ようこそデュエルアカデミア   作:るーるーる

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問題文は問題ないはずだGOwayGOway


人間は取り引きをする唯一の動物である。カードを交換する犬はいない3

 

 退学と迷宮兄弟二人のスカウトを回避し地上へと戻る。

 

 外はそろそろ日が暮れるという頃合い

 遅くまで部活に勤しむ者も帰り支度を始める時間だ。

 下駄箱から靴を履き替え寮への帰路を辿っているとテニスコートのベンチから声がかかる。

 

「終わったか?」

「小波か……ああ、なんとかなった」

 

 なんでテニス部に混じっていたんだろう。

 そろそろこいつの神出鬼没さには慣れてきた。

 

「勉強会はどうだ?」

「堀北が奮闘しているが、正直間に合わなさそうだ。流石に時間が足りない。池達のやる気もそろそろ限界だ」

「そうか……」

 

 帰り道を並んで歩き、前から気になっていた事を質問する。

 

「小波、お前はこの学校で目標とか、卒業した将来の目標とか……なにかやりたいことなんかはあるか?」

「どうした急に……」

 

 そうだな、と思案を巡らせ考え込む。

 そうして出した答えは

 

「ないな」

 

 ごく短く、簡潔な答えが返ってくる。

 

「前に似たようなこと言われたことあるんだ。お前はデュエルができたらそれで良いと思っているだけの人間だって」

 

 見返すために考えてはいるんだが、今の所何も思い付かない。

 そう言って帽子の鍔を持って笑う。

 

 高校一年生らしい、と思える答え。

 誰しもがドラマチックな何かを持っている訳ではなく、

 多くの人間はなんとなく学校を卒業して、なんとなく就職して。

 そうしていつか、歳を取って死んでいくのだろう。

 

 だからこそ小波、お前に思う。

 理由なき強さ程、危ういものは無いぞ。

 

 

 

 

 そうして絶望的な状況で迎えた試験。

 一般科目の五教科をこなし、最後にデュエル筆記試験を行う。

 

 問1.守備力600の効果モンスターを3つ答えよ

 

 問2.サイキック族・光属性・レベル2以下のモンスターを3つ答えよ

 

 問3.効果テキストに700と書かれたレベル5以上のモンスターを3つ答えよ

 

 序盤の問題はステータスに関した問題が出題されている。

 難なく全てを解答し、次の問題に移る。

 

 問6.戦闘破壊した相手の『キラートマト』が墓地で効果を発動した場合、以下の中から発動できるカードを全て答えよ

 

 1.灰流うらら

 2.墓穴の指名者

 3.神の通告

 4.どれも発動できない

 

 問7.チェーン1:セットされている《リビングデッドの呼び声》を対象に相手が《サイクロン》を発動。

 チェーン2:墓地の『灼熱ゾンビ』を対象に《リビングデッドの呼び声》を発動。

 この状況でチェーン処理が行われる場合、正しい処理は以下の内どれか答えよ

 

 1.『灼熱ゾンビ』が破壊され強制効果が発動し1枚ドローできる

 2.『灼熱ゾンビ』が破壊され効果はタイミングを逃し発動しない

 3.墓地からの特殊召喚は行われず、効果は無効となる

 

 問8.相手が《融合》を使用して融合召喚をした場合、それを無効にできるカードを全て答えよ

 

 1.神の宣告

 2.神の警告

 3.昇天の黒角笛

 4.どれも無効にできない

 

 中盤以降はルールに関する問題。

 普段はディスク等の機械に任せている為意外と意識していないルールが多い。

 これらも全て答えようかと思ったが、下手に目立たないよう調整の為に幾つかを誤答しておく。

 

 最後の問題は……やはり詰めデュエルか。

 

 詰めデュエルとはあるデュエルの局面から、そのターン終了時までにデュエルの勝利条件を満たすことを目的とする、一人用プレイのこと。

 この問題は相手のLPを0にするのが勝利条件。

 

