Blue Archive 〜藍の外典〜 作:roimi_mark2
セツナ「ブラックマーケットと掛けまして、本格的なカレー屋と解きます」
ホシノ「その心は〜?」
セツナ「どちらも
ホシノ「セリカちゃ〜ん!先生の座布団引きちぎって〜」
セリカ「そもそも1枚もないけどね!?」
「皆さん、おはようございます」
「ん、おはよう」
「おはようございます〜♪」
便利屋68の襲撃から一夜明けた朝。アビドス高校、廃校対策委員会の部室には、いつもの5人と私が居た。まだ朝の早い時間だが、メンバーに欠員はない。いや、1人だけ顔を伏せている生徒も居るが、よく観察すると寝息は一切聞こえてきていなかった。
実際さっきまでここに居るみんなで、
5人で稼いで毎月がやっとな利息に、一向に減らない元金。それに追い打ちをかける様々な問題。それでも、まだまだ気の遠くなるような難題を抱えているこの学校で、5人の少女と1人の大人は、問題を解決のために集結する。
「それでは、本日の会議を始めさせて頂きます」
そうして今日も、アヤネの明朗な声と共に会議は始まった。この前は少し明るい雰囲気が漂っていた会議だったが、今回は全く正反対。全員がピンッと張り詰めた表情を浮かべ、進行役の言葉に耳を傾ける。そして話し合われる議題の方も、相応に重要な話題だった。
「それではまず、昨日襲撃してきた集団について。これは先生の方から説明していただけると」
「もちろん」
鋭い眼光で見つめるアヤネに促され、私は便利屋68の事情を話していく。リーダーの
もちろん、彼女達のプライバシーに触れない範囲でしか話せなかったが、それだけでも対策委員会を納得させるのには十分だったらしい。最終的には「次見つけたらとっ捕まえて尋問」ということで意見は纏まった。
「みんな、少しいいかな?」
そして次の議題に移る前にもう1つ、新たにわかったことについて話す。それは昨日の夜に、便利屋68の面々とご飯を食べていた時のことだ。私は昼間の戦闘のお詫びも兼ねて、アルたちを食事に誘っていた。
この時ばかりは"対策委員会顧問"ではなく、彼女たちの"経営顧問"として、最近の彼女たちの活動を知っておきたかったのもある。そして話したい事というのは、その時の彼女たちの会話で手に入れた情報だった。
「どうやら、先のヘルメット団襲撃事件と今回の便利屋68襲撃事件は、裏で何かと繋がってるみたいだ」
アルたち曰く、最初の依頼はココ最近になって舞い込んできたもので、その内容はカタカタヘルメット団の殲滅、もしくは無力化。さらには保有武器や戦車等の兵器の破壊も命じられたらしく、まるで"後始末"のような徹底ぶりだったらしい。
それが終わったら、続けてアビドス高校の襲撃依頼がやって来た。内容は学校の奪取、及び在校生徒の無力化。その目的は、先のヘルメット団の襲撃目的とおおよそ一致している。例の重戦車の件もあり、この件は裏で何者かの手引きがあると考えていいだろう。
他にも色々と聞きたいことはあったが、依頼者は徹底して身元を隠しているらしく、アル達ですら依頼者の素性は知らないらしい。
『ただ、かなりの大物なんじゃないかな』
『そうね。受け取らなかったけど、前金だけでもかなりの額だったもの』
『アルちゃん、珍しく受け取るか迷ってたもんね〜』
『そ、そんな事ないわよ!』
そう補足する便利屋の子たちの会話が蘇る。実際、徹底して素性を隠し、最新鋭の重戦車を数台供与できる余裕があるとなると、黒幕はかなり強大な力を持っていそうだ。
「つまり、誰かがこの校舎を狙ってるってこと?」
「私の推測だけどね」
シロコの言葉にそう付け足して、私はお手上げのポーズをとる。現状ではこれ以上詰めようがない。アル達からは十分すぎるほど情報を貰ったし、相手の隠し方も本気だ。少なくとも、ヘルメット団や不良生徒のような子供の犯行ではないのは確実。ある意味、いくらかはやりようがあって助かった。
