【2024/11/29書籍①発売】無理ゲー転生王女(クソゲー悪役令嬢外伝)~隣国王子に婚約破棄されたけど、絶対生き延びてやる!   作:タカば

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女神降臨

 ひとくちに異世界転生といっても、パターンはさまざまだ。現代日本で発売されていた異世界モノでは、さまざまな転生物語が書かれていた。

 よく目にするのは、前世を持つ魂が赤ちゃんに宿る生き直し型、死んだ人間の体に新しい魂が宿る乗っ取り型、ひとつの体に新しい魂が加わる同居型。

 前世の記憶がよみがえったのと同時に、女神から『転生させた』と告げられたのもあって、今まで何の疑問も持たずに自分のことを転生者だと思ってきたけど。厳密に分類するなら、私はどれにあてはまるんだろう?

 同居型ではない、と思う。多分。

 紫苑の記憶の影響で、考え方がかなり変わった自覚はあるけど、自分の中にいくつも人格があるような感覚はない。

 私は私。

 ひとりの私だ。

 だとしたら、あとはどっちに分類されるんだろう?

 生き直し型か、乗っ取り型か。

 乗っ取り型の場合は、記憶や感情に大きなズレがあることが多い。

 体に別人の魂が入ってるんだから、当然だ。

 でも私にとって、コレットの記憶は自分のもので、コレットの感情も自分のものだ。

 兄や国を想う気持ちは、前世を思い出す前と変わらない。ずっと地続きで私の中にある。

 でも、乗っ取り型の転生でも、元の人物の記憶をまるっと受け継いだ結果、情も受け継いだパターンを見かけたことがある。その場合は今の私と同じ状態になるだろう。

 家族から見て、乗っ取り型転生ってどうなんだろう?

 私の中のコレットの記憶は鮮明だ。

 ジルベール兄様をかけがえのない家族だと認識している。

 でも兄様は?

 コレットらしくない行動をとる私を、コレットとして受け入れられるんだろうか?

 大事に育ててきた妹が、魂を取り換えられて帰ってきたとか。

 ただ殺されるより受け入れがたい悲劇になるんじゃないだろうか。

 ジル兄様に受け入れられなかったら、私たちはどうなるんだろう。

 

「コレットさんは、コレットさんですよ~」

 

 のんびりした声が、社内の沈黙を打ち破った。

 

「え」

 

 運転席と助手席の間から、ひょこっと派手な女性の頭が文字通り首を突っ込んで現れた。

 顔は美人だけど、服装はファンタジー世界になじまない、パーカーとデニムパンツ。

 この世界を導く才能のないダメ神、運命の女神だ。

 

『メイ! あなたはまだ……!』

 

 抗議しようとしたディーの声がノイズに遮られた。同時に、車両の速度が勝手に落ち始める。ふわ、と女神はねむそうにあくびをした。

 

「ちょっとだけ、リソースをこっちに回してもらいますね」

 

 ついに止まってしまった車内で、運命の女神は運転席と助手席の間に座り込む。

 

「彼女……は?」

 

 ジルベール兄様が、呆然とつぶやいた。その緑の瞳は、食い入るように女神を見つめている。

 

「あれ? 兄様にも女神が見えてる?」

 

 女神の姿は私とディーにしか見えないはずでは。

 

「私が直接ご説明しないと、説得力が足りないと思ったので強制的に視覚をハックさせていただきました!」

「それ人類にやって大丈夫なやつ?」

 

 そこはかとなく怖い単語がいくつか混ざってるんだけど!

 

「だいじょーぶ大丈夫! ちょっとチューニング変えてるだけですから、視力に問題は出ませんよ!」

 

 だからその言葉のチョイスが怖いんだってば。

 

「でもこのまま放っておいて、ご家族の間で疑心暗鬼になっても困るでしょう? 転生させた手前、私もコレットさんに不幸にしたくありませんし。これは正当なアフターケアですよ!」

「気遣いはうれしいんだけどね」

 

 それはそれとして、家族の身の安全も保証していただきたい。

 話を聞かない女神は、くるっとジル兄様に顔を向けた。

 

「ご挨拶が遅れました! はじめまして、私はこの世界を守護する運命の女神です!」

「はじめ、まして。じるべーるです……」

 

 神様に自己紹介されるというレアすぎるイベントに呆然としながらも、ジル兄様はなんとか返事を返す。女神は満足そうにうんうんとうなずいた。

 マイペースにもほどがある。

 

「さて、ジルベールさんの『コレットさんは、コレットさんなのか』という問いですが、ずばり、今までと同じ、あなたの妹のコレットさんです!」

「は……はあ……」

 

 ジルベール兄様は、なおも固まったままだ。

 女神はにこにこ笑ったまま、ぴこっと人差し指を立てる。

 

「ただし! 彼女にはひとつだけ、普通の女の子とは違うところがあります」

「なんでしょう……?」

「彼女の魂は、サウスティ王家のコレットさんとして産まれる前に、こことは全く違う世界で女性として二十歳まで生きていたことがあります。若くして亡くなった不幸な女性の魂がこの世界に運ばれ、前王妃のお腹に宿ったんですね」

「つまり、私の転生って……生き直し型なの?」

「生き直し! まさにソレです!」

 

 いいこと言った! と女神が笑顔になった。

 

「今回の転生は、魂の同一性が重要でしたからねえ。前世と今世で差異が出ないよう、めちゃくちゃ気を遣いました!」

「つまり、コレットと紫苑は、同一人物って……言っていいの?」

「ですです!」

 

 私の問いに、女神が全力でうなずく。

 

「アクセル王子に殺されかかったのをきっかけに、花邑紫苑さんという別人の記憶がプラスされちゃいましたけど、魂も記憶も、全部同じコレットさんです! 安心してご家族関係を続けてください!」

「は、い……」

 

 ジル兄様はぎこちなくうなずいた。

 というか、それしかできないっぽい。

 女神様に断言されたんじゃ、否定もしづらいよね。

 

「ちなみにコレットさんの前世、花邑紫苑さんの死因は、御近所さんを強盗からかばっての刺殺です」

「え」

「ちょっと!」

 

 私は思わず声をあげた。

 なぜその過去を今明かそうと思った。

 話の流れに関係なくない?

 

「ご近所さんは、弟のようにかわいがっていた十歳の少年だったんですよ!」

「だからそれ、今関係ある?」

 

 抗議した瞬間、ぶはっとジル兄様が笑い出した。

 

「兄様!?」

「な……なるほど、確かにそれはうちの妹だ」

 

 どうしてそこで兄様が納得するの?

 意味がわからないんだけど!

 ふたりにツッコミをいれようとしたら、外からガッシャアアアン! というすさまじい音が響いてきた。

 慌てて外を見ると、巨大ロボットが地面に崩れ落ちている。

 

「あ……!」

「何が起きたの?」

 

 女神を振り返ると、彼女の顔からさあっと血の気がひいていった。

 

「無理やり顕現して長話してたものだから……ロボットの姿勢維持に必要なエネルギーまでなくちゃちゃった……みたいですね」

 

 それはもしかして、とてもやばい状況では。

 

「てへっ」

 

 どこからそんなダサいしぐさを仕入れてきたのか。

 女神は額をコツンと叩きながら、ぺろっと舌を出した。

 

「あとの始末、よろしくお願いしますっ!」

 

 それだけ言い捨てて、女神は姿を消した。

 だから奇跡の力の残量くらい、ちゃんと管理して!

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