 チェスプロブレムのように通常では見られない盤面が展開され、場のカードの枚数が多ければ多いほど効果が複雑に絡み合い難問と化す問題。

 こういう事もできるゲームなのか……試験が終わったら問題集でも探してみるか。

 

 攻略手順を書き込み、試験終了を待つ。

 

 

 

 こうして全ての筆記試験を終え数日後

 皆が緊張の面持ちになって結果を待つ中、先生が点数表を黒板に張り出す。

 

 それに記されたオレ達Dクラスの点数、そこには

 ほぼ全員が高得点を獲得していた。

 

 

「ィヤッタァァァ―ッッ!!」

「櫛田ちゃんのお陰だよ!」

「今回ばかりは助かったぜ……」

 

 櫛田へと感謝を伝えるクラスの人間達。

 

「そんな、私は別に……」

 

 オレと堀北はその様子を遠巻きに見ていた。

 

「ああいうのは櫛田が適任だ」

「嫌味ね」

「生徒会長に感謝だな」

 

 この手を思い付いたのは食堂で遊城と生徒会長がデュエルしたあの日、試験範囲の確認を堀北に促した時の会話からだった。

 

「ノートを見ただけで下級生の試験範囲のズレに気づいたのは、毎年同じ問題を出しているからだと予測できる。それなら、上級生から過去問を貰えば高得点を出すのは簡単だ」

 

 真面目な生徒会長なら1年の範囲も把握していただけの可能性もあったが結果的には予想通り。

 櫛田に協力して貰い上級生から買い取った内容そのままだった。

 あの時の会話からして生徒会長はオレ達にかなりのヒントを出していた訳だ。

 妹をブラコンだと思っていたが、兄の方も大概だったな。

 

「正直感心している。お前達がこんな高得点を取れるとは思っていなかったぞ」

 

 お前達の頑張りは認めよう、と赤ペンを取り出し

 ボードに張り出される点数表に線を引く。

 

「だが、お前は赤点だ須藤」

 

 須藤 健 39

 

 試験前日、須藤は英語の過去問を覚える途中で寝落ちをし、試験ギリギリに急いで過去問を詰め込んでいた。

 堀北もなんとか限界までフォローしていたが、焦りもあったのか赤点のラインを越えてしまっていた。

 

「なっ……ふざけんな! なんで俺が赤なんだよ!」

「今回の英語の中間テストの平均点数は79.6、それを2で割ると39.8、小数点以下は四捨五入され赤点は40点未満となる」

「……40点……」

「短い間だったが、ご苦労だったな。放課後に退学届を出して貰うことになる」

「俺が……退学……?」

「そんな、救済措置はないんですか!?」

 

 平田が立ち上がり先生に食い下がる。

 

「赤点を取ればそこまでだ」

「どうにかならないんですか? 須藤くんがこのまま退学なんて……納得できません」

「ルールはルールだ、諦めろ」

 

 平田に続き櫛田も抗議するが先生に一蹴される。

 

「これでホームルームは終わる。須藤、放課後職員室で待っている」

 

 そう言って先生が教室を出ようとした時。

 

「あー、先生。ちょっとタンマ」

「……なんだ、お前も何か言いたいのか?」

 

 手を上げたのは遊城だった。

 

「先生、確か入学した日に言ってたよな、この学校でポイントで買えないものはないって」

 

 そうしてポケットから端末を取り出し、プライベートポイントを表示させる。

 

「須藤の英語の点数、1点売ってくれよ」

 

 静まり返る教室で数刻の間を置いてから先生の笑い声が響く。

 

「面白い事を言うなお前は。まさか点数を売ってくれと言い出すとは」

 

 手をかけた扉から遊城に向き直る先生。

 

「ルールはルールって先生が言ったんだ。もちろん買えるよな?」

「遊城、お前……」

 

 絶望に染まっていた須藤が遊城を見る。

 

「なるほど、確かにそういう考え方も出来なくはない。だが、お前の手持ちのポイントで買える金額とは限らんぞ」

 

 教卓に戻り机を軽く叩く。

 

