ブルーアーカイブ_防衛室の道化師   作:気まぐれ猫

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 転生者ちゃんは元が男なので、頑張って女性の言葉遣いをしています。ですが、感情が高ぶったり、激怒した際には口調が崩れてしまうのでなるべく怒らないようにしています。

 今回はオリジナル生徒の視点です。


第四話_大鷲ハク

 

「こんにちわ、ホシノさん。約束通りに来ましたよ」

 

「うへ~、久し振り~。大きくなったねぇ~」

 

 灼熱の太陽が照り付けるアビドス高等学校に足を踏み入れた私たちを迎え入れたのは、ふにゃりとした笑顔をこちらに向けるホシノさん。時折会ったり話したりしているうちに昔の切れたナイフのような性格はどこへやら。すっかり角が取れて丸くなっていた。

 

「後ろの人たちはカヤちゃんの知り合い?」

 

「こうして会うのは初めてですね。HAWK小隊、彼女は小鳥遊ホシノ。私の数少ない友人の一人です。皆さん、順番に挨拶を」

 

「HAWK1、大鷲ハク。小隊のリーダーを務めている。よろしく頼む」

 

「初めまして~。私はHAWK2、尾白ロアよ~。狙撃を担当しているの。お姉さんに任せれば百発百中よ?」

 

「あたしはHAWK3、姉の狗鷲アカ!弾幕はいいぞ?」

 

「HAWK4、妹の狗鷲アオ・・・お前もダンマニストにならないか?」

 

 友人であり、トリニティとは無関係なおかげか心地よく挨拶をする四人。トリカスが絡まなければいい人たちなんですがね。

 

「今回の演習相手になります。あなたたちにはいい経験になりますよ?」

 

「いいねぇ~強そうで安心したよ~」

 

「暁のホルスと呼ばれたあなたにそう言われるとは光栄だ。なら、こちらも手加減する必要がないな」

 

「勘違いしているようだから言っておくけど・・・そっちが挑戦者だから」

 

「あまり強い言葉を使うなよ・・・弱く見えるぞ」

 

 ホシノさんはハクに歩み寄り、その大柄な体を見上げて鋭い眼光をしながら言い放つ。向けられた強烈な圧に対して彼女も一歩も引かない。寧ろ傲慢に見下しながら対応する。

 溢れた圧が周りに流れ出して様子を見ていた生徒たちが慌てて逃げだしていく。普段の優しい生徒会長の姿を見ていた者からしたら別人のように見えるだろう。

 

「はいはい、挨拶はそこまでにして。ホシノさんも高ぶっているからと言って、ここでおっぱじめないでくださいよ」

 

「・・・分かってるって~」

 

「ホシノさん?」

 

「ごめんごめん!ちゃんと我慢するから、その怖い顔を向けるのやめて!?」

 

 慌てて表情を戻して出そうとしていた銃から手を放す。この人、こんな戦闘狂でしたっけ?何か以前の追い詰められていた時とは違う凶暴性がちらほら見えている。いったい彼女に何が?

 

「それじゃ、ついて来て。生徒会室に皆いるからさ」

 

「ええ。では、皆さん行きますよ」

 

『了解』

 

 歩き出すホシノさんについて行く。手入れをされて少しずつ綺麗になってきた校庭を見渡せば、ユメさんが室長に救助された時が思い出される。懐かしいですね。

 

「ユメさんの会社はどうですか?大分好調だと聞いていますが」

 

「カヤちゃんが色々と手を回してくれたおかげで少しずつ大きくなってきているんだって~。人手が足りない~とか言って、この前OGとして来た時に色々と言われたよ」

 

「じゃ、今度はユメさんも交えて話をしましょうか」

 

 借金を返せたと言っても一度廃れたものを戻すのは簡単ではない。業者もほとんどいなくなってしまったため、ユメさんは自身で会社を立ち上げることにした。最初はうまく行かず辛い日々だったが、持ち前の明るさと抱擁力に好感を持たれて少しずつ社員も増えていった。連邦生徒会からも支援をさせようとしたが、余裕がないの一点張りで断られる。だから防衛室から手を出して復興の手伝いをしていた。

 

 え、そんなの防衛室の仕事じゃない?環境を整えれば不良集団が来なくなり、自治区の安全が守られるから、これも立派な仕事です。

 

「あ、そうだ。カヤちゃん、ちょっと個人的に話したいことがあるんだけどいいかな?」

 

「・・・例の件ですね。皆さんは先に部屋へ向かってください。少し話してから向かいます」

 

「分かりました」

 

 行くぞと皆を連れて離れていく。やがて姿が見えなくなると二人で少し歩いて離れた空き教室に入る。

 

「それで、何か話したいことがあるんですか?」

 

「・・・カヤちゃんは、辛くないの?」

 

 入るなり悲しそうな顔でホシノさんが話してくる。辛い?いったい何がですか?

