニティ-クーゼ ATK 1000

 

「そいつもチューナーなんだろ? ってことはクーゼがレベル2でヴァジュランダがレベル6だから、出てくるモンスターは……レベル8のシンクロか!」

「違うな」

「へ?」

 

 遊城が慌てて指折り数えてレベル合計を確認する。

 落ち着け、計算自体は間違っていないぞ。

 

「ドラグニティ-クーゼはシンクロ召喚の素材にする場合、レベルを4として扱うことができる。よって私は、レベル6のヴァジュランダに、レベル4となったクーゼをチューニング……!」

 

 合計のレベルは10

 連続展開によって超大型のシンクロモンスターの召喚を手札の消費をたった2枚で成し遂げている。

 

「来る……兄さんのエースモンスターの一体が」

「ああ、ドラグニティの切り札の一つ、

 伝説の槍の名を持つ竜……!」

 

 堀北と小波が隣で興奮気味に合いの手を入れる

 楽しそうだなお前ら

 

「疾風を纏いて大火となれ、シンクロ召喚──」

 

 光を振り払い、竜が姿を現す

 

「飛翔せよ、ドラグニティナイト-アラドヴァル!」

 

 ドラグニティナイト-アラドヴァル ATK 3300

 

「うおおお! すっげえぇ!!」

 

 大興奮で思わず叫ぶ遊城

 いや、遊城だけではない。周囲のギャラリーもざわついている。

 

「会長が一年相手にあのモンスターを!?」

「カイザーぐらいにしか使うところ見たことないぜ!」

「会長素敵です!」

 

 ……なんと言うか、生徒会長は人望に厚い人間なんだな。

 ここらへんは妹とは似ても似つかない……。

 

「綾小路君、今私に失礼な事考えたわね?」

 

 ……おかしいな、他人からはよく無表情だねと言われるんだが。

 

 

「スゲーぜ生徒会長! だが、その程度じゃ俺は止まらないぜ!」

「それは楽しみだ。ではここから更に行かせて貰うとしよう」

 

 生徒会長は更に手札からカードをディスクにセットする。

 

「手札のドラグニティ-ドゥクスを通常召喚」

 

 ドラグニティ-ドゥクス ATK 1500

 

 ここからの通常召喚。

 レベル10のシンクロモンスターを出してまだ召喚権を残していたとは。

 

「ドゥクスの効果により墓地のクーゼを装備する」

 

 ヴァジュランダと同じくクーゼが小さな槍となってドゥクスの手に装備される。

 

「そしてクーゼの効果により、自身を場に特殊召喚」

 

 ドラグニティ-クーゼ ATK 1000

 

「この流れ……まさか……!」

「私はレベル4のドゥクスにレベル2のクーゼをチューニング!」

 

 三度目のシンクロ。

 いつかの遊城の連続融合も凄まじかったが

 今回の生徒会長はそれ以上だ。

 

「シンクロ召喚! 来い、

 シンクロチューナー、ドラグニティナイト-ハールーン!」

 

 ドラグニティナイト-ハールーン ATK 1200

 

「ドラグニティナイト-ハールーンの特殊召喚時、墓地からドラグニティを装備出来る。私はクーゼを装備し、そのまま特殊召喚」

 

 ドラグニティ-クーゼ ATK 1000

 

「これじゃクーゼが過労死しちゃうって……!」

 

 小波が悲痛な叫びを上げる

 確かに心なしかクーゼの表情に疲労が見えるような気がする

 モンスターも疲れたりするんだな。

 

「今度は当ててやるぜ! またレベル10のシンクロモンスターを出す気だろ!」

 

 会長を指差して意気揚々と言い放つ遊城

 さっきまでの流れなら再びシンクロ素材にするんだろうが……。

 

「残念だが、ハールーンはチューナーモンスター。

 同じくチューナーであるクーゼとはシンクロが出来ない」

 

 そう、シンクロモンスターの召喚条件は原則として

 チューナーとチューナー以外のモンスターを必要とする。

 シンクロモンスターでありながらチューナーであるハールーンとの組み合わせはシンクロが成立しない。

 

「えっ、じゃあ……」

「何故召喚したのか、と考えているのだろう。

 その答えがこれだ」

 

 会長の語りと共に空中に四角形の隅に八つの矢印が描かれた枠が出現する。

 これは、アリーナで小波が使ってた……

 

