「ふっ、ふざけないでください!!」
私達のクラスの担任畑山愛子先こと愛ちゃん先生が机を叩きながら抗議する。
最もその小柄で童顔な見た目のせいで全く迫力がなくクラスメイト全員がのほほんとした目線を向けていた。
先生が怒っている理由は少し時間を遡る。
イシュタルさんの案内で長い机のある部屋へと入り席についた。
ちなみにお茶くみをしていたメイドさんに邪な目線を向ける輩がいたが見なかったことにした。
ソシテイシュタルさんが話し始めた。
内容をまとめると
このトータスと呼ばれる世界では昔から魔人族と人間族間で長い間争っていた。
人間族は身体能力や魔法能力で魔人族に遅れを取っていたものの魔人族よりも多い数によって今まで拮抗状態だった。
しかしつい最近魔人族が魔物を使役するようになり数と言う人間族のアドバンテージがなくなります人間族はピンチになった。
そこで人間族が信仰する神エヒトは最後の切り札として我々を召喚した。と言うことらしい。
つまり魔人族との戦争に参加しろということだ。
当然そんな事を聞いて我らが先生が黙っているはずもないというわけだ。
「ふざけないで下さい! 結局、この子達に戦争させようってことでしょ! そんなの許しません! ええ、先生は絶対に許しませんよ! 私達を早く帰して下さい! きっと、ご家族も心配しているはずです! あなた達のしていることはただの誘拐ですよ!」
「お気持ちはお察しします。しかし……あなた方の帰還は現状では不可能です」
先生の猛烈な抗議に対しイシュタルさんいやイシュタルはなんでもないことのようにそう言い放ち場に静寂が満ちた。
「ふ、不可能って……ど、どういうことですか!? 喚べたのなら帰せるでしょう!?」
「先ほど言ったように、あなた方を召喚したのはエヒト様です。我々人間に異世界に干渉するような魔法は使えませんのでな、あなた方が帰還できるかどうかもエヒト様の御意思次第ということですな」
「そ、そんな……」
先生がそう叫ぶとクラスメイト全員に混乱が伝播する。
「そっそんな帰れないなんて冗談でしょ?!」
「そうだふざけんな!」
「…不味いなパニックおこしかけてる」
(今私たちはこの世界についての知識が全く無いこんな状況で彼らの不興を買うのはまずい!)
私が声を上げようとするよりはやく声を上げたやつがいた。
天之河だ。
「皆、ここでイシュタルさんに文句を言っても意味がない。彼にだってどうしようもないんだ。……俺は、俺は戦おうと思う。この世界の人達が滅亡の危機にあるのは事実なんだ。それを知って、放っておくなんて俺にはできない。それに、人間を救うために召喚されたのなら、救済さえ終われば帰してくれるかもしれない。……イシュタルさん? どうですか?」
「そうですな。エヒト様も救世主の願いを無下にはしますまい」
「俺達には大きな力があるんですよね? ここに来てから妙に力が漲っている感じがします」
「ええ、そうです。ざっと、この世界の者と比べると数倍から数十倍の力を持っていると考えていいでしょうな」
「うん、なら大丈夫。俺は戦う。人々を救い、皆が家に帰れるように。俺が世界も皆も救ってみせる!!」
やつはそう高らかに宣言した。
こいつしれっと全員戦闘員になる前提で言いやがった。
全員が戦闘に適正があるかなんてわからんのにこの流れはまずい。私の嫌な予感は的中した。
彼のカリスマは遺憾なく効果を発揮した。絶望の表情だった生徒達が活気と冷静さを取り戻し始めたのだ。光輝を見る目はキラキラと輝いており、まさに希望を見つけたという表情だ。女子生徒の半数以上は熱っぽい視線を送っている。
「へっ、お前ならそう言うと思ったぜ。お前一人じゃ心配だからな。……俺もやるぜ?」
「龍太郎……」
「今のところ、それしかないわよね。……気に食わないけど……私もやるわ」
「雫……」
「え、えっと、雫ちゃんがやるなら私も頑張るよ!」
「香織……」
いつものメンバーが光輝に賛同する。後は当然の流れというようにクラスメイト達が賛同していく。愛子先生はオロオロと「ダメですよ~」と涙目で訴えているが光輝の作った流れの前では無力だった。
まずいと思った私は声を上げた。