 

「だって、今着ている真っ黒なロングコート。それってあの人の服でしょ?」

 

「------」

 

「髪だって伸ばしているし、戦い方だって――――」

 

 視線を下げれば闇夜のように真っ黒な制服とコートが目に入る。あの人が暑い日も寒い日も着続けていたそれは、二年経った今でも変わらない。不思議なことに夏は涼しく、冬は暖かい。防弾防刃防水仕様だし、このコートに何度も助けられたこともある。

 髪だって伸ばした。今までシニヨンでまとめていた髪を解いて簡単なポニーテールにした。これもあの人が好んでいた髪型で、その長い髪を私がとかしていたっけ。

 

『室長って、どうして全身真っ黒なんですか?連邦生徒会の制服は白が基本で他の色を使ったとしてもワンポイントなのに』

 

『あー・・・私って戦い方が何というか近接戦しかなくて派手でしょ?それで返り血が付いたり、砂塗れになって汚すことが多いからなるべく洗濯回数を減らしたくて・・・』

 

『何故か銃を撃っても明後日の方向に行きますもんね。所謂クソエイムってやつ。室長が影でなんて言われているか知ってます?クソエイマー■■■ですって』

 

『うぐっ!?し、仕方ないじゃん!!銃なんて怖いし・・・』

 

『何か言いました?もう一度お願いします』

 

『とにかく!服が黒いのは汚れが目立たないようにするのと・・・』

 

『のと?』

 

『・・・防衛室はいつも争うことが多いし、一番「死」に近いから。私は戦うことしかできないし、皆みたいに頭もよくないから、区別のためだよ』

 

 

『もう!いい加減、髪くらい自分でとかしてくださいよ!毎回手入れするの大変なんですからね!』

 

『そんなこと言っても、自分でやるよりもカヤちゃんにやってもらった方が気持ちいいし、きちんとやってくれるから痛くないし・・・』

 

『貴女がいい加減なのが駄目なんでしょう!!まったく、超人の私がいなかったらどうなっていたか・・・』

 

『本当にね。カヤちゃんがいてくれて助かるよ。ありがとうね』

 

『ふ、ふふん。これくらい何ともありませんよ』

 

『いよっ!!超人!天才!将来有望!』

 

 

「何も形見として持っているわけではありません。この服を着ていれば悪人共が大人しくなります。結構な抑止力になるんですよ?」

 

「確かにそうだけど・・・」

 

「はいはい、湿っぽい話はここまで!大分待たせちゃってますし、早く皆さんと合流しましょう」

 

 追及してきそうだったので足早に教室から出る。後ろからホシノさんに視線を向けられていたのが分かったが、振り払うかのように歩く。不思議と誰も来ず、静寂に満ちた廊下に足音が響く中で一人で生徒会室へ向かった。

 

 

                  ☆

 

 

「HAWK小隊、攻撃開始!」

 

 太陽を背にして、境界線を越えているカイザーPMCへと銃弾をばら撒く。砂漠の熱帯流を計算して放たれた弾丸は一切ズレることなく相手に吸い込まれた。

 

「目標に命中!10時の方向より大型ヘリ、数4!!」

 

「突貫する!HAWK2は狙撃で援護。HAWK3、4は眼下の軍隊へ攻撃!」

 

『了解!!』

 

 アサルトライフルを構えてヘリへ突っ込む。下から銃弾の嵐が吹き付けられるが、アカとアオの濃い弾幕で逆に倒されていた。

 

「弾幕はパワーだ~!!」

 

「・・・殲滅」

 

 姉妹だからこそできる連携に敵はなすすべなくやられていく。撃ち溢した敵は、下で対策委員会にやられていた。

 

