とある少女の呪物回収(ノロイアツメ)   作:アヤ・ノア

1 / 36
講談社青い鳥文庫の児童書「呪イアツメ」の二次創作小説を、本日から連載します。
主人公の少女が、町で起こる怪事件を解決します。


第一章 とある死人の魔法人形(リリードール)
0~呪いは実在する


 呪いは単なる都市伝説だと、現代では呼ばれている。

 実際、テラで呪いと称した事件も、そもそもテラは魔法がないため大半はただの悪戯だ。

 しかし、テラと異なる紫の地球、テラースフィアには魔法が隠されているが存在する。

 つまり、呪いが実在するという意味なのだ。

 

 これは、銃を手に仲間と共に呪いと戦った、一人の少女の物語である。

 

「ふわーああ、夏休みでありますね」

 黒髪をショートにした少女が、欠伸をしながら起き上がる。

 彼女の名前は橘希華、テラースフィアのとある高校に通う女子高生だ。

「デッキよし、銃器よし、そして……」

 希華が言う「デッキ」というのはカードゲーム「マジカル&ソーサリア」で使うデッキの事だ。

 マジカル&ソーサリアはアニメ化もした世界中で流行しているカードゲームで、

 橘希華はそのプレイヤーの一人である。

 銃器というのは当然、おもちゃの銃器だが、特殊な改造を施しているため実際に攻撃ができる。

 彼女には呪いを祓う才能がなく、呪力も持っていない。

 それでも希華は、戦うための準備をするのだった。

 

「呪い祓い、準備であります」

 

「ちぃちゃん。ねえ、ちぃちゃん」

「え? 何?」

 返事をしてしまってから、千舞は違和感に気がついた。

 ここは千舞の部屋で、家には今、彼女しかいないはずだ。

 誰も、彼女の名前を呼ぶはずがない。

 ぎし、ぎしと、誰かが階段を上がってくる足音がした。

 誰かがいて、誰かが来る。

 千舞は驚いて、部屋を飛び出した。

 しかし、飛び出した先にあったのは、千舞が知っている廊下ではなかった。

 千舞が見た事もない、西洋風の屋敷だった。

 いつの間にか、千舞はこんなところに来てしまったらしい。

 千舞が立ち尽くしている間にも、足音は少しずつ、千舞に近づいてくる。

 

 千舞は廊下を走り出した。

 だが、走っても走っても、廊下の終わりには辿り着けない。

 千舞は全力で走っているのに、ゆっくりと近づいてくる足音は、今にも千舞に追いつきそうだった。

 恐怖のあまり、千舞は目の前のドアを開けて飛び込む。

 千舞は後ろ手にドアを閉めて、じっと息を潜める。

―コツ……コツ……コツ

 足音は、千舞が飛び込んだ部屋の前で止まった。

 どうやら、ここにいると気づかれているようだ。

「あーそーぼ」

 甲高い、女の子の声だった。

 友人のような優しそうな声だが、千舞は返事をする事ができなかった。

 

―コンコン、コンコン

「あーそーぼ。あーそーぼ」

 千舞に呼びかける声と、ノックの音が、だんだん激しくなってくる。

 

―コンコン、コンコン……ドン、ドン、ドンドンドンドン!

「いるんでしょ? いるんでしょ? いるんでしょ?」

「やめて! あなたとなんて遊ばない!」

 千舞が悲鳴を上げると、急に、辺りが静かになる。

 助かった……と、千舞がほっとした、その時だ。

 

「ヤッパリ、ココニイタ」

 すぐ耳元で女の子の声がして、千舞は自分の失敗に気がついた。

 返事をしてはいけなかったらしい。

「来ないで! どこかに行って!」

 千舞は走り出そうとして、ぐらりと床に倒れた。

 慌てて立ち上がろうとするが、何故か立ち上がれない。

 千舞は自分の足を見て、そして凍りつく。

 

「足が……! わたしの、足が……!」

 千舞の膝から下には、何もなかった。

「ちぃちゃんの足、もらった」

 

―くすくす、くすくす

 

 いくつもの笑い声が、床に倒れたまま立ち上がれない千舞の周りから、一斉に聞こえてくる。

「これでもう、どこにも行けないね」

「いやぁああぁああ!」

 

 千舞は悲鳴を上げて飛び起きた。

 それが、今から二週間前。

 その夢を見た日の朝から、千舞の足は動かなくなっていた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。