お嬢様はカリスマブレイクしたくない   作:セレシア

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第十話 吸血鬼異変 ~パチュリー・ノーレッジの場合~

 遠見の魔法で戦況を俯瞰しながら紅茶を飲んでいる親友の傍を離れて大図書館へと向かう。

 

「フランも美鈴もなんとか凌いだってところかしら。ま、勝ちは勝ちかしら」

 

 お情けで勝ちを譲られただけかも知れないけどね。

 

「次はパチュリー様の番ですよ! 格好よく勝利してレミリア様に振り向いて貰いましょう!」

「そういうんじゃないから」

「あたっ! もう、素直じゃないですね~。そんなんだからフラン様に一歩遅れてるんですよ」

 

 う、うるさいわね。私とレミィは友人なだけでこ......恋人になりたいわけじゃないし。大体女性同士の付き合いは合理的じゃないし......。

 って、今はそれどころじゃないわ。全く、レミィの爪を使って召喚した小悪魔はすぐにからかってくるのが厄介ね。

 これさえなければとても優秀なんだけど......。

 

「西行寺幽々子様が相手でしたっけ? どうやって勝つんです?」

「言ってなかったかしら? 勝つつもりはないわよ」

「え!!??」

 

 私の一言に小悪魔はとてつもない衝撃を受けた顔をする。

 はぁ、やっぱり話を聞いてなかったのね。

 

「いい? 私たちは幻想郷を支配したいわけではないの。後参者だと舐められないための立場固めをしたいだけ。戦争なんてしても無駄にリソースを削るだけよ。......もし戦争になってもこの人数でも勝てる可能性があるのがレミィの凄いところだけど」

「惚気ごちそうさまでーす」

「惚気てないわよ!」

 

 全く、都合の良い耳をしてるんだから。いくら運命を操れると言っても数パターンに絞るのがせいぜい。これはレミィの練度不足が理由ではなく確定した運命はつまらないという気持ち的な問題ね。だから局所的には運命を確定させることがあっても大局としては運命に遊びを持たせているの。

 だからこそ本気で物事に向かい合うことができているのだと思うわ。常に決まった運命に導かれていて何をしても結末が変わらないなら怠惰になってしまうわね。そこら辺のことまで考えられるレミィに親友として鼻が高いわ。

 

「パチュリー様はなんでニヤニヤしてるんですか? もしかしてレミリア様のこと考えてました?」

「ニヤニヤしてないわよ!」

 

 なんだか小悪魔を召喚してから突っ込んでばかりの気がするわ。

 

 それにしても亡霊のお姫様が戦いに出てくるなんて思わなかったわ。死を操る程度の能力なんて生きている限り勝ち目ないのだけど......。というか冥界に引きこもってなさいよ。傍観してほくそ笑む立場のヒトでしょうが。前線に出てくるんじゃないわよ。

 小悪魔と話をしつつ大図書館の扉を開けるといつも座っている席に桃色髪の女性と白髪の男性が座っていた。

 

「いらっしゃーい」

「......」

「あっ! ちょっと!」

 

 一度扉を閉める。私は疲れてるのかしら。本来ならいるはずのないヒトがいたように見えたのだけど......。

 小悪魔を見てみるとなんだか青ざめている。ああ、やっぱり居たのね。

 

「パチュリー様。私の見間違えじゃなければ妖忌様もいらっしゃったように見えたのですが......」

「従者同士あなたの相手かしら」

「無理です無理です無理ですよー! 無茶言わないでくださいよパチュリーさまー!!」

 

 私にすがり付く小悪魔を引き剥がして再度扉を開ける。

 

「扉を閉めるなんて酷いじゃない」

「いえ、侵入者が堂々としすぎていて驚いただけよ」

「本当かしら? 驚いているようには見えないけど」

 

 顔に出ないだけよ。レミィに見られたら一瞬で見破られるけどね。

 例の隙間を使って送り出されてきたのだと思うけど......こちらのセキュリティをあっさりと突破されるなんてね。後でセキュリティを組み直さないと。隙間の残滓でも回収できないかしら。

 

 それにしても本当にこのヒトは戦いに来たのだろうか。頬を膨らませてるし......なんだかふわふわしていて気が抜けるわ。

 

「早速だけど投降してくれないかしら」

「魅力的なお誘いだけど断るわ」

「でも目的は達成できたでしょ?」

 

 なるほど......緩い雰囲気でもかなり頭が良いという情報は正しいみたいね。

 

