【2024/11/29書籍①発売】無理ゲー転生王女(クソゲー悪役令嬢外伝)~隣国王子に婚約破棄されたけど、絶対生き延びてやる!   作:タカば

90 / 92
暗殺者を捕まえろ

「ジル兄様、あそこ!」

 

 中庭に出ると、護衛の騎士や侍女を連れて歩く、サラお義姉様の姿が見えた。厳重に守られている彼女の姿をみて、ほっと息が出る。

 ディーがさっと振り向いた。

 

「メイ、侍女は?」

「ええっと」

 

 ふよふよと浮きながら、女神が視線をさまよわせる。

 

「早く」

「だから、私と邪神の力は相性が悪いんですってば。見えにくくて……」

「おい、あれ!」

 

 なぜかついてきてたルカが声をあげた。

 彼の指さす方を見ると、植え込みに隠れるようにして、侍女がひとり立っている。ブラウンの髪をきっちりまとめた年かさの侍女。女神が言い当てた通りの容姿だ。

 あれ? でもこの侍女って、さっきも見たような。

 

「なんで俺についてた侍女があんなところにいるんだ」

 

 だよね?

 ルカ王子づきの侍女として、さっきまで部屋にいた女性だよね。私が入ってきたから、気を聞かせて席を外してくれてたけど。

 だからって、お義姉様のところに行ってこいとは誰も言ってない。

 

「メイ?」

 

 ディーがもう一度女神に声をかけると、女神は目を細めて侍女を凝視した。

 

「あの人です、運命が見えないの」

「確定ですね。ちょっと君!」

 

 ジルベール兄様が声をかけた。

 侍女はびくっと体を震わせ、そして走り出した!

 

「おい!」

 

 侍女にこちらの静止を聞く様子はない。まずい。こちらの意図に気づかれた。

 彼女は一直線にサラお義姉様へと走っていく。護衛の騎士や侍女たちが、いっせいに不審者に向かってふりかえった。

 

「お前……!」

 

 しかし、彼らは武器を構えることはできなかった。

 

「あああああっ!」

 

 侍女が髪を振り乱しながら叫ぶと、ばたばたとその場に倒れていく。

 何が起きたかはわからない。

 しかし、彼女が原因なのだけはわかった。

 きっと関係者たちの記憶を奪っていた力をどうにかして、彼らの意識までも奪ったのだろう。

 正体がバレた暗殺者は、なりふり構わずお義姉様に向かっていく。

 

「ディー!」

 

 私の叫びに反応して、ディーが走り出した。

 走りながら、子ユキヒョウはするすると輪郭を変えていった。真っ白な毛並みは、白い神官服へ。もこもこの手足は、すんなり伸びた大人の男性の手足へ。

 人へと姿を変えたディートリヒは、人間離れしたスピードで侍女へと迫る。

 でも、人間離れしているのは侍女も同じだ。

 獣じみた動きで、サラお義姉様へと迫る。

 

「来ないで!」

 

 お守りを握りしめてお義姉様が叫んだ。彼女の手が一瞬虹色に輝く。

 その瞬間。

 

「ぎゃんっ!」

 

 びたんっ! と侍女が地面にたたきつけられた。

 

「え……?」

 

 石畳の隙間に、足をひっかけてコケたらしい。

 信じられないことに。

 そして、コケて地面に激突した拍子に、侍女手から武器がすっぽぬけた。金属でできたナイフっぽいそれは、ごん、がん、と中庭の隅に置いてあった農具にぶつかる。武器が当たった農具が倒れ、横にあった木材を倒し、さらにその横にあったテーブルが倒れた。乗っていた花瓶がシーソーの要領でふっとばされ、城の窓に当たり、そこから転がっていって屋根板にぶつかり、連鎖反応的に次々と屋根板が外れたかと思うと、すぐ下の物置に当たってバウンドし……最終的に、侍女の上に瓦礫がいっせいに降り注いだ。

 

「ぎゃあっ!」

 

 突然起きた予想外の状況に、受け身を取ることもできずに侍女は倒れ伏す。

 

「サラお義姉様!」

 

 すぐそばにいたサラお義姉様は全くの無傷だった。周りで倒れている侍女や護衛にも、被害はない。重なった不運は、すべて暗殺者の侍女にだけ降りかかっていたのだ。

 

「どういうこと?」

「細かい事情はあとで。とにかく、犯人を拘束しましょう」

 

 ディーが気絶している侍女の腕を持ち上げて、縛り上げる。

 今は何が起きたか分析するよりまず、危険人物の排除だ。

 

「……これで、よし」

 

 気を失ってる間に、侍女は両手足を拘束されてしまった。これでもう襲ってくることはできないだろう。

 

「彼女は俺が身柄を引き受けよう。倒れた人たちの介抱は……」

「呪いの解除は、私におまかせですよ」

 

 ふふん、と笑って女神が前に出た。

 

「いたいの、いたいの、とんでいけ~」

 

 相変わらず気の抜けるようなおまじないを口にする。

 しかし、セリフがふざけていても、効果は絶大だったらしい。

 騎士たちは次々に目を覚ました。

 

「あれ……?」

「なんでこんなところで?」

 

 困惑しながらも、体を起こし始める。

 暗殺者を拘束しながら、ジルベール兄様がにこっと笑いかけた。

 

「皆、ご苦労。ちょうどサラ義姉さんを襲う暗殺者を捕まえたところだ」

「え……?」

「暗殺者!?」

 

 騎士たちが驚くのも無理はない。意識が途切れたと思ったら、なぜか王子と王女が侍女をひとり拘束してたんだから。

 騎士たちへの説明は兄にまかせて、私はお義姉様に駆け寄る。

 

「お義姉様、お怪我はありませんか」

「え、ええ……あなたたちが駆けつけてくれたから」

 

 サラお義姉様は紅い瞳を周りに向けた。

 

「でも、どうして突然、彼女が倒れたのかしら」

「それはちょっと私にもわからないです」

 

 一瞬、ディーが何かしたのかと思ったけど、そうでもなさそうなんだよね。連鎖的に物が倒れてた時も驚いてたみたいだし。

 

「細かいことは、部屋に戻ってから……」

「つっ……」

 

 今まで呆然と立っていただけのサラお義姉様がしゃがみこんだ。

 

「お義姉様?」

 

 大きなお腹を押さえて、大きく息をつく。

 その顔は真っ青だった。

 無事に見えてたけど、実はさっきの襲撃で何かされてたんだろうか。

 

「今、お医者さんを呼びますね」

 

 ふるふる、とお義姉様は首を振った。

 

「い、医者も……だけど、産婆を呼んで」

「えっ……」

 

 よく見たら、しゃがみこんでいるお義姉様のドレスの裾が濡れていた。

 

「産まれる……」

「わああああああ」

 

 私たちは、慌ててお義姉様を離れに担ぎこんだ。




【情報解禁】
クソゲー悪役令嬢コミック版が5/20より連載開始!
詳しくは活動報告をチェック!


そして2025年3月28日「クソゲー悪役令嬢⑥」が発売されます。
こちらも活動報告をチェック!!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。