ようこそデュエルアカデミア   作:るーるーる

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え!?8話で初めて主人公がまともにデュエルを!?


人間は取り引きをする唯一の動物である。カードを交換する犬はいない2

 

 前回のあらすじ 父、襲来

 

「帰るぞ清隆、お前が居るべき場所はこんな紙キレ遊びをする学校ではない」

 

 目の前の男『ホワイトルーム』の責任者でありオレにその教育を施した者が命令する。

 

「し、シニョーレ綾小路、ただいま理事長が不在ですのでお話はその時~に……」

「まずは座ったらどうだ」

 

 対面のクロノス教諭を無視し奴は着席を促す。

 

「座って長話をするつもりはない」

 

 お互いに目線を合わせず淡々とやり取りを行い続ける。

 

 

「お前のせいで一人死んだぞ。焼身自殺だ」

 

 

 この場の教師二人が困惑の表情を浮かべる。

 そしてそれが文字通りの意味と分かるとクロノス教諭は青ざめ茶柱先生は神妙な顔で無言を貫く。

 

「執事の松雄を覚えているか?」

 

 ほんの少しのやり取りでこの男は既に場を支配している。

 

「奴はこの学校の存在をお前に教え私の下から逃れる手伝いをし、当然の報いとして懲戒解雇となった。残された一人息子は今頃路頭に迷っているだろうな。私の命令を破り勝手にこの学校に入学した結果がこれだ」

 

 どういうつもりだろうか。そんな話でオレが動揺するなどと自分自身でも思っていないだろうに。

 

「恩人が死んだというのにまるで興味がないようだな」

 

 胸ポケットから万年筆を取り出し机の上に置かれている『退学届』を指す。

 

「二度は言わん、これを書け」

「断る」

「これは命令だ」

「あんたの命令が絶対だったのは、『あの部屋』の中だけの話だろう」

 

「清隆」

 

 顔には出していないが、少し語気を強める。

 

「一体何がこの学校に入る決意をさせた?」

「……あんたは確かにオレ達に最高の教育を施したかもしれない。

 だからこそあんたが下らないと切り捨てた俗世間ってやつを学びたくなった」

「私が用意した道以上のものなど、存在しない」

「自分の道は自分で決める」

 

 互いに譲る気はない、平行線の会話。

 そこに一石を投じるためにオレの背後の人物が一歩踏み出す。

 

「ならば、この学園の仕来たりに習いデュエルで決める、というのはどうでしょうか」

 

 茶柱先生からの援護

 確かにこの学園ならではの解決法だ。

 

「……そうですね、オレもこの学校の生徒としてデュエルの結果になら従わざるを得ないですね」

 

 この男もデュエルは素人、普通なら負ける勝負はしない。

 普通だったらな。

 

「フン、そう言えば引き下がるとでも思ったか?」

 

 来い、と指を鳴らす。

 すると背後の扉から二人組の男が現れる。

 

「……我ら、流浪の番人」

 

「迷!」

 

「宮!」

 

「「兄弟!!」」

 

 

 …………。

 

 

 ええ……。

 

 クセの強い二人組がポーズを決めながら現れる。

 

「どちらでも良い。この学生を下し私の元へ連れてこい」

 

 二人組の男に命令する。

 

「「承知」」

 

 男達はこちらに近づきデュエルディスクを取り出す。

 

「さあ選べ! どちらと戦うのか!」

「どちらを選んでも貴様に勝ち目など無いのだがな!」

 

「めめめ、迷宮兄弟ーノ!?」

 

 今まで静かだったクロノス教諭が騒ぎだす。

 

「迷宮兄弟と言えーば、あの伝説の決闘者『武藤遊戯』と戦ったこともあると言われーる凄腕の決闘者! Dクラスの一年生が勝てる相手ではないノーネ!」

 

 どうやら界隈では有名人の様だ。

 わざわざそんな大物を雇って来るとは、この男らしい。

 ならば、オレの選ぶ答えは1つのみ。

 

「二人がかりで構わない。サッサと終わらせよう」

「「何?」」

 

 予想外だったのか揃って聞き返す迷宮兄弟とやら。

 

「聞こえなかったのか? 二人がかりで構わないと言ったんだ」

「……我らも舐められたものよ」

「その言葉、己の蛮勇と教えてくれよう」

 

 オレの挑発に乗ってくる二人。

 存外やりやすくて助かる。

 

「……では地下のソリッドビジョン試験室で行いましょう。不用意に目立つと何かとあるので」

 

 珍しく積極的に会話に参加する先生。

 目立ちたくないオレへの配慮かそれとも……。

 