「そうだな、特別に10万ポイント払えば売ってやっても良い」

 

 10万……入学した時点でのオレ達一人一人に支給されるポイント。

 それを0ポイントのオレ達Dクラスの生徒に要求するとは先生も結構な意地悪を言う。

 

「そりゃ困ったな、今の俺のポイントは2000ぽっちだぜ」

「話にならんな。この話はここまでだ」

「待ってください!」

 

 介入するはクラスのヒーロー平田。

 

「僕も出します! クラスの仲間の退学を見過ごすわけにはいきません!」

「私も! このままお別れなんて絶対に嫌だから!」

 

 平田に続き櫛田も参加する。

 クラスの人気者二人が立ち上がる中、オレの隣人も静かに手を上げる。

 

「私も出します」

「堀北まで……」

「退学者が出たクラスにどんなペナルティが課せられるかわからない。彼を残すメリットの方が多いと判断しました」

 

 相変わらずの憎まれ口を叩く。

 しかして、遊城の発言でここまでの人間が動いた。

 あいつの言動には人を動かす何かが宿っているのだろう。

 

「……ふっ、良いだろう。須藤の1点を売ってやる」

「ほ、本当かよ先生!」

「10万で売ると言ったからな。仕方ない」

 

 その言葉にクラスの人間達は沸き立つ。

 

「マジかよ、この学校って点数もポイントで買えちゃったりすんのか……!」

「じゃ、じゃあこれからも勉強をしなくてもポイントで点数を買えば……」

「バカ! 1点10万だぞ! そんなにホイホイ出せるかよ!」

「その通りよ」

 

 堀北の一声に騒いでいた池と山内、そしてその他大勢が静かになる。

 

「須藤君、貴方は今ここで私達に貴重な10万ポイント分の借りを作った。貴方にはその分……いいえ、それ以上の貢献をこのクラスに約束して貰うわ」

 

 Aクラスを目指す為に。

 

 本来平田達二人に任せておけば良かっただろうにわざわざポイントを出した理由、それは須藤に貸しを作っておいてコントロールしやすくするため。

 須藤も退学から救われておいて無下にできる訳もない。

 

 そうして一方的な取り引きを突きつける堀北に須藤はその場で頷くしかなかった。

 

「Aクラス……か。学年史上Dクラスが上のクラスに上がったことは一度たりともない。それでも足掻くつもりか?」

「ええ、死に物狂いになってでも私は上のクラスに上がります」

「学校から見放された不良品のお前達がどうやって上を目指す?」

 

 堀北は一呼吸置いて、席に座っている遊城を一瞬見る。

 

「……お言葉ですが『どんなモンスターもたった1枚のカードで切り札に変えられる』ように、ほんの少しの変化を与えるだけで不良品は良品に変わる……私はこのクラスにそう学びました」

 

 その言葉に愉快そうに笑う茶柱先生。

 

「ふふ、なら楽しみにしようじゃないか。担任として温かく見守らせて貰おう」

 

 

 

 

 

 

 屋上

 

 

「話ってなんですか先生」

 

 須藤の退学を阻止したDクラス。

 ホームルームを終えて皆が須藤に声を掛ける中、オレは先生に屋上へと連行されていた。

 屋上の風に吹かれながら呼び出した当の本人は煙草に火を付け一服する。

 

「麗しい友情だったな」

 

 煙を吐きながら思ってもいないような感想を呟く先生。

 まさかそんなことを伝えに呼んだ訳ではないだろうと相手の出方を待つ。

 

「綾小路、この世の中は平等だと思うか?」

 

 唐突にぶっ飛んだ事を目の前の教師が言い始める。

 なんだなんだ、宗教やら国家転覆なんて言い始めないだろうな。

 

「私なりの見解で言えば、世の中は平等じゃない。少しもな」

「……はあ」

「先日のデュエル、見事だった。まさか2対1……しかもあの迷宮兄弟に勝ってしまうとはな」

「マグレですよ」

「そう隠さなくても良い。私もお前の実力に正直半信半疑だったんだが、あのデュエルを見て確信した」

 