「妖怪の山を攻めていた連中は天狗に少しだけ犠牲を出すも壊滅。魔法の森を攻めていた連中は人形使いによって壊滅。この館の中を警護していた連中だって全滅しているわ」

「どうやらそのようね」

 

 こちらの勢力が壊滅するのは想定済みよ。彼らの役割は数の暴力に対抗することと足止めを行うこと。組織だった天狗や興味をもって集まってきそうな木っ端な妖怪を相手取って私達が大物と戦う前に疲労しないように解き放っただけなの。

 

 全員レミィの狂信者みたいな感じになっていて都合が良かったけどなんでかしら? ......なんてね、その理由(・・)私達が(・・・)よく知っている。

 

「その上で幹部級のあなた達は冬場で冬の妖怪に勝利した上で鬼の四天王にまで勝利した妹、幻想郷最強と名高い花の妖怪相手に大金星をあげた門番。すでに十分な実力を示したと思うわよ?」

「どちらも勝利を譲ってもらったようなものよ。こちらはボロボロなのにそっちはほとんど怪我してなかったじゃない」

「幻想郷のトップ達に認められたら十分な強者よ」

 

 認められた......ね。レミィと同格のヒト達だとは聞いているけど上からずいぶんな目線だこと。

 

「じゃあ簡単な勝負で決めちゃいましょうか。弾幕ごっこなんてどう?」

「......どこで知ったのかしら?」

 

 レミィからの情報だと今後の異変解決の手段になっていく弾幕ごっこ。実は紅魔館で喧嘩が起きたときの解決方法として使われているの。

 フランと美鈴がすぐに館を壊すから幻想郷に移動した後に役に立つし館も壊れないから一石二鳥の手段なのよね。

 でも向こうはそんなこと知らない。だから発案者側に初心者が挑む形になるの。

 

 卑怯でごめんなさいね。でも私は肉体派じゃないの。......もやしではないわよ!!

 

「ま、なんでも良いでしょう? そちらの土俵なんだから」

「そう、ごめんなさいね。妖忌。あなたの出番はなさそうよ」

「ここに来る時点でないでしょう」

 

 大図書館にいるのは私と小悪魔だけ、幽々子はともかく生粋の武人と魔法使いだと相性はともかく普通の戦いでも楽しい勝負はできないでしょうに。

 

「しかたありませんな。大魔法使いの魔法を切ってみたかったんじゃがの」

 

 前言撤回ね、楽しみ方はヒトそれぞれだったわ。

 

「さっさと始めましょうか。あ、妖忌さんには小悪魔を貸してあげるわ」

えっ!!!???

 

 すごいビックリした顔で二度見されたけど別に良いわよね? 従者の身分で私をからかった罰よ!

 


 

「むきゅ~」

「うう、パチュリー様、酷いですぅ」

 

 柔らかなソファに倒れ込んだ私と洋服を切り刻まれてあられのない格好をする小悪魔。ええ、小悪魔はともかく私も勝てなかったわね。

 ......しかたなかったじゃない。あんなの反則よ!!

 

 死を操る程度の能力を使って全ての弾幕の速度を当たる前に止められ(死なされ)たら何もできないわよ!!

 それでも良い勝負をした私を誉めなさい! レミィと戦う経験が無ければ一方的にやられてたわよ!!

 

 ええ、レミィも運命を操る程度の能力で弾幕を誘導されるから全く当たらないのよね......。

 

 まあいいわ。想定の範囲内だし? フランには色々と言われるかもしれないけどレミィに慰めてもらうから良いわよ!!

 

 小悪魔が体を張って弱味を作ってくれたことだし、最低限のお仕事はできたことにしましょう。

 いつのまに弱味を作ったのかって? むしろどうやって弱味を作ったのかって?

 

 武人肌の老人が涙目の少女(小悪魔)の服を切り裂いていく姿を魔術で撮影しただけよ。

 

 ふふふ。怪我をさせないように手加減したのが裏目に出たわね。冥界が何か言ってきたらこの動画を出汁にしましょう。

 ......よくよく考えたらあのお姫様には全く意味が無さそうね。むしろ嬉々として広めそう......? 全く使えないわね。

 

「関係ないところで文句を言われている気がするんですが......?」

「気のせいよ。さっさとフランを回収しに行くわ」

「すでに美鈴様が回収してますよー!」

 

 ......それもそうね。じゃ、レミィの所に行きましょう。




フランちゃん(偽)の影響を受けて若干腹黒くなってるパチュリー様です。
妖忌様ファンの方はすみません。レミリアが脅すなんてださいことはしないって写真は破棄させるので......きっと。

ところで隙間の残滓ってなんですか?()
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