「何処でもいい、早く終わらせろ」

「ではクロノス教諭、こちら方の案内をお願いします。私達も後で向かいますので」

「エッアッ……も、もうどうなっても知らないノーネ! カンピオーネ!」

 

 三人がクロノス教諭に案内され応接室を出る。

 静かになった部屋で茶柱先生が大きな溜め息を吐く。

 

「問答無用で退学、というのは回避したが……勝機はあるのか?」

「さあ、どうですかね」

「お前な……」

 

 しばらく時間を置いてから応接室を出る。

 茶柱先生の後を着いていき地下行きのエレベーターを待っていると背後から声が掛かる。

 

「悪い子はいね~が~」

 

 振り返ると赤帽子の男、小波が立っていた。

 

「小波か……何してんだお前」

「何か楽しそうな事してるなと思ってな。俺も混ぜてくれないかなって」

「……小波、お前どこまで聞いた?」

 

 茶柱先生が話を遮り尋ねる。

 聞いた、と言うのは応接室での事か。

 

「さあ、でもこの学校で呼び出しなんて何かあると思うに決まってますよ」

 

 腕には待機状態のディスク。

 今から何をするのかはわかっている様だった。

 

 少しの長考の後、先生が予測通りの言葉を吐く。

 

「……綾小路」

「やめておきます」

「……まだ何も言っていないぞ」

「タッグでやれって事ですよね。オレの個人的な事情に関係ない奴を巻き込むわけにはいかないので」

 

 先生を黙らせて小波に向き直る。

 

「という訳で、特にお前の気に入るような事はない。ただの野暮用ということにしてくれ」

「……ふーん、そうか」

 

 不満気ながらも了承する小波。

 そうしてデッキケースから一枚のカードを取り出す。

 

「そう言えばこの前一緒にお前のデッキを改良した時に渡しそびれていたカードがあった」

 

 そう言ってオレにカードを手渡す。

 

「忘れ物だ」

 

 それを受けとると同時にエレベーターが到着し扉が開く。

 

「野暮用が終わったら俺とも戦るからな」

「ああ、必ず」

 

 少しの言葉を交わし、乗り込んだエレベーターの扉が閉じる。

 

 

 地下の部屋、あの二人組の男は既に待機していた。

 

 室内はだだっ広い空間にソリッドビジョンシステムが存在するのみ。

 足を踏み入れると靴音が部屋中にコツコツと反射する。

 天井を見回すと左側の壁のガラス越しに奴がオレを見下ろしていた。

 

 ホワイトルームの再現、とでも言いたげだな。

 

 

 迷宮兄弟二人の前に相対し、茶柱先生からルールの説明を受ける。

 

 ルールは二対一の変則ルール

 ライフはお互いに8000

 フィールドと墓地は共通

 ターン毎に二人側はプレイヤーを交代する

 

 

「貴様、本当に我ら二人を同時に相手するつもりか?」

「ああ、問題ない」

「その自信……ただのうつけか、それとも……」

 

 頭上のスピーカーからあの男の声が響く。

 

「何を無駄話している。早く始めろ」

「……では、行くぞ!」

 

 

 デュエル! 

 

 綾小路清隆 LP 8000

 VS

 迷宮兄弟 LP 8000

 

 

 先行はこちらから。

 デッキからカードを5枚引き確認する。

 

 手札の数が相手の2分の1であるこのデュエル、長期戦になるほどこちらが不利になる。

 一気に終わらせたいが、できるかどうか。

 

「魔法カード《強欲で謙虚な壺》を発動。このターンの特殊召喚を禁じる代わりにデッキから3枚めくって1枚を手札に」

 

 時を裂く魔瞳

 命削りの宝札

 愚かな副葬

 

 現在相手の戦術が分からない以上、ここは手堅く行かせて貰おう。

 

「《時を裂く魔鐘(モルガナイト)》を手札に加え、そのまま発動。

 オレはこのデュエル中3つの効果を適用する」

 

 ●自分は手札のモンスターの効果を発動できない。

 ●自分ドローフェイズの通常のドローは2枚になる。

 ●自分は通常召喚を1ターンに2回まで行う事ができる。

 

「インスペクト・ボーダーを召喚。そして追加の召喚権を使用しライオウを召喚」

 

 インスペクト・ボーダー ATK 2000

 ライオウ ATK 1900

 

 2体連続の通常召喚

 どちらも強力なロック効果持ちのモンスターだ。

 

「カードを1枚伏せて、ターンエンド」

「私のターン、ドロー!」

 

 さて、現在の盤面

 インスペクト・ボーダーは自分のモンスターの種類の数しかモンスター効果を発動できないという強烈なロックを互いに適用する効果。

 そしてライオウはお互いのサーチ行為を永続的に封じる。

 