「召喚条件はトークン以外のドラゴン族及び鳥獣族の2体。

 私はハールーンとクーゼをリンクマーカーにセット」

 

 八つの矢印の内、左下と右下にそれぞれドラグニティが吸い込まれていく。

 

「リンク召喚。来たれリンク2、ドラグニティナイト-ロムルス!」

 

 ドラグニティナイト-ロムルス ATK 1200

 

 現れたのは全身が白銀に包まれたドラゴン

 今までのドラグニティ達とは異なる雰囲気を持つ。

 

「シンクロだけじゃなくてリンク召喚も使うのかよ……!」

 

「ロムルスのリンク召喚時の効果により、デッキからドラグニティの魔法・罠カードを1枚手札に加えることが出来る。私は《ドラグニティ・グロー》を手札に加える」

 

 リンクモンスター……これで見るのは2度目か。

 シンクロと異なり基本的にモンスターの数と条件さえ合えば召喚可能なモンスター。

 一見上位互換に見えるが連続してリンクモンスターを並べるにはリンクマーカーと呼ばれる矢印の先に召喚しなければならないという制約が存在する。

 

「墓地に送られたハールーンの効果により、自身を攻撃力1000アップの装備カードとしてロムルスに装備する」

 

 今度はハールーンが小さな槍となってロムルスの手に装備される。

 

 ドラグニティナイト-ロムルス ATK 1200→2200

 

「手札に加えた《ドラグニティ・グロー》を発動。デッキ、墓地からレベル5以上のドラグニティを手札に加える。

 私はデッキからドラグニティアームズ-ミスティルを手札に加え、グローを墓地から除外し効果を使用。

 装備状態のハールーンを守備表示で特殊召喚する」

 

 ドラグニティナイト-ロムルス ATK 2200→1200

 

 ドラグニティナイト-ハールーン DEF  1900

 

「そして手札のドラグニティアームズ-ミスティルの効果により、場のロムルスを墓地に送って自身を特殊召喚」

 

 ドラグニティアームズ-ミスティル ATK 2100

 

「ミスティルの効果発動。手札から特殊召喚した場合、墓地のドラグニティを装備する。私はクーゼを選択し、自身の効果で特殊召喚」

 

 ドラグニティ-クーゼ ATK  1000

 

 せっかく召喚したロムルスを容赦なく墓地に送り、

 クーゼを叩き起こす生徒会長。

 しかしこれでチューナーと非チューナーが場に並んだ。

 

「今度はどっちだ……? シンクロか……それともリンクか……?」

 

 この場の誰もが生徒会長が更に展開しようとすることに疑問を持っていない。

 嘘みたいだろ、まだ先行1ターン目なんだぜこれ。

 

「どちらでもない、と言ったらどうする?」

「なんだと?」

 

 笑みを浮かべる生徒会長。

 そしてディスクにセットされたモンスター2体を重ね合わせた(…………)

 

「私はレベル6のミスティルとハールーンで、

 オーバーレイ!」

 

 宣言と共にドラグニティの2体が光の球体となり、地面には宇宙を切り開いたかのような渦が出現する。

 

「2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築!」

 

 球体となった2体のドラグニティが渦の中へと入り、

 巨大な光の爆発が巻き起こる。

 

「エクシーズ召喚! 現れろ、ランク6! 

 聖刻龍王-アトゥムス!」

 

 聖刻龍王-アトゥムス ATK 2400

 

 これがエクシーズ召喚……。

 同じレベルのモンスターを重ね合わせることにより可能な召喚法。

 素材となったモンスターは墓地に行かずモンスターの下に重ねられるのが特徴。

 

 しかも現れたモンスターは名前も見た目も明らかに別カテゴリのモンスター。

 異なるテーマのカードすら生徒会長は自在に操っている。

 

「アトゥムスの効果を発動。オーバーレイ・ユニット……つまり、エクシーズ素材を1つ取り除くことにより、デッキからドラゴン族モンスターを攻守を0にして特殊召喚する。この効果により私は素材となったハールーンを取り除き、デッキから2体目のミスティルを特殊召喚」

 

 ドラグニティアームズ-ミスティル ATK 2100→0

 

「手札から魔法カード《死者蘇生》を発動。墓地からハールーンを特殊召喚」

 

 ドラグニティナイト-ハールーン DEF 1900

 

「またレベル6のモンスターが2体……!」

 

「私はミスティルとハールーンでオーバーレイ! エクシーズ召喚! 