ただ、ここからはこちらから動かなければならなさそうだ。これ以上待っても相手から情報を落とすことは無いだろう。となると、頼みの綱は放棄されていたヘルメット団の重戦車ぐらいだが……。私がそう考えていた矢先、進行役のアヤネが口を開いた。
「その話についてですが、もう1つの議題にも関係あるかもしれません」
そう言ってアヤネが取り出したのは、白い布に包まれたナニカ。アヤネがそれを机に置いて広げると、そこにはあの重戦車から取り出したらしい黒いパーツがいくつか転がっていた。
「便利屋68の襲撃の後、先生から任されていたヘルメット団の重戦車について。構成されているパーツの中に、いくつか現在では流通していないパーツがありました」
そう説明すると共に、アヤネのタブレットに詳細な情報が表示される。見やすいように机に置かれたそれをみんなで覗き込んでみると、アヤネの言う通り、確かに最終製造日はかなり昔の日付を示していた。
「……なるほど。随分と骨董品みたいだね」
「はい、こういった物はあまり"表の市場"には出回らず、ブラックマーケットに流通している傾向があります。おそらくはこれもそうなんでしょう」
「……うへ。謎の黒幕に、アングラなブラックマーケットか〜。こりゃどんどんきな臭くなっていくねぇ〜」
「……ほんと。冗談もほどほどにして欲しいね」
ホシノの言葉に全面同意だ。ブラックマーケットと言えば、確か連邦生徒会の方で管理ができてないエリア一帯を指す用語だったはず。つまり、危険物所持法が適応されないキヴォトスの中でもさらに激ヤバなエリアということだ。戦闘は日常茶飯事で、強盗•略奪なんでもありの超危険地帯。そこに足を踏み入れるのを想像するだけでも……かなり心臓に悪い。
ただ、裏を返せば情報には事欠かないということでもある。非合法に取引された商品もあれば、皆が知らないような情報まで。中にはブラックマーケットに拠点を構え、傭兵任務をこなす猛者など。表に無いものがたいていあるのがブラックマーケットの利点だ。今回の場合、その利点が良い方向へと働きそうだった。
「では、1度そこに行ってみるのはどうでしょうか?」
「ん、私もその案に賛成」
そしてどうやら、対策委員会も同じ結論へと至ったらしい。 だったらもう、私に止める理由などありはしない。
「そうだね。安全を考慮しながら、行ってみようか」
「うへ。じゃあ早速準備しないとね〜」
「よし!絶対に見つけてやるわよ!」
「ふぁいと〜です☆」
「ん、弾薬は多めに持っていく」
「輸送の方は私とセツナ先生の方で対応します」
それぞれの言葉で奮起しながら、出発の準備を始める対策委員会の少女たち。1人、また1人と準備のために部室を離れていき、最後に残されたのは、皆が出ていった扉を見つめる私1人。窓からの光で浮かび上がる自分の影を見つめながら、ため息とともにポツリと独り言をこぼしていた。
「……言うべき、だったんだろうか」
……実は、彼女たちに隠していた情報がある。それは昨日、アル達と雑談を広げている途中で唐突に告げられた事実だった。
『カタカタヘルメット団を壊滅させた!?』
『へ!?そ、そうよ!?何か問題があったかしら?』
柄にもない私の声に、アルたちの肩がビクッと跳ねる。時刻はまもなく21時になろうかという頃。幸いにも今は人気の少ない時間帯なのか、人の数はまばらだ。だけど返ってそれが、私の声を際立たせる。さらには数少ない人の目が私へと向けられたことにより、私の思考は急激に冷えていった。
『いや……問題は無いんだけども。それも仕事の一環だったのかい?』
『えぇ……そうね。最初の依頼が、ヘルメット団の本拠地を襲撃するって内容で──』
声の音量を落とした私に習うように、アルもまたボリュームを落として会話を続ける。そこからの内容は、さっき対策委員会に話したものと同じった。2つの襲撃事件の黒幕のこと。素性は分からないこと。確かにそれらは知りたかった情報ではあったが、それよりも1つ、私は確認しておきたいことがあった。