 つまり相手は今モンスター効果を使えずドロー以外で手札を増やすこともできない。

 デュエルの基本と言えるこれらを封じるこの盤面、普通のデッキなら機能不全を起こす所だが……。

 

「まずは手札から魔法カード《コズミック・サイクロン》発動! ライフを1000払い、貴様の伏せカードを除外する!」

 

 迷宮兄弟 LP 8000→7000

 

 制圧するモンスターではなく、伏せカードの除去を優先したか。

 オレの伏せカードの《ドラグマ・パニッシュメント》が光の一線に撃ち抜かれ除外される。

 相手の冷静な判断、オレは相手への警戒度を1段階上へと改める。

 

「なるほど、高攻撃力のモンスターでロックの突破を狙うとそのカードで迎撃する手筈だったというわけか」

 

 こちらの戦術を分析する迷宮兄弟の兄らしき人物。

 

「しかして、我々へのロックは残ったままの状況。学生相手ならこのまま押しきれたかもしれんが……」

 

 更にカードを発動させる。

 

「この一撃で貴様の戦術は瓦解する! 魔法カード《冥王結界波》!」

 

 カードから波動が発射されこちらのモンスター全てに直撃する。

 

「《冥王結界波》の効果により貴様のモンスター全ての効果を無効化する!」

 

 波動を食らったモンスターの周りにはドクロのような怨念が纏わりついている。

 たった1枚のカードでオレのモンスターは木偶の坊と化してしまった。

 

「ただしこのターン貴様への全てのダメージは0となる。が、これで心置きなくモンスターの効果を使用できる!」

 

 現在相手の手札は4枚、ここからどこまで展開されるか……。

 

「私は手札の迷宮に潜むシャドウ・グールの効果発動! デッキから『ラビリンス・ウォール』カードを手札に加える! この効果で《ラビリンス・ウォール・シャドウ》を手札に加え、そのまま発動!」

 

 フィールドに文字通り壁の迷宮が現れ、さっきのグールがその影に潜んでいく。

「迷宮兄弟」ってそういう意味だったのか。

 

「《ラビリンス・ウォール・シャドウ》の効果発動! デッキより三魔神の一体を永続魔法として出現させる! 私は雷魔神-サンガを選択!」

 

 迷宮兄弟の兄の頭上に『雷』と描かれた魔神が現れる。

 

「更に魔法カード《融合派兵》発動! EXデッキのモンスター1体を見せそれに記されたモンスターをデッキから特殊召喚する! 雷風魔神-ゲートガーディアンを開示し現れよ、風魔神-ヒューガ!」

 

 風魔神-ヒューガ ATK 2400

 

 今度は『風』と描かれた魔神のモンスター。

 なるほど、あの三魔神と呼ばれるモンスターが相手デッキの軸らしい。

 

「これで場に2体の魔神が揃った! 私はサンガとヒューガを除外し、EXデッキから雷風魔神-ゲート・ガーディアンを特殊召喚!」

 

 雷風魔神-ゲート・ガーディアン ATK2500

 

 頭上のサンガが飛び出し、球体となったヒューガの上にドッキングする。

 融合魔法を使わず永続魔法扱いでも合体するのか。

 

「雷風魔神の効果発動! デッキから三魔神の名が記された魔法・罠カードを手札に加える! これにより《フォース・オブ・ガーディアン》を手札に!」

 

 2500という高攻撃力を持ちながらサーチ効果を持つのか。

 召喚条件の緩さも加味して普通に厄介だな。

 

「魔法カード《異次元からの埋葬》発動! 除外されているサンガとヒューガを墓地に戻す!」

 

 次元の壁を突き破り再び墓地へと向かう2体。

 端から見ると何ともシュールだ。

 

「フハハハ! これで条件は揃った! 墓地のサンガにヒューガ、そして手札の水魔神-スーガを除外し、最強のゲート・ガーディアンを呼び起こす!」

 

 雷、風、水。

 フィールドの中心で魔神を象徴する力が巻き起こり一つとなる。

 

「今こそその力を合体させ!」

「復活の雄叫びを上げよ!」

「「合体魔神-ゲート・ガーディアン!」」

 

 合体魔神-ゲート・ガーディアン ATK 3750

 

 2体合体の時点で予想していたが、やはりあったか3体合体のゲート・ガーディアン。

 しかも今度は墓地と手札から合体を行う始末。

 おい、融合使えよと思わずツッコミを入れたくなる程の無法っぷり……遊城が見たら怒るぞ全く。

 

「さて、せっかく合体魔神を召喚したが貴様へのダメージはこのターン0となる……それを聞いて安心したのではないのかね?」

 

 余裕綽々といった様子の迷宮・兄

 返答を聞く事もなくカードを発動させる。

 

「だがライフは削らせて貰おう、発動! 《フォース・オブ・ガーディアン》!」

 

 さっきサーチしたカードか。

 あれだけの自信……一体どんな効果を……? 

