とある少女の呪物回収(ノロイアツメ)   作:アヤ・ノア

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~前回までのあらすじ~

千舞は迷路の中に閉じ込められ、化け物に追い詰められる。
彼女は流と希華の助けを求めるが、彼らは千舞がいる事に気づかない。
千舞は化け物から逃げるために走り出すが、化け物は増え続け、彼女を追い詰める。
最終的に千舞は化け物に見つかり、気を失ってしまった。


11~丸呑み

 ざらっとした埃っぽい臭いで、千舞は目を覚ました。

 周りは真っ暗で、何も見えない。

「ええと……わたし、どうしたんだっけ?」

 千舞は確か、化け物に捕まって――。

「――そうだ! あの化け物は……?」

―ガチャ!

「痛い!」

 千舞は立ち上がろうとして、思いっきり頭をぶつけた。

「嘘……? わたし、箱に閉じ込められてる……!?

 リュウ君、希華さん! ねぇ、リュウ君、希華さん、そこにいる!?」

 返事はない。

 こんなところに閉じ込められていたら、流も希華も千舞を見つけられない。

「ここから出なきゃ……」

 千舞は箱を力任せに揺さぶった。

 それでも開かないので、壁を思い切り足で蹴飛ばす。

 バキンと弾ける音がして、箱の壁に小さな穴が開いた。

 何度も何度も箱を蹴飛ばして、やっとの思いで外に出る。

「迷路のどこか……だよね……?」

 あの化け物はもしかすると、

 捕まえた獲物をここに連れてきて、箱に閉じ込めているかもしれない。

 その時だ。

 

「やめろ! 嫌だ! 助けて兄さん! 助けてぇええ!

 男の子の悲鳴が聞こえて、千舞は飛び上がった。

 辺りを見回すとドアが二つ。

 どちらも大きく開いていて、向こう側が見える。

 一つのドアに繋がっていて、ここから逃げられそうだが……。

 千舞は声が聞こえてくる方……部屋の奥へと忍び寄った。

 そっとドアの向こうを覗いてみると、先程の、イモムシの化け物がいた。

 しかし、それだけではなく、人がいる。

 椅子に縛り付けられていて、動けないようだが、化け物が邪魔で、顔はよく見えない。

(どうしよう……あれ、リュウ君じゃないよね?

 リュウ君だとしたら、十狼太さんは? もしかして、食べられちゃった?

 リリー人形が、他のオバケを食べたみたいに、十狼太さんも……?)

 不安に震える事しかできない千舞は、じっと部屋の中を見続ける。

 すると、化け物の体が少し横にずれて、男の子の顔が見えた。

 しかし、男の子には顔がなく、髪の毛もなく、目も、鼻も、耳もなかった。

 マネキンのようにツルッとした頭に、口だけがついている。

 その口を、化け物が、きゅっと指で摘まんで引っ張った。

「オシオキ、オシオキ……うるさいからぁ、オシオキィ」

 化け物はそう言って、さらに男の子の口を引っ張る。

 すると男の子の顔から、ぷつりと口が取れた。

 男の子はもう喋る事もできなくなって、椅子の上で苦しそうにもぞもぞしている。

 イモムシの化け物は、男の子の口をひょいと食べると、

 コツコツ、ズズ……と音を立てて、どこかに行ってしまった。

 千舞はごくりとツバを飲み込む。

 男の子は、千舞と同じ学校の制服を着ていた。

 名札を見ると、射守矢タケミツと書かれていた。

 

(じゃあ、あれがタケミツ君……!? どうしよう、助けなきゃ。

 それとも、リュウ君と希華さんを探して連れてくるべき?

 今のわたしがタケミツ君を助けようとしても、

 あの化け物に見つかったら、また捕まっちゃうだけだし……)

 千舞はじっと様子を見た後、立ち上がった。

 

「……わたしだけじゃ助けられない。先にリュウ君と希華さんを見つけなきゃ……」

 しかし振り向くと、すぐ目の前に、あの化け物が立っていた。

「きゃぁああぁ!」

 化け物が、真っ黒な目で千舞を見下ろして、ニタリと笑った。

 体から何本も伸びている細長い脚が、千舞の体を掴んで、高々と持ち上げる。

 千舞を高く持ち上げたまま、化け物が大きく口を開いた。

 耳まで裂けたその口は、千舞を簡単に丸呑みにできそうだ。

 

助けてリュウ君! 希華さん!

 千舞は声の限りに叫んだ。

 しかし、千舞の声が部屋じゅうにわんわん響くだけで、流と希華の返事はない。

 

「逃げたからぁ、オシオキィ」

 

 化け物がばっと手を離すと、千舞は呆気なく、化け物の口の中に落ちていった。

 化け物の口の中は、生温かく、千舞にとっては非常に息苦しい。

 隠世で死んだら、現世でも死んでしまう。

 しかし、いつまで経っても、千舞は死ななかった。

 千舞は思い切り閉じていた目を開くと、そこには地下室のような窓のない空間が広がっていた。

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