「私も参加するわ…ですがイシュタルさんいくつかお願いを聞いていただいても?」
「なんですかな?」
「はい、まずこの中の全員が戦闘向けの力を持っているとは限りません。戦場以外の場所でこそ才能の光る人もいるでしょうそういった人と戦闘員の間で待遇に差を作らないで欲しいというのが1つ目です」
「わかりました他の願いというのは?」
「はい、我々は特別な力を持っているとはいえもとは争いを知らない学生でした。最終的に戦場に立つかどうかは本人の意思をできるだけ尊重してほしいということです。代わりと言ってはなんですが私の参戦は確約致します」
「わかりました、まあいいでしょう」
「ありがとうございます」
これで少なくとも表向きには私達に戦うかどうかの選択肢が与えられた。
しかし、結局とりあえずは全員参加という形になってしまった。
私達は教会総本山がある神山を離れイシュタルの魔法にのって麓にあるハイリヒ王国へと向かった。
その後王への謁見やらなんやらのあと個室に通され眠りについた。
翌日から早速訓練と座学が始まった。
まず、集まった生徒達に十二センチ×七センチ位の銀色のプレートが配られた。不思議そうに配られたプレートを見る生徒達に、騎士団長メルド・ロギンスが直々に説明を始めた。
騎士団長が訓練に付きっきりでいいのかとも思ったが、対外的にも対内的にも〝勇者様一行〟を半端な者に預けるわけにはいかないということらしい。
メルド団長本人も、「むしろ面倒な雑事を副長(副団長のこと)に押し付ける理由ができて助かった!」と豪快に笑っていたくらいだから大丈夫なのだろう。もっとも、副長さんは大丈夫ではないかもしれないが……
「よし、全員に配り終わったな? このプレートは、ステータスプレートと呼ばれている。文字通り、自分の客観的なステータスを数値化して示してくれるものだ。最も信頼のある身分証明書でもある。これがあれば迷子になっても平気だからな、失くすなよ?」
非常に気楽な喋り方をするメルド。彼は豪放磊落ごうほうらいらくな性格で、「これから戦友になろうってのにいつまでも他人行儀に話せるか!」と、他の騎士団員達にも普通に接するように忠告するくらいだ。
「プレートの一面に魔法陣が刻まれているだろう。そこに、一緒に渡した針で指に傷を作って魔法陣に血を一滴垂らしてくれ。それで所持者が登録される。 〝ステータスオープン〟と言えば表に自分のステータスが表示されるはずだ。ああ、原理とか聞くなよ? そんなもん知らないからな。神代のアーティファクトの類だ」
「アーティファクト?」
アーティファクトという聞き慣れない単語に光輝が質問をする。
「アーティファクトって言うのはな、現代じゃ再現できない強力な力を持った魔法の道具のことだ。まだ神やその眷属けんぞく達が地上にいた神代に創られたと言われている。そのステータスプレートもその一つでな、複製するアーティファクトと一緒に、昔からこの世界に普及しているものとしては唯一のアーティファクトだ。普通は、アーティファクトと言えば国宝になるもんなんだが、これは一般市民にも流通している。身分証に便利だからな」
なるほど、と頷き生徒達は、顔を顰しかめながら指先に針をチョンと刺し、プクと浮き上がった血を魔法陣に擦りつけた。すると、魔法陣が一瞬淡く輝いた。
私も同じように血を擦りつけた。
すると…
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宵崎灯火 17歳 女 レベル1
天職:山の翁
筋力:86
体力:160
耐性:65
俊敏:200
魔力:100
魔耐:60(+300)
技能:
剣術・無冠の武芸・暗殺術・戦闘続行・対魔力
信仰の加護・天性の肉体・幽玄・偽装・言語理解
・気配察知・魔力感知
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こんな文字が浮かび上がって来た。
まるでゲームの世界にでも迷い込んだのかと頭が痛くなってくる。
他の生徒達もマジマジと自分のステータスに注目している。
しかし、私は複数の名前を持っているがどういう基準で選ばれてるんだ?