 

「フフ! この効果により貴様のライフの半分をこのゲート・ガーディアンに加えるのだ!」

 

 何、ライフ半減だと……。

 

 綾小路清隆 LP 8000→4000

 合体魔神-ゲート・ガーディアン ATK 3750→7750

 

 まずい、一気にライフを削られてしまった。

 なるほど、ダメージを与えるだけではなく強制的に変動させる効果というものもあるのか。

 

「ではバトルだ! ゲート・ガーディアン2体でそれぞれ攻撃!」

「「魔神衝撃波ァ!」」

 

 2体の魔神がオレのモンスターに襲い掛かる。

 本来なら大ダメージを受けるはずの攻撃。

 しかしその衝撃やダメージは全て纏わりつく怨念達が喰らい尽くしていく。

 

「目障りなロックモンスターはこれで撃破! メインフェイズ2に移行し、墓地の《フォース・オブ・ガーディアン》の効果を使用! 墓地から除外することでデッキから風魔神-ヒューガを手札に加え、ターンエンドだ!」

 

「オレのターン、魔鐘(モルガナイト)の効果により2枚ドロー」

 

 眼前には2体のゲート・ガーディアン。

 更にその内の1体は圧倒的な攻撃力を持っている。

 奴を放置すれば次のターン確実に半減したオレのライフを刈り取りに来るだろう。

 

「フハハハ! 教えておいてやろう! 合体魔神-ゲート・ガーディアンは自軍の場を対象とするカードの効果を無効にし、破壊する効果を持つ! そしてその効果は1ターンに3度使えるのだ!」

「更に相手によって場から離れるとデッキ、EXデッキから更なるゲート・ガーディアンを呼び覚ます!」

「これぞ無敵!」

「これぞ不滅!」

 

「「これぞ、最強の魔神の力!」」ドン☆

 

 ……いちいちテンションが高いな。

 ならば、その最強にお返しをさせて貰うとしよう。

 

「手札から紅蓮魔獣 ダ・イーザを召喚」

 

 紅蓮魔獣 ダ・イーザ ATK 0→400

 

「フン! 今更そのような低攻撃力モンスターを出してどうするつもりかね?」

 

 確かに今のままでは突破は不可能だろう。

 オレはEXデッキから1枚のカードを取り出す。

 

 ──使わせて貰うぞ、小波。

 

「オレはダ・イーザ1体でオーバーレイ」

「「なにっ!?」」

 

 魔獣が光へと変わり、地面に開いた大穴へ突入する。

 

「1体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚」

 

 大穴から光の爆発が巻き起こり、姿を現す。

 黒い装甲と赤い光、鍵爪のような指先と巨大な翼を持った機械仕掛けの悪魔の化身。

 

「──虚無へと誘え、厄災の星(ロギアステラ) ティ・フォン」

 

 厄災の星 ティ・フォン ATK 2900

 

 一瞬焦った迷宮兄弟がほっとした様子でティ・フォンを見る。

 

「ふ、フハハ! 少し驚いたがそのモンスターの攻撃力では結局ゲート・ガーディアンは倒せない!」

「そう! 合体魔神の攻撃力は変わらず7750! そのモンスターでは到底越えられない!」

 

 越える必要など無い。

 X素材を取り除き効果を使用する。

 

「ティ・フォンの効果発動。素材を一つ消費し相手のモンスター1体を手札に戻す」

「馬鹿め! もう忘れたか! 合体魔神の効果により対象をとるカードの効果を無効にし破壊する!」

「残念ながら、ティ・フォンが場に存在する限り攻撃力3000以上のモンスター効果は発動できない」

「「何だと!?」」

 

 そもそもこの効果は対象を取らない。

 ティ・フォンが片腕を掲げると眩い闇が溢れ出す。

 闇は合体魔神を中心に球体状に包み込み、空間ごと消し去った。

 

「ゲート・ガーディアンを一瞬で……!」

「おのれ……! だがレベル5以上のモンスター以外は《ラビリンス・ウォール・シャドウ》の効果で召喚・特殊召喚したターンには攻撃できない!」

「バトルフェイズ開始時に速攻魔法《サイクロン》発動。フィールド魔法を対象として破壊する」

「「何ィ!?」」

「そのままティ・フォンで雷風魔神に攻撃」

 

