光が収まると景色が変わっていた。
転移系の罠だったらしい、と言うことは罠はこれで終わりではないはず。
次のトラップは何だモンスターハウスかトラップ部屋かといったところか?
あたりを見渡すと私達は橋の上にいるようだ。上にあがる階段があるようだ。感知できたトラップの魔力は2つ、つまり魔法を使ったトラップ部屋じゃない。と言うことはここはモンスターハウスか?
そう予想を立てた灯火は武器を抜いて警戒しながら魔力感知で周囲を確認し叫ぶ。
「団長おそらくモンスターが湧いてくるタイプのトラップです。橋の上と階段前に魔力感知でトラップと思われる魔力を感知しました」
「何!?いかん!お前達急いで立って階段へ行け。急げ!」
雷の如く轟いた号令に、わたわたと動き出す生徒達。
しかし間に合わず。魔法陣が起動し魔物が出現した。
階段前は動く人骨いわゆるスケルトンのような魔物トラウムソルジャーが陣取り封鎖していた。しかしそれよりもヤバいのは橋の上に現れた巨大な魔物
その巨大な魔物を呆然と見つめるメルド団長の呻く様な呟きがやけに明瞭に響いた。
「――まさか……ベヒモス……なのか……」
そんな中灯火は状況把握しようとあたりを観察する。
橋の上に現れたベヒモスは一体、それに対しトラウムソルジャーは今も召喚され続けすでに百体以上になっている。
だが強さ的には今のクラスメイト達でも十分に相手ができる。
それよりも警戒すべきは――
「グルァァァァァアアアアア!!」
「ッ!?」
そこまで考えたときベヒモスの咆哮が轟いた。
その咆哮で正気に戻ったのか、メルド団長が矢継ぎ早に指示を飛ばす。
「アラン! 生徒達を率いてトラウムソルジャーを突破しろ! カイル、イヴァン、ベイル! 全力で障壁を張れ! ヤツを食い止めるぞ! 光輝、お前達は早く階段へ向かえ!」
その指示で私は分身を2体階段前に送り自分も向かおうとしたその時光輝が声をあげる。
「待って下さい、メルドさん! 俺達もやります! あの恐竜みたいなヤツが一番ヤバイでしょう! 俺達も……」
「馬鹿野郎! あれが本当にベヒモスなら、今のお前達では無理だ! ヤツは六十五階層の魔物。かつて、“最強”と言わしめた冒険者をして歯が立たなかった化け物だ! さっさと行け! 私はお前達を死なせるわけにはいかないんだ!」
「そうよ天之河今この状況において私達がすべきは逃げ道の確保だ、それができなきゃ私達も団長も逃げられない!」
メルド団長の鬼気迫る表情と私の言葉に一瞬怯むも、「見捨ててなど行けない!」と踏み止まる光輝。
どうにか撤退させようと、再度メルドが光輝に話そうとした瞬間、ベヒモスが咆哮を上げながら突進してきた。このままでは、撤退中の生徒達を全員轢殺してしまうだろう。
そうはさせるかと、ハイリヒ王国最高戦力が全力の多重障壁を張る。
「「「全ての敵意と悪意を拒絶する、神の子らに絶対の守りを、ここは聖域なりて、神敵を通さず――〝聖絶〟!!」」」
二メートル四方の最高級の紙に描かれた魔法陣と四節からなる詠唱、さらに三人同時発動。一回こっきり一分だけの防御であるが、何物にも破らせない絶対の守りが顕現する。純白に輝く半球状の障壁がベヒモスの突進を防ぐ!
