Blue Archive 〜藍の外典〜   作:roimi_mark2

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 現実とは、信じるのを辞めても、消えてなくならないものだ。

 ーフィリップ・K・ディックー







第4話 「眠れる少女は数奇な世界の夢を見るのか?」

 

 

 

 

 

 

 “ ────いったたたた………………”

 

 

 意識が戻ると同時に、私の体を痛みが駆け抜ける。いきなり床が抜けたせいで、私たちは受け身も取れずに地面へと叩きつけられた。

 そこまでの高さじゃなかったのは不幸中の幸いだけど、それでも痛いものは痛い。

 

 

「うひゃ〜……死ぬかと思ったぁ……!!」

 

「ほんと──うわっ!?先生!なんで私たちの下に!?」

 

 “ よし、2人とも無事そうでよかった……よ”

 

 

 お腹の上から聞こえてくる元気な声に、ほっと胸を撫で下ろす。モモイちゃんもミドリちゃんも、私がとっさに庇えたから怪我もないみたい。いつものセキちゃんみたいに、少しはかっこいいところを見せれた気がする。

 

 

 “ ……それにしても、ここはどこだろう?”

 

 

 2人にどいてもらってから身体を起こし、周囲の景色を確認してみる。どうもさっきの廃工場と一緒みたいだけど、なんだかもっと寂れたような雰囲気だ。

 落ちてきた天井は閉まっているのか、セキちゃんが降りてくる様子もない。あっち側の状況も心配だ。オートマタが徘徊してる場所に置いてけぼりだから、もしもの事があるかもしれない。

 とりあえず今はなるべく早くここから脱出して、セキちゃんと合流することを目指そう。そう決めて前を向いた瞬間だった。

 

 

「────あ」

 

 

 モモイちゃんか、あるいはミドリちゃんか。もしかしたら、私だったのかもしれない。誰とも分からないその声が、目の前に広がる光景に溶けていった。

 私たちの見つめる景色。光の差し込む大広間の中央。苔むした台座の中央で、椅子に腰掛ける少女が居た。その少女は陽だまりのような光の中で、一糸まとわず、指ひとつ動かさず、静かに瞼を閉じている。

 

 まるで御伽噺の、眠れる王女のように。

 

 

「……女の子?こんなところに?」

 

 

 モモイちゃんの声で、私の思考回路が再起動した。眠っているあの子の様子が気になるのか、モモイちゃんたちが彼女に近づいていく。

 

 

「……返事がない。ただの屍のようだ」

 

「ちょっと、不謹慎なこと言わないで!それにどっちかと言うと、『電源が入ってない』って感じじゃない?」

 

「確かに、マネキンっぽさはあるよね」

 

「……でもこの子の肌、柔らかいししっとりしてるし。やっぱり普通の女の子なのかな?」

 

 

 女の子を囲んでわちゃわちゃと会話する2人。これだけ騒いでいるのに、未だに椅子の女の子が起きる気配はなかった。その様子を見て、私もゆっくりと彼女たちに近づいてく。

 近くで見てみても、その姿はやっぱり人間の女の子。でも今の力無く眠る姿を見ていると、"生きている"って感じがしなくて少し怖い。それを少しでも紛らわせたくて、私は手を伸ばして眠る彼女の肌に触れてみる。

 ミドリちゃんの言っていた通り、触れた彼女の肌はしっとりとして柔らかく、間違いなく人間のそれと同じ。でもその肌からは"生きている熱"が感じ取れなくて、それがかえって不気味に感じた……。

 

 

 “ とりあえず、服を着せてあげよっか。このままだと、風邪ひちゃうかもしれないし”

 

「……そうですね。私の予備の服があるので、それを……」

 

 

 離れる私と入れ替わるように、ミドリちゃんが女の子に服を着せていく。こんな場所で裸のままなのは、流石に可哀想だしね。

 

 

「あっ、先生!!コレ見て!!」

 

 

 その時、椅子の方を調べていたモモイちゃんが私を呼んだ。すぐに彼女の元へと向かうと、モモイちゃんは椅子のある箇所を指さしている。

 

 

「先生!これ、『AL-IS(アリス)』って書いてない!?」

 

 

 モモイちゃんの言う通り、そこには何かの文字列が刻まれていた。ただそこに刻まれてたのはモモイちゃんの言うものとはちょっと違うくて……。

 

 

 “ ……『AL-1S』?”

 

「お姉ちゃん。それ全部ローマ字じゃないんじゃ?」

 

「え、そうなの?」

 

「少し掠れてるけど、多分『AL-1S』だよ?」

 

 

 ちょっと読みにくいけど、確かにそう書かれているみたいだった。読み方は……単純にエーエル・ワンエスなのかな?なんの事かは分からないけど、少なくともこの子の名前では無さそう。

 となると、本当にこの場所はなんなんだろ。さっきの神秘的な光景も相まって、ここが何か重要な場所なんじゃないかと感じてしまう。そもそもの話、なんでこの子はここで眠っているんだろ?