 厄災の星 ティ・フォン ATK 2900

 VS

 雷風魔神-ゲート・ガーディアン ATK 2500

 

 ティ・フォンの背部にある翼のユニットが展開、無数の紫電を発生させ攻撃を行う。

 発動した《サイクロン》と合わせてフィールド全てに紫電が走り迷宮ごと魔神を攻撃、ゲート・ガーディアンもそれに対抗し雷を放つが一瞬で押し切られ呆気なく爆散する。

 

「「ぐおぉぉぉ!!」」

 

 迷宮兄弟 LP 7000→6600

 

 凄まじい演出だな。

 1体でモンスター2体を蹴散らし、魔法でフィールドを焦土と化した。

 相手からすれば余程驚異に見えることだろう。

 

「くっ、だが破壊された雷風魔神の効果を発動! 相手によって場から離れた為、除外されている風魔神-ヒューガを特殊召喚!」

 

 風魔神-ヒューガ ATK 2400

 

 やはり2体合体の方も魔神を出す効果を持っていたか。

 バトルフェイズを終了しメインフェイズ2に以降する。

 

「魔法カード《三戦の号》を発動。このターン相手がモンスター効果を発動している場合、デッキから《三戦の号》以外の通常魔法・通常罠カード1枚を自分フィールドにセットする。さらに相手の場にモンスターが存在する場合、手札に加えることも可能」

 

 デッキから1枚をサーチしそのまま発動する。

 

「《強欲で貪欲な壺》を発動。デッキの上から10枚を裏側除外し更に2枚ドローする」

 

 自らのデッキを10枚除外することで制約なしに2枚ドローするカード。

 遊城から使わないカードだからと譲り受けたカードだったが、入れておいて良かった。

 やはりドロー……ドローは全てを解決する。

 

「カードを2枚伏せて、ターン終了」

 

 なんとか厄介な合体魔神を退けたが、こちらの手札は0。

 対して迎える次のターンのプレイヤーは弟の方、手札は6枚からスタートする。

 このアドバンテージの差は中々キツイな。

 

「私のターン、ドロー! 使わせて貰うぞ兄者!」

「ウム、行くが良い!」

「まずは手札からフィールド魔法《ラビリンス・ウォール・シャドウ》を再発動! そして《ラビリンス・ウォール・シャドウ》の効果によりデッキから水魔神-スーガを永続魔法扱いとして出現させる!」

 

 やはり同じデッキ。

 単純にリソースやキーカードの出力が2倍となると考えれば当然の選択だろう。

 厄介な迷宮が再びフィールドに出現する。

 

「エースを召喚してなんとか撃退したようだが残念だったな! 今再び、三魔神は合体する! フィールドのヒューガ、スーガそして手札のサンガを除外し、合体魔神-ゲート・ガーディアンを特殊召喚!」

 

 合体魔神-ゲート・ガーディアン ATK 3750

 

 また出たか。

 簡単に出てくるのに中々面倒な存在だ。

 

「再び合体魔神が現れたことで貴様の希望は途絶えたことだろう! だが、ここから更なる絶望が貴様を襲う!」

「ほう、あれを使うのか?」

「いくぞ! 我がライフを贄として魔法カード《ダーク・エレメント》発動! 手札・デッキ・EXデッキのいずれかからレベル11以上のゲート・ガーディアンを召喚条件を無視して特殊召喚する!」

 

 迷宮兄弟 LP 6600→3300

 

 自分でライフを半減させるカード。

 三魔神以上の何かを予感させる効果にオレは遊城の事を思い出す。

 きっとこの場に居たのがお前なら、ワクワクが止まらないと言うんだろうな。

 

「我らにこのモンスターを使わせた事、光栄に思うが良い! 降臨せよ! 闇の守護神-ダーク・ガーディアン!」

 

 闇の守護神-ダーク・ガーディアン ATK 3800

 

 今までとは風貌が全く異なるモンスター

 その攻撃力は合体魔神をも上回っている。

 

「フハハハ! ダーク・ガーディアンはゲート・ガーディアン扱いのモンスター! そして《ダーク・エレメント》で召喚したこのモンスターは元々の戦闘破壊耐性に加え、他のモンスター及び相手の魔法の効果を受け付けない! まさに絶対無敵のモンスターとなるのだ!」

 

 合体魔神に闇の守護神。

 強大なモンスター2体がオレの眼前に佇む。

 

「そして装備魔法《巨大化》をダーク・ガーディアンに発動! 相手のライフが自身より多い場合、装備モンスターの攻撃力は倍になる!」

 

 闇の守護神-ダーク・ガーディアン ATK 3800→7600

 

