週刊で投稿できるように頑張っていきます・・・
「お疲れ様でした。あれだけ徹底的に叩けばカイザーPMCは大人しくなるでしょう。防衛室が調べたところ、アビドスを攻め落とすような計画を立てていたようです」
”それは・・・”
「発掘作業に不必要なほどの兵器群と計画。この二つがあればカイザーを訴訟することが可能です。これで少しは痛い目を見てもらいましょう」
砂漠での後始末が終わってひと段落着いた頃、防衛室へ来た先生に私は告げる。砂漠での合同演習という名の掃討戦は予想以上に上手くいき、理事も確保することができた。後は予定通りに、向こう側が動いてくれるのを待つだけです。
「と言っても、すぐに代わりが立てられるでしょう。彼らは問題を起こす度に代役を立てて誤魔化す。それを何度だって繰り返してきました」
”そうなの?”
「そうです。汚い大人が、まるで子供のような稚拙な文句を言って誤魔化してくる。それを連邦生徒会は受け入れてきた。まったく、そんな態度だから舐められるのですよ。リン行政官達の無能っぷりには困りましたね」
”・・・リンちゃんたちの悪口を言うのはやめてくれないかな?”
”あの子たちも自分なりに頑張っているんだよ”
「過程がどんなに素晴らしいものでも、結果が伴っていなければ無意味なのですよ、先生。大人であるあなたなら、それくらい理解できるでしょう?」
行政官達への悪意を包み隠さず言葉に乗せる。事実、彼女達は生徒会長がいなくなってしまった後のことは全く考えてはいなかった。自分たちのことで精いっぱいで他の業務には一切干渉してこなかった。それは、上で超人が全て解決してきてくれるから。
だから、室長の発言を聞き入れることはなかった。幾人かは賛成してくれたけど、反対派が多数で結果としては不採用に。それでもあの人は諦めることはせずに、せめて自分たちのところだけはと反対を押し切って改革に乗り切った。そのおかげで業務は以前と比べて格段に楽になり、余裕を持って対応することができるようになった。
”それはそうだけど・・・”
「会長という巨大すぎる屋台骨を失ってしまったこの組織は、そう遠くないうちに沈みます。それを遅らせるために、彼女はあなたをここへ呼び込んだ。自分の不始末を全て大人に投げつけるとは、超人が聞いて呆れます」
”大丈夫だよ”
「何がです?」
”子供の不始末を何とかするのも、先生である私の役目だからね”
「はぁ・・・まったく、救いようのないお馬鹿さんですね」
”うん。それで生徒たちを救えるなら、私は馬鹿で構わないよ”
「・・・そうですか。なら、せめて自分の身くらい守ってください。シッテムの箱が守ってくれるとは言え、それで十分とは言えません。こちらから必要な装備を差し上げます」
”これは?”
「SRTで使われていた防弾チョッキ及びプロテクターです。気休めくらいにしかならないでしょうが、ないよりはマシです。受け取ってください」
部屋で待機していたユキノさんが持っていた箱の蓋を開ける。そこには先生サイズに調整された防具が入っていた。元は訓練のために作られたものだが、先生向けの改造するために彼女たちが頑張って作ってくれた。そのおかげでかなり高い防御力になり、ちょっとやそっとじゃ効かないようになった。
「先生はキヴォトス人のようにヘイローがありません。たった一発の弾丸、爆弾が致命傷です。それをご理解ください」
”ありがとう”
”喜んで使わせてもらうよ”
「せっかくですから試着してみましょう。サイズがきちんとあっているか確認しないといけませんからね。ニコさん、お願いします」
「分かりました。では先生、どうぞこちらへ」
”その前にちょっと聞きたいことがあるのだけど”
「何でしょうか」
”君より以前の防衛室長について聞きたいんだ”
「・・・・・・」
ニコさんに誘導して別室で装備を確認してもらおうとしたが、先生が振り向く。その口から、思いもよらない言葉が出てきた。
「・・・前室長のことですか。どうしてそんな質問を?」
”リンちゃん達から聞いてね”
”今の防衛室を作った人だから、どんな人なのかなって”
「すみませんが、今のあなたに話すつもりはありません」
あの人を否定し、苦労させてきたお前たちが何を今更。自分たちが苦労しているのに楽をしている私達を妬んだのか。お前たちは何をしてきた?何を見てきた?何もしていないくせに。あの人の心を理解しようとしないくせに!!