 携帯灰皿で火を消してこちらに向き直る。

 

「綾小路、Aクラスを目指せ」

 

 ……何を言うかと思えば。

 

「急にどうしたんですか先生。堀北の熱意に胸を打たれたんですか」

「あの日来ていた男……お前の父親は依然として息子を退学させろと接触を続けている」

「それはおかしいですね。あのデュエルに勝ったからオレは退学せずに済んだんですし、何よりこの学校は外部からの接触を断っている場所の筈ですから」

「無論、この学校の生徒である限りお前はルールによって守られている……だが問題を起こせば話は別だ」

 

 茶柱先生はオレの手前まで歩を進める。

 その眼は本気の眼だった。

 

「お前の意思は関係ない。私がそうだと判断すればそれが現実となる」

「もしかして、オレを脅しているんですか?」

「これは取り引きだ。お前がAクラスを目指すと言うなら、私はお前を守るために全力でフォローしよう。良い話だとは思わないか?」

「……アンタ、それでも教師か?」

 

 茶柱先生の胸ぐらを掴み上げる。

 だが先生は依然として動じず、目を合わせる。

 

「今ここで決断しろ、Aクラスを目指すか退学するか」

 

 暫くの沈黙、一時限目の予鈴が鳴りオレは先生を掴んでいた手を離した。

 

「後悔することになりますよ。オレを利用しようとしたこと」

「安心しろ。私の人生は既に後悔だらけだ」

 

 バンッ。

 

「ダーンダダーン! ダンダンダン、ダーンダダーン! 」

「……」

「……小波」

「チョリッス、仲が良いようでお二人さん」

 

 屋上の扉を勢いよく開き、謎の音楽を口ずさみながら奴は現れた。

 

「お前はどこにでも現れるな小波。さっきの私の話も聞いていたんだろう?」

「勿論」

「正直な奴だ、それなら仕方ない。お前も綾小路と共にAクラスを目指せ。これを拒否すればお前達二人は纏めて退学処分だ」

「滅茶苦茶言ってるな。脳みその栄養が全部おっぱいに行っちまってんじゃないのか?」

「教師に向かって堂々とセクハラとは良い度胸だ……お前は今からでも退学に……」

 

 通告前に小波は既に動き出していた。

 先生の手首を掴み出入口の扉まで戻っていく。

 

「ちょっと来い」

「お、おい……!」

 

 急に引っ張られて抵抗することもできず連行されていく先生。

 

「ちょっと待て小波、お前何する気だ?」

「少し時間をくれ。1分で終わらせる」

 

 なにそれこわい。

 

 バタン、と扉が閉まり数刻の間。

 

『~~~~ッ!!』

 

 オレが今まで聞いたことのない、悲鳴にも似た声が扉の前から響く。

 何事かと思った次の瞬間に扉は再び開かれた。

 

「待たせたな綾小路、交渉終了だ」

「2秒と経ってないが」

 

 というか先生は? 

 

「ハアッ……ハアッ……」

 

 フラフラと覚束ない足取りで這い出るように出てくる先生。

 息遣いは荒く首筋は汗ばみ、そしてその顔はすっかり赤みを帯びている。

 一体何をしたんだと気になったが、なんとなく聞かない方がいい気がした。

 

「という訳で先生、アンタの言いなりって話は無しって事で良いか?」

「わ、私が……こんな簡単に……」

 

 未だ呆けている茶柱先生の手を握る小波。

 同時に身体全体が痙攣したかのように震える。

 

「~~~~~ッッ!?」

「それで良いよな先生」

 

 声を上げないよう必死に手で口を抑え何度も頷く。

 その潤んだ瞳は目の前の男に怯えきっており、さっきまでの威圧感はとっくに消え去っている。

 不意打ちで力が抜けたのかその場にへたり込む先生。

 

「良かった。大丈夫、出来るだけ上のクラスを目指すように努力するから。な、綾小路」

「お、おう」

 

