ん、これって俺の作品じゃん。え、しかも日間ランキング二位!?
何が何だか分からない・・・(L感)
「それで、話とはなんですか?」
「防衛室の予算についてよ、カヤ防衛室長」
予算の用紙をイライラとした顔で机に叩き付けてくるアオイ財務室長。やめてくださいよ、牛乳が零れてしまいます。
「そんなにカリカリしないでください。カルシウム足りないんじゃないですか?今牛乳を持ってきてあげますから」
「そんなものいらないわ!要求する予算がおかしいと言っているの!!」
目を吊り上げてこちらを睨んでくる。そんなに怒ることですかね。おかしいところなんて一つもないのに。
そんな私の思いをくみ取ったかのように予算額の部分に指をさして叫んでくる。
「以前までの予算とはケタ違いに増えているじゃない!とてもじゃないけどこんなに出せないわ、今すぐ修正しなさい!!」
「それは無理な話ですね。理由は説明した通りですが、納得いきませんか?」
鬼気迫る表情で迫ってくるが、涼しい顔で聞き流す。私の対応に彼女は息が詰まって思わず黙ってしまう。
はぁ・・・相変わらずの堅物ですね。仕方ありません。もう一度一から説明してあげましょう。
「まず一時的に閉校されたSRT特殊学園の維持費。無数の最新機器や兵器があるのですからお金がかかるのは当然でしょう」
「そ、それは・・・」
「次に閉校の影響で他校へ転校したが、馴染めずに防衛室の特戦隊や特科隊になった隊員への給料や維持費。これも重要なものです」
SRTで訓練を積み、得た矜持や誇りを全て捨てて他校へ転校しろと言っても無理な話。幾人かは馴染めずに戻ってきて相談してきた。だから私は防衛室で受け皿を作ってあげることにした。
それが特別作戦実行部隊(特戦隊)と特別科学部隊(特科隊)。私がSRTに代わって手に入れた暴力装置であり、忠実な兵士。SRTが復活するまでの一時的な戦力ですが、十分な兵力です。彼女たちの面倒を見るのも室長である私の役目ですから。
「加えて、連邦生徒会長の失踪が原因で起こった混乱。これを防衛室で収めてきましたが、何故か分かりませんが向こうの戦力も充実してきました。このままではこちらが磨り潰されてしまうので戦力増強のための資金です。何か反論は?」
「・・・限られた予算で何とかして頂戴。それをするのが貴女の仕事でしょう?」
ギリギリと歯軋りをしながら唸るような声で話してくる。
全く分かっていないですね。数字だけしか見えていないのですか、この人は。
「現実を見てください。平和を維持するためにはそれ相応のものがなくてはなりません。それとも何ですか?あなた一人でなくした予算分の働きをしてくれると?」
「・・・・・・!!」
「それができないなら黙って承認しなさい。私からは以上です」
これ以上話すことはないと言わんばかりに牛乳を飲みながらタブレットに目を向ける。アオイはしばらく俯いていると、小声でぼそっと言った。
「前室長ならこんなことなかったのに」
小声で放たれた言葉に思わず懐に手が伸びそうになるが、ぐっと拳を握って耐える。乗るな、不知火カヤ。こんな見え見えの挑発に乗ってどうする?演じろ、傲慢で全てを見下す私を。
「前室長は前室長。今は私が室長です。そんなことも判断できないのですか、貴女は?」
「カヤっ!?」
「あの人の言葉も碌に聞かずに、会長がいるからと全てを後回しにしてきたあなたたちの落ち度です。良かったら何人かそちらに回しましょうか?色々とてんやわんやしているみたいですし。いやぁ、無能共の世話は大変ですねぇ?」
「・・・もう結構!!今回は通してあげるけど、次はそうはいかないから!!!」
