ブルーアーカイブ_防衛室の道化師   作:気まぐれ猫

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 投稿した初日「ちょっとでも評価してくれたらいいな~」
 一晩明けて「バーが赤くなってるやん!!うせやろ!!」

 まさかこんな駄文に高い評価をくださるとは思いもしませんでした。感想もしっかり読んでいます。
 読んでくれた人、ありがとうございます!!モチベが高いうちに投稿しちゃうぜ!!


第一話_小鳥遊ホシノ

 

『うへ~、おはよう。カヤちゃん』

 

「おはようございます、ホシノさん。早速で悪いんですが、一つ頼みごとがありまして」

 

 始業のベルが鳴ってすぐの時間。アビドスへ通信すると生徒会長である小鳥遊ホシノに繋がる。昨日も忙しかったせいなのかあまり寝れていないようですね。睡眠はしっかりとらないと彼女が心配しますよ。

 

『おお~、いいよいいよ。おじさん何でも言うこと聞いちゃう』

 

「ではお言葉に甘えて。本日そちらにシャーレの先生が向かいます。アビドスは広いですから、遭難しないように迎えに来てもらってもいいですか?」

 

『・・・へぇ、連邦生徒会がようやく重い腰を上げたってわけ』

 

 私の言葉で一瞬で穏やかだった目つきが以前のものになる。かつて室長に蹂躙されて何度もリベンジする度に叩きのめされた時にしていた、普通の人間なら睨み殺されそうな眼光。その瞳には敵意がはっきりと示されていた。

 

「落ち着いてください。口調が崩れていますよ。ほら、スマイルスマイル♪」

 

『・・・・・・』

 

「前にも教えたでしょう。連邦生徒会長の失踪によって引き起こされた混乱によって、重要な案件以外すべてが後回しにされていたのです。最近になってようやく落ち着いてきたから、少しずつ各学園の問題に向き合おうとしてきたんです」

 

『・・・それは分かっているけどさ~。もう少し早くしてくれてもいいんじゃないかな。こっちは色々と処理が大変なんだからさ~』

 

 怖い顔をぐにぐにと解しながら文句を言ってくる。それについては分かっているのですよ。彼女たちから逐一情報が入ってきていますから、理由は分かりきっています。

 

「おやおや、私からの援助が不満で?もう少し量を増やしましょうか?」

 

『それはいいかな。これ以上そっちに借りを作るのも怖いし、足りない分は何とかするよ』

 

「分かりました。ですが、シャーレの手が入る以上、表立って支援はできなくなります。これからは少し手間ですがルートを複雑化しますので。詳細はメールを送りますよ」

 

『分かったよ~・・・ねぇ、カヤちゃん。あの人の容体は?』

 

「・・・相変わらず寝坊助のようでしてね。まだ惰眠を貪っていますよ」

 

 私の言葉に彼女は明らかに落胆する。そりゃそうですよね。知らなかったとはいえ、過去のアビドスの遺産が切っ掛けであの人は今も目覚めない状態になった。

 でも、貴女に責任はありませんよ。悪いのはあんなものを生み出したゲヘナの雷帝と口車に乗せられた当時のアビドス生徒会なんですからね。貴女がそれを知るのはもう少し後ですが。

 

「ホシノさん、いい加減過去にしがみつくのはやめてください。そんなことをしてもあの人は喜びませんから」

 

『・・・うん、分かった』

 

「じゃ、切りますよ。そろそろ目覚めのコーヒーができるので」

 

『カヤちゃん!』

 

 通信を切ろうとするとホシノさんが呼び止めてくる。何かほかに伝え忘れたことでもあったでしょうか。

 

「なんですか?」

 

『・・・今度アビドスに遊びにおいでよ。ノノミちゃんたちにも紹介したいからさ』

 

「ええ、分かりました。時間が空いたら伺いますよ」

 

 通信が切れて一人になった部屋で、大きく息を吐きながら出来上がったばかりのコーヒーを飲む。

 まずは第一段階。これで先生がアビドスへ行っても遭難することはないだろう。あそこは無駄に広いですから、土地勘のない者が足を踏み入れたら迷うこと間違いなしです。事実、私達も最初は迷って大変な思いをしましたから。

 そして問題のカイザーコーポレーション。私たちが手を入れたおかげで借金は帳消しになった。とはいえ、本当は今すぐにでも解体したいところですが、アレを見つけてもらうまで存分に泳いでもらわなくては。そのための餌はしっかりと与えなくてはいけません。