『最後にだけど。ヘルメット団を襲撃した時に、天使の翼を持った子は居なかったかい?』
『あっ、もしかして「白鯨」ちゃんのこと?』
『……ん?「白鯨」?』
ムツキの口から飛び出た言葉に疑問符が浮かぶ。おそらく反応的にセキことを指していそうだが、そんな2つ名みたいな名前がついているとは思わなかった。そんな私の思考が顔に出ていたのか、ムツキは面白そうに笑うと、その異名について教えてくれた。
曰く「白鯨」が戦う時は必ず鯨の鳴き声がするらしい。そして鳴き声が聴こえた直後に現れる人影は、髪も翼もみんな純白と言うべき白。そのうえ近くにいるだけで武者震いが止まらないことから、「白鯨」と呼ばれているらしい。
『ただ、私たちが襲撃した時には、それっぽい人は居なかった』
『その代わりに、そこそこ強い子が1人いたわよね。ハルカが気絶した時は、ほんとにびっくりしたんだから』
『すみませんすみませんすみませんすみませんすみませんすみませんすみませんすみません』
『大丈夫だってハルカちゃん!あの子を一人で抑えてたんだから上出来だよ!』
ネガティブに入ったハルカを宥める3人の様子が、ついさっきのことのように思い出せる。追想から戻ってきた私は、先程の情報を踏まえて再度仮説を整理する。
まず、最初のヘルメット団襲撃事件と昨日の便利屋68襲撃事件は、同一犯(以降Aと呼称)の指示によって起きたものである。
Aは最初はカタカタヘルメット団による物量作戦で推し潰そうとしたが、アビドスに盛り返された上にビナー戦時にヘルメット団がアビドスと共闘。おそらくはこれがきっかけで、ヘルメット団を見限る決断をしたのだろう。
そして次にAは便利屋68を使い、痕跡抹消と制裁かねてヘルメット団を壊滅させた。便利屋からの証言によれば、その時門守セキの姿はなく、依頼は問題なく達成。腕を見込まれた彼女たちは、そのままアビドス高校襲撃の依頼も受けた……と言ったところだろう。
昨日の夜のうちにヘルメット団の本拠地にドローンを飛ばしてみたが、 彼女たちの言う通りそこは人の痕跡がないほど廃墟と化していた。
現状、カタカタヘルメット団員の行方は不明。唯一、セキだけは昨日の戦闘終了時にそれらしい姿が見えたが……。彼女の性格を鑑みれば、ただ戦闘を見ていただけとは思えない。
「…………なんだか、嫌な予感がするな」
私の見えないところで、何かが狂っていく予感がする。ただ今は、なるべくアビドスの子たちに悟られないようにしなければ。ただでさえ借金や様々な問題を背負っている彼女たちを、これ以上不安にはさせたくない。
言葉にしにくい重苦しいようなモヤモヤを抱えたまま、私はブラックマーケットに向かう準備を整えるのだった。
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一方その頃、便利屋68の事務所でも動きがあった。
「はぁぁぁぁぁぁ…………」
「……アルちゃん、ココ最近ため息ばかりだね」
「ま、理由が理由だしね」
ため息をつくアル、それを気にかけるムツキ、それに同情するカヨコ。まるでどこかで見たような光景だが、決して時が戻ったわけではない。事実、あの頃と比べて問題は更に根深くなっているのだから。
その原因は、昨夜の食事会の際にセツナが発した1つの忠告だった。
『……アル。今後活動する時は、周囲を気にした方がいいかもしれない』
『へ?どうして?』
『おそらくだけど、その「白鯨」が君たちを狙ってるかもしれない』
『白鯨』。カタカタヘルメット団襲撃の際に、
最初彼女たちは、少し手こずったあのスナイパーが『白鯨』だと思っていた。だが見た目も違うし、聴いていた程のものではない。でも事実として『白鯨』は居ないのだから、むしろ
……セツナが、その『白鯨』について言及するまでは。
「相手はちょー強い5人組に、先生も居てまさに鬼に金棒状態のアビドス」
