希華達は隠世と現世が重なった桜里島で、さらわれた千舞を探す。
島には眠らせるガスやマネキン、そして悪霊が溢れていた。
希華達は桜里小学校に潜入し、生け贄の血筋である滝川カナエの悲惨な過去を追体験する。
カナエは人間を憎んでいたが、千舞が友達になろうとしたために力を失って消えてしまう。
復讐を望んでいたピエロマスクの男の子の霊も、希華に撃たれて消える。
希華達は千舞を救出し、人間と霊の関係について考えるのだった。
「それじゃ、行ってくるのであります!」
青翠学園高等部の卒業式が終わり、桜の花びらが舞う中、希華は新しい旅立ちを決意した。
彼女は、ずっと夢見ていた冒険の旅に出る事にしたのだ。
家族や友人に別れを告げ、希華はバックパックを背負って駅へと向かっていった。
そして、千舞に小包が届いたのは、滝川カナエ事件から何ヶ月か経ってからの事だった。
あちこちの心霊絡みの事件を解決していたせいか、いつの間にか初等部では、
「心霊相談なら御神楽千舞にお任せあれ!」のような感じになっていて、
学校中から千舞に相談が来るようになっていた。
千舞も、最初は希華らに相談していたが、
数が増えるごとに自立し、気がつけばほとんど独り立ちという感じになっている。
彼女はもう初等部も六年生で、来年は中学生だ。
「ちぃちゃん、お手紙?」
「うん、えーと……【ギャラリー】から?」
「それって、リュウと希華が入ってる奴でしょ? 魂絡繰を集めてる」
「うん。オバケ退治専門の人達だって」
バリバリと小包封筒を破ると、中にはスマホが入っていた。
電源を入れてみると、すぐにメールの着信がある。
御神楽 千舞。
ようこそ【ギャラリー】へ。
我々はあなたを【ギャラリー】のメンバーとして歓迎する。
魂絡繰・リリー人形と共に、【ギャラリー】からの指令を待て。
「……へ? 何これ」
首を傾げると同時に、スマホがぶるぶる震えた。
「は、はい?」
『ちぃ? よかった、ちゃんと届いたんだな』
「え? リュウ君!!」
電話の相手は流だった。
「このスマホ、何? イタズラ? 【ギャラリー】ってどういう事?」
『そのままの意味だよ。
ちぃの今までの働きが認められて、【ギャラリー】の一員に任命されたんだ。
希華も、後輩ができて喜んでたぞ』
「えー!? ちょっと一方的じゃない!?」
『まぁ、指令を無視したところで、何か罰則があるわけでもないし……
あ、指令をクリアすると給料がもらえるよ。今度、銀行口座作りに行こう』
「あ! ちょっと待って!
じゃあもしかして、わたしはもう、リュウ君達の護衛対象じゃなくなったって事?」
『ああ。これからはオレ達の仕事仲間って事になるな』
「って事はリュウ君はまた海外に行っちゃったりするの……?」
『なんだ、寂しいのか?』
「寂しいよ!」
千舞がはっきり言うと、リュウが電話の向こうで口ごもった。
『うん……オレも寂しい』
長々と黙って、照れ臭そうに言ってくる。
『だから、相談なんだけどさ。
【ギャラリー】に、ちぃの事、パートナーとして申請してもいいかな?』
「パートナーって?」
『同じ指令を、一緒に解決するって事。
パートナーがいるコレクターの方が、危険な指令を割り振られやすいんだけど……』
「いいよ! わたし、なる! リュウ君のパートナー!」
千舞がはっきり答えると、電話に聞き耳を立てていたリリー人形が
「ちぃちゃんって全然迷わないよね」と呆れたように言った。
『じゃあ、その……早速二人で、【ギャラリー】の日本支部まで、
パートナーの申請に行きたいんだけど……今度の土曜日ってヒマ?』
「うん。その日は一日、ずーっとヒマ!」
『じゃあ……用事が終わったら、二人でちょっと遊びに行こうか。希華はお邪魔だしな』
「何だか、デートのお誘いみたいだね」
『一応、デートのお誘いなんだけど。……ごめん、嫌だった?』
「い、嫌じゃない! 嫌じゃないです……!」
「よかった。じゃあ、どこか行きたいところがあったら、決めておいて」
そして、通話が切れた。
千舞は何だかカッカと熱い顔を、ぱたぱたと手で仰ぐ。
「よかったねぇ、ちぃちゃん! どこに連れてってもらおうか!」
「え!?」
「えぇ……!? う、うーん……!」
千舞は、これから流との初デートだ。
赤面した千舞はベッドにダイブして、しばらくの間、ジタバタする。
千舞は何でも迷わず決められるタイプだと思っていたが、
初デートの行き先は、しばらく決められそうにないなと思った。
これは、ある少女が仲間と共に呪いと戦った物語。
少女が後輩を見届けるまでの、物語である――