とある少女の呪物回収(ノロイアツメ)   作:アヤ・ノア

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~前回までのあらすじ~

御神楽千舞の足は一週間前から動かなくなっていた。
千舞が見つけたリリー人形が呪いの原因であると、希華と彼女の仲間が明らかにする。
すると、リリー人形は千舞を異世界に引き込み、彼女の足を取り戻すために希華達は冒険をする。
その過程で、彼らは自身のコレクションである変身するぬいぐるみを使い、千舞を助ける。
そして、千舞がその人形によって足を取られた場所である西洋風の屋敷に辿り着くのだった。


2~隠世探索

 四人は上から降ってきたはずなのに、見上げると、そこにはちゃんと天井がある。

 左は長い一本の廊下で、壁には窓が並んでいる。

 窓の外は真っ暗だ。

「お、お父さんがいない……。どうしよう。はぐれちゃった……」

「違うのであります!」

「お父さんは、そもそも隠世に来てないんだ」

「どういう事?」

「ここは現世とは違う世界であります」

「ウツシヨって?」

「現世は、自分達、人間の世界の事であります」

「え!? もしかして、わたし死んじゃったの!?」

「いや、ただのダンジョンであります。でも、ここで足を取り戻す必要があります」

 希華が確認すると、千舞の足がなかった。

 まるで壊れた人形のように、千舞の膝から下が消えていた。

 希華によれば、千舞はリリー人形に、この幽世で足を取られたらしい。

 足を取り戻さなければ、命まで取られるという。

「だから自分達が来たのであります」

 希華は、自信満々に銃を持ち上げた。

 

「おーい!」

 ふと、廊下の向こうから声がして、千舞は振り向いた。

 しかし、そこには誰もいない。

「おーい、千舞! どこだー?」

「これ、お父さんの声……」

 隠世にいないはずの、父の声だ。

「おい、返事するな。あれはちぃの父じゃねぇ」

「おーい、おーい」

 千舞を呼ぶ声は続いている。

「近づいてくるな。お嬢ちゃんを探してる」

「嘘、やだ……!」

 千舞は十狼太の首にしがみついた。

「でも、探してるって事は、返事をしなければ大丈夫でありますよ。

 千舞殿、今から誰に声をかけられても相手の姿を確認するまで絶対に返事をしないでください」

「誰に声をかけられても?」

「そうでありますよ。自分の声でも、集堂殿の声でも、親の声でも、友達の声でも。

 返事をしたら、次は足を取られるだけじゃ済まないかもしれないのであります」

 千舞はごくりとツバを飲み込んだ。

「……大丈夫。今度はちゃんと、オレが守るから」

「……え? あ! 思い出した! 集堂リュウ君!

 あの、怖がりで、いつも泣いてて、ひとりぼっちだったリュウ君だ!」

「そうだけど……そうだって認めたくないな……」

「うわぁ! 凄い! 三年ぶりとかじゃない? 海外に引っ越しちゃったんだよね?

 リュウ君、SNS、何にもやってないから心配してたんだ」

 流は、ふ、と微笑む。

「オレは時々、ちぃのインスタ見てたよ」

「え!? コメントしてよぉ!」

「そ、そんな関係だったのであります!? 自分、ついったしかやってないのであります」

 希華は二人の関係を知って驚いた。

「ま、そういう事だ。話を続ける。本当は、もう会う事はないと思ってたんだ。

 でも、人形の写真を上げてただろ?」

「う、うん」

「オレのこの目は、呪いが見えるんだ。

 その人形は、スマホ越しでも分かるくらい、強力な呪いだったから」

 千舞が最後に見たのは、流の泣き顔だ。

 二人で廃墟に忍び込んで、千舞が流を庇ってケガをして、彼はずっと泣いていた。

 流のせいではないのに、彼はずっとそれを気にしていた。

「ねぇ、どうやって足を取り戻すの? リリー人形をやっつけるの?」

 おーい、おーいと千舞を呼ぶ声は、今もずっと聞こえている。

 千舞はそれを掻き消したくて、希華と流と話し続けるために話題を探した。

 

「魂絡繰を調伏するのであります」

 希華が短く言って、流と共に歩き出す。

「要するにモンスターを弱らせて捕まえる、召喚士の常套手段であります」

「リリー人形に、足を返してって、お願いするって事?」

「まあ、そんな感じであります」

「じゃ、希華さん、なんでタマカラクリなんて難しい言い方するの?」

「話せば長くなるのであります。ええと……」

 

 銃士説明中……

 

「と、いう感じであります」

 要約すると、魂絡繰は魂が宿った物体である。

 中には敵対的な魂もいるので、戦士達が止めるのである。

 すると、サクリエルがあちこちをキョロキョロと見渡した。

「ど、どうしました、サクリエル?」

 希華が慌てて銃を構えると……。

 

「つーかまーえた」

 千舞の耳元で、女の子の声が聞こえた。

 ぐいと、千舞は髪を引っ張られ、十狼太の肩から落ちそうになる。

「お嬢ちゃん!」

 十狼太が、肩から落ちる千舞を抱き止めようと腕を伸ばした。

 しかし、十狼太の指が千舞に触った瞬間、

 十狼太の腕全体に罅が入って、バラバラに砕けてしまう。

 まるで、彼の腕が人形になったようだ。

 床に落ちていく千舞の、逆さまの景色に、ドアが見えた。

 先程まで何もなかったはずの、廊下の中央の空間に。

 そのドアから、何十本もの白い手が伸びて、

 千舞の髪や腕や足を掴んで、ドアの中に引きずり込もうと引っ張っている。

「やめて! 放して! 助けて! リュウ君! 希華さん!」

「ちぃ!」

「ソリッド・バレット!」

 ドアに引きずり込まれそうになる千舞に、流が走り寄ってくる。

 その時、希華が銃から放った弾丸が、手の一本に命中し、手は弱って弾け飛ぶ。

 だが、手は再び、千舞を引っ張った。

 千舞の目の前でドアが閉まって、流と希華の叫び声が聞こえた。

「部位が多すぎるのであります……!」

「ちぃ! 何があってもオレと希華の名前を呼び続けろ! 絶対に聞こえるから!

 どこにいても助けに行くから!」

「攻略はするのであります!!」

(うん、待ってる。信じてる)

 心の中でそう叫び返しながら、千舞は気を失った。

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