お嬢様はカリスマブレイクしたくない   作:セレシア

7 / 17
第七話 私は立派なレディになるぞ!

○月△日

 紅魔館が建ってからなかなかに快適な日々を過ごしている。

 いつの間に知られたのか私の好みの食事に常に清潔に保たれている館内。昼は襲撃者に邪魔されずに眠ることができる。

 

 素晴らしい生活だ! ただし一つだけ懸念がある。運命で見たカリスマブレイク(たんぽぽにが~い)だ。これは美鈴、そしてこれから来るであろう完全で瀟洒な従者が有能すぎて好みの食事以外を口にする機会が無かったのが原因だと思う。

 

 完璧すぎるが故の欠点ってやつだな。だが分かっていれば怖くない。

 美鈴に説明できるものでもないし、運命だからとたんぽぽ料理を頼むとかなんだこの主人はと思われる可能性が高い。

 

 しかし! 幸いにも追い出した従者達の経験値を運命を辿ることで私の物としているため家事は人並み以上にすることができるのだ!!

 

 それに自分一人であれば万が一にも苦くて吐き出してしまった場面を見られることはない。これは勝ったな。風呂入ってくる。

 

 

○月△日

 そもそもたんぽぽ料理を知らなかった件。というか食用たんぽぽなんて手配できないぞ?

 しまったな。まさか前提からして崩れていたなんて。まさかこのレミリアの目をしても読めなかった! だがこれでへこたれる私ではない!!

 

 苦い料理だ! 苦い料理を寄越すのだ!!

 

 

○月△日

 昨日の食事は苦痛だったな......。まだ口の中の苦味がとれないぞ......。美味しい料理が口直しになると思って先にデナトニウム*1を先に口に入れたのは不味かったな......。

 

 美鈴やフランには心配かけてしまって申し訳ない。パチェも精神快復の魔法を開発しなくて大丈夫だぞ? 呪い返しも不要だ。フランも犯人なんて居ないから、強いて言えば私自身だから犯人を焼き討ちしに行くとか言わないでくれ。お姉ちゃんが殺されてしまう。

 

 

○月△日

 いつものように運命を覗いていると後百年もすれば幻想が消えて私達も消滅してしまう未来が見えた。回避するためには幻想郷に行くしかない。

 フランの話でも出てきたし、かりちゅまを見てしまった運命も幻想郷での出来事だったな。

 

 カリスマブレイク回避のために最も手っ取り早いのは幻想郷に近付かないことだったがそう上手くはいかないようだ。今後一層気を付けることにしよう。

 

 

○月△日

 パチェとフラン、美鈴を含めた四人で幻想郷への移動について相談した。パチェは館ごと移動するための魔法の開発。フランには幻想郷の大体の位置やどんな場所なのかの確認。美鈴には幻想郷へ攻め入る際のメンバーの確保を依頼した。

 

 百年後ギリギリまで待つと幻想郷に入ったときに力を振るえないから期限は後四十年。私は幻想郷に入った後になるべく良い立場に落ち着けるように運命を手繰り寄せることにしよう。

 

 

○月△日

 幻想郷へ向かうための指示を出して早三十年。後十年で幻想郷に攻め入る刻がやってくる。

 パチェが開発した魔法陣がより良くなるように修正を加え、フランが思い起こした情報をもとに現地にいる妖怪への対策を考えていく。

 

 隙間妖怪、九尾の狐、純粋な鬼に宵闇の妖怪など吸血鬼であっても厄介な相手が多いため何も考えずに暴れると即座に制圧されてしまう。

 

 というか隙間妖怪に境界を弄られて夜を昼にされるだけで詰みなんだが......。しかも花の妖怪がドSの化け物ってなんだ。花はおとなしくしておけよ!

 

 まだだ、まだ慌てる時間じゃない。大丈夫。後十年もあるんだ。相手の能力も分かっている以上攻略法は存在するはずだ!!

 

 

○月△日

 移動用の魔法陣を作り終えたら私とフランが昼間でも暴れられるように日光を遮るための魔法を編み出す。

 紅霧異変で使うという霧を先行して使わせてもらおう。とはいえ同じように使うと異変を起こすときに二番煎じになるから透明かつ私とフランの回りにだけ発生するように改良したものだけどな。

 

 それなら向こうも吸血鬼の情報を誤認してくるはずだ。覚妖怪が出てきたら無意味だが旧地獄から出てくることはないと思っているし大丈夫だろう。もし出てきたら......それはそれで問題ないな。こちらがしたいのは本気の制圧ではないのだから。

 

 フランのことも徹底的に鍛え上げた。接近戦は美鈴が、魔法についてはパチェが、吸血鬼としての戦い方は私が。元々才能があったのかめきめきと実力を伸ばしたフランは私の妹ということもあり最高に頼もしい。

 

 そして私の素の姿は大人の女性へと成長した。精神的に成長した証だと思うと嬉しいがフランがお揃いの姿じゃないと悲しんだため普段は身体の一部を霧に変えてフランと同じくらいの少女の姿をとることにしている。

 

 

○月△日

 とうとう運命のXデーがやって来た。

 

 


 

「パチェ、魔法陣に問題はないな?」

「ええ、もちろん」

 

「フラン、美鈴、闘う準備はできているな?」

「任せてよ」

「お任せください」

 

 紅魔館のバルコニーで最後の確認を行う。

 美鈴の働きかけによって集まった数千もの部下達が紅魔館の前に集まっている。

 捨て駒にするつもりはないがこの中の大部分は今夜殺されるのだろう。それでも良いと配下に加わってくれたメンバーに激励の言葉をかける。

 

「私達はこれから幻想郷に戦争を仕掛ける!」

 

「このまま消滅を待つくらいなら闘うという者。本能のままに暴れたいから闘うという者。私への恩義を返すために闘うという者。過去を清算するために闘うという者。ヒトそれぞれ闘う理由は違う! しかし!! 我々は全員が同じ向きを向き、死中だと分かって飛び込む覚悟を持った仲間である!!」

 

「貴様らの覚悟を無駄にはしない! 総員、全てを捨てて私に付いてこい!!」

 

「「「「うおおおおおおおおお!!!!」」」」

 

 士気は上々、準備も万端。夜空には紅の満月が浮かび上がっている。

 

 

 

 

 ああ、こんなにも月が紅いから、

 

 楽しい夜になりそうね!!

*1
世界で最も苦い食べ物。ギネスに載っているわ。




感想、お気に入り登録ありがとうございます!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。