「それじゃあそろそろ授業が始まるので。あ、肩貸しますか?」

「いらん……! いいからさっさと行け……!」

 

 少しづつ怒気が沸き立っていく先生を後にオレ達はさっさと撤退する。

 

 この日、何故かジャージ姿で授業をする茶柱先生というレアな光景が見られたと語り草になったのはまた別の話。

 

 

 

 

 

 放課後、夜

 

「乾杯~!」

 

 集まったメンバーが紙コップや缶ジュースを掲げる。

 床にはスナック菓子など安価なお菓子が広げられていた。

 

 祝勝会を開こうとの事で何故か自動的にオレの部屋で開くことが決定しており、須藤達三人が騒いでいる。

 

「それにしても遊城のあの一言がなかったら終わってたよな~」

「だよな、ポイントで点を買うなんて普通出てこないって」

「バカと天才は紙一重って奴か?」

 

 軽口を叩く三人に床で小波とテーブルデュエルをしていた遊城が反応する。

 

「何だと、過去問貰ってたのに赤点だったバカ!」

「寝落ちしたんだからしょうがねえだろバカ!」

「おう、俺はバカだ!」

 

 ワッハッハと笑う男達。

 狭いからあんまり騒がないで欲しい。

 

「馬鹿丸出しの会話ね……」

 

 ベッドに腰かけて小説を読んでいた堀北が頭を抱える。

 

 この祝勝会に誘われた時、最初は拒否していたがお礼をしたいと強く要望され渋々了承してこの場にいる。

 

「本当に退学にならないで良かったね、須藤くん」

 

 櫛田がオレに話を振る。

 

「そうだな、堀北のお陰で須藤が助かった」

「ポイント出したのは櫛田ちゃんと平田もだろ?」

「それもそうだが、今回の立役者は堀北だ。堀北は須藤の点数が低くなることを考慮して英語の点数だけ51点に抑えていたんだ」

「……気づいていたの」

 

 その他の教科は全て100点。

 一度は突き放そうとした相手に随分と優しいもんだ。

 

「良かったな須藤。このお陰で何とか平均点を1点下回るだけで済んだ」

「なんで……俺なんかの為に……?」

 

 信じられないといった様子の須藤。

 今まで負の印象しかなかった分、衝撃も大きいのだろう。

 

「私は……私の為に行動しただけよ」

 

 照れ臭そうに答える。こんな時くらい素直になれば良いだろうに。

 

「堀北……」

「美人なのに頼りになるなあ!」

「ま、俺はわかってたけどな」

 

 こうして祝勝会はトラブルなく過ぎていった。

 騒ぐ須藤達を横目に遊城達のデュエルを眺めていると、あるカードが目に付く。

 

「そういえば遊城、そのハネクリボーってなんで入ってるんだ? HEROではないカードは基本的に不必要だと思うが……」

 

 オレの質問に遊城は召喚されたハネクリボーを手に取る。

 

「へへ、何を隠そうこのハネクリボーは入試の日に遊戯さんが俺にくれたラッキーカードなんだ」

「マジかよ遊城、あの武藤遊戯に会ったのか!?」

「ホントかよそれ」

 

 何やら盛り上がっている男達。

 その会話に聞き覚えのある名があった。

 

「その武藤遊戯って人は有名なのか?」

 

 瞬間、場の空気が凍る。

 男達は勿論、櫛田に堀北までもが信じられないという目をオレに向ける。

 

「……貴方、今まで何処で過ごしていたの? 世間知らずなんてレベルじゃないわ」

 

 そんなに? 