よほど頭に来たのか書類を掴むと足音を強く響かせながら荒々しく出ていく。こんな安い挑発に乗るなんて、あの子も馬鹿ですね。
まぁ、予算を若干水増ししているのは事実ですが。
すっかりぬるくなってしまった牛乳を一気に飲み干していると、端末に通信が入る。どうやら動き出したようですね。
「どうかしましたか」
『OWL1より報告。アビドスがゲヘナの戦いに巻き込まれました。現在、先生の指示の下で戦っていますが、如何せん戦力差がありすぎます』
「OWL小隊は先生たちの援護に回りなさい。先生にはヘイローがありません。一発でも喰らえば致命傷です」
『OWL小隊、了解。これより先生の援護に回る』
アビドスに潜入させていた部隊から連絡が入る。どうやら『ノート』の通りになりそうだ。
通信が切れると、端末に便利屋と一緒にゲヘナの風紀委員に対抗するアビドス対策委員会と先生の姿が映る。数の暴力に押されて若干劣勢気味だが、それでも彼女たちは耐えている。ですが、それも時間の問題でしょう。
便利屋68を確保することを口実として、エデン条約における優位性のために先生を保護という名目で監禁する。それがいったい何を示すのか彼女たちは分かっているのでしょうか。
「さて、私も動くとしましょうか。先生を自陣に引き入れるということがどういうことか防衛室長として釘を刺しておかなくてはいけません」
犯罪者を確保するためとはいえ、何の脈絡もなく手を出してくるのであればそれ相応の覚悟があるということ。ならばやってやりましょうか。
私は端末を操作して彼女たちに指示を出す。こういった荒事は彼女たちの十八番ですからね。
「特戦隊、出動せよ」
☆
「なるほど、それでこの有り様ってわけね」
「す、すまん。委員長」
「私もアコ行政官の暴走を止められず、すいませんでした」
アコがアビドスへ勝手に治安部隊を動かしたから何事かと思って来てみたら、黒づくめの格好をした人たちとアビドス生によって部隊を壊滅させられていた。辺りには壊れた風紀委員の武器が転がっており、全員気絶させられているか組技で地面に押さえつけられている。
”ごめんね、えっと・・・”
「初めまして、先生。私は風紀委員委員長の空崎ヒナ。そこで倒れている人たちのリーダーよ」
あの人から教えられた通りの人。無害そうで優しそうな人。この人がキヴォトスの未来を救ってくれる人。破滅的な未来から私たちを守ってくれる人。
「今回は便利屋を仕留めるためとはいえ、他校の自治区に侵入したこと。心から詫びるわ。ごめんなさい」
「い、委員長!?」
【委員長が頭を下げる必要はありません!便利屋を庇った時点で向こうの落ち度です!!】
「黙りなさい、二人とも」
「ひ、ヒナ委員長・・・」
「確かに指名手配犯を庇ったことについては向こうの落ち度。だからと言って他校の自治区へ何の通達もなく無断侵入。加えて被害を与えるなんて言語道断よ」
少なくともあの人は、そんなことしなかった。他の自治区へ入る時は一声かけてきたし、きちんと許可もとってきた。
他人ができることを、私たちができないはずがない。
「それにほら、便利屋なんてどこにいるの?もう姿形もないじゃない」
「え・・・あ!?」
「いつの間に・・・」
大方彼女たちが現れた時のどさくさに紛れて逃げたのね。全く抜け目のない人。どちらにせよ犯人がいない以上、私たちがここにいる必要はない。それに、彼女たちに加えてあの子がいる以上、ここで戦う意味はない。
「うへ~。遅れてごめんね~」
「ホシノ先輩!」
「もう、いったいどこほっつき歩いていたのよ!!」
「いやぁ~、ごめんごめん。どうしても外せない用事があってさ~」
のんびりとした声をしながら現れた人物。一目見ただけでも分かる強者の気配に思わず冷や汗が流れる。