 

「今まで散々他人の権利を貪ってきたんです。それならこちらも骨の髄までしゃぶり尽してあげますよ」

 

 端末を操作してある人物へと連絡を取る。その人物は私の顔を見ると嬉しそうな声を上げた。

 

『これはこれは防衛室長殿。何か御用で?』

 

「おはようございます、カイザージェネラル。商談をしたいのですが」

 

 

                    ☆

 

 

「あれ、ホシノ先輩。お出かけですか?」

 

「うん、ちょっとお客さんが来るから迎えに行ってくるよ~」

 

 武器を背負って校舎から出ようとする私に書記のアヤネちゃんが声をかけてくる。書類を整理していたのか、小脇に書類の束を抱えていた。後ろでは同じような書類を段ボールに入れたノノミちゃんの姿もある。これから生徒会室に運んでいくようだ。

 

「え、お客さんって?」

 

「シャーレの先生だって。今日こっちに来るみたいだからさ~。遭難しないように迎えに行くってわけ」

 

「やった!私たちの手紙が届いたんですね!!」

 

「これで何とかなりそうです~☘」

 

 無邪気に喜ぶ二人に少しだけ顔が綻ぶ。ここ最近忙しすぎて笑顔が少なくなってきたから、二人の笑顔が見られるのは嬉しい。

 

 ところでノノミちゃん。そんなにもって重くないの?天井ギリギリの高さだよ?

 

「じゃ、行ってくるね。お客さんだし、お茶菓子とか用意しといてくれる~?」

 

「はい、分かりました!!」

 

「何にしましょうかね~☘」

 

 わいわいと話している声を聴きながら校舎を出る。校庭では他の生徒たちが運動をしたり、遊んでいたりしている。

 ほんの少し前までは砂塗れの校庭だったのに、今ではそれが無くなって過ごしやすい校舎になっていた。

 

「本当、考えられないよね。ちょっと前まで廃校寸前だったのに、少しずつ生徒が増え始めてる」

 

 シロコちゃんにプレゼントされた自転車に乗って力強く漕ぎ出す。砂漠にも耐えられるようにチューンされていて、大抵の砂場であれば乗り越えられるから重宝しているんだよね。

 速度が乗ってきて心地よい風が頬を撫でて、少しずつ活気を取り戻してきた街並みを見ながら道を進む。こんな光景が見られるとは思わなかった。これも全部あの人のおかげだ。

 

「・・・早く帰ってきてくださいよ。まだ勝負はついていないんですからね」

 

 頬に刻まれた十字の傷跡をそうっとなぞる。イライラしていた私をたった一撃で叩きのめした貴女を。砂漠で遭難して死にかけたユメ先輩を助けた貴女を。アビドスを守るために犠牲になった貴女を、私は決して忘れない。忘れてなんてやらない。

 

『初めまして、私は防衛室長の■■■■■■。こっちの小さいのは次長のカヤちゃん。よろしくね?』

 

『こちらこそ初めまして!アビドス生徒会長の梔子ユメです!こっちの小さくてかわいいのが後輩のホシノちゃん!』

 

『『誰が豆粒ドチビだ(ですか)!!』』

 

『そこまで言っていないよ?小さいって言っただけだし』

 

『そうそう、それに二人とも小さくてかわいいじゃない』

 

『『小さいから離れろ(てください)!!』』

 

「二人して小さい小さい言ってきて。あの時は本気で殺してやろうかと思ったからね」

 

 ファーストコンタクトは愉快なものだった。ふわふわした先輩にカリカリした後輩。カヤちゃんには最初はいい印象は持っていなかったけど、話しているうちにシンパシーを感じて自然と仲良くなった。二人きりになった時はお互いに先輩の不満を愚痴っていたっけ。

 

『それで室長ったら酷いんですよ!毎度毎度私の頭を乳置き場にしてきて!おかげで首が凝って仕方ないったらありゃしない!』

 

『私もユメ先輩に抱きしめられる度に窒息するか首を折られそうになります。なんですかあのおっぱいは。何をしたらあんなに大きくなるんですか』

 

『本人に聞いても分からないって。しいて言うなら適度な運動ときちんとした食事。あと睡眠って言っていました』

 

『それで大きくなったら苦労はしませんよ。私だっていつかあんな風に・・・』

 