 現れろ、ランク6! エヴォルカイザー・ラーズ!」

 

 エヴォルカイザー・ラーズ ATK 2500

 

 再びのエクシーズ召喚。

 一体どこまで行く気だこの男は。

 

「これで最後だ、よく頑張ってくれた。

 召喚条件はドラゴン族モンスター2体。私はドラグニティ-クーゼとアトゥムスをリンクマーカーにセット」

 

 最後の力を振り絞り、クーゼとアトゥムスがリンクマーカーにセットされていく。

 

「リンク召喚。リンク2、天球の聖刻印!」

 

 天球の聖刻印 ATK 0

 

 ここまでEXデッキの消費は場のカード含めて7枚。

 1ターンで動きまくった分消費もそれなりか。

 

「魔法カード《貪欲な壺》を発動。墓地のモンスター5枚をデッキに戻し2枚ドローする」

 

 ……流石生徒会長、消費したリカバリーもこなすとは。

 会長はロムルス、ヴァジュランダ、アトゥムス、レガトゥス、ドゥクスをデッキ、エクストラデッキにそれぞれ戻し、カードを2枚引く。

 

「カードを2枚伏せて、ターンエンド」

 

 1ターンでここまで動くとはな……。

 状況の整理の為、改めて場のカードを確認する。

 

 

 堀北学 LP 4000

 

 ドラグニティナイト-アラドヴァル ATK 3300

 エヴォルカイザー・ラーズ ATK 2500

 天球の聖刻印 ATK 0

 

 伏せカード 2枚

 

 

 大型シンクロが1体、リンクモンスターが1体にエクシーズが1体

 そして正体不明の伏せカードが2枚。

 

 制圧を得意とするテーマと聞いたが、あれら全てが妨害効果持ちだとすると、遊城は5回の妨害を踏み越えなければならない。

 そしてさっきの《貪欲な壺》によってエクストラデッキを回復させたことにより、生徒会長は確実に次のターンに連続シンクロで終わらせに来るだろう。

 

 つまり、このターンであれらの妨害を突破して決着をつけなければ勝機は限りなく薄いということ。

 

 だが、遊城のE・HEROの爆発力ならあるいは……

 

 

「俺のターン! ドロー! 全力で行くぜ、生徒会長!」

 

 デッキからカードを引き抜き、早速1枚のカードをディスクにセットする。

 

「魔法カード《ブラックホール》発動! 場のモンスターを全て破壊する!」

 

 フィールドの中心に黒い重力場が発生。

 遊城の場にモンスターは存在しないので破壊されるのは生徒会長のモンスターのみとなる。

 

「させん。エヴォルカイザー・ラーズの効果を発動。

 カード効果が発動した時、エクシーズ素材を2つ取り除くことにより場の表側のカード1枚の効果を無効にする」

 

 それに対応したのはさっきの黒いドラゴンのエクシーズ。

 咆哮と共に衝撃と光が黒い渦を消し去る。

 

「当然、織り込み済みだぜ! 魔法カード《三戦の才》を発動! 

 相手がこのターン中にモンスター効果を使ったターン、3つの内から1つの効果を使用できる! 俺は2枚ドローする効果を選択!」

 

 上手いな

 強力な全体除去に無効効果を使用させ

 それを利用しての2枚ドロー。

 これで妨害を減らした上で手札は6枚に戻った。

 

「よし! 手札からE・HERO エアーマンを召喚!」

 

 E・HERO エアーマン ATK 1800

 

「エアーマンを召喚した時、デッキからHEROモンスターを手札に加えることが出来る。俺はフェザーマンを選択!」

 

 ここまで計3回のカードを使用しているのにも関わらず、遊城は手札6枚をキープしている。

 反撃の為の準備を着々と整えているようだ。

 

「魔法カード《融合》を発動! エアーマンと手札のスパークマンで融合!」

 

 遂に遊城が動いたか。

 翼を持った風のヒーローと稲妻のヒーローが飛び出し、融合する。

 

「融合召喚! 来い、E・HERO Great TORNADO!」

 

 E・HERO Great TORNADO ATK 2800

 

 突風と共に見参したのはマントを纏った緑の融合ヒーロー

 生徒会長の場のアラドヴァルと合わせてフィールド全体に嵐が巻き起こる

 