《巨大化》……なるほど、やたら自分のライフを減らす効果を使うと思ったがこれと《フォース・オブ・ガーディアン》の効果との組み合わせで圧殺する戦略という訳か。

 

「更に装備魔法《ガーディアンの力》を合体魔神に装備! 装備モンスターの攻撃宣言時にこのカードに魔力カウンターを1つ乗せ、その数×500ポイント攻守が上昇! そして装備モンスターが戦闘・効果で破壊される時、カウンターを外し身代わりにすることも可能となるのだ!」

 

 合体魔神にも装備魔法が発動される。

 ステータスアップと破壊耐性を付与し、装備魔法は合体魔神の効果で防御する……と言った所か。

 戦闘破壊されず、強固な耐性を得た魔神達を従え、迷宮・弟は高らかに宣言する。

 

「いくぞ、バトルだ! 合体魔神-ゲート・ガーディアンでティ・フォンに攻撃!」

 

 合体魔神-ゲート・ガーディアン ATK 3750→4250

 VS

 厄災の星 ティ・フォン ATK 2900

 

 合体魔神がその巨体を生かしティ・フォンに肉弾戦を挑む。

 ティ・フォンもそれに応じたのかお互いの巨大な腕を掴み合い、力比べのように押し合いをする。

 

 パワー勝負に押されかけるティ・フォンが背部のユニットから紫電を発生させ魔神の胴体を狙い放つ。

 

 その紫電が直撃する寸前に魔神はその合体を一時的に解除、分離することで回避をし、三方向からティ・フォンを取り囲みレーザーで攻撃、爆煙が上がる。

 

「フン! 何が厄災の星か! ゲート・ガーディアンの前において全ては無力! このままダーク・ガーディアンでトドメだ!」

 

 闇の守護神-ダーク・ガーディアン ATK 7600

 

 闇の守護神は命じられるままオレの眼前に近づき、その手に持つ斧を構え振り下ろす。

 勝利を確信したその時、攻撃は巨大な黒い鍵爪に食い止められた。

 

「なっ、何故そのモンスターが!?」

 

 ダーク・ガーディアンの前に佇むのは合体魔神の攻撃を受けたティ・フォン。

 その周辺には半透明の障壁が浮遊している。

 

「合体魔神の攻撃時に罠カード《和睦の使者》を発動していた。このターンオレのモンスターは戦闘破壊されず、ダメージは0となる」

「グッ、小癪な……! だが、そのモンスターには消えて貰う! ダーク・ガーディアン攻撃時に墓地のシャドウ・グールを除外し効果発動! ティ・フォンを破壊する!」

 

 攻撃を食い止めるティ・フォンの背後から影と共にシャドウ・グールが現れティ・フォンの内部に侵入。

 内側から食い破られ赤い液体が吹き出し半壊する。

 

「ダーク・ショック・ウェーブ!」

 

 掴まれた斧を再び振り下ろし、シャドウ・グールごと袈裟斬りにし、爆散。

 遂に厄災の星は死をもって滅される。

 

「ようやくくたばったわ! カードを1枚セットしターンエンド!」

 

 確かにここまで良くやってくれたと言える。

 感謝するぞ小波、良い『囮』だった。

 しかし反省点もある。やはりカウンター罠でバトルを強制終了させる《攻撃の無力化》の方がよかったか。

 

「我ら2人に良くやったと言えるが、この戦力差は絶対的! 次のターンで決めてしまえ兄者!」

 

「……」

(攻めきれない……間違いなく有利なのは我らのハズだが、後一歩という所で奴のペースのまま進行している。

 それにこの謎のプレッシャー……この威圧感は一体……?)

 

「兄者?」

「あ、ああ。任せろ、次で確実に終わらせてやろう!」

「では、オレのターン」

 

 なんとか相手のターンを凌いだ。

 しかしここでなんとかしなければいよいよ終わりといったところ。

 負ければ退学のこのデュエル。2枚のドローカードに勝負をかける。

 

「魔鐘の効果で2枚ドロー」

 

 デッキからカードを引き抜き、ゆっくりと確認する。

 

「2枚目の《強欲で貪欲な壺》を発動。オレのデッキから10枚裏側で除外し2枚ドローする」

 

 これで合計21枚が除外された。

 ダ・イーザがいれば攻撃力が8400にまでアップしたがオレのデッキにあのカードは1枚しか差していない。

 

「この瞬間! 速攻魔法《マジックカード「死者蘇生」》を発動! 再利用されては厄介な貴様のティ・フォンをこちらの場に特殊召喚する!」

 

 おっと、それは許す訳には行かないな。

 

