【祝・追放100回記念】自分を追放した奴らのスキルを全部使えるようになりました! ~プロクセミティ~   作:高見南純平

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最終話

 倒れこんだマンモスは目を開けると、すぐに雄たけびを上げた。それは最初の時とは違い、魔力を消費して発動するスキル攻撃だった。

 

「ブオォオオ!!」

 

 その咆哮は轟音となって周囲に響き渡った。

 

 ララクは耳を塞ごうとしたが、間に合わなかった。スキル名は【轟く咆哮】。その名の通り、マンモスの咆哮はまさに地を轟かせるもので、その音波が少年ララクを直撃した。

 

「うわぁぁ!」

 

 彼の体は音の力に押し流され、まるで人形のように宙に舞った。空中で体が何度も回転し、ララクの視界はぐるぐると回る。

 

「ララク! これは、私の出番だね!」

 

 ゼマはマンモスのスキルを受けたララクを見て、何故か嬉しそうにしていた。彼女は構えていた鉄棒(アイアンロッド)をララクのいる空中に向かって突き刺した。しかしララクとゼマとの距離は長く、普通は届くことはない。

 

 しかし、彼女の持つアイアンロッドには【伸縮自在】というスキルが付与されている。これもララクが持つスキルで、彼女の武器に使用しているのだ。

 

 簡単に言えば、【伸縮自在】の効果がかけられたアイアンロッドは、魔力を流し込むことで自由にその長さを変えることができる。

 

 そのため、前に突き出されたアイアンロッドはぐんぐんと伸びていき、ララクの足元まで到達した。

 

「ゼマさん! さすがです!」

 

 ララクは何とか空中で姿勢を制御して、足の裏をアイアンロッドの先端に向ける。そしれつま先でそこを蹴り飛ばすと、いまだ倒れているマンモスへと再び近づいていく。

 

 それを見たマンモスは再びスキルを発動しようとする。が【轟く咆哮】は、魔力だけではなくかなりの肺活量を必要とし、空気を取り込む必要がある。ので、簡単に連発できるものではなかった。

 

 マンモスが周辺の空気を小さな口で取り込もうとしている間に、ララクは動きだす。

 

「【ウェポンクリエイト・ハード】!」

 

 ララクは今度は盾ではなく武器を創り出すことが可能なスキルを発動した。それは銀色に輝く両手持ちのハンマーだった。

 これはかつての仲間・鉄槌のミウレイが愛用していた武器である。

 

 彼女はララクに語ったことがあった。ハンマーという武器について。

 

『いくらレベルを上げても、ハンマーの重さは変わらない。扱いにくさもね。

 だから、一撃に魂を込めるんだ。その攻撃で、相手を仕留めきるという殺意と一緒に』

 

 50代のミウレイは、その鋼鉄のハンマーを何十年と使い込んできた。そんな彼女だから言える説得力のある言葉だった。

 

「これで終わりにする!

 【フレイムインパクト】!!」

 

 ララクはハンマーを大きく振りかぶると、発動したスキルの効果によってその鉄槌が赤く燃え上がり始める。

 マンモスの体は分厚い体毛に覆われている。それを焼きながら、攻撃をヒットさせるつもりなのだ。

 

「!? ブオオっ! ……」

 

 マンモスが慌てて、怒号を放とうとする。が、それよりも先に、ララクの放った炎の鉄槌がマンモスの脳天に叩き込まれる。

 

 その瞬間、凄まじい衝撃と共に炎が炸裂した。ハンマーの一撃はマンモスの硬い頭蓋骨を砕き、炎が内部にまで広がっていく。マンモスの目が驚愕と痛みに見開かれ、巨大な体がのたうち回る。炎は皮膚を焼き、筋肉を焦がし、その周囲の空気までも歪ませるほどの熱を発していた。

 

 ララクはその光景を見ながら、ハンマーをしっかりと握りしめていた。彼の腕にはまだ振り下ろした衝撃が残っており、全身に疲労が押し寄せていたが、彼の心には達成感が広がっていた。

