【2024/11/29書籍①発売】無理ゲー転生王女(クソゲー悪役令嬢外伝)~隣国王子に婚約破棄されたけど、絶対生き延びてやる!   作:タカば

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しばらくはこのままで

「とにかくメシにすっか」

 

 ルカはテント内のあいている椅子に座った。

 

「そうね、お腹がすいたわ」

 

 私はあらかじめ届けてもらっていた、二人分の食事を簡易テーブルの上に広げ始める。人手の足りない戦地では、お姫様の私もある程度身の回りのことをしなくちゃいけない。

 

「あ、俺も手伝う」

 

 自分で動かないといけないのは、王子様も一緒だ。

 ルカは椅子から立ち上がると、食器を並べるのを手伝い始めた。国境に着くまでの間、庶民の姉妹としてふるまってたから、これくらいはお互いに慣れている。

 

「……」

 

 オスカーはというと、一瞬手伝いたそうな顔をしたあと、すぐに手をひっこめた。私はオスカーに笑いかける。

 

「わかってるわよ。護衛まで給仕に参加して、警戒を解いたらダメだもの。あなたの仕事はテントの中にいて、周囲を警戒すること。でしょ?」

「……助かる」

 

 届けられた食事が二人分なのも、そのせいだ。

 護衛は警備中に食事をしない。オスカーの食事は交代の警備兵が来たタイミングで、別室で提供されるはずだ。

 

「わ……思ったより豪華だな」

 

 並べられた食事を見て、ルカが目を輝かせた。

 野菜とお肉の入ったスープに、パンとチーズ。新鮮なフルーツまで添えられている。

 野営テントで出される食事としては、破格の豪華さだ。

 

「長旅をしてきた私たちを、ねぎらってくれてるんだと思うわ。ありがたく食べましょう」

「イースタンじゃ、ろくなものが食べられなかったからな」

 

 スープにパンをひたして口に運ぶ。やさしいハーブの香りが口に広がった。

 

「ん~これこれ。サウスティ風のスープ、久しぶり……」

「こういう味付けも悪くないな」

 

 ルカは興味深そうにスープを味わっている。

 

「あ、そっか。私はもう帰った気になってたけど、ルカの故郷はまだ遠いんだっけ」

「オーシャンティアはもっとずっと南だからな」

「ここから帰るとしたら、まずはオーシャンティアに遣いを出して、迎えを出してもらって帰国になるのかしら」

 

 うーん、とルカは腕組みをしてテントの天井を睨む。

 

「王弟殿下のサインがあるっていっても、前線からの連絡じゃ、ちょっと信頼度が低いからなあ。一旦サウスティ王城に伝令出して、国王陛下の書簡を発行してもらって、正式にオーシャンティアに連絡。そこから迎えが来てやっと帰国って運びになるんじゃねえかな」

「うわあ、大変。だとしたら、あなたの身柄は一旦王城に運ばれることになるのかしら」

「多分な。でも、しばらくはコレットと一緒にいることになると思う」

「どうして?」

「王子の俺を移送するってなると、護衛に一個小隊は必要だろ。でも……」

「ワイバーン防衛線の構築に大忙しのサウスティ軍にそんな余裕はないわね」

 

 巨大ロボットに助けられたとはいえ、サウスティ軍はワイバーンの襲撃でそれなりの被害を受けている。怪我人の手当に死亡者の収容。そして、前線でのボウガンとバリスタ製造。その上、私たち王族や、巨大ロボットの警備までしなくてはならない。

 人手はいくらあっても足りない状況だ。

 私とルカが一緒にいるのも、護衛対象が分散していたらその分コストがかかるから、できるだけ固まって行動してほしいという裏事情がある。

 王城から送迎用の部隊が来るか、ワイバーン防衛対策が完了するまでは、ウカツに王子の身柄を動かせない。

 

「俺としては、まだしばらくあんたといたいな」

「そうなの?」

 

 ルカはにやっと意味深に笑った。

 

「だって、ディーが最高精度の兵器を作るんだろ? 見ておかないと損じゃねえか」

「なるほど?」

「それに邪神だなんだって、異常なことが起きてるこの世界で、一番安全なのって女神に守られてるコレットのそばだと思うし」

「さすが、生き残り特化型第三王子……」

 

 齢十歳で、ちゃっかりしすぎではないだろうか。

 感心するべきか、呆れるべきか、判断がつかない。

 思わず頭を押さえてしまった時だった。

 

「失礼します、サイラスです。お食事はおすみでしょうか?」

 

 テントの外から声がかかった。

 この声は聞き覚えがある。商人に変装してオスカーと一緒にイースタンに潜入していた、老騎士のものだ。オスカーを見ると、彼は落ち着いた様子でうなずき返してくる。

 

「サイラス本人だ。迎えて問題ない」

 

 護衛騎士の鋭い感覚で、すでに老騎士サイラスだと確信しているんだろう。彼の判断を信用し、私もうなずく。

 

「もうすぐ終わるところよ。少し待ってちょうだい」

「はっ」

 

 私とルカは大急ぎで料理を片付ける。

 さすがに食事を広げたまま騎士をテントに迎え入れるわけにはいかない。

 でも、こんな時にわざわざ王族のテントに来るって、何の用だろう。

 

「用件は何だ?」

 

 私のかわりに、オスカーがサイラスに問いかける。

 

「は、至急姫様に裁決いただきたいことがありまして」

「私に?」

 

 ますます何だろう?

 テントの入り口を開けた私たちに、老騎士がもたらしたのは、ある意味当然の用件だった。




2025年3月28日「クソゲー悪役令嬢⑥」が発売されます。
お楽しみにー!!
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