ギリギリと握りこんでいく手袋の感触が伝わる。心拍数が上がって耳元で鼓動が聞こえ、心臓が熱くなっていくのを感じる。気のせいか先生の横にいたニコさんの顔が引きつっているのが見えた。
「室長、そんな怖い顔しないの。先生も怖がっているじゃない」
「ニコ、すまないが先生を頼む」
「了解。後はお願いね」
このままではまずいと感じたのか、二人がやり取りをして青白い顔をして体を震わせる先生を追い出す。姿が見えなくなると、肺の中に渦巻いていた熱い息を吐き出した。
「はぁ~・・・」
「室長、少し前まで一般人だった先生に殺気を飛ばすのはどうかと」
「そうですよね、どうにもあの人が話題になると周りのことが見えなくなって・・・」
何度も深呼吸をして頭を冷やす。大切な部下の手前、情けない姿を見せてしまった。こんな大人げないことをしてしまうとは。こんな姿、あの人に見られたら怒られちゃいます。
「アンガーマネジメントというのは難しいですね。知識としては知っていますが、実際に使う場面になると頭から抜け落ちます」
「前室長への強い執着心が原因かと。本来であればそれを捨てろと言いたいところですが、残念ながら私にもできません。あの人のおかげで、私達FOXは正義を失わずに済んだのですから」
「・・・あなた達は降りてもいいのですよ?これは私がやらなくてはいけない仕事ですから。いざという時は全て私に指示されたと言いなさい。情状酌量の余地はあるでしょう」
「お断りします。貴女に言われたからやるのではありません。これは私たちが自分で選んだ正義です」
私の目を真っすぐ見て意見を言ってくるユキノさん。その瞳は何の曇りもなく、奥底では決して消えることのない炎が燃え盛っていた。
まったく、あの人に変えられたのは私だけではないということですか。本当に、いい部下に育ちましたね。
「・・・馬鹿ですね。あなたも」
「室長ほどではありません」
短いやり取りですが、お互いに良い空気が流れる。そんな中、装備を確認したニコさんが戻ってきた。
「ただいま戻りました。装備の方は問題ありません。無事に受け渡しが終わりました」
「お疲れ様です。先ほどはありがとうございました」
「いえ、どうやらユキノが何とかしてくれたみたいね。空気が柔らかくなっている」
「いいや、室長が自分で解決したから私は何もしていない」
三人で談笑して和やかな空気が流れる中で端末を取り出し連絡を取る。通話が繋がり、お目当ての人物が現れた。その人物に私は淡々と告げる。
「M計画の進行状況はどうですか?」
【順調とは言えないわね。ハード面は一部を除いてほぼ完成しているけど、ソフト面が未熟もいいとこ。遺産の解析もしっかりできていないし、あの二人でも大分ひーひー言っているわ】
「急いでください。今回の件で多少遅延させましたが、すぐに巻き返されてしまうでしょう。ここからは時間との勝負です」
☆
すっかり日が落ちて星が明るく空を照らしているのを見ながら、私は深夜の執務室で作業をしていた。朝に机の上に山となっていた書類は随分と減っているが、まだまだ終わりそうにない。
「はぁ・・・もうこんな時間」
時計を見れば針は3時を回っている。眠気を覚ますためのコーヒーはすっかり冷めてしまい、もう飲む気が起きない。
横を見れば、まだ大量の書類が見える。幾分かシャーレの先生へ回していたが、それでも問題は次々と発生して終わりが見えない。正直、すぐに投げ出して家に帰って寝たい。しかし、やり切らないと翌日の業務に支障が出てしまう。やめたいのにやめれないというジレンマに陥っていた。
「はぁ・・・・・・」
二度目の溜息が出るが、目の前の現実は何も変わらない。そして本日上がってきた報告書に目を通す。それは、カヤに関する報告書。
「カヤ・・・あなたは一体何を考えているの?」
報告書にはカヤがカイザーコーポレーションに行っては大量の物資を購入しているとのこと。頻繁に様々な自治区へ足を運んでいること。そして、仕事が終わった後の数時間は姿を消しているということ。
「カイザーから入手した物資の行方はアビドスのアマノソラ会社へ流れている。それ自体に問題はない」