「それに加えて、それと同レベルの『白鯨』がどこかで私たちを狙ってるかもしれない……」
「ど、どうしますか?このまま……依頼は継続しますか……?」
倒すべき敵は2つ。たった2つだが、便利屋の間にはまるで四面楚歌のような絶望感が漂っていた。何せ、その2つを倒せと言うのが無理難題に近いのだから。
アビドスの強さは十二分に思い知っているし、それにセツナがついている状態でもはや手のつけようがない。そしてどこかに潜んでいるという『白鯨』は、その状態のアビドスと渡り合った上で1人と相討ちしたというのだから、もう目も当てられない。彼女たちの母校ゲヘナも人外魔境だったが、アビドスもかなりの人外魔境だったのだ。
前門のアビドスに、後門の『白鯨』。おおよそ凡人なら、今頃匙を投げて逃げ出している頃だろう。越えられない壁に阻まれて、もはや後戻りもできない。きっと1歩後ろに踏み込めばその瞬間、白い悪魔によって沈められる。今の彼女たちの状況は、"詰み"1歩手前の状況だ。
「……依頼は継続するわ。1度受けた以上、仕事は最後までこなすのがアウトローってものでしょ?」
しかし、ここで折れないのが陸八魔アルである。自分のやりたいことのため、自分の理想に近づくため。彼女は大切な仲間たちと共に、これまで多くのことをしてきた……いや、しでかしてきた。
その度に風紀委員会に追われもしたし、ある時は同じゲヘナの生徒に死ぬほど追い回されもした。依頼も毎回上手くいくとも限らないし、日々の生活がままならないこともあった。毎度毎度、彼女の思い通りにいかないことも多いが、それでも決して諦めないのが、陸八魔アルの美徳なのだ。
「でもねアルちゃん。今の私たちは貧乏だよ?」
「もう一度アビドスを襲撃をするなら、もっと纏まったお金が無いと。それも、前回の襲撃以上の」
「ぐぬぬ……やはり、そう上手くはいかないわね……」
だが、やはり現実は非情である。結局便利屋の財政難は解決していないし、問題がただ増えただけなのだから。しかし、どうやらアルにはこの状況を解決する秘策があるらしい。
「……融資を受けるわ」
力強くそう宣言するアル。確かに、金融機関にお金を借りることが出来れば、当面の資金難は解消されるだろう。その後に返すお金の方も、依頼を完遂した時の報酬金である程度減らすこともできるし悪くない案だ。
だがしかし……それは普通の金融機関に借りれたら、の話である。
「でもアルちゃん。アルちゃんって確かブラックリストに入ってなかったっけ?」
「違うわよ!指名手配された時に風紀委員会に口座を凍結させられただけよ!」
「あれ?……あ〜そうだったね」
そう、彼女の口座は現在凍結中で使えないのだ。ということは新たに口座を開設する必要があるが、現状の便利屋の業績では、真っ当な銀行では取り合って貰えないだろう。そもそも、風紀委員会によって指名手配されているのだから、まともな銀行は門前払いで終わらせるに違いない。
ということは、真っ当ではない銀行であれば、まだできる可能性はある。つまるところ、ブラックマーケットにある闇銀行である。あそこであれば、指名手配犯の便利屋でも取り合ってくれるだろう。
「方法はまだいくらでもあるわ!こんなことで、私たちのビジネスは止まらないんだから!!」
そう言いながら、椅子から立ち上がるアル。どうやら早速、ブラックマーケットに行くつもりらしい。それを察した他の3人も、それぞれ支度を整えながら部屋を出ていく。こうして彼女たちも、ブラックマーケットへと向かうのだった。
そしてそれを見届けるように、便利屋の事務所の外からバサリと何かが飛び立つ音が聞こえた。
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朝の会議から数時間後。諸々の準備を整えた私たちは、特に何事もなくブラックマーケットへと辿り着いていた。だがそこで私たちを待っていたのは、自分たちの想像を優に超える規模を持つ、ブラックマーケットの現実だった。