「Great TORNADOは融合召喚に成功した場合、相手のモンスター全ての攻守を半分にする!」

 

 ヒーローが吹き荒れる風を自在に操り、

 巨大なトルネードを生徒会長のモンスター達へと放つ。

 

「食らえ、タウンバースト!」

「やるな……だが、アラドヴァルの効果発動! 相手がモンスター効果を発動した時、墓地のファランクスを除外することによりその発動を無効にし、除外する!」

 

 ヒーローの放ったトルネードに、

 真っ正面からブレスで対抗するドラゴン。

 嵐と炎がぶつかり合い、凄まじい衝撃がフィールドを駆け抜ける。

 拮抗した勝負に見えたが、生徒会長のドラゴンが競り勝ちヒーローを燃やし尽くす。

 

「くっ……!」

「これで終わりではないのだろう?」

 

 アラドヴァルが天空へと舞い戻り、

 その姿を背に次の手を出せと要求する生徒会長。

 

「当然、行くぜ生徒会長! 魔法カード《ヒーローアライブ》発動!」

「ほう、ここでそのカードか」

「知ってるなら話は早いぜ! 《ヒーローアライブ》の効果は俺の場に表側のモンスターが存在しない場合、

 ライフを半分支払うことによってデッキからレベル4以下のE・HEROを特殊召喚する!」

 

 遊城十代 LP 4000→2000

 

 ライフ半減という少なくないコストを支払い、ヒーローを特殊召喚する効果。

 遊城はこの1枚に勝負を賭けていた。

 

「ここまではこのカードを通す為の布石だったと言う訳か……だが」

 

 生徒会長の場の伏せカードが開かれる。

 

「この瞬間、カウンター罠《ドラグニティ・ヴォイド》を発動。

 私の場にドラグニティシンクロモンスターが存在する場合、相手の魔法・罠カードの効果を無効にし、除外する」

「……っ!」

 

 ここでカウンター罠……。

 デュエルモンスターズのカードにはスペルスピードという概念が存在し、相手のカードにチェーンするにはそのカードと同じかそれ以上のスペルスピードが必要となる。

 そして、カウンター罠はスペルスピード最速の部類のカード。

 チェーンするには同じくカウンター罠でしか対抗できない。

 罠カードの性質上、1ターン伏せなければ使用できない為、これを止める術は……。

 

「やはりあったわね……

 兄さんは遊城君が切り札を使うギリギリの瞬間までこのカードを温存していた……!」

 

 堀北の言う通り、相手の切り札を潰す為の効果。

 制圧する前面のモンスターに目が行きがちだが本命はこの罠カードだったのだろう。

 

 発動した《ドラグニティ・ヴォイド》が遊城のカードを打ち消す。

 

「更に私の場にレベル10のドラグニティが存在する場合、除外されているカードの数×100の攻撃力をドラグニティ1体に付与する。

 私はアラドヴァルを選択」

 

 ドラグニティナイト-アラドヴァル ATK 3300→3600

 

「ここまでか? 遊城十代」

 

「……俺は……」

 

 顔を伏せる遊城。

 もう終わった、と誰もがそう思った。

 

「俺は……」

 

 ゆっくりと顔を上げる遊城、生徒会長を見据えるその目は。

 

「俺は……!」

 

 希望を失ってなどいなかった。

 

「あんたを乗り越えてみせる! 

 手札から2枚目の《ヒーローアライブ》発動!」

「……!」

「2枚目……1枚目は止められることを見越していたの……?」

 

 堀北が驚愕の表情を露にする。

 いや、堀北だけではない。

 この場のギャラリー全員がその光景に驚きを隠せないでいた。

 

「《ヒーローアライブ》の効果でライフを半分支払い、デッキからレベル4以下のE・HEROを特殊召喚する!」

 

 遊城十代 LP 2000→1000

 

「俺が選ぶのはコイツだ! 来い! E・HERO ブレイズマン!」

 

 E・HERO ブレイズマン ATK 1200

 

 召喚されたのは炎のニューヒーロー

 その炎は遊城の闘志のように燃え上がる。

 

「ブレイズマンが特殊召喚に成功した時、デッキから《融合》を手札に加えることが出来る! 更に手札から魔法カード《クロス・オーバー》を発動! 相手のモンスターと自分の戦士族モンスター2体対象として相手のモンスターを俺のモンスターに装備する! 俺が選ぶのは、天球の聖刻印とブレイズマン!」

