○月△日
今日も今日とて侵入者やヴァンパイアハンターを撃退していく。パチェを保護してから反抗的な街の人が増えてきたのだ。
私のカリスマが薄れてきたのか? いや、そんなことはない......はずだ。だがお父様と比べたら私の姿は幼く舐められやすいのは事実として認めねばなるまい。
多少面倒だが見回りを増やしつつ私の威光を示していくことにしよう。
○月△日
人間だけでなくよその街の吸血鬼や人狼が襲ってくるようになった。我が街の人狼に任せることもあるが吸血鬼の相手は私にしかできない。門番が欲しい。それかメイド。人狼達は不器用だからな......一度館の管理を任せることも考えたが運命を覗いた結果却下したんだ。
それにしてもお父様の時代に仕えていたヒト達を解雇したのは早計だったか? だがあいつらを雇用し続けていても良いことなどなにも無かったからな。館のいたるところを探って余所の吸血鬼に情報を流そうとするメイド。寝た振りをして襲撃者を引き入れる門番。寝た隙に暗殺を仕掛けてくる庭師。毒やニンニク、挙げ句の果てには聖水まで食事にいれてくる料理長。
さっさと解雇しないと死ぬわ!!
私のカリスマはドコ? ......ココ?
言い訳をするとお父様が悪い。お父様のカリスマによって引き寄せられた......のではなく圧倒的実力をもって恐怖でしばりつけていたメンツなのだ。運命を覗いて数人だけでも使える......少なくとも私を害さないメンバーを探そうとしたけど見事に全員スカーレット家を恨んでいた。
お父様は家族に対しては優しかったから勘違いしそうになるが母親を追ってまだ数十の娘達を置いてきぼりにする自分勝手なやつだった。家族以外、特にお母様以外はヒトだと思っていなかったのだろう。
子を人質にとられたり見せしめに家族を殺されたり拷問の末に無理矢理つれてこられたり......。
私はそんな暴君の娘であって慕われるどころか好感度はマイナスもマイナス。常に憎悪の目を向けてくる相手にはいくらカリスマがあっても限度がある。
そうだよね? そうだと言ってくれ。
○月△日
かつての部下達が結束して反逆してきた。以前に書いた日記が下克上を誘発したのだろうか......。
運命を覗いて時期からメンバー、作戦まで最初からすべて知っていた私にとっては相手にもならなかったが。
嘘、少し見栄をはったな。パチェやフランの協力が無ければ厳しかったかもしれない。少なくとも無傷とはいかなかっただろう。
二人には褒美をやらねばならんな。今回は快く助力してくれたけどこれを当然だと思ってこき使ったりすると撃退した部下達のように下克上をされかねない。そんなことになったら私は泣くぞ! みっともなく泣きわめく! カリスマなんぞ知ったことか!!
○月△日
東方から美鈴と名乗る妖怪が力試しにやってきた。どうやらお父様の噂を聞いてやってきたらしい。ついでにスカーレットデビルと呼ばれている私のことにも興味があったようだ。
スカーレットデビルだと? くはははは! カッコ良いではないか! いつの間にか私にも二つ名が付いていたとはな!
お父様と戦えないことは残念がっていたが私との戦いで満足したようだ。気を操る程度の能力。なかなか骨がある相手だったな。私も殺戮ではない純粋な勝負でなかなかに楽しめたぞ。
特に最後の一撃は良かった。私の頬に傷をつけるとは思わなかった。すぐに治したからバレてないと思うが大丈夫だよな?
これから心の中でお嬢様はすごいけど私に傷つけられる程度の存在なんだって思われないよな?
P.S. どうやらフランとパチェは私の二つ名について数年前から知っていたらしい。パチェはともかく地下室に引きこもっていたフランはどうやって知ったんだ?
○月△日
美鈴がメイド兼門番兼庭師兼料理長としていつくことになった。
確かに助かる......助かるが仕事をしすぎではないか? いくら自らやると宣言してるとはいえ、さすがに気が引けるのだが......。
致し方なし、無理しないように私が管理してやろう。部下の体調管理も上に立つものとしての役目だからな。
○月△日
美鈴とフランが喧嘩......喧嘩? をした。怪獣大決戦とか言われた方が納得のいく被害だったが......。図書館だけはパチェが結界を張っていたため大きな損傷はなし。フランの住んでいる地下も被害は少なかった。でも他の場所は完全に倒壊したな。
二人にはストレスがかかっていたのだろうか......。もう少し頻繁に運命を覗くべきだったか?