「ここが……ブラックマーケット」
「わぁ☆すっごい賑わいですね」
「マーケットって言うぐらいだから、小さな市場を想像してたけど……」
「まさか街一つレベルの規模とは……。これはまた、個人的に調査しておかないと……」
その規模は、市場というにはあまりにも大きすぎた。近い例をあげるなら、D.U.シラトリ区の中心街にも匹敵しそうだ。そのあまりの巨大さに、私たち全員が息を呑んだ。
あちこちで自らの商品を宣伝する活気のある声がしているが、おそらくは売られてる商品もろくなものではないのだろう。だからこそ、今回の事件の黒幕に近づくための手がかりがある可能性もまた高い。「木の葉を隠すなら森の中」という言葉の通り、ここにはその手に詳しい者たちがたくさんいるだろうしね。
『皆さん!そこは違法な武器や兵器が取引される場所です。何が起こるかわからないので、油断は禁物です!』
「うへ、わかってるよ〜アヤネちゃん〜」
『でしたらいいのですが……。念の為、何かあったらこちらの方でお伝えします』
「よろしく頼むよ、アヤネ」
私のドローンを経由して、スピーカーからアヤネの声が聞こえてくる。本音を言えば彼女もこの場に連れてきたかった。ここでなら普段の学校生活とはまた違ったことも学べると考えていたが、そうすると生徒不在の学校を守る人が居なくなる。最近のアビドスは何かと物騒なことが多いのもあり、申し訳ないが彼女には1人で学校に残ってもらうことにした。
それからはアヤネのナビゲーションに従いながら、私たちはブラックマーケットを探検していった。その間にホシノの話に耳を傾けたり、周囲の売り物へと目を移らせる。やはりブラックマーケットと言うだけあって、見たことない商品が沢山あった。
だがそんなウィンドウショッピングも、どこからが聞こえてきたアロナの声によって中断された。
《先生、近くにマーケットガードが居ます》
「マーケットガード?」
《はい。ブラックマーケットで治安維持を担っている組織です。目をつけられると、大変なことになるかもしれません》
なるほど、どうやら無法地帯には無法地帯なりに、最低限の秩序を作ろうという意思もあるらしい。しかし、元々は連邦生徒会の秩序からはみ出した者たちによって生まれたブラックマーケットに、こうして新たに秩序を司る機関が生まれるというのは、私にはなんだか滑稽に見えた。
「……ブラックマーケットはルール無用だろ。いっちょ前に治安維持とかしやがって」
誰に聞かせるでもなく、そう毒づく私。それが聞こえていたのか、アロナは少し声を曇らせながら気になることを告げた。
《でも……なんだか様子が変です。まるで何かを警戒しているような……》
「警戒?今のところ何も無いはずだけど……」
アロナのその言葉を聞くと、私は手元の『箱』へと視線を落とす。そこにはアロナがドローンを使って集めてくれていた情報がまとめられていて、それらがブラックマーケットのマップと
見たところ、マップ全体に赤い点がいくつもあって、これがおそらくマーケットガードなのだろう。それらはいくつかの塊に分かれながら、まるで誰かを探すように全域をくまなく移動している。幸いにもこちらがバレている様子は無いが、おそらく接触したら面倒なことになるだろう。
「……ありがとうアロナ。一応、周囲の警戒は続けておいて。お礼に後で美味しいもの持っていくから」
《え!?美味しいもの!?……ジュルリ……》
《うへへへへ》と浮ついた声とヨダレをすする音がする。普段はドローンを操縦したり私を守ったり、何かと忙しい役回りをこなしてくれるアロナ。だけどやっぱり、見た目相応に子供っぽいところもあるみたいだ。
一応AIであるはずのアロナに食べ物を与えるのはいいことか?……と、今更ながら考えたりもしたが、これが初めての事でもないし、多分問題は無いだろう。ならお土産でも探しながら移動しようかと考えていると、どこか遠くないところで「ダンッダンッ」と鋭い銃声が轟いた。