「それにチェーンして天球の聖刻印の効果を発動。自身の手札または場のモンスターをリリースすることで場のカード1枚を手札に戻す。

 私は聖刻印をリリースし、ブレイズマンを手札に戻させる」

 

《クロス・オーバー》は対象を失い不発となり、

 ブレイズマンも手札に戻された。

 だが、これで見えている分の妨害は全て取り除いた。

 

「天球の聖刻印がリリースされた時、デッキからドラゴン族を攻守を0にして特殊召喚できる。私はドラグニティアームズ・グラムを特殊召喚」

 

 ドラグニティアームズ・グラム DEF  2200→0

 

「もう関係ないぜ! 手札から《融合》を発動! 手札のフェザーマンとブレイズマンで融合!」

 

 ──融合召喚! 

 

「来い! E・HERO フレイム・ウィングマン-フレイム・シュート!」

 

 E・HERO フレイム・ウィングマン-フレイム・シュート ATK 2100

 

 召喚されたのはフレイム・ウィングマン。

 だが、俺の知っているフレイム・ウィングマンとは違う存在のようだ。

 

「コイツが特殊召喚に成功した時、デッキからフェイバリットと名の付くカードを手札に加える! 

 俺は《フェイバリット・ヒーロー》を手札に加え、そしてフレイムシュートをリリースして効果を発動! デッキかEXデッキからレベル7以下の通常召喚できないE・HEROを召喚条件を無視して特殊召喚する! さあ来い、マイフェイバリットカード! 

 E・HERO フレイム・ウィングマン!」

 

 E・HERO フレイム・ウィングマン ATK 2100

 

 来たか、遊城の切り札のヒーローモンスター。

 だが、その攻撃力はアラドヴァルと圧倒的な差が存在している。

 

「そして装備魔法《フェイバリット・ヒーロー》をフレイム・ウィングマンに装備!」

 

 装備魔法が発動し、フレイム・ウィングマンが光を纏う。

 しかし、ステータスに変動は起こらない。

 

「どういうことだ?」

「あの装備魔法は何の意味が……」

 

 ギャラリーに答えるように遊城が高らかに宣言する。

 

「こういうことさ! バトルフェイズ!」

 

 竜の渓谷の景色が乱れ、フィールドの頭上が月夜に変わる。

 

「バトルフェイズ開始時、《フェイバリット・ヒーロー》の効果により俺はデッキからフィールド魔法を発動できる! 

 俺が発動するのは《摩天楼-スカイスクレイパー》!」

 

 フレイム・ウィングマンが空に飛び立ち、竜の渓谷の地中からビル郡と時計塔が現れる。

 フィールド魔法が同時に存在するとこんな感じになるんだな。

 

「そして《フェイバリット・ヒーロー》はフィールド魔法が存在する場合に装備したモンスターの元々の守備力分、攻撃力をアップさせ相手の効果の対象にならなくなる!」

 

 E・HERO フレイム・ウィングマン ATK2100→3300

 

 驚異的な攻撃力アップを遂げたフレイム・ウィングマン

 並のモンスターなら圧倒できるステータスだが……

 

「ダメ、それでも兄さんのアラドヴァルには届かない……!」

 

 そう、さっきのヴォイドの効果によりアラドヴァルの攻撃力はフレイム・ウィングマンよりも上がっている。

 だが、遊城の狙いはそれなのだ。

 

「いや、この状況こそが勝利のカギさ! フレイム・ウィングマンでドラグニティナイト-アラドヴァルに攻撃!」

 

 ヒーローが己よりも強大な敵に立ち向かう姿。

 オレはこの光景に見覚えがあった。

 

「自爆する気……!?」

「違うな、ヒーローは必ず勝つ! 

 スカイスクレイパーの効果により、ヒーローが自分よりも高い攻撃力のモンスターに攻撃するとき、その攻撃力を1000アップさせる!」

 

 E・HERO フレイム・ウィングマン ATK 3300→4300

 VS

 ドラグニティナイト-アラドヴァル ATK 3600

 

「兄さんのアラドヴァルを、越えた……!?」

「翔べ、フレイム・ウィングマン! あの高みまで!」

 

 ──スカイスクレーパーシュート!! 