『こっちは忙しくて碌に眠れないってのに、全く・・・』

 

『『はぁ・・・』』

 

『・・・ねぇ、ホシノさん』

 

『何、カヤさん』

 

『あの二人、どっちの胸が大きいと思いますか?私は断然、室長だと思いますけど』

 

『は?大きさならユメ先輩のほうが大きいに決まっています。私の方が付き合いが長いんですから』

 

『いやいや室長の方が』

 

『いやいやユメ先輩の方が』

 

『『・・・・・・』』

 

『よし、ならば今から確かめに行きましょう』

 

『分かりました。では、お互いに武運を祈ります』

 

「あの時は忙しくて色々と可笑しくなってたな~。まぁ、そこで初めて負けたんだけど」

 

 疲れて判断力が弱まっていた時に、お互いの先輩の胸のサイズを確かめるという邪な目的で始まった戦い。カヤちゃんはあっさりとユメ先輩の胸に触れたが、私はそうはいかなかった。確実に気配を消して背後から音もなく近寄ったというのに気付いたら空を見上げていた。何度も何度も飛び掛かってはいなされて、投げられ、締め落とされて。結局触ることができなかったが、その時から勝負といって襲い掛かることが多くなった。

 今思えば、自分より強い人に会うのが初めてで嬉しかったのだろう。自慢ではないが、キヴォトスで一番強いのは自分だと思っていた。今まで何人もの不良たちやオートマタたちを蹴散らしてきたし、自分に敵う奴はいないと思っていた。

 それがどうだ。目の前に現れた人物は自分の攻撃をあっさりと回避してくる。それがとても嬉しかった。次はどうする。どうやったら倒せるのかと頭を巡らせるのがとても楽しかった。

 

『ぜぇ・・・ぜぇ・・・!!』

 

『あわわ~~ホシノちゃん大丈夫~?』

 

『室長、飲み物です。ホシノさん、どんな気持ち?今日こそは勝ってみせますとか言っていたのに手も足も出ず完封されてどんな気持ち?』

 

『ガヒュ・・・コヒュ・・・!!』

 

『ハイハイ息を整えて。なかなかいい線行っていたよ?もう一手あれば届いただろうね』

 

『おぉ~!よかったね、ホシノちゃん!もう一手だって!』

 

『そ、その一手がとてつもなく遠いんですよ・・・!!』

 

『大丈夫、きっと届くよ。君はまだ伸びしろがあるからね』

 

「嬉しかったな。その時に初めて認められたって思えた」

 

 自分よりも強い人に認めてもらえた。それだけですごい自信が溢れてきたし、うれしくて仕方がなかった。ユメ先輩は『ホシノちゃんが取られた~!!』て泣き出して大変だったし、カヤちゃんは『かまいすぎですよ、室長はまだ仕事があるので!』と不機嫌になるし。

 でも、あの人は怒ることはなかった。毎日飽きるほど勝負を挑んでも、キツく当たっても微笑んで対応してくれた。きっと、私はそんなあの人に甘えていた。だから、ユメ先輩の作ったポスターを破った時にもいつもの調子で言ってしまった。

 

『・・・ホシノ、この破れたポスターは?』

 

『ああそれですか。ユメ先輩が砂祭りなんてふざけたものをやろうなんて言ってきたから破ってやったんですよ。廃校寸前のこの学園でできるわけもないのに。住民もほとんどいなくなって不良共の巣窟になっているのに』

 

『・・・・・・』

 

『先輩からも言ってあげてくださいよ。こんなもの無理だって。できるわけないって!』

 

『・・・おい、ホシノ』

 

『え。な、なん―――』

 

『ユメが登校しなくなってから何日経った?』

 

『な、七日ですけど。きっと風邪でも引いたんです。ユメ先輩でも風邪くらい引くでしょう』

 

『分かった。ホシノ』

 

『なんです―――!?』

 

 気が付けば一晩の時が経っていて、校庭には首が捥がれた巨大な蛇のような機械が横たわっていた。すぐ傍でユメ先輩は救急車で手当されているし、カヤちゃんがミレニアムの人たちに何か指示を出しているし、何が何だか分からなかった。

 

『こ、これって・・・』

 

『ホシノ』

 

『あ、あぅ・・・』

 

『どうして私が怒っているか分かるか?』

 

『え、えっと』

 