まあ、別の名前が表示されても困るからよかったが。
しばらくしたあとメルド団長からステータスの説明がなされた。
「全員見れたか? 説明するぞ? まず、最初に〝レベル〟があるだろう? それは各ステータスの上昇と共に上がる。上限は100でそれがその人間の限界を示す。つまりレベルは、その人間が到達できる領域の現在値を示していると思ってくれ。レベル100ということは、人間としての潜在能力を全て発揮した極地ということだからな。そんな奴はそうそういない」
どうやらゲームのようにレベルが上がるからステータスが上がる訳ではないらしい。
「ステータスは日々の鍛錬で当然上昇するし、魔法や魔法具で上昇させることもできる。また、魔力の高い者は自然と他のステータスも高くなる。詳しいことはわかっていないが、魔力が身体のスペックを無意識に補助しているのではないかと考えられている。それと、後でお前等用に装備を選んでもらうから楽しみにしておけ。なにせ救国の勇者御一行だからな。国の宝物庫大開放だぞ!」
メルド団長の言葉から推測すると、魔物を倒しただけでステータスが一気に上昇するということはないらしい。地道に腕を磨かなければならないようだ。
「次に〝天職〟ってのがあるだろう? それは言うなれば〝才能〟だ。末尾にある〝技能〟と連動していて、その天職の領分においては無類の才能を発揮する。天職持ちは少ない。戦闘系天職と非戦系天職に分類されるんだが、戦闘系は千人に一人、ものによっちゃあ万人に一人の割合だ。非戦系も少ないと言えば少ないが……百人に一人はいるな。十人に一人という珍しくないものも結構ある。生産職は持っている奴が多いな」
私の天職は山の翁…なんだろうあの人のクローンの子孫らしいのである意味では納得なのだし覚悟もできているのだが…なんだか天職だと言われると微妙な気持ちにもなるというものだ
「後は……各ステータスは見たままだ。大体レベル1の平均は10くらいだな。まぁ、お前達ならその数倍から数十倍は高いだろうがな! 全く羨ましい限りだ! あ、ステータスプレートの内容は報告してくれ。訓練内容の参考にしなきゃならんからな」
メルド団長の呼び掛けに、早速、光輝がステータスの報告をしに前へ出た。そのステータスは……
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天之河光輝 17歳 男 レベル:1
天職:勇者
筋力:100
体力:100
耐性:100
敏捷:100
魔力:100
魔耐:100
技能:全属性適性・全属性耐性・物理耐性・複合魔法・剣術・剛力・縮地・先読・高速魔力回復・気配感知・魔力感知・限界突破・言語理解
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まさにチートの権化だった。
私は地球でトレーニングしいた分は私の方がステータスがたかいが筋力などでは負けてしまっている
「ほお~、流石勇者様だな。レベル1で既に三桁か……技能も普通は二つ三つなんだがな……規格外な奴め! 頼もしい限りだ!」
「いや~、あはは……」
団長の称賛に照れたように頭を掻く光輝。ちなみに団長のレベルは62。ステータス平均は300前後、この世界でもトップレベルの強さだ。しかし、光輝はレベル1で既に三分の一に迫っている。成長率次第では、あっさり追い抜きそうだ。
ちなみに、技能=才能である以上、先天的なものなので増えたりはしないらしい。唯一の例外が〝派生技能〟だ。
これは一つの技能を長年磨き続けた末に、いわゆる〝壁を越える〟に至った者が取得する後天的技能である。簡単に言えば今まで出来なかったことが、ある日突然、コツを掴んで猛烈な勢いで熟練度を増すということだ。
そう聞いて私は念の為初代様関連っぽいスキルは隠蔽で隠すことにした。
結果
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宵崎灯火 17歳 レベル1
天職:山の翁
筋力:86
体力:160
耐性:65
俊敏:200
魔力:100
魔耐:60
技能:気配遮断・投擲・縮地・調薬・剣術・暗殺術・気配察知・
魔力感知・言語理解
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こう報告した。
すると団長は驚いた様な声を上げた。
「おおすごいなこれは体力俊敏に関しては100以上とは…うん?山の翁うーん…すまんこの天職は聞いたことがない。暗殺術があるから暗殺者と同じ系統だとは思うが…まあ頑張れ」
