【2024/11/29書籍①発売】無理ゲー転生王女(クソゲー悪役令嬢外伝)~隣国王子に婚約破棄されたけど、絶対生き延びてやる!   作:タカば

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転生王女はおうちに帰りたい
戦のあと


「神だ!」

「神が降臨された!」

「創造神様の御使いだ!」

 

 コクピットの外は大騒ぎだった。武装した騎士たちが、白銀に輝く鎧を取り囲んで歓声をあげている。中には、涙を流して巨大ロボットを拝んでいる者までいる。

 モニター越しに彼らの姿を見た私は、困惑の声をもらす。

 

「えええ……なんなの?」

 

 私のすぐ目の前、主操縦者用コクピットに座ったディーがふう、とあきれたように息を漏らす。

 

「彼らにしてみれば、突然創造神の石像がロボットに変身して、邪竜を倒したわけですからね。当然の反応ではないでしょうか」

「ええ……」

 

 私にしてみれば、突然出て来た反則級の敵から騎士を守るために、必死に行動してただけだ。いやそんな大したモンじゃないって。

 

「あれ? どうしよう」

 

 今コクピットあけて中から出てきたら、とんでもないことになるんじゃないの。

 私自身が神様として祀られかねないんだけど。

 

「何をいまさら。あなたはそもそも、女神の天啓をうけた聖女でしょうが」

 

 そうなんだけど。

 確かにディーの言う通りなんだけど。

 

「どうしよう、これ……」

 

 私はコクピットに座ったまま、頭を抱えた。

 

「なるようにするしか、ないんじゃないですか?」

「簡単に言わないでっ……て。ディー?」

 

 私は副操縦席のベルトを外すと、身を乗り出した。

 ディーの様子がおかしい。

 いつも落ち着いて低く響いていた声が、不自然に震えている。

 強引に操縦席の横に体をねじこんで顔を覗き込んだら、血の気が引いて真っ青になっていた。目を閉じ、手を当てた額には脂汗が浮いている。

 

「……大型キャリーを……いや、リソースが足りない。分離合体機能付与……それでは合体のたびに接合部が摩耗する……せめてハンガー機能だけでも確保して……」

「ディー……?」

 

 額に手をやったまま、ディーのアイスブルーの瞳がうっすらと開く。

 

「……現在、巨大ロボットのメンテナンス車両を創造しています」

「メンテナンス? なんで!?」

「あなたがコレを機械的なロボットだと定義した影響でしょうね。女神の奇跡の力を動力とはしていますが、そのほとんどは精密機械で構成されています。雑に放置していては、それだけで壊れていってしまうでしょう」

「ええと、車とかメンテナンスしないで放っておくと壊れるとかそういう」

 

 ふ、とディーが口元を緩めた。

 その解釈で間違ってないらしい。

 

「見てください」

 

 ディーが私の胸元に手をやった。

 彼の手の中で虹瑪瑙のペンダントが急速に光を失っていく。

 

「手近な軍用馬車をベースにしましたが、高度な機器を満載した車両と馬車ではモノがあまりにも違います。今手元にある奇跡の力をすべてつぎ込んだとしても、まだ足りない」

「ディー?」

 説明するディーの声はどんどん弱弱しくかすれていく。

 状態がよくないのは、明らかだった。

 

「エネルギー節約のため……私と女神はしばらく活動を休止します」

「休止……? 大丈夫なの?」

「力は、時間が経てば戻ります……」

 

 デイーは板状の何かを私に押し付けた。ノートサイズのつるりとしたガラスと金属の板。現代日本でタブレットと呼ばれていた端末だ。

 

「コレに、簡単な操作用インターフェイスを用意しました。コクピットの開閉……それと、ロボットのメンテナンス車両への格納が可能です」

 

 さらりと髪をなでられる。

 視界の端で、切りそろえた髪が燃えるような赤から、元の金へと色を変えた。

 

「外のサウスティ騎士と合流して……身の安全を確保して……」

 

 最後の言葉は形にならなかった。

 ゆらりとディーの輪郭がゆらぐ。視覚で捕らえられない、よくわからない何かになったかと思うと次の瞬間、コクピットの座席に小さなユキヒョウの赤ちゃんが出現していた。

 ユキヒョウはだらりと手足を投げ出したまま、ぴくりとも動かない。

 

「ディー!」

 

 私はたまらず、副操縦席から飛び出していた。

 




2025年3月28日「クソゲー悪役令嬢⑥」が発売されます。
お楽しみにー!!!
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