 

 炎が爆発的に広がり、マンモスの皮膚を焼き尽くす。その巨大な獣は痛みにのたうちまわり、その命にピリオドを打った。

 

「……ふぅ、クエスト終了です」

 

 敵の絶命を確認して、ララクはゆっくりと息を整えながら、戦いの終わりを実感した。創り出したハンマーを消滅させると、おでこに湧き出た汗を服で拭った。

 

「お疲れさん。私はサポートしかしてないけど」

 

 後ろから歩み寄ってくるゼマは、どこか達成感が薄かった。自分も本格的に戦闘に参加つもりだったのだろうが、結果的にララクのたった2撃で討伐してしまった。

 

「いえいえ、ナイスアシストでした。

 これで、村の人たちも安心するはずです」

 

 ララクはクエストに書かれていた、マンモスの足跡のせいで不安が押し寄せていた村人たちの事を案じていた。

 

「だね。それじゃあ、報告しに行きますか」

 

「了解です」

 

 ララクとゼマは一仕事終えると、クエストを受注した村へと帰るのだった。

 

 

          ◇◇◇

 

 その日の午後、ララクとゼマは酒場にて食事を楽しんでいた。

 

 彼らのテーブルには、ジャングルでとれた山菜のサラダと、今日の目玉メニュー「マンモスのステーキ」がでかでかと置かれている。

 

「うっまそー」

 

 ご馳走を前に、ゼマはよだれをたらしかける。

 

 マンモスの巨大なステーキが鉄板の上でジュージューと音を立てていた。厚さ数インチの肉は美しい焦げ目が付き、香ばしい香りが立ち上る。裏返すと、さらに香ばしい煙が立ち上り、肉汁が溢れ出した。

 

 溶けたバターと特製ソースがかけられ、ハーブとスパイスが効いた風味豊かな香りが広がっている。

 

「いっただきまーす」

 

 ナイフを入れると、ジューシーな赤身が顔を出し、一口頬張ると豊かな肉の味わいと香ばしい香り、肉汁の旨味が広がる。マンモスのステーキは豪快さと繊細な味わいで食べる者を魅了する一品だ。

 

「うっめー。これは酒が進むわ」

 

 ゼマは酒豪だ。基本的に食事はビールと一緒に楽しむのが彼女の流儀。ステーキを食べた口の中に、泡のあるビールを流し込んでいく。

 

「うんうん、美味です」

 

 ステーキをつまみとして食べているゼマに対して、ララクはライスとコーンスープを頼んで定職のようにしていた。

 

 言葉は簡素だが、ほっぺたが落ちそうなぐらいうまみを感じており、満足そうな表情をしている。

 

「いやー、あんたと一緒にいたらクエストが楽でいいや。こうしてうまい肉と酒を一緒に飲めるわけだし」

 

「まぁ、今回は相手側から姿を現してくれたのもあってスムーズでしたね。今後は、もっとゼマさんの力が必要になる時が来ますよ」

 

「ん? そう? じゃあ、期待しといて。戦闘には自信あるからさ」

 

 実はこのララクとゼマは、仲間になってから一週間ほどしか経過していない。ララクは自分の足りない部分を彼女が持っていると感じて、自分のパーティーに加入させた。

 

 パーティー名は「ハンドレッド」。まだ2名しか所属していないが、自分にとって特別な数字だと、ララクは迷いなく命名した。

 

 ララクの力は、100個のパーティーに参加していた冒険者たちの集合体。戦闘力もそうだが、加入していた時に見て覚えていた技術と知識を使って、ララクはあまりあるスキルをなんとか使いこなしていた。

 

 ララクたちは目的のない旅を続けている。しいていうならば、世界一周だろうか。

 

 少年はかつてあこがれた一人前の冒険者になり、この世界を満喫しようと冒険を続けていく。

 

 これはそんな彼らの、ほんの些細な冒険の1ページである。

 

 

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