【2024/11/29書籍①発売】無理ゲー転生王女(クソゲー悪役令嬢外伝)~隣国王子に婚約破棄されたけど、絶対生き延びてやる!   作:タカば

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プロポーズ

「わあ……本当に綺麗……」

 

 オスカーに案内されて向かった中庭では、淡い色の花が咲いていた。イースタンに出る前には見かけなかった種類の花だ。半年の間に、庭師の誰かが仕入れてきたのだろうか。

 

「これ、名前はなんていう花なの?」

 

 尋ねてみたら、困り顔で首を振られた。

 

「知らない。庭師にここの花がいいぞって聞いただけだから」

「そこは花の名前もちゃんと聞いておいてよ」

 

 剣術以外に興味のないオスカーらしいといえば、らしいんだけど。気分転換に、と綺麗な場所に連れて来ただけでも、彼にしてはがんばったほうである。

 

「あとでディーに聞いてみようっと」

 

 彼はこの世界のデータに通じている。

 花の名前くらい、すぐ出てくるだろう。

 

「あいつとは……」

「ん?」

「なんでもない」

「そう?」

 

 さっきから幼馴染の言動が不安定だ。

 周りを警戒しているかと思ったら、ぼーっとしていたり、空中の一点をじっと見つめていたり。

 警備が厳重な城内だからいいものの、外でこんなことやってたら、よからぬ輩に絡まれかねない。

 

「大丈夫、オスカー?」

 

 私は幼馴染の顔を見上げた。

 そういえば、長旅をしていたのはオスカーも一緒だ。姫君として周りに気遣われていた私と違って、彼は騎士としての責任を求められていた。行軍中ずっと私の護衛をしていて、疲れないわけがない。

 

「体調が悪いなら、戻る? オスカーだってゆっくり休みたいでしょ」

「体に問題はない」

「でも」

 

 オスカーはぶる、と首を振る。

 

「そういうんじゃないんだ。その、そういうんじゃなくてだな」

 

 じっとこっちを見つめられた。

 見返すと、なぜかみるみる顔が赤くなっていく。

 

「オスカー、やっぱり熱があるんじゃ」

 

 触れようとした手を、掴まれた。ぎゅうっとそのまま握りしめられる。

 間近にオスカーの琥珀の瞳が迫った。

 

「結婚しないか、コレット」

「は?」

 

 今、なんていった?

 

「レイナルド陛下も、前国王陛下も、君をイースタンに嫁入りさせたことを後悔している。かわいい末姫をもう国外に出したくないと。俺の家はずっと昔から王家に忠誠を誓っている騎士の一族だ。嫁に入れば、今後国を出ることはないだろう」

 

 私の手を持ったまま、オスカーが膝を折る。

 騎士が忠誠を誓う時の礼だ。

 

「俺がコレットを一生守ると誓う。だから俺と結婚してくれ」

 

 まっすぐに見つめられて、私は。

 

「やっ……!」

 

 思いっきりその手を振りほどいた。

 

「コレット!?」

「何考えてるの……!」

 

 体が熱い。

 手が震える。

 全身に鳥肌がたっていた。

 こんなに腹が立ったのは、アクセル王子に人質宣言された時以来だ。

 

「結婚して国内にいろ? ふざけないで、そんなの絶対嫌!」

「だが、陛下たちはコレットを心配して……」

「心配だったら、何やってもいいの?」

「な……」

 

 近づこうとしたオスカーから、後ずさって距離を取る。

 オスカーもオスカーだ。

 レイ兄様の命令にそそのかされるとか、何やってんの。

 

「あなたも見たでしょ? 女神の奇跡を。邪神の悪意を!」

 

 うろたえるオスカーをにらみつける。

 

「私は、世界を救う使命を託された聖女なの。空飛ぶドラゴンだとか、呪われた食料だとか、人知を超えた悪意に対抗できるのは私たちしかいない。それなのに、自国の騎士家に嫁入りしてどうするの! そんなところに閉じこもってたって、世界が滅びるだけじゃない」

「だがお前は女で」

「そういう意味の女の子扱いは、いらない!」

 

 それは、この国の姫として何度も言われてきたことだ。

 女だから戦わなくていい。

 女だから学ばなくていい。

 女だから考えなくていい。

 女だから、ただ守られて、にこにこ笑っていればいい。

 ふざけるな。

 私は私。

 女である以前に、ひとりの人間だ。

 もちろん体力や体質に違いはある。

 だが、お人形さんのようにケースにいれられなきゃいけないほど、弱くない。

 

「オスカーとは、絶対、結婚しない!」

 

 腹の底から断言する。

 私はそのまま、オスカーを置いてひとりで自分の部屋に戻った。

 




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