とある少女の呪物回収(ノロイアツメ)   作:アヤ・ノア

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~前回までのあらすじ~

ある日、千舞はオバケ屋敷に閉じ込められそうになる夢を見て、不安になる。
その翌日、寮の出入り口にカラスの死骸が大量に落ちていて、出られなくなる。
これは単なる偶然なのか、それとも千舞の夢が何かを暗示しているのか。
千舞は親友の菊乃や呪いのリリー人形と共に、事件の真相を探ろうとするのだった。


27~オシエテさんのウワサ

「……いただきます」

 青翠学園は全寮制の学校なので、ご飯は全てカフェテリアで食べる事になっている。

 希華はカフェテリアで、サーモンソテー、トマトポタージュ、

 目玉焼き乗せパン、シーザーサラダを食べようと準備した。

 これでも希華は、小食のつもりらしい。

 

「少しは、腹に溜まるのであります」

 シーザーサラダを一口食べて、希華が言う。

「怪事件が多発しているのも、千舞殿のせい?

 いえ、霊は取り憑かない限り、自分から離れられないのがほとんどであります」

 千舞は生贄の血筋なので、多数の霊が彼女を狙っている。

 とはいえ、希華が出会った霊は所謂「地縛霊」が大半で、

 自由に行き来できる霊は、人間の中に入らない限りはまずいない。

 その辺はウイルスとそっくりであるが、ウイルスは意志を持たない分、

 霊の方が幾分かマシだ、と希華は思った。

 トマトポタージュとシーザーサラダを口にした後、希華はサーモンソテーにありついた。

「っくぅ! これぞサーモンであります! これさえあれば生きていられる~、であります!」

 美味しい朝食を食べる事ができて、希華は満足する。

 霊感を持たない彼女が霊退治で活躍できたのも、この性格が理由かもしれない。

 

「……さて、食べ終わったら、準備でありますね」

 朝食をあらかた食べた希華はふと、真剣な表情で空を見る。

 まるで、何かを察知したかのようだった。

 

「ふえぇ……やっと朝ご飯だぁ……!」

 朝食を並べたトレイをテーブルに置いて、菊乃はぐったりと椅子にもたれかかった。

 業者の人がカラスの死骸を片づけて、

 道を消毒してくれたおかげで千舞と希華は何とか登校できたが、

 ホームルームと一時間目の授業は無くなり、食堂に行く時間も遅れたため、千舞は空腹だ。

 千舞のトレイにはトーストと、ベーコンと、目玉焼きとサラダ、

 デザートのヨーグルトが載っている。

 菊乃は白いご飯と、焼き魚と、卵焼きと、おひたしと味噌汁で、

 デザートには缶詰めの桃が添えてある。

「あんなの見た後だと、なーんかご飯の味もいまいちに感じるう」

「うん。雪は見慣れてきたけど、死んだ動物はちょっとやだよね」

 そうは言っても、遅めの朝食はするすると千舞達のお腹に入っていく。

「朝ご飯の時間がずれちゃったから、リュウ君と希華さんに会えるのは放課後かぁ」

「あ、そっか。高等部と男子の中等部は寮も違うもんね。

 じゃあ、リュウ先輩と希華先輩は、カラス事件も知らないんだ」

「一応、写真撮ってメッセージは送っておいた。

 死んだ動物の写真を送るなんて、なんか嫌がらせみたいだけど……」

「しょうがないよ。わたしやちぃには分からない事が、

 リュウ先輩や希華先輩には分かるかもしれないんだし。見てもらった方が絶対いいって。

 霊的なものって、写真に映りやすいって言うし」

「心霊写真みたいにね」

 そもそも、子供の頃に海外に行った流が、今、千舞と同じ学校に通っているのも、

 写真に映っていた「呪い」が原因だ。

 希華も、二人を追いかけて転校した。

 千舞がネットにアップしたリリー人形の写真を見た流が、

 「その人形に呪われてる」と言って、希華と共に海外からわざわざ駆けつけてくれた。

 それ以来、希華と流は、護衛として千舞の傍にいてくれている。

 

「あー! いたいたキクノ!」

 千舞が黄身をこぼさないように、慎重に目玉焼きトーストを食べていると、

 カフェテリアの入り口から陸上クラブの女の子が走り寄ってきた。

「聞いた!? やばいよ! 『オシエテさん』が出たんだって!」

「オシエテさん?」

 菊乃と声が重なって、千舞は菊乃を見た。

「なんか学校の七不思議みたいなのだっけ? 低学年の時にちょっと聞いた事ある気がするけど」

「花子さんとか、そんな感じの奴だけど……出たってどういう事?」

「そのままの意味! あたしの友達が昨日、オシエテさんに会っちゃったんだって!

