【祝・追放100回記念】自分を追放した奴らのスキルを全部使えるようになりました! ~プロクセミティ~   作:高見南純平

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第1話

「……ララク、悪いが今日をもって君にはパーティーから脱退してもらう」

 

「……分かっています。残念ですけど……仕方がないです」

 

 少年冒険者ララクは、所属している冒険者パーティーのリーダーから、追放宣言をされた。彼らが利用している冒険者ギルドの出入り口付近で、悲壮感漂う雰囲気で話し込んでいた。

 

「随分クエストを一緒にこなしてきたが、一向にスキルは増えない。回復役ヒーラーとして君を加入させている以上、それ相応の活躍をしてもらわない限りには……」

 

 残念そうな表情でそう語るのは、冒険者パーティー「プロクセミティ」のリーダー・鉄槌(てっつい)のミウレイだった。愛用している鋼鉄のハンマーを装備しており、歳は50を超えているベテラン冒険者の女性だ。少し小じわが目立ってきたことを本人は気にしている。

 

「……おっしゃる通りです。僕の持つ【ヒーリング】だけじゃ、皆さんを十分回復できていませんから」

 

 ヒーラーのララクは初級回復スキル【ヒーリング】しか所持していない。彼の所持スキルを表すステータスが以下である。

 

 

 名前  ララク・ストリーン

 種族  人間

 レベル 20

 

 アクションスキル 一覧

 

【ヒーリング】

 

 普通は、野生のモンスターなどを倒すことで人体がレベルアップし、それに伴い超常的力であるスキルも増えていくもの。

 

 しかし、現在のララクはたったの1つしか獲得できていない。しかも、この【ヒーリング】というのが、少し傷をいやす程度。強力なモンスターと戦った場合、それぐらいの回復量ではあまり意味をなさないことが多い。

 

「っく……情けない。もっと俺の盾が頑丈なら、君の負担が減るのに。っく、もっと鍛錬しなければっ!」

 

 激しく悔やんでいるのは、もう一人の仲間・盾創りのガンジウである。【シールドクリエイト】というスキルを持っており、これにより様々な大きさの盾を創り、味方を守る。

 仲間を守るのが仕事であり、回復役のヒーラーとは少し役割が似ている。なので、自分がもっと頑丈な盾を創れれば、ララクが回復する量を減らせれると考えているのだ。

 

「いやいや、いつも守っていただきありがとうございました」

 

 戦闘手段のないララクを守ることは、盾使いガンジウの大事な仕事である。ガンジウは魔人という種族であり、体内に眠るエネルギー 魔力が優れた種族。頭から生えた2本の角も特徴的である。

 魔人の彼が作り出す魔法の盾は、高性能であり、そこまで悲観するような出来栄えではない。それをララクは分かっているので、ただただ感謝を述べたのだ。

 

 そんな回復役ララクと守り役ガンジウの会話に水を差すものが現れた。それは、最後のパーティーメンバーである女性冒険者だった。

 

「でもぉ、それってガンジウちゃんで事足りるなら、ララクっちなんてそもそも必要なくないですかぁ?」

 

 彼女の名前はモンスター投げのコマドリィ。生粋の近接ファイターであり、相手を投げることを生きがいとしている。

 年齢は20代半ばと、少年のララクとガンジウよりも年上。なのだが、彼女は全員に敬語を使っている。これは決して敬意を表意しているわけではなく、相手によってため口と敬語を使い分けるのが面倒くさいだけである。

 

「っそ、それを言ってはおしまいでしょ……」

 

 核心めいた発言を聞いて、一気に言葉を失う盾作りのガンジウ。

 

「あら、余計な一言、でしたかね。あはははは」

 

 特に失言したことを後悔しておらず、モンスター投げのコマドリィは乾いた笑い方をしている。

 

「……ゴホン。言い方はよくないが……、コマドリィの意見も一理あるのは事実。君を加入させたことで、ガンジウの守るべき相手が増えてしまった。それにより、余計に私たち前衛の防御力が落ちてしまった。

 君はいい子だ。真っすぐで、一人前の冒険者になるために頑張っている。

 けれど、さすがに私たちだけじゃ、手に負えない……」

 

 リーダーである鉄槌のミウレイは、あまりララクの脱退に乗り気ではなさそうだった。リーダーとして、仕方なくこの道を選んだだけで、本当なら最後まで面倒を見たかったのだ。その理由の1つに、彼女の一人息子に少し容姿が似ているからだ。本当の子供は、反抗期まっさかりだが、ララクは素直で心優しい。そんな彼を、結果的に追い出す形となるのが心苦しいのだ。

 

「僕のせいですから、気にしないでください。慣れっこですし」

 

 ララクは強がっているようにも見えるし、達観しているようにも思えた。

 

「慣れっこ、ですかぁ? っあ、そういえば、他のパーティーも追放、されてるんでしたっけ」

 

 モンスター投げのコマドリィは、思い出しながら喋っていた。彼女の言う通り、ララクはこのパーティーに加入する前から、冒険者として活動していた。

 

「そう、です。今回で34回目ですかね……」

 

 ララクは、今ままで自分が加入していた冒険者パーティーとそこを追放された回数をはっきりと記憶していた。

 普通に冒険者生活をしていたら、パーティーの移転は数回あるかどうかだ。ずっと同じメンバーで活動するパターンも珍しくはない。

 

