お嬢様はカリスマブレイクしたくない   作:セレシア

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今話は少し長めなので初投稿です。


第六話 お姉様に歯向かう者には死あるのみ

 私の自慢のお姉様は最高に可愛いくて格好良いし、頭も良ければ戦闘だって上手だ。すべて私が原因だと言うのは思うことがあるけれど、私のために頑張ってくれたんだと思うと、とても恥ずかしいけど心がポカポカしてくる。

 

 そんな愛しいお姉様のために私は掃除魔法作りに挑戦している。

 

 完璧で素晴らしいお姉様はいつの間にか掃除や料理といった家事もパーフェクトにこなせるようになっていた。このままだとますますお姉様との距離が離れてしまうためできることをしようと思ったのだ。

 

 前世の記憶があればお姉様以上とは言わずともお姉様と同じくらいは家事ができると思っていたんだけど......。

 

 料理は人を加工できずに断念。さすがに前世はカニバリズムじゃなかった私に人肉料理の知識はなかった。

 洗濯はそもそも必要がない。私達が来ている洋服は妖力で出来たもの。汚れる心配はなく、当然洗濯の必要だってなかった。

 

 一度侵入者の撃退をしたこともあるけど全部爆散させたらせっかく食料が来てくれたのに勿体ないと怒られてしまった。お姉様を攻撃してくるゴミなんて塵一つ残したくなかっただけなのに......。お姉様と同じ吸血鬼である私はお昼の間外に出れないから門番にも向かないし......。

 

 とまあ、できることが掃除しかなかったのだ。ぐぬぬ、パチュリーは魔道具やら人避けの結界やらで頼られてるし。私もお姉様の役に立ちたい!!

 そして掃除に役立つ魔法でも開発しようと四苦八苦している間にお姉様が中華娘を拾ってきた。

 

 ......お姉様!? ヒトは犬猫のように気軽に拾ってきて良い存在じゃないんですよ!?

 いや、原作で紅魔館のメンバーにいた顔だからいつか合流するかもなーとは思ってたけど......。

 館だって真っ赤じゃないし、私だって前世の記憶を持ってるしで原作とは違う可能性もあるんじゃないかなーなんて考えていたのに。

 

 せっかくお姉様に反旗を翻した愚か者達を処分する手伝いができてテンションが上がっていたのに急降下だ。

 お姉様のやることに文句を言うつもりはないけど私は認めないからね!! お姉様の一番は私だ!!

 

 なんて思っていたのに掃除の役割を美鈴に奪われた!!

 

 掃除どころか門番や庭師、メイドの仕事まで......。もしかしてお姉様のお風呂も合法的に覗ける立場だったりする?

 なんて羨ま......じゃなくてズル......でもなくてけしからん!! でもいいもん! お願いしたら私だって一緒にお風呂に入ってもらえるもんね!! ただ覗きからしか得られない栄養素があるというか覗きだからこそクルものがあるというか......。*1

 

 ともかく! 私が美鈴を見極めてやる!!

 

 そう決意して美鈴に突貫したのは良いものの思った以上に美鈴が強くて館が崩壊しちゃった......。...........てへ?

 

 


 私の名前は紅美鈴。しがない妖怪です。今はここ紅魔館で門番兼メイドをやっています。

 ことの始まりは武者修行の最中に強い吸血鬼がいると聞いたことでした。武者修行の相手としてちょうど良いと考えた私はさっそく大陸を横断して北欧へと向かったのです。

 

 道中はそこそこ強い妖怪等を倒しつつも満足のいく戦闘ができずに消化不良を起こしたままでした。北欧に入ると吸血鬼とも戦うことがありましたが他の妖怪よりは強いけどそこそこの範疇は越えません。噂の相手も楽しめないかも......なんて少し期待度を下げつつもせっかく来たからと当時はまだ真っ赤ではない館へと向かっていくことにしました。

 

 お目当ての相手の他にスカーレットデビルなる強者がいるんだという話をよく聞くようになった頃、ゴブリンやオーガ、人狼から悪魔まで様々な種族の強者が集まった集団に出会ったのです。

