【2024/11/29書籍①発売】無理ゲー転生王女(クソゲー悪役令嬢外伝)~隣国王子に婚約破棄されたけど、絶対生き延びてやる!   作:タカば

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王女の采配

 余裕がない、を「だから切り捨てよう」と解釈されてしまったらしい。

 

「私が言った『余裕』は別の意味よ」

「うん……?」

 

 状況がよくわからないのか、獣人ふたりは首をかしげている。

 

「私はサウスティの姫なの。地位が高いぶん、部下にもそれ相応の立ち振る舞いが要求されちゃうのよ」

「特に従者は主の一部とみなされることが多いですからね」

 

 雇用の自由度が高い分、責任も重大なのだ。

 サウスティ王宮に彼らを連れていくなら、最低限まともな服を着せて、礼儀作法を叩き込まなくてはならない。侍女ひとりおらず、自分の身の回りのことさえままならないのに、さらに2人も人間を抱えて養うのは無理だ。

 

「不要には変わらないじゃないか。やっぱり……!」

「だからどうしてそこで『殺される』って結論になるの。所有する余裕はないけど即、息の根を止めなきゃいけないほど切羽詰まってないわ」

 

 なぜそこまで恐れられなくてはならないのか。

 絶対原因はエメルだよね!?

 あの子、戦闘奴隷をどう扱ってたの。

 

「で、結局どうするつもりなんだ?」

 

 ルカがにやにや笑いながらたずねてくる。

 君は君で、他人事だと思っておもしろがってるな?

 

「とりあえず、殺すはナシ。生かす方向で考えましょ」

「だが、お前の従者とするのは反対だ」

 

 オスカーが低い声で断言した。

 それは私もわかってる。

 私はふたりの獣人、特に黒い毛並みの獣人の顔を覗き込んだ。

 

「ええと……あなたたち、私に従うって言ってるけど、本当にそうしたい?」

「……?」

 

 言っている意味がわからなかったらしい。獣人はこちらを見つめ返してきた。

 

「ディーの話だと、あなたたちはアギト国に捕まって奴隷にされたのよね。もともと誰かの所有物になりたかったわけじゃ、ないんじゃない?」

「そう……だが」

「今ここで縄を解かれて、好きにしていいって言われたら、どこに行きたい?」

「……うぅ」

 

 灰色の毛並みの獣人が、もうひとりの腕をぎゅっと握りしめた。

 黒い毛並みの獣人が、ごくりと生唾を飲み込む。

 彼は唇を震わせ、おそるおそる、願いを言葉にした。

 

「白き嶺に……集落に、帰りたい……」

「帰るところがあるのね。だったら、そうしましょう」

「え……!」

 

 私はサイラスを振り返った。

 

「いろいろ手配してもらった後で申し訳ないんだけど、ふたりぶんの食糧と路銀を都合してあげられないかしら」

「白き嶺がどちらかわかりませんが、まあ、可能な範囲でしょう」

 

 獣人たちは、こちらを食い入るように見つめている。

 

「いいのか……?」

「殺せない、連れてもいけない、なら故郷に帰してあげるのが一番でしょ。女神の力で服従の呪いを解いてるから、アギト側に戻るって可能性は低いと思うし」

 

 こく、とオスカーがうなずく。

 護衛はその案に賛成ってことらしい。

 




2025年3月28日「クソゲー悪役令嬢⑥」が発売されます。
お楽しみにー!!
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