「Pっち、会いに来たよ」
あたしは白夜と共にとある場所に来た。
此処は墓地。
此処に、◯◯が眠っている。
あたしと白夜は、彼の墓の前で手を合わせる。
「おとうさん、ぼく、おとうさんみたいになれるかな?」
「白夜・・・」
すると、とある人物があたし達に話しかけて来た。
「・・・ああ、やっぱり此処にいたんだね」
「リーリヤ?」
「あっ、リーリヤせんせいだ!」
あたし達に話しかけて来たこの子は葛城リーリヤ。
あたしと同じ初星学園の元生徒で、初星学園に入学する前からの親友である。
卒業後は彼女もアイドルは続けず、今は白夜が通う幼稚園の先生をしている。
「家を訪ねたんだけど、いなかったから・・・」
「ごめん。まさか訪ねてくるとは思ってなかったからさ」
「ううん、いいよ・・・多分此処だと思ったから。だって今日は、旦那さんの命日でしょ?」
そう、白夜と一緒に墓参りに来た理由。
それは今日は◯◯の命日なのだ。
あの日からもう5年が経つが、あの日彼はあたし達の前から突然いなくなってしまった。
「清夏ちゃん、旦那さんのお墓に、わたしも手を合わさせてもらっていいかな?」
「勿論!Pっちも喜ぶよ。リーリヤがお墓参りに来てくれたって知ったらさ」
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「へぇー、白夜くん、将来の夢はプロデューサーさんなんだ・・・」
「うん。あたしも昨日知ったんだけどね」
あたしと白夜、リーリヤは◯◯の墓参りの後公園を訪れていた。
白夜が遊具等で遊んでいる中、あたしとリーリヤは白夜が昨日言った事で盛り上がっていた。
「でも・・・旦那さんは清夏ちゃんにとっては本当にヒーローだったと思うよ」
「えっ?」
「だって、わたしがどんなに頑張っても清夏ちゃんには敵わなかったし・・・それに清夏ちゃんは一番星になった凄いアイドルだから・・・そうなれたのも、当時清夏ちゃんのプロデューサーだった旦那さんのおかげだって、清夏ちゃん言ってたから」
「あたし、そんな事言ってたっけ?」
「うん!清夏ちゃんと旦那さんはあの頃から仲良しだったよ・・・わたし、そんな清夏ちゃんが羨ましかった。わたしは、プロデューサーさんに恵まれなかったから・・・」
「リーリヤ・・・」
リーリヤはプロデューサーに恵まれなかった。
だけどこの話はあたしが語る事じゃないのは分かっている。
きっといつか違う話で語られる事だろう・・・
あたしは話を変える事にした。
「リーリヤ、白夜は、幼稚園でいい子にしてる?」
「えっ?」
「いや、母親としては息子が幼稚園でどうしてるのか気になるっしょ?白夜は幼稚園での事をあまりあたしに話してくれないからさ」
「・・・・・・」
「リーリヤ?どした?」
「清夏ちゃん・・・これは言うべき事なのかどうか分からないんだけど・・・」
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その夜、あたしはリーリヤに告げられた事について考えていた。
白夜はそんなあたしを見て不思議そうな顔をしていた。
「どうしたの、おかあさん?」
「えっ?あ、う、うん、何でもないよ」
「さっきからおかあさん、ずっとなにかかんがえてるみたいだから。おなかいたいの?」
「い、いや、そんな事ないよ・・・ねぇ、白夜?」
「なに?」
「白夜は、お父さんがいなくて寂しい?」
あたしが白夜にこんな事を訊ねた理由、それはリーリヤから告げられた事だ。
リーリヤ曰く、白夜はクラスの子供達からいじめられているそうだ。
原因は白夜が片親である事、そしてあたしがまだ若い事等をその子達の親が悪く言っている事だった。
今の時代でもこうなんだと痛感した。
そのような事情を抱えた家庭なんて、星の数程あるはずなのに・・・
「おとうさんにはあいたいよ。だけどいまはおかあさんがいるし、ぼくはぜんぜんさみしくないよ」
白夜は優しい子だ。
どんなに辛くても気丈に振る舞う。
でも、母親であるあたしとしてはまだ5歳の息子にそんな気は使わせたくなかった。
「素直に言っていいんだよ?白夜が新しいお父さんが欲しいなら、お母さんも一生懸命探すから」