 

 入試試験の時以上の赤い炎を身に纏う。

 渓谷を飛び、

 摩天楼を越え、

 ヒーローは天空のドラゴンまで突き進む。

 

「フ……見事だ、遊城十代」

 

 片手で眼鏡の位置を直し、遊城を称賛する生徒会長。

 

 

 

 

 

 

 

 

「だが、その片翼では私の空には届かない」

 

 瞬間、フレイム・ウィングマンの動きが止まる

 いや、動きたくても動けない。

 フレイム・ウィングマンの背にある翼が、そして全身が無数の槍に貫かれていた。

 

「なっ……!?」

 

 困惑する遊城に生徒会長は冷静に告げる。

 

「速攻魔法《禁じられた聖典》を発動。ダメージステップ終了時までこのカード以外のフィールドのカードの効果は無効化され、

 その戦闘のダメージ計算は元々の攻撃力・守備力で行う」

 

 アラドヴァルの更に頭上に聖書が出現し、そこから開かれたページが宙に舞い散りながら無数の槍に変わりフレイム・ウィングマンに突き刺さっていた。

 

 E・HERO フレイム・ウィングマン ATK 4300→2100

 

「フレイム・ウィングマン……その効果は破壊したモンスターの元々の攻撃力分のダメージを相手に与える効果。

 これにより、戦闘ダメージ700ポイントとアラドヴァルの攻撃力3300ポイントのダメージ。

 合計して丁度4000、貴様は必ずそれを狙ってくると思っていた」

 

「まさか……ヴォイドで攻撃力を上げたのは、俺がそうするように仕向るためだったのか……!?」

 

 全身に突き刺さった槍に踠きながら右腕の龍頭を伸ばすヒーロー。

 それを見下ろすアラドヴァルはゆっくりと槍を構える。

 

「私の喉元まで迫ったのは見事だ……だが、これで終わりだ」

 

 E・HERO フレイム・ウィングマン ATK 2100

 VS

 ドラグニティナイト-アラドヴァル ATK 3300

 

 構えた槍を放ち、ドラゴンが炎を吐く。

 放たれたそれらは身動きのとれないヒーローの胸を捉え

 力なく墜落していく。

 

「凄えな……完敗だぜ、生徒会長」

 

 遊城の呟きは誰に届く事もなく、フレイム・ウィングマンの消滅と共にライフが尽きる。

 

 遊城十代 LP 1000→0

 

 

 

 決着はライフに傷をつけることなく遊城の戦術を読みきった生徒会長の勝利に終わった。

 一方、敗北しその場に仰向けに倒れた遊城に惜しかった、いい勝負だったと礼賛する上級生達。

 大勢のギャラリー達の歓声の中、その中の一人が称賛するように手を叩きながら会長の下まで歩いてくる。

 

「凄い歓声っすねぇ、流石は生徒会長」

 

 近づいてくる男に生徒会長は怪訝な表情を浮かべる

 

「南雲か、お前が食堂に来るとは珍しいな」

「こんだけ目立ってりゃ嫌でも目に付きますって。それに、どうせだったらこんな一年坊より……俺と遊んでくださいよ」

 

 不敵な笑みを浮かべ会長を見据える南雲という生徒。

 

「南雲。先輩として言っておくが、私ばかりを見ているといつか下から足元を掬われるぞ」

「……はぁ?」

 

 ただならぬ因縁を感じさせる二人

 この空気の中遊城が立ち上がり、空に向かって叫ぶ。

 

「クッソォ~! 負けたあぁぁ!!」

 

 二人とギャラリー達の視線を集めた遊城は生徒会長に指を差し

 決めたぜ! と宣言する。

 

「カイザーとあんたの二人は俺が倒す! 卒業までにゼッテー倒す!」

 

 ポカンとする二人。

 生徒会長は笑みを浮かべ南雲という生徒は呆れている。

 

「……俺がこんな奴に足元を? 面白い冗談っすね」

 

 遊城を見下ろし、興味なさげに帰っていく。

 

「あれ、生徒会長さっきの奴だれだ?」

「気にするな……それよりも、まだまだ荒いがセンスに秀でたものを感じる良いデュエルだった。遊城十代……貴様も鈴音と同じクラスだったか、今年の新入生はユニークな生徒ばかりだな」

 

 こちらをちらりと見る。

 オレにも興味がある、と言いたいのだろうか

 残念ながら今のオレでは生徒会長は満足させるだけのデュエルの実力はないと思うんだがな。

 