「はいはい、逃げられないわよ~!」

 

 ロアの狙撃で大型のゴリアテが対物ライフルによって火を噴く。その砲身から弾を吐き出すことなく崩れ落ちた。

 

「うぉおおおおお!!!」

 

 ヘリから放たれた弾丸を最小限の動きで避けて接近していく。そのままの勢いで体に回転をかけて翼を畳み、巨大な銃弾になる。

 避けようと機体を急制動しようとするが、乗り物は急に止まれない。機体を突き破って致命傷を与えた。

 

「せいやぁ!!」

 

 反対側に突き抜けると、火を噴く機体を掴んでもう一機の方へぶん投げる。金属がぶつかり合う鈍い音が響き、まとめて地上へ落ちていった。

 いきなり二機撃墜されたことに動揺したのか攻撃の手が止む。その隙を逃さずに一気に距離を詰めて操縦席に張り付き、銃を撃った。

 

「-----!!?」

 

 風防が砕け散り、操縦者がハチの巣になる。そいつは汚いオイルを撒き散らしながら機能停止し、操縦桿から手を離した。コントロールを失う直前に、ベルトから外した手榴弾を中へ投げ込む。

 すぐに背を向けると爆風が背中に当たる。その勢いを利用して最後のヘリに肉薄し、手首から投げナイフを投擲した。銀の閃光は真っすぐメインローターへ突き刺さり、回転力を下げる。相手は最後っ屁と言わんばかりにミサイルをこちらに向けて撃ってきた。

 

『いいですか、ハクさん。あなたの最大の特徴は頑強な翼と銃弾に怯まないクソ度胸です。あなたくらいですよ。自ら銃弾の雨に突っ込もうとするのは』

 

『私が身体を張らないと皆が傷つく。だからどんなことでも怖くない』

 

『それほどまでに仲間が大切なんですね。皆さんの身体に比べて貴方が一番傷ついていたし、汚れていた。自ら身体を張って、いじめから守っていたんですね』

 

『はい』

 

『でも、本当は凄く臆病な性格であることはロアさんやアカ、アオさんから聞いています。でも、それじゃ皆を守れない。だから恐怖心を暗示で消していた』

 

『それは・・・』

 

『いえ、責めるわけではありません。ですが、もういいのですよ』

 

『え・・・』

 

『ここではあなた達を苦しめる人たちはいない。ありのままの自分でいいんです。本来の臆病なあなたで』

 

『・・・そしたら誰が代わりに前に出る!?私が臆病なままだったら、また皆が傷付く!そんなことになったら―――!』

 

『だから!』

 

『っ!?』

 

『だからこそ、皆さんとしっかり向かい合いなさい。ここに来てからあなた達は力を身に着けました。暴力の使い方を覚えました。弱い自分は過去のものになり、強くなった今がある』

 

『・・・・・・』

 

『でも、それは身体の話。心はそうはいきません。だからこそ、皆さんとしっかり話し合いなさい。本音でぶつかり合って、相互理解に努めなさい。あなたが思っているよりも彼女たちは強いのですよ?』

 

『う・・・うぁああああ・・・うぁああああああ!!!!!』

 

(もう、あの時の私とは違う)

 

 臆病な本音を隠し続けて仲間を守り、退学してからも身体を張って不良から皆を守ってきた。でも、もう隠さなくてもよくなった。皆は私が思っていたよりも強く逞しかった。

 でも、こうして強い私でいるのは臆病な私を受け入れると決めたから。

 全てがスローモーションになり、ミサイルの軌道がゆっくりに見える。私は翼をはためかせて鋼鉄の暴力へと身を投じた。

 

(臆病でもいい。私は前に進むと決めた)

 

 錐揉みしながら広げた翼がミサイルを切り裂いていく。一歩遅れて爆発するのを感じながら、死角である下部へ潜り込む。スピードを緩めずに機体へC4を張り付けてスイッチを押した。

 

(指揮官、貴女も前に進めるように私たちが全力で援助します)

 

 ある夜に見た貴女がぼうっと立っている姿。今すぐにでも駆けつけて何があったのか聞かなければいけなかったが、自然と足は動かなかった。一緒に来ていた仲間たちも同じで石像のように動くことができなかった。明かりのない部屋で、貴女は写真を見ながら何かボソボソと呟いている。その時ほど異常に良い視力を恨んだことはなかった。視線の先にはカヤ指揮官と見慣れない蒼髪の女性が笑顔で並んだ写真。

