お嬢様はカリスマブレイクしたくない   作:セレシア

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しばらく吸血鬼異変編です。
戦闘描写ムズカシ、ムズカシ...


第八話 吸血鬼異変 ~フランドール・スカーレットの場合~

 幻想郷に攻め入る前、最後の演説を行っているお姉さまを後ろから眺める。

 私もできるだけの準備を行った。八雲紫が動かない、もしくは動くのが遅くなるように日本が冬になる時期を攻め入るタイミングに選んだし、誰と誰が闘うかの割り振りもできている。

 

 私はレティ・ホワイトロック、美鈴は風見幽香、パチュリーは西行寺幽々子に対応していく。

 そしてお姉さまは八雲藍に八雲紫の二人。

 

 私が教えた情報をもとにお姉さまが未来を見て決めた対戦カード。私のところが一番楽な相手ではあるけど冬だという一点でレティは強敵に早変わりする。油断するとすぐに凍って動けなくなるから気を付けないと。

 

 美鈴やパチュリーも格上相手に戦いを挑むことになるけどお姉さまの負担が大きい。なるべく私が早く応援に向かえるように頑張らないといけないね。もしお姉さまが死んでしまったら......。

 

 その時は全てを狂気に任せよう。すぐに八雲が討伐に来るかもしれないけど、私の能力は理不尽を体現したもの。その名に相応しく幻想郷の全てを巻き添えにして心中してやる。私達が悪者の立場なのは知っているけど、悪者なら悪者らしく不条理に全てを破壊しても問題ないよね?

 


 

 お姉さまの合図でパチュリーと共に魔法陣に魔力を流すと辺り一体が眩しくなる。

 光が一層強くなってから収まると辺りの景色は一変していた。

 

「予定通り湖の近くに着いたわね。ここからはスピード勝負よ!」

 

「人狼部隊は妖怪の山へ向かえ! 道中宴の仲間を誘うことを忘れずにな!」

 

「ゴブリン部隊は魔法の森へ! 瘴気や胞子には気を付けろよ!」

 

「オーガ部隊はここら一帯の防御だ! 強敵が攻め込んでくるから無理はするなよ!」

 

 お姉さまの指示に従って配下の妖怪達が一斉に動き出す。数千もの妖怪の群れが規律をもって動くのはお姉さま以外にはなし得ないことだと思う。普通であれば絶対に自分勝手に動くものが出てくるはず。だってそれが妖怪だから。

 

 そう考えるとこの光景だけでもお姉さまがどれだけ規格外なのか分かるだろう。お姉さまは少し脅して優位に立つだけだと言っているけど私から見れば胡散臭い八雲紫よりもお姉さまが幻想郷を支配した方がみんな幸せになれると思う。

 

 結界の維持だけは難しいかもしれないけど、賢者の末席でも得られるといいな。

 


 

 侵攻を開始して二時間。どうやら八雲藍が動き出したようだ。優雅に紅茶を啜るお姉さまに小悪魔が報告に来た。

 

「思ったよりものんびりしているな」

「レミリア様のようにはいきませんから」

 

 お姉さまの言葉に肩を竦めてそう返すとパチュリーの元へと帰っていく。

 

 この小悪魔は幻想郷への侵攻に向けて館内の防衛戦力が足りないからとパチュリーがお姉さまの爪を触媒にして呼び出した存在だったりする。私もお姉さまの爪欲しかったな。髪の毛ならたまに拾えるからコレクションにできるんだけど好きに伸ばしたり縮めたりできる爪はほとんど手に入らないんだよねー。

 

「フランもそろそろ移動しなさい」

「はーい。任せてね!」

 

 最後にぎゅっとしてから中庭に移動する。お姉さまがここで待っていればレティが来るって言ってたね。

 中庭にたどり着いてから数分経つと雪が降り始めた。

 

「この侵略は誰が計画したのかしら~?」

「ふふふ。くろまく~」

 

 笑顔でレティに告げる。レティと言えばこのセリフだよね?

 

「あら~、そうだったのね~。おかくご~」

 

 レティが妖力を込めると私の足先から凍りつき始める。そのまま数秒で下半身が動かなくなっちゃった。

 のんびりとしたセリフの割に行動が速いね。

 

「うふふ~。もうおしまいね~」

「きゅっとしてドカーン」

 

 凍った場所だけを破壊して自由になる。お姉さまのお陰で能力の細かい制御だってお手のものなのさ!

 

「あらあら~。思っていたより凄いのね~」

「お姉さまが鍛えてくれたからね!」

 

 ふっふっふ。お姉さまの凄さが分かるなんてレティとは仲良くなれそう! 後でお友達になるためにも禍根が残らないように攻撃しなきゃだね!!

 

「レーヴァテイン」

「困ったわ~。熱いのは苦手なの~」

 

 お姉さまから貰った神剣に妖力を込めて炎を発生させる。これぞメタ対策! ずっと私のターンだよ!!

 

「はーーーっ!!」

 

 気合いを入れて前進する。

 レティが対抗して放ってくる雪の弾幕を剣を振ることで燃やしつつ接近すると剣の炎とレティの雪で水蒸気が発生した。

 

フォーオブアカインド

 

 レティの正面に立った私は持っている剣を振り下ろそうとした。

 

「危なかったわ~」

「......」

「冬じゃなかったら負けていたかもね~。ま、もう聞こえてないと思うけど」

 

 全身が凍りついた私を背にして歩きだしたレティを地中と上空(・・・・・)から見つめる。

 3、2、1......今!