「それじゃ、中に戻るか」

「あぁ、約束通りドローパンを頂くとしよう」

 

 ギャラリー達も解散し、オレ達は食堂の中に戻っていく。

 

 

「戻ったか、俺の予想よりも時間がかかったな」

「ああ、中々に有意義なデュエルだった」

 

 会長は戦利品のドローパンを渡しながら席に戻る。

 

「ほぉ、これが例の」

「そうだ、早速開けてみてくれ」

 

 ただパンの中身を確認するだけなのに妙な言い回しをする二人。

 丸藤先輩が封を開け、真ん中から二つに分ける。

 

「おお……」

「これが……」

 

 やはりというか、中身は黄金のタマゴパンだった。

 これで11回目、記録更新だな。

 遊城に感謝し一口食べてみる二人。

 

「……ウマイな」

「あぁ……ウマイ」

「あんな兄さん、今まで見たこと……」

 

 何故かショックを受けている堀北。

 ブラコンもいよいよ重症だな。

 

「ところで学、こいつらの試験範囲なんだが……」

 

 タマゴパンを食べ終わると丸藤先輩が須藤達のノートを取り出し生徒会長に見せる。

 会長はそれを無言で受け取り、目を通す。

 

「何か聞いているか?」

「……いや、何も知らんな」

 

 ノートを見終わると会長は妹に尋ねる。

 

「鈴音」

「は、はいっ!」

 

 動揺する堀北。

 いつもと態度が違いすぎてちょっと面白い。

 

「この試験範囲、お前達の担任が伝えたものか?」

「はい、そうですが……」

「もう一度聞いてみろ、今度は他の一年のクラスの範囲も聞いてからな」

「他のクラス……ですか?」

 

 

 

 

 

 昼休みを終え授業後の時間、オレと堀北は職員室で茶柱先生の下まで来ていた。

 

「どういうことなんですか……! 試験範囲が変更されているというのは……!」

 

 堀北が凄まじい剣幕で茶柱先生に詰め寄る。

 しかし、当の先生はあっけらかんとした態度で答える。

 

「あぁすまない、伝え忘れていたようだ。こちらも色々バタバタしていてな……面倒だからお前達がクラスに伝えておいてくれ」

 

 あの後、櫛田の協力の下他のクラスの生徒に試験範囲を尋ねると、なんと一週間前には試験範囲が変更されていて、それの通知を忘れていたというのだ。

 つまり、ここまでの努力が全て水の泡となったと言うことになる。

 

「そんな台詞で納得しろと……!?」

「教師というのも忙しいからな。変更の通達、頼んだぞ」

「待って下さい、話はまだ……!」

 

 尚、詰めようとする堀北を制止させる。

 

「止めておけ堀北、とにかく一刻も早く皆にこの事を知らせるのが先だ」

「……」

 

 納得が行かないとぼやく堀北と共に職員室の出口へ向かう。

 

「……それと綾小路、今日の放課後は必ず空けておくように」

 

 背中越しに何故か茶柱先生にスケジュールを開けておけと言われる。

 

「なぜですか」

「一応、と言うだけだ。私も面倒がなければそれで良いと思っている」

 

 よくわからないが取り敢えず了承し、職員室を去る。

 

 

 

 

 放課後

 

「綾小路、残念だが私に付いてきて貰おうか」

 

 結局、茶柱先生に呼び出しを受け何処かに連れていかれることとなった。

 

 試験範囲の件での文句を涼しい顔でスルーした先生の後を付いていき、向かった先は応接室の前。

 部屋の中からは小さく声が聞こえる事から誰かがここで話をしているようだ。

 

 扉を4回ノックし、返事を聞いてから先生は扉に手を掛ける。

 

「失礼します。綾小路清隆をお呼びしました」

 

 促され室内に入る。

 

 中に居たのは大きな黒い椅子に座った男性二名

 一人は入試試験の時に見たクロノス教諭。

 

「シ、シニョール綾小路……」

 

 なんともげっそりした様子から長時間ここで相手をしていたのかも知れない。

 

 そしてその対面、この空間で一番の存在感を放つスーツを着た男がその場に座っている。

 

 その男を見たオレは特に表情を変えることもなく

 ただ一つの感想が浮かんでいた。

 

「──清隆」

 

 

 なんだ、もう来たのか

 

 

 




決着まで2ターンなのに長過ぎる
サブタイトルも長過ぎる
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