 すでにボロボロになっていたため戦闘こそ行いませんでしたが私の気を操る程度の能力で感じとる限りでは一人一人が......ゴブリンでさえも無傷では倒せないほどの強者であることに驚きを隠せません。

 

 気になった私が話を聞くとスカーレットデビルに反逆してコテンパンにされてしまったとのことでした。しかも傷一つ負わせることができなかったとか!! 正確にはスカーレットデビル一人ではなくスカーレットデビルの妹と友の三人相手に負けたとのことでしたが数十もの強者と戦って無傷で勝つなんて私にもできそうにありません! 期待に胸が膨らんでワクワクが止まりませんでした。

 

「お嬢様と戦ったらお嬢様のために働いてくれませんか?」

 

 館の場所を聞いたお礼を言い、その場を離れようとしたらそう声をかけられました。ですが私は流浪の者。武者修行のためにも一つの場所に留まるつもりはないんです。

 そうやんわりと断りましたが何故かこのヒト達は私がお嬢様のために働くことになるという強い確信を持っているようでした。

 

「あなた達はそのお嬢様に反抗したのではないのですか? 嫌っているのはずなのに心配を?」

 

 私はその奇妙な......憎んでいるはずなのにお嬢様のことを大切に思うに到った経緯に興味を持ちより詳しく話を聞くことにしました。

 

「私達があの館に仕えていたのは先代に強制されていたからなのです......」

 

 そう始まった彼ら彼女らの話によると私が手合わせをしようとしていた先代は強大な力を持ちつつも非道な行いを平気で行う存在で家族を人質にとるのは序の口、一人を使えさせるために村を焼き滅ぼし、首を縦に振るまで拷問を行う。自殺しようにも何故かできず反抗しようとも相対すると身体が動かなくなる。だから憎悪を抱えつつも仕えるしかなかったと言います。

 

 強大な力を持つ存在は穏やかな心を持つ傾向にあると思いますが......確かに横暴な存在になる可能性もなくはありませんね。ですが強大だからこそ人質のような卑怯な方法はとれないと思うのですが......。そんなことをしたら卑怯なことをしないと相手に勝てないと言っているのと同義であって精神に強さが依存する私達妖怪は自身の力が弱くなってしまいますからね。

 

「それは対等な存在だということが前提にあるからですよ。そもそも人質をとるのだってその方が楽だから。合理的だからという理由だったんです」

 

 それはなんとまあ......。どちらにしろ恨みを買うことが多そうなヒトですね。本人は気にしないのでしょうが......。

 

「あれ? 反抗できないのですか? 先程は反逆して返り討ちにあったと言っていましたが......」

「ええ。お嬢様には申し訳ないことをしました。ですがあのままでは私達は......。言い訳のしようもありません」

 

 そうですか数年前に虐げていた本人が消息を絶ったから反抗できるようになったと......。悪いのは父親だと頭ではわかっていても憎悪を向ける先がいなくなって娘のお嬢様で恨みをはらそうとしたんですね。それでもお嬢様はお父様が悪いのだと全てを笑って赦したと。

 

 お嬢様肝が据わっているというか甘ちゃんというか......。父親と違って優しいヒトなんだとは思いますがそれはそれでどうなんでしょうか......。力が弱くて媚びを売っていたとか?

 

「お嬢様をバカにするなら私達が相手をしますよ?」

「嫌ってたんじゃないんですか!?」

 

 全員から殺気を向けられてしまいました。大嫌いだけどちょっとだけ大切。じゃなくて嫌いだと思いたいけど大切になりすぎて嫌えなくなった。という方がしっくり来ます!?