 

「残念。気付いているわ~。三つ子(・・・)だったのね~」

「ぐっ」

 

 下から強襲を仕掛けたけどあっさりと凍らされた。降り続ける雪に触れていたからか上空にいた分体も居場所がバレて一緒に凍らせられている。

 

 全て想定通り!!

 

「しつこいのは嫌い。夏にでも出直して来なさい」

 

 最後の分体も見つかって凍り始める。せっかくシュールな図を我慢して雪に当たらないように頑張っていたのに!! でも......。

 

「ウィッカーマン」

「あ、あら~?」

 

 最後の分体が完全に凍りつく前に一番最初に凍った本体(・・)の氷のみ破壊することができた。

 

「私の勝ちよ!! 諦めて降参してちょうだい!!!」

「う~ん。仕方ないわね。私のことを殺すつもりはなかったみたいだし降参するわ」

 

 炎の檻に閉じ込めたら抵抗をやめてくれた。これで動くようだったら本気で壊さないといけなかったから降参してくれて良かった。

 

「もう少しだけ我慢してね。全部終わったら解放してあげるから」

「は~い。ところでこの檻を緩めてくれたりはしない?」

「ごめんね。逃げて他の戦場にいかれると困っちゃうからさ」

 

 ニコニコしたままのレティと少し会話してから全てが終わったら遊ぶ約束をした。でも何で目をぱちくりさせてから爆笑したんだろう。凍った時に髪型が変にでもなっちゃったかな?

 

 手櫛で髪を整えてから中庭を後にする。思っていた通りに進んだからかなり早く決着がついたし、さっさとお姉さまのところに行かないとね。

 

「ちょっと待ちな」

「いっ!」

 

 突然顔面に衝撃が来て廊下の壁に叩きつけられる。口の中切っちゃったかも。お姉さまにも殴られたことないのに! は? お姉さまは殴らないが? むしろお姉さまのパンチはご褒美だからノーダメだが?

 

 廊下の壁を二枚ほど貫いてリビングに出る。そこは妖力の籠った霧が漂っている。あー、これは最悪だ。

 

「はぁ」

「ため息を付くなんてひどいじゃないか」

 

 霧が一つに集まって小さな身体を形取り始める。瓢箪を持った二本角の鬼が顔を真っ赤にしながら現れた。見た目は私に負けず劣らずの幼女だけど全く油断できないや。

 

「ほとんどこの可能性はなかったはずなんだけどな~」

「おや? 私と闘うことを想定できてたのかい?」

「ほとんどないと思ってたけどね」

 

 お姉さまが見た運命の中でも数%しか可能性がなかったからほとんど切り捨てていたんだよね。

 この運命を辿った時に何の対策もしてなかったらヤバイから一応対策はしてたけど。

 

 地底に引っ込んでいて欲しかったのに。もしかして八雲藍が手引きしたのかな?

 

「んじゃ、やろっか!」

「もー! なんで鬼がここにいるのさ!!」

 

 ニヤリと笑う萃香にだんだん腹が立ってくる。早くお姉さまのところに行きたかったのに!!

 

 弾幕を張ることなく膂力だけの殴り合いが始まった。純粋なパワーは向こうの方が上。美鈴から教わった技でなんとか食らいついていく。

 

「いいねぇ! 私達()と殴り合える種族がいるとは思わなかったよ!」

「これでも名前に鬼を持つ種族だからね!」

「そうかそうか! 楽しくなってきたねぇ!」

「そんなわけないでしょー!!」

 

 調子に乗って来たのか徐々にパワーが上がってきて技で捌くのも難しくなってきた。う~。やっぱりこのままじゃ無理か。

 

「ごめんねお姉さま!」

「なんだい? これからが良い時なのに諦めるのかい?」

 

 萃香の挑発を無視して美鈴に教わったように妖力を全力でコントロールする。これで私のパワーは十倍だよ!!

 

「うおっ」

 

 元々スピードは私の方が早かったから良いパンチが入って萃香が吹き飛んでいく。

 追撃をしかけようと近づくと額から血を流している萃香が突然目の前に現れた。

 

「よっと!」

「はぁああ!」

 

 怯むことなく頭突きをするも今度は互いに吹き飛んだ。

 

「いたた。ここまでやってもダメなの?」

「いいや、なかなかやるじゃないか。私も全力を出させて貰うよ」

 

 散っていた霧が萃香に集まってくる。これからが正真正銘の全力ってやつかー。もう私には切り札なんて残ってないよ。

 

「ねえ、ちょっといいかな?」

「なんだい? 水を差すようなことは言わないでくれよ?」

 

 うわ~ん。目をギラギラさせてます~。テンションぶち上がってるじゃないですかー。

 

「次の一撃で勝敗をつけたいなーなんて思ったり? 全力で行くからさ」

「む。......分かった。後で勇儀に自慢してやろ」

 

 やめてくださいしんでしまいます。地霊殿が起きた後に喧嘩売られるやつじゃないですかやだ~。っと、ふざけてる場合じゃないね。

 深呼吸をして深く集中する。より精密に、より大量に......妖力だけでなく魔力も練り上げて身体中に満たしていく。

 

「お待たせ」

「この程度構わないさ」

 

 互いの正面に立つ。ここは腕を伸ばしたらぶつかる距離だ。

 

「フランドール・スカーレット。世界で一番素晴らしいお姉さまの妹よ」

「伊吹萃香。鬼の四天王の一人さ」

 

 今さらながらに名乗りをあげて互いに拳を構える。

 

 思いっきり振り抜いた拳が萃香の頬に突き刺さった感触と同時に頬に強烈な衝撃を受けて......私の意識は吹き飛んだ。




萃香はピンピンしてましたがまさか自分が吹き飛ばされるなんて! と楽しそうに敗北宣言しています。
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