 私たちは偶然持っていた集音マイクをそっと向ける。本当はいけないことだと分かっていたが、どうしても興味を引かれた。罪悪感に心を締め付けられながら耳を傾ける。

 

『どうですか、室長。私、頑張りましたよ?』

 

『あの子たちはとても強くなりました。以前までとは比べものになりません。貴女なら、きっと手を差し伸べましたよね?』

 

『これから私の計画に巻き込むのは、とても心苦しいです。ですが、安心してください』

 

『責任は、全て私が負います。そうすれば、あの子たちは「先生」が助けてくれる』

 

『未来に遺恨は残しません。私が全て悪いことにすれば丸く収まるんですから』

 

『だから、見ていてください。絶対に貴女の望んだ未来へ届かせてみせますから』

 

(あの時から、私たちは貴女について行くと決めた。何があっても、キヴォトスに見捨てられたとしても、私たちは見捨てない)

 

 その言葉を聞いて、私たちはそっと部屋から離れて自分たちの部屋に向かった。道中で誰一人も言葉を発さずに辿り着く。そこから私達は話し合った。いったいあの女性は何者なのか。室長と呼ばれていたことから指揮官の元上司だということは分かったが、それ以上のことは四人とも分からない。そこで師匠であるFOX小隊の人たちに聞いてみたところ、その人物はまさに「超人」と呼べるものだった。指揮官はそんな上司を慕い続けて、事故で植物状態となってしまった彼女の代わりにキヴォトスの平和を守ろうとしているのだと。

 短時間で四機もヘリが落とされたことに動揺したカイザーPMCの統率が乱れる。その隙に『先生』と呼ばれた大人が指示を出して軍勢を切り崩していく。中でも過去に『暁のホルス』と呼ばれた小鳥遊ホシノが大暴れして先陣を切っていくのを見て、私たちは次の獲物を探す。

 

【HAWK小隊、敵側が壊走し始めました。追い打ちして徹底的に殲滅しなさい】

 

『了解!!』

 

 そのことを知った私たちはFOXや他の小隊と同じようにカヤ指揮官に忠誠を誓った。決して裏切らずにあの人の傍にいようと。心を救われた私たちが、今度はあの人を助けようと胸に刻み込んだ。だから、任務では心を捨てよう。あの人の忠実なる武器でいよう。どんな過酷で残虐な任務であろうとこなして見せよう。

 

(一人だけでは行かせません。私達も必ずや御傍に)

 

 大空から急襲し、地面から起き上がろうとしていたゴリアテに取りつく。そのままコクピットを覆っている装甲を無理やり引っぺがして、中にいたパイロットに銃を向ける。

 

「ひっ!?こ、降参だ!!助けてくれ!!」

 

 ホルスターから武器を捨てて両手を上げて降伏する。本来であれば指揮官に指示を仰いで捕虜として捕まえるべきだろう。だけど、あの人はこう言った。「殲滅しなさい」と。

 

「死ね」

 

 喧噪の中で撃たれた弾丸はあっという間に消えていく。証拠隠滅のためにゴリアテの自爆システムを作動させて、サッと離れる。

 後ろで汚い花火が撃ちあがる音を聞きながら、私はリロードを済ませて飛び立った。

 

「全ては、あのお方のために」




 オリジナル生徒の簡単なスペック

HAWK1
名前:大鷲ハク
身長:170cm
武器:AR
容姿:褐色の筋肉娘。しっかり者で小隊のリーダーを務めている。覚悟ガンギマリ1号。

HAWK2
名前:尾白ロア
身長:160cm
武器:SR
容姿:色白でむっちりしてる。ふんわりとしていて小隊のお母さん的立ち位置。ガンギマリ2号。

HAWK3
名前:狗鷲アカ
身長:150cm
武器:MG
容姿:同じく色白でスレンダー。アオの姉でアッパー系。弾幕大好き。3号

HAWK4
名前:狗鷲アオ
身長:150cm
武器:MG
容姿:色白で胸が大きい。アカの妹でダウナー系。アカよりも弾幕好きな重度のダンマニスト。4号。
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