すると、白夜があたしの顔を見て言った。
その表情は明らかに怒っていた。
「どうしてそんなこというの!?ぼくのおとうさんはひとりだけだよ!!あたらしいおとうさんなんていらないし!!おかあさんは、おとうさんのこときらいになっちゃったの!?」
「いや、そうじゃないよ!お母さんは今でもお父さんが大好きだよ!だけど、白夜が寂しいなら、お母さんも再婚を考えようって思っただけ。お父さんも分かってくれるだろうから」
「・・・もういい!!」
「白夜!!」
怒った白夜は寝室へと走って行ってしまった。
あたしが軽率だった。
5歳の子が理解できる事じゃない。
白夜にとって、自分のお父さんは◯◯しかいない。
代わりになれる父親なんていないのだ。
だけど、◯◯はもういない。
その事実を変える事は出来ないのだ。
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「白夜?」
あたしは、寝室に走って行ってしまった白夜に呼びかけるが返事が無い。
寝てしまったのだろうか?
寝室を開けて確認すると、
「なんだ、寝ちゃったか」
あたしは寝ている白夜の頭を優しく撫でた。
すると、
「・・・おかあさん・・・おとうさん・・・」
白夜が寝言を言った。
きっと夢の中であたしと◯◯がいるのだろう。
「白夜......ごめんね......」
あたしは眠る白夜の頭を優しく撫でた後、リビングに飾ってある写真を手に取り見ていた。
それはあたしと赤ん坊の白夜、そして◯◯の3人で撮った写真だ。
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〜6年前〜
「どうだ?良い家だろ?」
「うん!あたしの希望も叶えてくれているし、Pっちさすがじゃん!」
「此処から、俺達3人の生活が始まるんだ」
「うん・・・そうだね」
「大丈夫か?無理はするなよ」
「大丈夫だよ。あたし達の大切な宝だから。元気な赤ちゃんが産まれて欲しいから」
「そ、そうか?なら良いんだけど」
「もう、お父さんは落ち着きがない人でちゅね。ほら、この子も言ってるよ」
「ははは、そうだな。お父さんもしっかりしないとな」
「そうだよ・・・あれ?もしかして・・・」
「どうした、清夏?」
「Pっち・・・救急車呼んでくれる?・・・陣痛・・・始まったみたい」
「何!?ほら言わんこっちゃない!!早く救急車呼ばなきゃ!!」
〜それから暫くして〜
「オギャー!!オギャー!!」
「おめでとうございます!元気な男の子ですよ!」
「やっと会えたね......あたしの大事な赤ちゃん」
「清夏......」
「Pっち......」
「よく......よく頑張ったな......俺達の大事な宝だ」
「......うん!」
「男の子か......どんな子に育つのかな?......俺......尊敬されるような父親になれるかな?」
「Pっちならなれるよ......立派なお父さんに」
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「Pっち、あたしこのままでいいのかな?......あたしって、白夜にとって立派な母親なのかな?.......こんな時に......Pっちが居てくれたら心強いのに......Pっち......どうしていなくなっちゃったの?......あたし、寂しいよ......Pっちに会いたいよ......あの時だってそうだよ......Pっちがいたから......Pっちがあたしのプロデューサーだったから......少しだけアイドルがんばろーかなって思ったんだよ、あたし......Pっち、戻って来てよ......うっ......うぅ......」
あたしは彼が映る写真を見ながら泣いていた。
白夜の前では泣かないと決めていた。
だけど、あたしだって◯◯に会えないのは辛い。
5年前に◯◯は天国に行っちゃったけど、今でも思う。
あたしは、彼がいないと何も出来ない。
あたしの心は、彼に会えない寂しさ、そして白夜を今後一人で育てていく事の不安で押し潰されそうになっていた。