「申し訳ございません。お嬢様」
「お姉様ごめんね?」
私の前で土下座する美鈴に私に抱きついたままウルウルとした目で見上げてくるフランに喉まで出掛けたため息を押し殺す。
慣れない環境の中で大量の実務をするように頼ったのも、ずっと二人きりだった世界に馴れない人を追加したのも私なのだ。当然ながら二人に対するの怒りなぞない。
「ちょうど良かったと思いましょう。新しい家族も増えてそろそろ館を建て直すつもりだったし......解体の手間が省けたわね」
優雅に見えるように微笑みながらフランの頭を撫でる。ニコニコしているフランはとても可愛いのだけど......少し息が荒いわね? さすがに美鈴との喧嘩に疲れているのかしら。
「それと美鈴。あなたもすでに私達の家族なのよ? 反省するのも謝罪するのも大切だけど土下座なんてする必要はないわ」
「ですが、雇われて居候をしている分際でお嬢様の館を壊してしまうなんて。腹を切るしか......」
地面につけた頭を上げようとしない美鈴の頑固さにどうしようかと少し悩む。そうか、家族だと思えないなら名を渡せば良いのか。
「ではあなたに
「お姉様!?」
私の宣言にフランが驚いた声をあげる。美鈴も声こそあげなかったが唖然とした表情でこちらを見ている。
「紅は私達のスカーレットと同じ意味を持つ東方の言葉だったと思うのだけど......違ったかしら?」
「そ、そうではなく......!」
なんだか納得のいかない様子に私達と同じ名前を名乗るのがそこまで嫌なのかと少し悲しくなる。
「うっ。ウレシイニキマッテルジャナイデスカー」
一瞬お腹の辺りから殺気を感じた。フラン? と顔を覗いてみるもニコニコとした可愛い笑顔をしている。どうやら気のせいだったようね。
美鈴とフランのことは後でフォローすれば良いとして、パチェや人狼を呼んで新しい館について話し合う。
「お嬢! せっかくだし真っ赤に染め上げましょう!!」
「なかなか良い案じゃない。なら名前は紅魔館ね!!」
月光を効率よく取り込む窓の配置を考えたり、簡単には壊れないように結界について話し合ったり議論を交わしていく。
途中、人狼達が回りへの畏怖を与えるためだととても素晴らしい案を出してくれた。新しい館の名前も決まり新生スカーレット家は上々の滑り出しだと言えるだろう。
一通りの話が終わると次は部屋が吹き飛んだ私がどこに泊まるかの話し合いに変わる。
「フランと一緒に寝ようよ!」
「レミィなら図書館に来てもいいわよ」
「「は?」」
二人の間に火花が散っている。私としてはどちらでも構わないのだけど......。
呆れつつ見守っていると美鈴がおずおずと手をあげる。
「あの~、私はどうすれば」
「「野宿でもしてなさい!!」」
「ひいん。わかりました~」
息ぴったりに凄まれてがっくりと項垂れる美鈴の頭が目の前に来たからなんとなく撫でてみる。ん~、これはこれで良いわね。うまく言語化できないけど頼れるお姉さんが弱ったところをみるとグッと来る感じかしら。
しばらく撫でていると顔を赤くしたり青くしたりとなかなかに面白い。
「あ~、う~」
「お姉様に発情すんな」
美鈴の言葉にならない言葉を聞いているとドスの効いたフランの声が聞こえた。可愛らしいはずのフランの声はどこ? というか発情とか言った?? 思わず猫を背負いつつ美鈴を撫でている手が止まる。
その隙に逃げられてちょっとだけ悲しい。やっぱり見た目幼女の私に撫でられるのは恥ずかしかったのかしら。
最終的には全員揃って図書館の一画で雑魚寝することになった。フランに抱きつかれたりパチェがくっ付いていたりと若干寝にくかったけどたまにはこういうのも悪くないわね!!
日記成分と通常文の割合は毎回適当です。
一応半々を目指しています。