小鳥遊ホシノ。現生徒会長にてアビドス対策委員会のリーダー。情報部の話とは随分と違うけど、多少変わっただけで気配は変わらない。
「ゲヘナのヒナちゃん、だっけ。さっきの謝罪、アビドスの生徒会長として受け入れるよ」
「ありがとう。今回で出た損害については後日風紀委員に請求して」
「分かったよ~」
ゆったりとした口調だが、その視線は私から外していない。あれは何かあればいつでも動けるように準備している。そんな顔しなくても、私は何もしないのに。
「あなたたちもごめんね。防衛室長には私から謝罪しに行くわ」
【防衛室に来る必要はありませんよ、ヒナ風紀委員長】
「・・・カヤ」
リーダー格と思われる人物からあの人の声が聞こえる。無言で端末を操作すると、ホログラム状態のカヤが映し出された。
【今回の件については、そちらの天雨アコの独断専行だと聞いています。ですので、欲しいのはあなたの謝罪ではなくて、そこでしょぼくれている横乳女の謝罪です】
【なっ!?誰が横乳女ですか!これは蒸れるから仕方なく―――】
「・・・ハァ」
カヤからの言葉に憤慨して言い訳するアコを見て、思わず溜息を吐く。うちの行政官って、こんなに相手の言葉に乗りやすかったっけ?
「アコ、防衛室長に謝罪を」
【い、委員長!?】
「私達ゲヘナの格をこれ以上下げないで。それに特戦隊を動かしている以上、ここは私たちが頭を下げないと収まらない。下手をすればゲヘナが火の海になる」
【た、大変申し訳ありませんでした・・・!】
【表面上の謝罪ですが、いいでしょう。受け入れます】
「ありがとう。アコ、帰ったら反省文を書いてもらうわ。私が納得するまでね」
【そ、そんなぁ・・・】
悔し気にしながら謝罪をするアコを諫めるために罰を与える。こうでもしないと風紀委員としての格好がつかないから。
「じゃ、皆撤収。ゲヘナに帰るよ」
「「「了解!」」」
特戦隊の人たちが拘束を解いて乗ってきたであろう装甲車へ帰っていき、風紀委員たちが壊れた武器や仲間を背負いながら整列していく。その様子を見ながら私は先生に近付いた。
「先生もごめんなさい。ゲヘナの問題に巻き込んでしまって」
”ううん、大丈夫”
”それに生徒の問題に関わるのは先生としての仕事だからね”
「そう、よかったわ」
多少煤けてはいるけど、怪我がないようでよかった。もしシャーレの先生をゲヘナが傷付けたとなれば、あの狸が喜んで責めてくるだろう。むしろ、それで風紀委員を辞めれるのなら喜んで辞めるけど。
「それと先生、一つ忠告しておくことがあるの」
”何かな?”
「カイザーがアビドスから借りた土地で何かしようとしているわ。何を企んでいるのか分からないけど、気を付けて」
”分かった。ありがとう”
私の言葉に先生は優しく微笑む。その表情に少し頬を緩めながら私は待機していた車に乗り込んだ。
「なぁ委員長。あいつらいったい何者なんだ?」
「それにアビドスには莫大な借金があって街は廃れたと聞いていたのに、少しずつ復興に向かっているみたいでしたけど」
「ああ、それのこと」
走り出した車で二人が話しかけてくる。そっか、この二人は知らないんだっけ。なら、一つずつ説明しようかな。
「まずイオリの質問だけど、あの黒づくめは連邦生徒会防衛室直轄の特殊部隊、特戦隊ね」
「特殊部隊!?」
「噂程度ですが聞いたことがあります。なんでも閉校になったSRT特殊学園の生徒で構成された部隊だとか」
「その認識であっているわ。元SRTというだけあって、それなりに高い戦闘技能を持ち合わせている。私達よりも実力は上よ」
自分たちよりも上と聞いて、ゴクリと唾を飲み込む二人。その様子だと成す術もなくやられたようね。私も事前の情報がなかったら真正面から戦おうとは思わないもの。