「ん、銃声」
「うへ、やっぱ平和にとはいかないか〜 」
どこからともなく聞こえてきた銃声に、ホシノとシロコが次々と感想を呟く。やはりここは、無法地帯ブラックマーケット。こちらが何かするまでもなく、問題の方が向こうの方から歩いて来る。ここに住んでいれば、きっと毎日は退屈しないだろう。無論、私はそんなの御免だが。
「うわぁぁぁぁ!!ついてこないでくださぁぁぁぁぁい!!!」
「待てよ!!!」
やがて私たちの進行方向から、何やら涙まじりの悲鳴と怒鳴り声のようなものが聞こえて来る。何事かと全員の意識が声のする方向に向いた直後、目の前の曲がり角をブロンドヘアの少女がすごい勢いで曲がり、脇目も振らずこちらへと突っ込んで来た。
さらにその背後からは、2人のスケバンが愛銃片手に追いかけてきている。明らかに、厄介事が向こうから突っ込んで来ているようだ。
「まずいまずいまずいですぅぅぅぅ!!!」
「ん!?」
「わぷっ!!?」
後ろに夢中になっていたのか、追いかけられていた少女は勢いそのままにシロコへと突っ込んだ。幸いにもシロコの方は気づいていたので、そのまま倒れ込むことなく少女を抱きとめる。
見たところ、少女に大きな怪我はなさそうだった。着ている服はおそらく制服で、系統的に言えばトリニティのものに近い。背中に背負ってるバックは確か……、ペロロ様とかいう名前の可愛らしい鳥のキャラクターグッズ。はっきり言ってしまえば、このブラックマーケットとは程遠い世界に住んでそうな少女だった。
「すすす、すみません!!」
「大丈夫……なわけないか。追われてるみたいだし」
誰かとぶつかったことに気づいたようで、少女が即座に頭を下げる。少女の無事を確認したシロコも声をかけながら、少女を自分の後ろへ下がらせて愛銃を構えて前を見据える。
「やっと追いついたぞ!!」
「あん?なんだお前らは?」
その視線の先には、少女を追ってきていたスケバンたちが居た。余程少女が逃げ回っていたのか、その額には少し汗が浮かんでいる。だがそれでも少女と私たちを認識すると、その表情を険しいものへと変えていく。
……まぁ、こうなってはもう避けようがない。せめて穏便な方向で解決できるように、思考をグルグルと回しながら口を開く。
「私たちはごく普通の観光客だよ。ついさっきここに来たところさ」
「観光客ぅ?だったらそこのトリニティ生を出してもらおうか」
「あたしらはそこのトリニティの生徒に用があるんだよ。関係ないんだったらどきな!」
私の適当な答えに、やや困惑の勝ったような声音で少女の身柄を要求するスケバンたち。だが気弱そうなトリニティの少女を、2人がかりで追い回して捕まえようとする。正直、この時点でろくな目的では無いことが察っせられた。さらにはさっきのスケバンたちの要求を聴いていたアヤネも、少女の着ている制服がどこのものかを察したようだった。
『トリニティ……、っ!!思い出しました!その制服、キヴォトス三大校の1つ、トリニティ総合学園のものです!!』
「その通り!そしてキヴォトスで1番お金を持ってるお嬢様学校という訳だ!!」
それから、彼女たちは饒舌に自分たちの計画について語り始めた。曰く、そのままトリニティ生を人質に取り、身代金を貰うのだと。しかもよほど器が広いのか、協力してくれれば分前までくれると言う。なんて素敵なアイディアでしょうか。場合によっては慕われるリーダーになれそうな提案だった。
だがしかし、それを持ちかける相手が悪かった。私は先生だし、アビドスの子たちは道を踏み外さないという固い意思がある。故に話を笑顔で聞きつつも、その後の動きは非常にスムーズだった。
「ホシノ、ノノミ」
「は〜い♣︎」
「おっけ〜」
私の短い一言で、ホシノとノノミが同時に不良たちの背後を取る。そして遅れて振り返った不良たちの脳天へと、それぞれの愛銃を思いっきり叩きつけた。
ゴズッ!!ドコッ!!