「手札から罠カード《霊王の波動(ドミナス・インパルス)》発動。相手の特殊召喚を含む効果を無効にし、破壊する」

「手札から罠だと!?」

「ただし手札から使用するとオレはこのデュエル中、光地風のモンスター効果の発動が禁じられる」

 

 発動する効果のモンスターを使わなければ良いだけだがな。

 相手の魔法を打ち消し、2枚のドローを行う。

 

「……カードを1枚セットし、魔法カード《命削りの宝札》を発動。オレの手札は0なので3枚ドローし、ターン終了時に手札を全て捨てる」

 

 更にこのターン相手は全てダメージが0となるデメリットもある……がそんなことは最早関係ない。

 

「更にカードを3枚伏せてターン終了」

「私のターン! ドロー!」

 

 現在のオレの盤面は伏せカードが5枚、モンスターゾーンががら空きの状態でターンを渡す。

 

「なるほど、罠で時間稼ぎか。だが手札から《七星の宝刀》を発動! 手札のレベル7のヒューガを除外し2枚ドロー!」

 

 あちらもドローソースを引いたか。

 最悪なケースは伏せカードの全体除去等のカードか魔法・罠カードを妨害するカードを引かれた場合。

 

「残念だったな! 私が引いたカードは《ハーピィの羽箒》!」

 

 嫌な引きの良さだな……

 このままではオレの伏せカードは全て破壊されてしまうが、そのカードなら対策は済んでいる。

 

「リバースカード《抹殺の指名者》発動。オレのデッキの《ハーピィの羽箒》を除外することで同名カードを無効にする」

 

 鎧を纏った騎士のような人物が相手のカードを剣で切り裂き、その効果を打ち消す。

 

「チィ、ならばこれならどうだ! 《ラビリンス・ウォール・シャドウ》の効果で水魔神-スーガを出現! そして手札から迷宮の重魔戦車を通常召喚!」

 

 迷宮の重魔戦車 ATK 2400

 

「迷宮の重魔戦車の効果発動! 手札・デッキ及び除外状態の三魔神1体を永続魔法として出現させる! この効果により除外されているヒューガを設置!」

 

 場に2体の魔神が揃った。

 間違いなく合体するであろうこのタイミングで伏せカードを起動させる。

 

「ヒューガの設置後にリバースカード《戦線復帰》発動。墓地からモンスターを守備表示で特殊召喚」

「このタイミングで蘇生カード……ということは壁としてロックモンスターを出すつもりか!」

「墓地からインスペクト・ボーダーを守備表示で特殊召喚」

 

 インスペクト・ボーダー DEF 2000

 

「ふ、やはりそのモンスター。重魔戦車の効果の後にそいつを出した判断は誉めてやろう……だが!」

 

 永続魔法のヒューガとスーガが動き出す。

 

「既に必要な魔神は揃った! 場のヒューガとスーガを除外し、出でよ! 風水魔神-ゲート・ガーディアン!」

 

 風水魔神-ゲート・ガーディアン ATK 2450

 

 今度は風と水の2体合体のゲート・ガーディアン。

 よくもまあ色々と種類を揃えるものだ。

 

「風水魔神の効果は貴様の魔法・罠カードを2回まで無効にできる! 更に我らのモンスター全ての攻撃力は貴様のモンスターの守備を上回っている! ロックの意味もこのバトルまでだ!」

 

 バトルフェイズ開始と共に全てのゲート・ガーディアンが一斉に襲い掛かってくる。

 ならば、このフェイズで決着を着けるとしよう。

 

「バトル開始時、罠カード《大捕り物》発動。対象とした相手のモンスター1体のコントロールを奪う」

 

 オレが対象としたのはダーク・ガーディアン。

 

「効かぬわ! 合体魔神の効果発動! 対象を取るそのカードを無効にし破壊する!」

「「リフレクション・ストーム・バリケイド!」」

 

 発動したカードを粉砕し、尚も突き進む魔神達。

 

 強固な耐性、圧倒的な攻撃力

 そして何よりも見事な連携

 完璧とも言える二人の戦術に思わず口から言葉が零れる。

 

 

「なんだ、最も愚かな手を打ったな」

 

 

 2つ目の伏せカードを開く。

 

「罠カード《恐撃》を発動。墓地のモンスター2体を除外しダーク・ガーディアンを対象としてその攻撃力を0にする」

 

 墓地のティ・フォンとライオウを除外し、ダーク・ガーディアンを無力化させる。

 

 闇の守護神-ダーク・ガーディアン ATK 7600→0

 

「ぬぅっ、だがまだ合体魔神がいる! 風水魔神で壁を潰し合体魔神の攻撃で貴様は終わりだ!」

 