衝突の瞬間、凄まじい衝撃波が発生し、ベヒモスの足元が粉砕される。橋全体が石造りにもかかわらず大きく揺れた。撤退中の生徒達から悲鳴が上がり、転倒する者が相次ぐ。
それをみた私は「すみません、お願いします」と団長に伝え分身を一体残し階段前の方援護に入るため走りだした。
トラウムソルジャーは三十八階層に現れる魔物だ。
今までの魔物とは一線を画す戦闘能力を持っている。
前方に立ちはだかる不気味な骸骨の魔物と、後ろから迫る恐ろしい気配に生徒達は半ばパニック状態だ。
隊列など無視して我先にと階段を目指してがむしゃらに進んでいく。
騎士団員の一人、アランが必死にパニックを抑えようとするが、目前に迫る恐怖により耳を傾ける者はいない。
その内、一人の女子生徒が後ろから突き飛ばされ転倒してしまった。「うっ」と呻きながら顔を上げると、眼前で一体のトラウムソルジャーが剣を振りかぶっていた。
「あ」
そんな一言と同時に彼女の頭部目掛けて剣が振り下ろされた。
死ぬ――女子生徒がそう感じた次の瞬間、トラウムソルジャーの足元が突然隆起した。
バランスを崩したトラウムソルジャーの剣は彼女から逸れてカンッという音と共に地面を叩くに終わる。更に、縦横無尽に動く液体金属、月霊髄液がトラウムソルジャーを薙ぎ払い数体のトラウムソルジャーを奈落に落とすことに成功した。
橋の縁から二メートルほど手前には、座り込みながら荒い息を吐く南雲の姿があった。
南雲が錬成によりトラウムソルジャーのバランスを崩させ月霊髄液により弾き飛ばしたようだ。
「ナイスだ南雲!」
灯火はそう声をかけ襲われそうになっているクラスメイト達を助ける。
灯火も初代様のもとで修行している身トラウムソルジャーぐらいであれば拳でも一撃で倒せる。
しかし、灯火ではトラウムソルジャーを薙ぎ払えるほどの攻撃ができない。
いや、手段はある。灯火の隠しているスキル【
それこそ英霊たちの宝具であろうと魔力さえあれば再現できる。
しかし、使えない理由がある。
確かに灯火は地球にいた頃から技の模倣ができただがあくまでそれは灯火の使える範囲の魔術や体術で再現できる技しか再現できなかったのだ。
しかし、このスキルはその制約がない。理論上その技を知っていて魔力さえあれば再現できる。
だが私のスペック以上の事をしようとすれば当然私の肉体場合によっては魂にまで影響が出かねないのだ。
確かに自爆覚悟で攻撃すればトラウムソルジャーごとき薙ぎ払える。
しかし、そんなことになれば灯火はベヒモスなんて化け物の前でお荷物になってしまう。
だから灯火はここでその手札を切るわけにはいかない。
もちろんクラスメイトの誰かが死にかけたりすればその限りではないが…
(チッ!私も使い勝手のいい高火力技が欲しいな!)
恵里を見たが近くのクラスメイトを守るので精一杯のようだ灯火も分身を駆使してもこんな乱戦下では援護がやっとだ。
南雲もさっきの女子に駆け寄り。
「早く前へ。大丈夫、冷静になればあんな骨どうってことないよ。うちのクラスは僕を除いて全員チートなんだから!」
自信満々で背中をバシッと叩く南雲をマジマジと見る女子生徒は、次の瞬間には「うん! ありがとう!」と元気に返事をして駆け出した。
そんな姿を見てパニックを収めることが最優先と考え声を張り上げる。
「みんな聞け!!!適当に階段を目指すな!それぞれ近くの者とチームを組め!前衛は前に出て後衛を守れ!後衛は前衛のサポートだ!」
灯火の声を聞いたクラスメイト達は近くの人とチームを作り始めたが正直言って分身を攻撃に回せるようになった位しか効果がない。
(だめだ!ここにいる人間では決定打となる火力が足りない…後衛も前衛のサポートで手いっぱいな上にあちこちに小さなチームができているせいで広範囲な魔法は使えない…どうする?)
「なんとかしないと……必要なのは……強力なリーダー……道を切り開く火力……天之河くん!」
南雲が思いついたように叫んだあと光輝のところへ走っていった。