『ユメは中度の熱中症。幸いなことに重症化はしていないから数日間の入院で済む。加えてビナーに殺されかけたりしたけど、寸でのところで助けた』

 

『ね、熱中症?ビナー?』

 

『あのデカい蛇のこと。詳しいことは後で説明する。今はユメと一緒に病院へ行くように。カヤ、悪いけど病院へ一緒についていって諸々の手続きを頼む。後の処理は私がやる』

 

『了解しました』

 

 幾分か顔色が良くなったユメ先輩と一緒に病院へ運ばれながら怖い顔をしたカヤちゃんに話を聞く。そいつがアビドスの砂漠化を進めていた原因らしく、ユメ先輩は殺されかけたが間一髪で■■■ちゃんが助けて、一晩中戦って今朝ようやく仕留めたらしい。その証拠に外にあるビナーの壊れた頭部には彼女を象徴する巨大な盾が突き刺さっていた。

 

「あの時は本当に肝が冷えたな。私が■■■ちゃんの拳骨で一晩気絶している間にあんなことになっているなんて」

 

 ユメ先輩は少ししたら目を覚ました。今までのことを泣きながら謝って、ユメ先輩に抱きしめられながらほっとしたのを覚えている。あの温もりが二度と感じられなくなっていたかと思うと心が氷水に浸されたかのように冷たくなる。もし、■■■ちゃんが間に合わなかったらと思うと彼女には感謝してもしきれなかった。

 その後、定期的にアビドスで発生していた砂嵐は止んで、少しずつ平和が戻ってきていたある晩に事件は起こった。夜警をしながら町の郊外を歩いている時に、遥か彼方で妙な光が見えた。その時はあまり気にしていなかった。防衛室の人たちとSRTが夜間演習をするという話を聞いていたから、きっとそれが原因なのだろう。別に大したことじゃない。そう思っていた。

 

 

 あの時までは。

 

 

『・・・ねぇ、嘘ですよね?』

 

『嘘ではありません。三日前の作業で室長は意識不明の重体となりました。一命は取り留めましたが、未だに目を覚ましてはいません』

 

『嘘だっ!あの人が簡単にくたばるわけない!そんな出鱈目言うな!』

 

『出鱈目なんかじゃない!!』

 

『っ!?』

 

『そんな下らない嘘なんて言うものか!!あの人はアビドスと私たちを守るために犠牲になったんだ!!』

 

 いつもの冷静な態度をかなぐり捨てて怒鳴り返すカヤちゃんの姿に言葉を失う。それでようやく分かってしまった。誰よりも強いあの人が倒れてしまったのだと。深い傷を負ったらしく、いつ意識が戻るのか分からないのだと。

 ユメ先輩は助かった。けど、■■■ちゃんは?どうして?まるで身代わりみたいに、巨大な力が作用しているような予感がしてならなかった。

 幸いなことにユメ先輩は彼女が倒れたことを知らなかった。大怪我をしてしまい、面会謝絶だという風に誤魔化した。もし知ってしまったら悲しんでしまうと思ったから。ユメ先輩は卒業式に来てくれないことに悲しんだが、代わりにカヤちゃんが代理として祝辞を送った。

 原因については教えてくれなかった。探ろうとしても一部のエリアは立ち入り禁止区域に指定されて、近付くことができない。カヤちゃんに頼んでも、今は話せないと言って教えてもらえなかった。でも、二年後には必ず教えると約束してくれた。そしてその日がもう間もなく。

 

「よし、到着~。ここでいいかな」

 

 待ち合わせ場所に着くと自転車を止めて周りを確認する。どうやらまだ来ていないらしく、それっぽい人の姿はなかった。

 これから来る『先生』が私たちの窮地を救ってくれると言うけど、本当にそうなのだろうか。『あいつ』やカイザーみたいに私たちを騙して搾取してこようとするのか分からない。警戒するのに越したことはないけど、一応カヤちゃんの知り合いだし、少しは信じてあげようかな。

 

「お、来た来た。お~い!!」

 

 少しするとそれっぽい大人が姿を現す。一見すると無害そうな人で私たちと違ってヘイローがない先生に向かって大きく手を振った。




 物語はそう簡単には変わらない。何かを得ようとすれば何かを失うのは必然だというのに、彼女はそれを忘れていた。その代償がこれだ。
 世界にとって物語は予定通り進まなければならない。絶対に
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