 違うな。

 この時点でこちらの勝利は確定している。

 

 オレは3つ目のカード、最後の罠を発動させる。

 

「罠カード《破壊輪》を発動」

 

 オレの発動したカードに迷宮兄弟は嘲笑を表す。

 

「血迷ったか! 今更《破壊輪》など!」

「そのカードの効果は相手ライフ以下のモンスターを破壊してその攻撃力分のダメージを互いに受ける効果! どうあがいてもそのカードで我らを倒すことは不可能! 苦し紛れの一手よ!」

 

 二人の台詞を無視して処理を進める。

 

「オレが対象にするのは、攻撃力0となったダーク・ガーディアン」

 

 ダーク・ガーディアンに破壊輪が設置されカウントダウンのように断続音が鳴り響く。

 

「攻撃力0のダーク・ガーディアンにだと……?」

「……っ! いかん! 風水魔神の効果でその《破壊輪》を無効にする!」

 

 迷宮・兄の方は気づいたようだが、既に手遅れだ。

 

「インスペクト・ボーダーの適用下により、そちらの発動可能回数は1度だけ。合体魔神の効果を使用したことによりそれは不可能だ」

「……! ま、まさか……貴様の狙いは……!」

 

 断続音が速まり、赤熱化。

 衝撃に備え防御の姿勢をとる。

 

「貴様の狙いはァァァ!!」

 

 ──起爆。

 

 閃光に遅れて衝撃と音が響く。

 

《破壊輪》によってダーク・ガーディアンを中心とした大爆発はプレイヤーにまで及び

 そしてその元々の攻撃力分『3800ポイント』のライフを削る。

 

 綾小路清隆 LP 4000→200

 

 迷宮兄弟 LP 3300→0

 

 ライフが尽き倒れ伏す相手を見下ろす。

 この景色、この感覚。

 ホワイトルームに居た頃を思い出す。

 

 

 ──優秀な駒(エース)にこだわる必要はない。

 ──勝つ手段を選ぶ必要もない。

 

 ──最後にオレが勝っていれば、それで良い。

 

 

 勝敗が決した事で奴が踵を返す。

 

「……たった1ヶ月の経験でこの二人に勝つか。やはりお前の居場所はここではない」

 

 そう言い捨て、奴は振り返ることなく歩いて行った。

 

 

「……行ったか?」

「ああ、間違いない」

 

 ムクリと立ち上がりこちらに近づく迷宮兄弟。

 

「まさか我らを一人で打ち負かすとは。己の未熟さを思い知らされた」

「ウム、まだまだ精進が足らんということだな。所で我らを雇ったあの男……話を聞く限りキミの血族か何かかね?」

 

 急にこちらに話しかける二人。

 とりあえず無言で頷いておく。

 

「フム……そうか。ならば先に失礼を詫びておく」

 

 そう言って一呼吸置いた後、態度を一変させる。

 

「「気に入らんッッ!!」」

 

 唐突な大声に耳がキーンとつんざく。

 

「なんなのだあの男は! デュエルを紙キレ遊びなどと言いおって!」

「あの態度も気に喰わん! そうは思わんかねキミも!」

 

 濃い顔二つがズイッとオレの目の前に迫る。

 どうやら雇い主に少々思うところがあったようだ。

 

 あっ、額の迷宮の文字って掘ってあるんですね……。

 

「……もしかして、わざと手を抜いたとか?」

 

 オレの言葉に二人は目を合わせ、同時に大笑いを響かせる。

 

「フハハハっ! そんな訳はない! 我々は受けた仕事に手は抜かん!」

「全力を尽くし、その我々にキミは勝った。それだけだ!」

「しかしキミは筋が良い! アカデミア生徒とはいえ我々に勝利するとは!」

「将来は我々と共に迷宮"路"三兄弟としてプロの道に進まんかね!」

 

 オレは自身の丸剃りの額に路の文字が掘られた姿を思い浮かべる。

 ……うん、ないな。

 

「近頃はネットで三魔神を使っているのになんで二人兄弟なの? などと言われる始末!」

「だが君が入れば無問題!」

 

 再びズイズイと迫り来る二人。

 まずい、圧に押されて本当に将来を約束されてしまいそうだ。

 仕方ない、この手は使いたくなかったが……。

 

「ありがたいんですが、オレよりも紹介したい生徒がいます」

「「なんと!」」

「それは何と言う生徒だね!?」

「ええ、葛城という生徒なんですが」

 

 すまんな葛城。お前ならきっと上手くやっていける。

 

 




綾小路清隆
デッキ メタビート

インチキ脱法召喚
ルール介入しまくり
ガチガチのロック

まるでラスボスみたいだぁ
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