 返答に困っていると遊城が肩を叩く。

 

「綾小路……今からお前に遊戯さんの偉大さを教えてやる」

 

 そう言って端末を操作し動画サイトにアクセスする。

 目的の動画を再生しながら備え付けのテレビに共有し大画面に動画が映し出される。

 こんなことできたのか、今度オレも試してみよう。

 

 画面には学生服で首から黄金の立体パズルを吊り下げた男と

 青い上着にボーダーシャツを来た髪の白い長髪の男のデュエルが繰り広げられていた。

 

「10年前のバトルシティの動画だ」

 

 再生と共にこの場の全員がテレビに釘付けになる。

 学生服の男が件の決闘者、武藤遊戯。

 そして長髪の方が対戦相手の獏良 了。

 獏良 了によるロックを駆使してのウィジャ盤での特殊勝利を狙う戦略、そしてそれを武藤遊戯が『神』と呼ばれるカードを引き当てての大逆転勝利を決め動画は終了する。

 

「どうだった綾小路。やっぱ遊戯さんはスゲーよな!」

「そうだな、あの土壇場での逆転は見事だった」

 

 だろ! 

 と興奮気味に話す遊城。『神』と呼ばれるあのモンスターを引き当てたあの場面、確かに奇跡のドローだった。

 

 個人的に参考になったのはオレのデッキの戦術的に罠とロックを駆使する獏良 了の方だったが。

 というかあの驚異的な引きの良さは真似しようとしてできるものではない。

 

 そこからの遊城による熱い武藤遊戯トークが始まった。

 初代デュエルキングとしての話や、活躍の数々。

 そのライバル海馬瀬人が納める街がデッキがなければ住民登録も出来ない街だとか、軌道エレベーターを作ったり宇宙にカードを飛ばしたり……等

 

 先人達の中々にぶっ飛んだ話を聴きながら夜は更けていった。

 

 

 

 散々騒いだ後特に片付けもせず部屋に帰っていった男達。

 残って掃除をしてくれた櫛田と共に部屋を片していく。

 

「悪いな手伝って貰って」

「ううん、こっちこそ部屋を使わせてくれてありがとう」

 

 布巾を濯いで掃除は完了する。

 

「それじゃあ部屋に戻るね、お休み」

「ああ、お休み」

 

 玄関で見送り、ベッドの端に腰を下ろす。

 と、その時1枚のカードが目に止まる。

 誰かの忘れ物だろうかと手に取るとそれは《融合》のカード。

 遊城が置いていったのかと思ったがあいつは今日ベッドに近づいてもいなかった。

 他の面子も確か融合を使うようなデッキではなかった筈……。

 いや、あれからデッキ内容を変更して投入した可能性もあるか。

 今日オレのベッドに座っていたのは堀北と櫛田のみ、候補はあの二人のどちらかとなる。

 

 カードを手に取り部屋を出る。

 もし櫛田だったら急げばまだ間に合うかもしれない。

 靴を履き早歩きで玄関を出ると丁度エレベーターの扉が閉じた直後だった。

 間に合わなかった、と扉の前まで歩いて気づく。

 女子の部屋の階数は上の階数なのにエレベーターは下の階へと向かっている。

 更に驚いたことにエレベーター内部を映す監視カメラの映像には櫛田ともう一人、赤帽子の男も一緒に映っていた。

 

 櫛田と小波が何故一緒に……? 

 良くないと思いつつ興味本位で後を付けてみることにした。

 

 

 臨海公園

 

 

「あ──、ウッザイ」

 

 ガツン、と柵を蹴り上げる。

 

「マジでムカつく。死ねばいいのに、堀北なんか」

 

 暴言を吐きながら暴れる櫛田を木陰で観察する。

 どうやらとんでもない場面に出くわしてしまったらしい。

 

「ウッザい、ホンットウッザイ! ツンデレっぽくしてる所がマジでウザイ! ちょっと可愛いからって調子に乗りすぎ! 最悪最悪最悪っ!」

 

 それをベンチに座って何もせず見守る小波。

 暫くして少し落ち着いたのか櫛田がベンチに戻っていく。

 

「フゥ──……お待たせ、始めようか」

「ん、終わったか。というか堀北が可愛いって所は認めてるんだな」

 

 ハハ、と軽口を叩く小波の指を手に取り、おもいっきり捻る。

 

「冗談でもキモいこと言わないで」

「イダダダダダダゴメンナサイ」

 

 ピロン

 

