【2024/11/29書籍①発売】無理ゲー転生王女(クソゲー悪役令嬢外伝)~隣国王子に婚約破棄されたけど、絶対生き延びてやる!   作:タカば

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お姉ちゃんの記憶

 ジル兄様に指摘されて、はっとする。

 言われてみればそうだ。

 本来コレットは、人から守られる立場だ。率先して矢面に立つような子じゃない。

 

「俺にはどうも君が……『子供は守らなくちゃ』という考えに取りつかれてるように見えるんだけど」

「それは……」

 

 私は、胸元でぎゅうっと手を握りしめた。

 守らなくちゃ。

 その思いは、イースタンで記憶を取り戻してから、ずっとあったものだ。

 私がそう思ってしまうのは。

 その理由は。

 

「多分……私がお姉ちゃんになり損ねた、からだと思う」

「君は俺たち兄弟の末っ子でしょ?」

 

 ジル兄様が不思議そうな顔になった。私は首を振る。

 

「ううん、そっちの家族の話じゃないの。花邑紫苑の家族の話」

「……君には、別の人生の記憶があるんだったね」

 

 女神から転生の話を聞いていたジル兄様は、神妙な顔でうなずいた。

 

「紫苑は、花邑家の第二子として生まれたの。両親と、四歳年上の尊兄さんの四人家族。でも、実は三歳の時に……弟がひとり、生まれてた」

 

 私は、意識的に紫苑の記憶を思い返す。

 コレットと紫苑。ふたりの人生は、私にとって、どちらも大事な思い出だ。

 

「弟はとても体が弱くて……こっちの世界の医療技術だったら、生まれてくることすら難しい体だった。現代医療の力を借りて、ようやく生まれてきたのに……心臓に病気が見つかって……私たちも、がんばって看病して、たくさんお医者さんにかかったんだけど……結局、二歳になる前に、死んじゃった」

「……それで、小さな子供が死ぬのが、怖くなった?」

 

 私はこく、とうなずいた。

 

「たぶん、それがきっかけ。でもそれだけじゃないと思う」

 

 私はさらに記憶を手繰り寄せる。

 

「十年後に、また新しい弟ができたんだよね」

「紫苑の母君が、ふたたび懐妊された?」

「ううん。そうじゃないの、血のつながらない弟。ご近所さん」

「……?」

 

 ジル兄様の釈然としない顔に、私は笑ってしまう。わからないのも無理もない。

 自分でも、雪那との関係は結構な特殊ケースだと思うから。

 

「中学三年の時だったかな、ある日学校から帰ってきたら、マンションのエントランスのところに銀髪の男の子が倒れてたの」

「行き倒れ?」

「ちょっと違うかな」

 

 こっちの世界の感覚で、玄関の前に人が倒れてた、って聞いたら、まずは行き倒れを連想するだろう。でも詳しい事情は少し違う。

 

「雪那は隣に住んでた子だったんだ」

 

 あの日のことは、今でも鮮明に覚えている。

 小さな男の子が、身も凍えるような廊下で体を丸めてぶるぶる震える姿は、ショッキングでしかなかった。紫苑が大人になったあとでも。時々夢に見たくらいだ。

 

「あとからわかったんだけど、インフルエンザ……熱病にかかったせいで、考えがうまく働かなくなって、ふらふら外に出て来ちゃってたみたい」

「それで、君の家の近くに倒れてたのか」

「そこからが大変だったなー。あわてて救急車呼んで、まだどこの子かわからなかったから、警察とかにも連絡して。マンション中が大騒ぎになっちゃった」

 

 今にも死にそうな五歳の子供だ。

 周囲の反応は当然だろう。

 

「騒ぎを聞きつけて、雪那のお父さんが出てきて。そこでやっと、隣の家に住む子だってわかったんだよね」

「失礼だけど、その子供の母親は?」

「いなかった。雪那を産んだ半年後に離婚して出身国に帰っちゃってたの。そこからずっと、お父さんと二人暮らし。その日は具合の悪い雪那を寝かせながら家で仕事をしてて、外に出ちゃったのに気づかなかったみたい」

 

 当時のことを思い出しながら、息を吐き出す。

 




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