黒烏の夢   作:黒プー

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プロローグ

怪我したカラスを助けるのは不幸を招き入れる意味があるらしい。そうどこかで聞いた言葉が記憶によみがえる。

惑星封鎖機構の持っていた巨大な封鎖衛星。激しい戦いの結果燃え尽きんとしているその上で、ぼんやりとした頭の中その言葉を意味を考える。

ああ、そういえば私がもらった名前は黒烏(「レイヴン」)だった。だから、こんなことになってしまったのだろうか。

飼い主(ウォルター)はどこかに消え、唯一無二の戦友(ラスティ)を自らの手で打ち取り、そして言葉を通わせていた人(エア)を、今。

彼女が乗っていた機体は誘爆し、その影響でこの衛星も壊れようとしている。私自身もこの機体も、もうほとんど動けない。だから私も、ここで死ぬのだろう。

涙があふれてくる。

私のせいだ。私がいたから。死ぬべきではなかった人も巻き込んで、今こうして消えてしまう。何一つ成せず、無意味なままに。

封鎖衛星が極限に達し、視界が白く染まった時。私はそっと、つぶやいた。

 

()()()()()()と。

 

 

-強化人間、C4-621 生体反応を確認。

-オートパイロットを解除、ハンドラーへ通信を接続...接続失敗。

 

-新たな通信が入っています。

 

COMの音声で、私はそっと目を開ける。

ここは...見慣れたコックピットか。だがなぜ私はここにいる?

あの時、私は確かに死んだはず。機体も損傷していて、逃げられるわけもない。

ともかく期待の状況を確認しなければ。

 

「...COM。」

 

-機体状況の確認...成功。

-損傷個所なし、武装装弾数最大。ジェネレーター、FCS、各種武装共に使用可能。

 

「...は?」

 

COMの報告に、無意味だとわかりつつも言葉を荒げてしまう。

だが明らかに奇妙だ。あれだけの戦闘があってジェネレーターの具合どころか武装の弾薬数まで最大だなんて。

 

「...どういうこと?」

-報告。通信が入っています。

 

通信。その言葉を聞いて思わず驚いてしまう。私に通信を入れる相手なんて、ごく一部の人間のみだ。

それにそんな人物たちは皆すでに死んでいる。

 

「...繋いで。」

 

私は奇妙にうずいている心臓を抑えつつ、COMに言う。

-了解。通信を接続します。

 

 

『そこの所属不明機体!こちら連邦宇宙軍独立機動艦隊、ロンドベル!貴機の所属を明らかにせよ!返答なき場合は撃墜する!』

 

撃墜。その言葉を聞いて反射的にシステムを起動する。

武装確認、問題なし。機体異常なし。戦闘可能。

 

-接近する機影を確認。数5。特殊なMTと推測。

 

「...そのくらいなら、やれる。」

 

接近してくる3機の緑色と2機の戦闘機に、まずは牽制を仕掛ける。

両手のRANSETSU-RF(バーストアサルトライフル)を打ち込みつつアサルトブーストを起動、一気に接近する。

向かってくると思っていなかったのか、手前の2機が私の横を通り過ぎていき、私の狙い通り中央にいた1機のMTが孤立する。

 

「...っ!」

 

通り過ぎる直前に武装を肩のWLT 101と左手のRANSETSU-RFを交換、コックピットのあたりを横切りにする。

機体の爆発が消える前に肩のSONGBIRDSを2機いる戦闘機のうちの一つに打ち込む。

だがその戦闘機は人型になったかと思えば急停止、弾丸をよけてこちらに射撃してくる。

 

「ビームライフル...アーキバス?」

 

そのまま射撃しつつ突っ込んできたもう一つのほうの戦闘機...否、MTのようなそれをいなしつつ、回復したアサルトブーストで可変したほうに再度接近、正面から切り捨てる。

 

「2機目!」

 

爆発四散するそれから目を離し、生きているほうに目を向ける。だがそれらはこちらへの攻撃をやめ、どこかへ避難している様子だった。

 

「...いった?」

-高熱源体を感知。

 

COMのそれに背筋が凍り付く。絶対にまずい。

アサルトブーストを点火、真上へと一気に上昇する。

 

「ぐっううううう!」

 

 

数舜したのち、はるか先の空間が光ったかと思えば光線が先ほどまで私がいた場所を通り過ぎる。

危なかった。あれに巻き込まれていれば、間違いなく...。

 

「ふ...うっ...。」

 

ほっとしたのもつかの間、ぐにゃりと視界がゆがむ。

Gの負荷だろうか、それとも戦闘モードの使い過ぎか。

視界がゆがむとともに吐き気も襲ってくる。

まずい。飼い主(ウォルター)がいるところであればともかく、戦場で意識を飛ばすのは、死ぬことと同義だ。

けれど、これは...

 

「たえきれ、な、い...」

 

何かを考える暇もなく。そのまま私の意識は消えていった。

最後に見えたのは、光線が飛んできた方向へと向かっていった、赤い彗星であった。

 

 

 

 

「...これが噂の。」

「は。ロンドベルの部隊とやりあって返り討ちにしたやつです。」

 

赤い貴族服に身を包み仮面をつけた男、フル・フロンタルは、現在のネオジオンのフラッグシップ、レウルーラの内部にあるモビルスーツ整備ハンガーの一角に用意された謎の機体の整備場所で、興味深げに目の前の機体を見上げる。

そんなフロンタルの様子に、隣にいた整備士が続ける。

 

「妙な機体です。連邦の機体にはそこそこ詳しいですが、こいつはそれに属しているようには思えないほど特異性にまみれてやがる。両手足に頭まで簡単に外れるし、武装もいくつか見たことない技術が使われてる。何より妙なのはこのブレードだ。ミノフスキー粒子とは別のものが使われてる。正直、頭の固い連邦やアナハイムがこんなもの作るようには思えませんな。」

「ジオン遺物という可能性は?」

 

フロンタルがそう問いかけると、整備士が笑いながら答える。

 

「ないでしょうなあ、ジオンじゃガンダムのせいでなんでもこなせる万能機体は嫌われてましたから、コンセプトの機体は作らんですよ。...しっかし、パイロットはいったいどこのどいつ何だか。」

「...そうか。」

「おっ!開きました!」

 

そうフロンタルがつぶやくと同時に、コックピットを開こうと試みていた整備士が声を上げる。

 

頑強に閉じられていたそれが開き、中に座っている人物の姿が見えてくる。

 

「...なるほど。」

「おいおい、こいつは...あれを乗り回してたのがこんなちっこい嬢ちゃんだったってのかぁ...?」

 

その比較的小さなコックピットに乗っていたのは、苦しそうにうめく小さな少女であった。

それを見た整備士はフロンタルに問いかける。

 

「...大佐、どうしましょうか。」

「ともかく医務室で治療を。話は私が直接聞きたい、彼女が目を覚ましたら連絡してくれ。」

「り、了解です。」

 

そういいのこし、フロンタルは足場から飛び降りる。

無重力状態の影響でゆっくりと空中を降りる中、フロンタルは何かを思案していた。

 

 

 

 

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