 本屋さんに行った帰り道に!」

 菊乃の質問に、女の子はぐっと体を乗り出してくる。

「えーっと、あのー……ごめん、そもそもなんだけど……オシエテさんてどんな霊なんだっけ?」

「じゃあ、今から説明してあげるね!」

 女の子は待ってましたとばかりに、オシエテさんについて話し始めた。

 

 オシエテさんっていうのは、問題を出してくる霊なの。

 一人で道を歩いてると、曲がり角の向こうから、声が聞こえてくるんだって。

 でも、角を覗き込んでも、そこには誰もいない。

 問題の内容は、学校の授業で習った事。

 例えば「3×6の答えが何かオシエテくれる?」とか「光合成が何かオシエテくれる?」とか。

 答えられると「ありがとう!」って言って消えていくけど、

 答えられないと「どうしてオシエテくれないの?」って怒り出して舌を取られちゃうんだって!

 これはネットで調べたら出てきたんだけど、

 オシエテさんっていうのは、凄く勉強熱心だった子の霊なんだって。

 お母さんが毎日毎日、その子に問題を出して、答えられないとすごく怒られて……。

 だからオシエテさんは、絶対にお母さんの問題に答えられるようにいつもいつも勉強してたの。

 いつもっていうのは、ご飯食べてる時も、歩いてる時もって事。

 でも、歩きながら勉強なんかしたら、危ないって分かるよね?

 ある日、オシエテさんが教科書を読みながら歩いてたら、

 角を曲がってくる車に気づけなくて撥ねられて死んじゃったんだって。

 でもね、あたしこんなウワサ、全然信じてなかったの。

 こんなの、学校の勉強をさせようとしてる大人が流したウワサじゃないの?

 って思ってたくらいでさ。

 けど、なっちゃんが……あ、なっちゃんて、あたしのクラスメイトね。

 昨日、本屋の帰り道に問題出されたんだって!

 曲がり角の向こうから「水が凍る温度をオシエテくれる?」って!

 なっちゃんが「え? 0度でしょ?」って答えたら、

 それっきりで、お礼は言われなかったみたいなんだけど……。

 角を曲がってみても誰もいないし、

 道でいきなり、知らない子に水が凍る温度を聞くなんておかしいでしょ?

 あれってなんだったのかな?

 って今日話してくれて、それでみんなが「オシエテさんが出たんだ」って!

 あ、待って! まだ続きがあるの! なっちゃんだけじゃなかったの!

 なっちゃんの話だけだったら「やばい! オシエテさん出たんだって!」で

 終わる話なんだけど、なっちゃん以外にもオシエテさんに会った子がいたの。

 昨日だけで、なっちゃん入れて五人も!

 しかも、そのうちの一人はちょっと難しい問題を出されたんだって。

 「今のアメリカ合衆国大統領は誰だかオシエテくれる?」って。

 知らないよそんなの!

 もしあたしがその問題出されてたら、答えられなかった! 絶対に!

 だからね、しばらく一人で遊びに行くのはやめた方がいいと思うの。

 オシエテさんは一人の子を狙うから、誰かと一緒にいれば安心でしょ?

 キクノのクラスの子にも、絶対に教えてあげてね!

 

「じゃあ、あたしのクラスの子にも教えてくるから!」

 女の子は一気に話し終えると、急いで別のグループの方に走っていった。

 千舞と菊乃がポカーンとしていると、一時間目終了のチャイムが鳴り響く。

 彼女達は、一時間目の授業時間を使って朝食を食べていたので、

 二時間目からは通常授業が始まる。

 二人は慌てて残りを食べ終えて、教室に急いだ。

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