 なので、その圧倒的な数字に、「プロクセミティ」の3人は驚いていた。

 

「……そ、そんなにだったのか。何度かパーティーを解任されているとは聞いていたが……」

 

 リーダー・鉄槌のミウレイは、ララクの姿を今一度よく観察する。ララクはまだ16歳ぐらいで、子供だ。そもそも、冒険者を始めるにしては早い年齢だ。同世代の多くは、学校に通っている年齢だ。

 それなのにも拘らず、何度も追放と加入を繰り返しているというのは、驚愕の事実だった。

 

「っうぅ! ……激動の人生を歩んできたんだな。っくそ、なおさら今回のようなことになったのが悔やまれる」

 

 盾創りのガンジウは、感情的になって目に少量の涙を浮かべながら話していた。彼はララクよりも少し年上であり、後輩の事が可愛くて仕方がなかったのだろう。

 

「気にしなくていいですよ。本人がケロッとしてますからぁ。ねぇぇ? ララクっち」

 

 コマドリィはララクの言葉を真正面から受け止めており、彼がそこまで気にしていないと思い込んでいた。その解釈は間違ってはいないが、全く精神的ダメージを受けていないわけではない。

 リーダーをはじめ、比較的優しく接してくれていたので、より迷惑をかけたことをララクは気に病んでいる。

 

「っま、まぁ。また、どこかパーティーを探してみます」

 

 コマドリィの圧に負けて、特に反論はしなかった。彼女のララクに対するドライな態度は、加入から脱退までずっと変わらなく、「こういう人なんだ」と割り切っている。

 

「……それじゃあ、紋章を出してくれ」

 

 話がまとまったことを確認したリーダーのミウレイは、パーティーを脱退するララクに最後の指示をする。

 そして、彼女も左手を前に突き出して、ララクへと向ける。

 

「……はい、了解です」

 

 ララクが小さな右手をミウレイの前に出す。すると、両者の手の甲が輝きだす。そこには青白く光る紋章が浮かび上がっていた。

 

 この紋章は万物が所持していると言われ、レベルアップやスキルの獲得などを管理している。この紋章を利用することで、自分のスキル画面を閲覧することも可能。

 

 そしてこの紋章には、もう1つ役割がある。

 

 それがパーティー契約とその解除である。

 

「……今をもち、ララク・ストリーンとのパーティー契約を解除する」

 

 リーダーのミウレイが宣言すると、2つの紋章から光の線が飛び出してくる。その線は真っすぐと伸びていき、ぶつかり合った。

 そしてその瞬間、パチッと音を鳴らしながら、光の粒となって散らばっていった。

 

 これにより、ララクとミウレイたちのパーティー契約が解除された。契約をすると、レベルアップのために必要な経験値を共有できるという利点がある。経験値はおもに、モンスターを倒すことでで獲得することが可能だ。

 

「……皆さん、お世話になりました」

 

 ララクはぺこりと頭を下げた。金色のサラサラヘアーがふわっと動き、彼は苦悶の表情を地面に向けた。

 

「……達者でな」

 

 鉄槌のミウレイは、色々といいたいことがあったが言葉を呑み込んだ。喋りだすといつまでも、彼を追放したことを悔やんでしまいそうだったからだ。

 

「ララクくん! まだこの街にはいるんだろう? このギルドも利用するんだろう? だったら、いつでも相談に乗るから。他のパーティーにも君のこと宣伝しておくから!」

 

 

 リーダーと違って、盾創りのガンジウは未練たらたらなことを言葉に出していた。同世代の若い冒険者なので、大事にしていきたいと考えているのだろう。

 

「宣伝って、どうやって言うんですかぁ? 『前に追放した弱小ヒーラーなんだけど、パーティーに入れてみませんかぁ?』って、言うんですか?

 それって、ネガティブ・キャンペーンになりますよ~」

 

 痛いところを突いてくるコマドリィ。確かに、追放した相手を自分で宣伝するというのはおかしな話でもある。

 

「……確かに。あ──、どうしたらぁいいんだぁ俺は!」

 

「……そんなこと言っていただけただけで、嬉しい限りです。脱退したあと音沙汰なくなっちゃう人たちも多いですから。

 ……それじゃあ、ボクはこの辺で失礼します。また、お会いした時はよろしくお願いします」

 

 ララクは、コマドリィの発言で気を引き締められ、盾創りのガンジウの言葉で救われていた。この2人は、彼にとってアメとムチだったのかもしれない。

 

 ララクは最後にもう一度頭を下げると、宿泊している宿屋に向かって歩き始めた。その後ろ姿からは、悲壮感が漂い、見ているとこっちの心がすさんできてしまう。

 

 こうしてララクは、冒険者パーティー「プロクセミティ」を追放され、通算追放回数34回を記録する。

 

「……はぁ、いつになったらもっとスキルが増えるんだろう……」

 

 ため息をつきながら、ララクは帰路していた。

 本来、レベル20台ならば、5,6個スキルを持っていてもおかしくはない。が、彼はたったの1個。ミウレイが追放に踏み切ったのも、無理はない。

 

 ララクはこのまま冒険者として活動していけば、いずれ強くなるだろうと。

 

 しかし、このあとララクはいくつものパーティーを追放となり、100回の追放を経験することになるのだった。

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