「ぐべっ!?」
「おごっ!?」
勢いよく額にめり込んだノノミのマシンガンの銃身と、ホシノのショットガンのストック。防御なんてできる訳もなく、モロに一撃を受けた2人は膝から崩れ落ち、そのまま倒れ込むとピクリとも動かなくなった。もちろん、ヘイローも完全に消滅している。
「ほい、いっちょあがり〜」
「……少しやりすぎましたかね?」
仕事を終えた2人が、気絶させた生徒を道端へと移動させる。その間も不良たちに動きそうな気配は一切なく、まさにされるがままといった状態で引きずられて行った。
……死んだッピか?なんて頭の中でタコ型宇宙人が呟いた気がしたが、それが声に出ていたかは定かではない。だがこの状況では死んでないとも言いきれないのが……。
「……死んでないわよね?」
『……一応、バイタルはあります』
「…………ま、いっか。結果オーライ」
まぁ、鎮圧という最重要目標は達成できたので。とりあえずこの事は気にしないでおこう。幸いにもバイタルはあるらしいし、多分あと数分すれば復活してくれるだろう。それよりも、気になるのは追いかけられていたトリニティ生の方で……。
「大丈夫?怪我とかは……」
「は、はい……。大丈夫です!」
シロコに守られていたトリニティ生も、さっきの状況に少々怯えているようだった。そりゃまぁ……、いきなり目の前で人が撲殺される*1現場に遭遇すれば、きっと誰だってそうなる。
しかしトリニティ生もすぐに気を持ち直したようで、シロコから離れると、私たちに改めてお礼も兼ねて自己紹介をする。
「トリニティ総合学園2年の、阿慈谷ヒフミです。本日は危ないところを助けていただき、ありがとうございました」
阿慈谷ヒフミ。
それは後に、ブラックマーケットにおける伝説的なギャング集団「覆面水着団」のリーダーとなる少女の名前だった。
▽天守セツナ
結構無駄なものを買うタイプ
何気にウィンドウショッピングを楽しんでいる節がある。
▽アロナ
様々なタスクをこなす超性能AI。
セツナが頻繁に差し入れを入れるせいで、完全に餌付けされてしまっている。
▽阿慈谷ヒフミ
まだ帰宅部所属の平凡?な少女。
これから彼女に訪れる出会いを、彼女はまだ知らない。
▽対策委員会
校外学習 in ブラックマーケット
いずれ最恐の戦績をブラックマーケットに刻む者たち。
▽便利屋68
アルちゃん最高!アルちゃん最高!
あなたたちもアルちゃん最高と叫びなさい!!
あとがき
お久しぶりなブルアカ小説更新です。
ちょっと別シリーズの方が沼にハマりつつあるので、抜け出すのに時間がかかっちゃいました。おそらくこれ含めて3本ブルアカ小説を投稿してから、またお休みをいただくことになると思いますので、その時は何卒……。
P.S 石がぁ!天井分まで!貯まらねぇ!!
ユカリ(水着)をお迎えするの我慢したのに!!
次回 第14話「喧騒と少女たちと銀行」
「でしたら、応援して貰えると嬉しいです」