二年前から始まったアビドスの復興作業。アマノソラ会社は事業にいち早く着手し、少しずつではあるが成果が見えだした。それに合わせて投資をしてくれる企業も増え始めて業績も上がり始めた期待の会社だ。そこへ物資が流れているのは承知している。防衛室からの報告書で分かっていることだ。
「最近だとミレニアムに向かっていることが多い」
ミレニアムが買い取ったアビドス砂漠で見つけたオーパーツ。それはセミナーが厳重に管理・研究・解体作業を行っているらしい。その性能が現行の兵器群を上回っていることからデータは最重要機密として厳重に保管されている。他の学園からバランスを崩されることを危惧してデータの開示を求めているが、セミナーと防衛室からの抗議で封殺された。
「調査だとデータの一部は特戦隊と特科隊の装備開発に使われている。彼女たちの装備が従来のものとは違うのはそれが原因ね」
閉校されたSRTの生徒たちを起用した防衛室の組織。結成された時に連邦生徒会で管理すべきであり、もっと規模を縮小すべきだと言ったが、彼女は言い放った。
『「力」は持っていて嬉しいコレクションじゃぁない。強力な手段なのです。高い金をかけて育て上げたのは使うためなんでしょう?』
『それをあなた達のような自身のことしか考えていないボンクラ共はそう簡単に振るおうとはしない。キヴォトスの平和を、その無様な考えで守ろうとは片腹痛いですね』
『それなら優秀な私が「力」を振るい、あなた達よりも有効に使って見せます。「力」を振るうことに怯えて行動できない臆病者は黙っていなさい。文句は言わせません。あるなら今、ここで言ってください』
その言葉に誰も反論することはできず、二つの組織は防衛室直轄の組織となった。不満は出たが、結成された当時から成果を出し始めて上昇が止まらない犯罪率に歯止めをかけて減少傾向へ向かわせていることから声は小さくなっていった。
装備は一部SRTのものを使ってはいるが、他の多くは新しく作られたもので従来のものとは全く違う性能をしている。一度見せてもらったが、これではそこらの不良では歯が立たない。生産と整備をミレニアムが一括で請け負っていることから癒着していることは明らか。でも、それを示すはっきりとした証拠がない。防衛室とセミナーが結託して隠蔽しているのは間違いないだろう。
「・・・・・・」
ふと横に置いている写真立てが目に入る。二年前に記念撮影した写真には笑顔の会長と私。そして横で不満げなカヤの頭を撫でている■■■■■■。彼女が植物人間状態となってからカヤは変わり、元の傲慢な性格に戻ってしまった。あなたがいたなら、また何か変わっていたのだろうか。
『■■■。どうしてカヤを信頼しているのですか? あの子は間違いなく何か企んでいる。なのにどうして全幅の信頼を置いているのですか?』
『そんなの簡単だよ。私は皆と違って頭も要領も悪い。戦うことしかできない。でも、カヤちゃんは私に持っていない才能を持っている』
『才能?』
『うん、あの子は私とは正反対。戦う力はあまりないけど、頭脳が人一倍優れている。私だけじゃできないことを、カヤはやってくれる』
『そんなこと・・・』
『それに何か企んでいるとするなら、実行する前に私が身体を張って止めればいいだけでしょ?』
そう言って笑ったあなたは、もういない。術後に彼女がどこへ行ったのかは分からない。おそらく、知っているとすればカヤだけだろう。お見舞いに行きたいと言っても、■■■が倒れたことを知ったマフィアなどの反社会戦力が身柄を確保、ないし始末しようとしてくるからと教えてくれることはなかった。彼らからしたら、自分たちの企みを悉く潰してきた人物だ。妥当な意見だろう。
「アビドスで何をしていたのか。指揮を取っていたカヤやユキノに聞いても何も教えてくれない。いったい何をしていたというの・・・?」
他の隊員に聞き取りをしても重大機密だということで何も話すことはなかった。でも、住民の一人が気になることを話してくれた。ある夜の日に眩しい光が見えたと。その日と■■■が倒れた日はほぼ同じ。正体は分からないが、その光が関係しているのは間違いない。
「もっと詳しく調べてもらいましょう」
疲労ではっきりとしていない意識をコーヒーを使って強制的に目覚めさせる。そして、あの子たちへ追加の依頼をした。
【こちらRABBIT小隊。なんでしょうか、リン行政官】