 

「そうなんですよ。あなたの言う通りです。あのお方の傍にいると嘗ての憎悪が無くなっていくんです。それはとても良いことかもしれません。ですが、私達にとっては処分されてきた仲間や友を忘れていくんじゃないかって......先代に恨みを持って散っていったみんなへの裏切りなんじゃないかって......そう、考えてしまうんです。そしていつか、仲間達が受けた仕打ちを忘れてあの男の血族に心から仕えることになりそうで......。それが怖かったんです」

 

 私達が弱いばかりにお嬢様には悪いことをしました。そう締め括るともう話すことは何もないとどこかへ去っていきました。

 


 

 相手は吸血鬼なので夜まで待ってから館へ行きます。館に近づくと門の前に小さな影が見えてきました。

 

「待っていたぞ。東方から来た流浪の妖怪よ」

「っ! あなたがスカーレットデビルですか?」

「うん? それが誰かは分からんがスカーレット家の現当主は私だ」

 

 お嬢様と聞いていたので女性だとは知っていましたがこれほど幼いとは思っても見ませんでしたね。ですが見た目に騙されてはいけません。全身から漲る気の暴力に目の前に立つだけで吹き飛ばされそうです。

 足を踏ん張って礼をとります。

 

「私は美鈴と申します。ぜひお手合わせをさせていただきたい」

「お父様はすでにいないぞ? 私で良いのか?」

「最初こそ先代様との手合わせをしたいと考えていましたが......あなた様と手合わせをしたいのです」

 

 わざとらしく首を傾げる少女に冷や汗が止まりません。しっかりと集中しましょう。

 

「そうか。私はレミリア・スカーレット。現スカーレット家の当主だ! いつでもかかってこい!」

 

 名乗りと同時に手を広げて迎え撃つ構えをとるお嬢様。たしかに膨大な気を持っていますが技術はどうですかねっ!!

 

 一歩で懐に入り込みお試しとばかりにジャブを打つ。首を僅かに傾けるだけでかわされるのを感じとった私はそのまま回し蹴りで追撃をしかけます。ガードをされてもその上から叩き込む。避けたら大きな隙となる。反撃だけは怖いですがこの速度であれば難しいでしょう!

 

「この程度か?」

 

 しかし、ガードどころか片手で威力を完全に殺されてしまいました。その事に驚いた瞬間腹部に衝撃が走ります。

 攻撃が見えなかった!! 気を回して回復させつつ優雅に待ち構えるお嬢様に再度攻撃を仕掛ける。

 

「予想外なことが起きても思考を止めるな。常に次の行動を考え続けろ」

 

 攻撃をする。当たらない。

 

「常識に囚われるな。我ら妖怪はある意味でなんでもありだ」

 

 攻撃をする。反撃を受ける。

 

「初見殺しごとき想定しておけ。思い込みは厳禁だがな」

 

 攻撃をする。吹き飛ばされる。

 

「敵の意表を付け。基礎を大切にしつつも時には大胆に動くんだ」

 

 攻撃をする。優しく受け止められる。

 

「発想を柔軟にしろ。時には直感に任せることも必要だ」

 

 攻撃をする。なぜか私にダメージが来る。

 

「諦めてはいけない。死中の道にこそ先はある」

 

 数十回の衝突を経て、私の服はボロボロ、気による回復も間に合っておらず全身アザだらけになっています。

 一方のお嬢様は無傷。着ている洋服すら最初に相対したときのまま。

 

「ははははは......」

 

 思わずから笑いをしてしまいます。まだ幼いはずの少女は気や妖力だけでなく技術においても私の遥か上に立っていたのです。

 

「ご指導ありがとうございます」

「もう満足したのか?」

 

 一度構えを解いて礼を言う。見た目に騙されないつもりだったんですけどね。首を傾げるお嬢様に頬を掻きつつ答えます。

 

「いえ、次で最後です。私の出せる一番の大技ですが、使ったあとは倒れてしまいますので先に礼を言っておこうかと」

「そうか。それは楽しみだ」

 

 にやりと笑うお嬢様に心が高ぶってくる。私にもこの御方を楽しませることができるのか! そう思うといつも以上に気合いが入ります。

 全身の気を全力でコントロールすることで元々の力の数十倍もの力を発揮できるようにする私の奥義。

 

 私の全力の一撃はそれでもお嬢様に受け止められて......。

 

「やればできるじゃないか」

 

 満足そうに微笑むお嬢様の顔を見て、ああ、あの使用人達の言う通りになるんだな。なんて漠然と思いつつ私は満足して目を閉じました。

*1
覗きは犯罪です。止めましょう。




毎回サブタイに悩む悩む......読者を呼び込むセンスが欲しい!
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