それに、二人とも気付いていなかったみたいだけど遥か遠くのビルの屋上に狙撃手らしき人影が見えた。もしかしたら特戦隊が来る前から狙撃されていたかもしれないけど。
(ざっと目視しただけでも4人。距離にして3000ヤード。しかも風が吹く中でピンポイントでイオリたちを狙撃してきた。とんでもない腕ね)
「で、二つ目の質問。アビドスの莫大な借金についてだけど、それはもう過去の話。ミレニアムサイエンススクールが借金を全部肩代わりして支払ったわ」
「えぇっ!?」
「9億とか聞いていましたけど」
「なんでも、砂漠でとんでもないオーパーツを見つけて、それをミレニアムが買い取ったって。それを元手に借金を全て返済して、余った資産とカイザーに貸し出した土地の賃貸料で自治区の復興をしているみたい。不思議なことに砂漠化を推し進めていた砂嵐も止んで、出ていった住民たちも戻ってきて生徒たちも幾人か入学してきている」
砂嵐が止んだ時期と借金を返済した時期が同じだけど、何かあったのかしら。別にそんなのどうでもいいけど、早く帰って寝たいし。
「じゃ、そういうことだから。私は少し寝る」
「え、委員長?」
「アコ。反省文は勘弁してあげるから、今回の顛末の始末書お願いね」
【ちょ、委員長!?】
「イオリとチナツも手伝うように。合わせて一か月外回り。これは二人への罰よ」
「ぐえ~・・・」
「うぅ~・・・」
三人の呻き声を聞きながら、私はアイマスクを取り出して視界を覆う。ゲヘナに戻るまでの少しの間、休ませてもらうわ。
(それに、適度な睡眠は必要でしょ?ね、■■■さん)
『ヒナちゃんは確かに強い。このままいけば、間違いなく風紀委員に入ることになるね』
『うん、でも・・・』
『本当はそんな面倒な仕事したくない。のんびり日向ぼっこでもしながら寝たい。そうでしょ?』
『・・・』
『沈黙は肯定ね。だから、少し肩の抜き方を覚えること。常に緊張していては気が休まらずパフォーマンスが落ちる。そうなってしまえばミスをして余計な仕事が増えるの』
『し、仕事が増え・・・』(カタカタ)
『そうならないために昼休みとか電車や車での移動の際に睡眠をとること。初めは慣れないでしょうけど、直に慣れるよ』
『う、うん。頑張ってみる』
『次に周りのレベルを上げること。何もヒナちゃんレベルになれとは言わない。周りの不良くらいには負けないくらいにまで強くしてあげるの。最初は難しいと思うけど、君について行こうって思ってくれる人なら大丈夫だと思う』
『私なんかに、ついて来てくれる人なんかいるのかな?』
『もちろん!だって、ヒナちゃんは優しいし、人望があるから!』
(その通りになった。前は色々と大変だったけど、今の私には頼れる仲間たちがいる)
そのおかげで万魔殿の狸のいちゃもんも受け流せるようになったし、空いた時間を使ってお昼寝やショッピングもできるようになった。アコが、チナツが、イオリがいる。皆がいれば、きっと大丈夫。
(だから、早く帰ってきてね・・・)
疲れと車の心地よい揺れで意識が消えていく中で、あの人の顔が思い浮かぶ。私に希望を与えてくれたあの人はきっと帰ってくる。
そんなことを考えながら、私の意識は沈んでいった。
と、いう訳で今作では廃校対策委員会ではなく復興対策委員会ということになっています。生徒会も存続しており、ホシノが生徒会長となっています。ユメが生きている以上、生徒会が無くなる必要はないので。
借金もなくなり、カイザーから賃貸料で資金を搾り取っています。カイザーは借金を返済されるのは想定外で、苦渋の策で賃貸料を支払っている。アレを手に入れてしまえば帳消しになると判断して。