「どう、美味しい?」
「うん!おいしいよ!ぼく、おかあさんのつくるハンバーグだいすきだから!」
「ふふっ、そっか」
美味しそうにハンバーグを食べる白夜を眺めるあたし。
あたしにとっては、これが一番の幸せだ。
「おかあさんはたべないの?ごはんさめちゃうよ?」
「あっ、うん、そうだね。いただきます」
すると、白夜があたしにとある事を聞いて来た。
「おかあさん?ぼくのおとうさんってどんなひとだったの?」
「えっ?お父さんの事が知りたいの?」
「うん。だってぼくはおとうさんがどんなひとだったのかしらない。だから・・・」
白夜からの思いがけない質問に驚くあたし。
確かに気になるだろう。
白夜は旦那の事を知らない。
何故なら、白夜がまだ赤ん坊の頃だったから。
彼が、あたし達の前からいなくなってしまったのは・・・
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〜5年前〜
「それじゃあ、行ってくるよ」
「うん。行ってらっしゃい、Pっち!」
「おいおい、俺はもう清夏の旦那だぞ。Pっちはやめろよ」
「なんか、その方が呼びやすいし。ずっとPっちって呼んできたから、今更◯◯って呼べないっていうかさ」
あたしは初星学園を卒業後、自分の担当プロデューサーだった人と結婚した。
彼の名前は◯◯。
アイドルである事に自信がなかったあたしの背中を押してくれた、あたしの自慢のPっち、いや旦那だ。
彼はあたしが卒業した後、学園長が経営する100プロでプロデューサーとして仕事をしていた。
「俺も、今は愛する妻と息子を持つ身だからさ、そろそろ言われたいんだよ、◯◯って。それとも、俺はまだまた頼りないかな?」
「ううん、そんな事ないよ!Pっちはあたしにとって恩人なんだから!だから自信持って!」
「うん、ありがとう、清夏」
「そうだ!これから立派なプロデューサーになれたら◯◯って呼んであげるよ!」
「えっ?やっぱ俺って頼りない?」
「違うよ。Pっちはあたしのプロデューサーだった頃から凄かったけど、Pっちの凄さはそこで終わりじゃないっしょ?だから、あたしや白夜がずっと自慢出来るような、立派なプロデューサー兼一家のあるじになってね!」
「そっか・・・なら俺も頑張らないとな。愛する妻や、息子の為に。じゃあ、行ってくるよ清夏。白夜も良い子にしてるんだぞ〜」
「ふふっ、行ってらっしゃい!」
当時赤ん坊だった白夜の頬を軽く指でちょんとする旦那。
あたしは、あの時玄関のドアを開けて仕事場に向かう彼の姿を忘れる事が出来ない。
あの時は元気だった、笑顔で手を振っていた、仕事が終われば、あたしと白夜のいる家まで帰って来てくれる、この時のあたしは、そう思っていた・・・
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〜数時間後〜
「はぁ・・・はぁ・・・Pっち!!」
忘れもしない、あの悲しい出来事が起こったのは旦那が家を出てから数時間後の事だった。
旦那が事故に巻き込まれたと連絡が来たのだ。
あたしと白夜は義両親に連れられ、旦那が運び込まれた病院に直ぐに向かった。
「あなたが、◯◯さんの奥様ですか?」
「はい、そうです!!旦那は、旦那は無事なんですよね!?」
「・・・落ち着いて聞いてください。残念ですが、◯◯さんは先程息を引き取りました」
「......嘘......嘘ですよね?」
目の前が真っ暗になった。
旦那は仕事場へと向かう途中、信号無視をした車に轢かれたらしい。
直ぐに病院に運び込まれたが、その時には意識が無い程の重体であり、病院側も懸命な治療を施してくれたが、もう手遅れだったようだ。
あたしは彼が眠る霊安室に向かい、もう目を覚まさない彼に呼びかけていた。
「Pっち......もう朝だよ......起きて仕事行かなきゃ......さっき約束したじゃん......あたしや白夜が自慢出来るような......立派なプロデューサー兼一家のあるじになってねって......あたし......Pっちならきっとなれるって信じてるよ......だから......戻ってきてよ......あたし達を置いて行かないでよ......◯◯......うっ......うぅ......うわぁぁぁぁぁん!!!!」
あの日程、泣いた日はなかった。
あの日はあたしにとって忘れられない、忘れてはいけない日になった。
こんな形で、Pっちを◯◯と呼ぶ事になったのだから・・・
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「白夜は、お母さんがアイドルだった事は知ってるよね?」
「うん。はつぼしがくえんっていうところにいたって」
「お父さんはね、その初星学園のプロデューサー科って所にいたの」
「ぷろでゅーさーか?」
「うん。プロデューサーっていうのは、アイドルの子が一生懸命頑張れるようにプロデュースするの。まぁ、簡単に言えば、アイドルのヒーローみたいな感じかな!」
「アイドルのヒーロー?おとうさんってヒーローだったの?」
「あたしにとっては、ヒーローみたいな人だったかな。お母さんね、当時アイドルとして頑張って行く事に自信が無かったんだ。だけど、お父さんはそんなあたしの為に一生懸命になってくれて、あたしを一番星にしてくれたんだ。あの時お父さんが背中を押してくれなかったら、今のあたしは無いと思う。だから、お父さんはあたしのヒーローなんだよ」
◯◯があたしのヒーロー。
それは紛れもない事実だ。
彼がいなければ、あたしは確実に腐っていた。
過去のトラウマを引きずって、授業やレッスンもサボるようなアイドルだったから。
「おとうさんはヒーローなんだ!ねぇ、おかあさん?ぼくも、プロデューサーっていうおしごとができるかな?」
「えっ?白夜はお父さんみたいにプロデューサーになりたいの?」
「うん!だっておとうさんはおかあさんをたすけたヒーローなんでしょ?ぼくもおとうさんみたいなヒーローになりたい!だからぼくも、プロデューサーになりたいな!」
◯◯のようなプロデューサーになりたいという白夜。
その言葉に、あたしは思わず笑みがこぼれた。
「白夜ならきっとなれるよ、立派なプロデューサーに。もしかしたらお父さんを超えちゃうかもね!お父さんもそれ聞いたら喜ぶだろうなぁ・・・そうだ、明日はあたしも仕事が休みだし、白夜も幼稚園がお休みだから行こっか!お父さんがいる所に」
「うん!」
いつからこんなに立派な事を言うようになったのだろう。
あたしもしっかりしなきゃ!!
あたしは明日、白夜を連れてあの場所に行こう。
◯◯が眠るあの場所へ・・・