「はい、ありがとうございます」
そう言い団長は他のクラスメイトのステータスを見に行った。
「灯火はどうだった?僕は暗殺者だったよ」
「恵里がか?まあ私と訓練したりしてるし当然ちゃ当然か…私はこんな感じだったよ」
私はそう言って本当のステータスを見せた。
そうしていると
「ああ、その、なんだ。錬成師というのは、まぁ、言ってみれば鍛治職のことだ。鍛冶するときに便利だとか……」
歯切れ悪く南雲の天職を説明するメルド団長の声が聞こえてきた。
その様子に南雲を目の敵かたきにしている男子達が食いつかないはずがない。鍛治職ということは明らかに非戦系天職だ。
クラスメイト達全員が戦闘系天職を持ちだ。
それにただの学生に戦争における非戦闘員の重要度をりかいしてるものなどいるはずもなく。
檜山大介が、ニヤニヤとしながら声を張り上げる。
「おいおい、南雲。もしかしてお前、非戦系か? 鍛治職でどうやって戦うんだよ? メルドさん、その錬成師って珍しいんっすか?」
「……いや、鍛治職の十人に一人は持っている。国お抱えの職人は全員持っているな」
「おいおい、南雲~。お前、そんなんで戦えるわけ?」
檜山が、実にウザイ感じでハジメと肩を組む。見渡せば、周りの生徒達――特に男子はニヤニヤと嗤わらっている。
「さぁ、やってみないと分からないかな」
「じゃあさ、ちょっとステータス見せてみろよ。天職がショボイ分ステータスは高いんだよなぁ~?」
メルド団長の表情から内容を察しているだろうに、わざわざ執拗しつように聞く檜山。本当に嫌な性格をしている。取り巻きの三人もはやし立てる。強い者には媚び、弱い者には強く出る典型的な小物の行動だ。事実、香織や雫などは不快げに眉をひそめている。
香織に惚れているくせに、なぜそれに気がつかないのか。
南雲が投げやり気味にプレートを渡す。
南雲のプレートの内容を見て、檜山は爆笑した。そして、斎藤達取り巻きに投げ渡し内容を見た他の連中も爆笑なり失笑なりをしていく。
「ぶっはははっ~、なんだこれ! 完全に一般人じゃねぇか!」
「ぎゃははは~、むしろ平均が10なんだから、場合によっちゃその辺の子供より弱いかもな~」
「ヒァハハハ~、無理無理! 直ぐ死ぬってコイツ! 肉壁にもならねぇよ!」
次々と笑い出す生徒に香織が憤然と動き出す。しかし、その前にウガーと怒りの声を発する人がいた。愛子先生だ。
「こらー! 何を笑っているんですか! 仲間を笑うなんて先生許しませんよ! ええ、先生は絶対許しません! 早くプレートを南雲君に返しなさい!」
ちっこい体で精一杯怒りを表現する愛子先生。その姿に毒気を抜かれたのかプレートがハジメに返される。
愛子先生はハジメに向き直ると励はげますように肩を叩いた。
「南雲君、気にすることはありませんよ! 先生だって非戦系? とかいう天職ですし、ステータスだってほとんど平均です。南雲君は一人じゃありませんからね!」
そう言って「ほらっ」と愛子先生はハジメに自分のステータスを見せた。
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畑山愛子 25歳 女 レベル:1
天職:作農師
筋力:5
体力:10
耐性:10
敏捷:5
魔力:100
魔耐:10
技能:土壌管理・土壌回復・範囲耕作・成長促進・品種改良・植物系鑑定・肥料生成・混在育成・自動収穫・発酵操作・範囲温度調整・農場結界・豊穣天雨・言語理解
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南雲は死んだ魚のような目をして遠くを見だした。
「あれっ、どうしたんですか! 南雲君!」とハジメをガクガク揺さぶる愛子先生。
確かに全体のステータスは低いし、非戦系天職だろうことは一目でわかるのだが……魔力だけなら勇者に匹敵しており、技能数なら超えている。糧食問題は戦争には付きものだ。南雲今はいくらでも優秀な代わりのいる職業ではないのだ。つまり、愛子先生も十二分にチートだった。
ちょっと、一人じゃないかもと期待したハジメのダメージは深い。
「あらあら、愛ちゃんったら止め刺しちゃったわね……」
「な、南雲くん! 大丈夫!?」
反応がなくなった南雲を見て雫が苦笑いし、香織が心配そうに駆け寄る。愛子先生は「あれぇ~?」と首を傾げている。相変わらず一生懸命だが空回る愛子先生にほっこりするクラスメイト達。
ハジメに対する嘲笑を止めるという目的自体は達成したものの、上げて落とす的な気遣いと、これからの前途多難さに、南雲は乾いた笑みを浮かべるのだった。