 間の悪いことに携帯からメッセージの着信音が鳴る。

 夜の時間帯な事もあってかよく響いたそれはオレの存在を知らせるには十分だった。

 

「……誰? そこに誰か居るの?」

 

 捻る手を離しこちらを見る。

 う~ん、隠れていてもやり過ごせなさそうだ。

 平静を装って大人しく歩み出る。

 

「オレだ、綾小路だ。この融合って櫛田の……」

 

 カードを奪い取りこちらに鋭い眼光を向ける。

 

「聞いてた?」

「聞いていないって言ったら信じるか?」

「……それもそうだね」

 

 二人目……と大きく溜め息を吐きながら呟く。

 

「誰かに話したら容赦しないから。あんたに乱暴されそうになったって言いふらしてやる」

「自慢じゃないがオレは事なかれ主義だ。そんな面倒は絶対にゴメン被る」

「私は本気。潰すためなら嘘でも何でもつく。そこに証人もいるし。まさか人との信頼値で私に勝てると思わないよね?」

 

 ベンチで指を抑えて悶絶している小波を指差す。

 そうか……お前も弱みを握られたのか可哀想に。

 

「綾小路くん」

 

 いつもとは違う、冷たく低い声に反射的に向き直る。

 

「私が聞きたいのは一つだけ。今ここで知ったことを誰にも話さないと誓えるかどうか」

 

 ゆっくりと頷く。

 

「……そう、わかった。綾小路くんを信じるよ」

 

 最後までオレを睨みながら櫛田は寮へと帰っていった。

 ひとまずベンチに置いていかれた小波に手を貸して立ち上がらせる。

 

「綾小路、お前って女難の相とかあったりする?」

 

 冗談のつもりで言ったんだろうが

 思い返すとオレの周りの女性は皆何らかの形でオレに攻撃を仕掛けてきている為普通に笑えない。

 取り敢えずここで何をするつもりだったのかとか、どっちが本当の櫛田なのかとか言いたいことが色々あるが今は一つだけ質問する。

 

 なあ、小波。

 

「ツンデレってなんだ?」

「そこなんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「な、何故Dクラスがこんな高得点を取っているノーネ!?」

「不良品は不良品なりにやればできる、という事らしいです」

 

 クロノスは茶柱に詰め寄るが涼しい顔でいなす。

 

「こっそり範囲変更を教えたのではないんでスーノ!?」

「指示通り私は何も……彼らが勝手に気付いた、それだけです」

「そんな馬鹿ーナ……!」

 

 騒がしい部屋に一人の生徒が入室する。

 

「そういうことでしたか」

「ニョッ、せ……生徒会長……」

「この学校はルールは公平にと厳に定められている筈です。教師が個人で意図的に操作するなどあってはならない……違いますか?」

「な、何の事だかわからないノーネ……あっ、急用を思い出したから失礼するノーネ!」

 

 バタバタと大慌てでクロノスは退室する。

 

「……クロノス教諭らしくない愚行ですね」

「入試試験で負けたのが余程気に食わないらしい。暫く不機嫌が続きそうで困ったものだ」

「先生、貴女もだ。二度とこのような真似はしないで貰いたい」

「わかったわかった。そう怖い顔をするな」

 

 

「……所で、茶柱先生」

「ん? どうした生徒会長」

「何故ジャージを着ているのですか?」

「……気にするな」

「しかし、今朝は確かスーツ姿だったはず……」

「私も急用を思い出した。戸締まりは任せる、じゃあな」

 

 不自然な早口で部屋を出ていく。

 残された生徒会長は渋々部屋を片付けをして鍵を閉める。

 

 どうやら、あいつも少しは成長できたらしい。

 

 誰もいない空間で生徒会長は僅かに微笑みながらそう呟いた。

 




ずっとメタビートだとマンネリだなと思ってたら
【アザミナ】って良いなと気付く
種族・属性統一テーマ
魔法・罠を素材とした脱法融合召喚なので余計な素材モンスターをデッキに入れなくて良い
召喚権を使わない
可愛い
アザミナ、お前俺の船に乗れ
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