 

 そう悶々と考える私の"耳"が、「ピピピ……」と鳴る電子音を拾った。

 

 

 ……状態の変化。及び接触許可対象を感知。

 

 

 どこからともなく聞こえたその音声に、私たちは一斉にその場を離れた。私を守るようにモモイちゃんとミドリちゃんが前に出て、声のした方を見つめている。

 ここに来て初めての変化に、警戒度を上げるモモイちゃんたち。私もさっきここに落とした"声"のこともあって、床や天井、周囲の状況へと目を配らせる。

 

 そうしてピリピリと周囲の空気が張り詰めていく中────。

 

 

「………………休眠状態を、解除します」

 

 

 そんな機械的な音声──いや、声が聞こえてくる。

 

 私たちが驚く間もなく、眠っていた少女の頭上に明るい光輪(ヘイロー)が灯る。それと同時に今まで閉じられていた瞼がゆっくりと持ち上がり、澄んだ青色の瞳が顕になった。

 

 

 “ …………起きた?”

 

 

 そう呟く私の目の前で、ゆっくりと大地に立つ女の子。まるで幼子のようにおぼつかない足取りで地面を踏みしめ、着せられた服を不思議そうに眺めながてから、女の子はじっと私たちを見つめてから口を開いた。

 

 

「状況把握……難航。会話を試みます……説明をお願いできますか?」

 

 

 まるで機械みたいに、女の子は私たちに問いかけた。その事に少し衝撃を受けつつも、私もゆっくりと口を開く。

 

 

 “ ……説明って、私たちも説明が欲しいんだけど……。君は何も知らないの?”

 

「肯定。本機の自我、記憶、目的は消失状態であることを確認。データがありません」

 

 “ つまり、記憶喪失……?”

 

 

 想定外に次ぐ想定外。まさかこんな所で記憶喪失の女の子に出会うとは……。さながらRPGの序章のような展開に、私の思考がぐるぐると掻き回される。

 ただゲーム作りの材料を探しに来ただけなのに、まさかこんなことになるなんて……。そう考える私だったけど、モモイちゃんだけはニヤリと笑みを浮かべていた。

 

 

「工場の地下、ほぼ全裸の女の子。しかも記憶喪失……。よしっ!!良いこと思いついちゃった!!」

 

「その単語の並びからして、絶対マトモだとは思えないんだけど……」

 

 

 ミドリちゃんからの鋭いツッコミを「まぁまぁ!」と受け流しながら、モモイちゃんは再び記憶喪失の少女へと近づいていく。そして彼女の手を引きながら、ルンルン気分でこちらへと戻ってきた。

 

 

「こんな場所に居させる飲もアレだし。とりあえず、一旦この子を部室(うち)に連れて帰ろ!」

 

「連れて帰るの!?いきなり攻撃されたりしたらどうするの!?」

 

「否定。本機は『接触許可対象』との接触時、敵対意思を発動しません」

 

 

 モモイちゃんの見切り発車のような案に、ミドリちゃんが当然の反応を示す。ただ女の子的には攻撃するつもりは内容で、その"声"からも嘘をついているような感じはしなかった。

 

 

「なら大丈夫……なのかな?どうしましょう、先生?」

 

 

 あまりの急展開に、ミドリちゃんもついていけてないみたいだ。かくいう私も正直流されかけている自覚はあるけど、それでも残った冷静な部分でしっかりと思考を回す。

 まずモモイちゃんの案には賛成だ。こんな何も無い廃墟の地下で、服すら着ていなかった女の子を置いてけぼりにはできない。それに女の子も攻撃する意思はないみたいなので、一旦部室に連れ帰るのはアリだと思ってる。

 

 

 “ ただ問題は、外のオートマタをどうするかだね……”

 

 

 外を徘徊しているオートマタの群れ。あれをどうにかしなきゃいけない。今の私たちじゃ、この女の子を守りながら戦うのは厳しいと思う。特にセキちゃんが居ない今、あの大量のオートマタと戦うのは……。

 

 

「先生っ!!みんな!大丈夫!!?」

 

 

 その時、私たちの後ろから頼もしい声が聞こえてきた。バッと振り返ってみると、そこには想像通りの人物の姿が。黒いガンケースを背負い、背中の翼を小さくたたみながら、その少女はゆっくりと顔を上げる。

 

 

 “ セキちゃん!!”

 

 

 最高のボディーガードの登場に、私たちから喜びの声が漏れる。少し離れていただけなのに、彼女の頼もしさがいつもの倍くらいに感じられた。

 一方、セキちゃんの方はあまり状況が理解できてないみたいで、私たちの喜び様に目を丸くしていた。そんな彼女の事などお構い無しに、モモイちゃんが一直線にセキちゃんへと駆け寄った。

 

 

「セキ!!良いところに!!騎士様の出番だよ!!」

 

「ひえっ?ちょっと状況が読めない──」

 

 

 そう言いかけたセキちゃんの言葉が、視線と共にピタリと止まる。彼女がじっと見つめる先、そこにはこの状況を理解できていない人物がもう一人がいた。

 そう、記憶喪失の女の子だ。その子もまたセキちゃんのことをじっと見つめていて、空色の瞳と青色の瞳が静かにぶつかっている。それがしばらく続いた後、セキちゃんの口元が小さく動く。

 

 

「…………あれが『王女』?」

 

「……ん?セキ、今なんて?」

 

「いや!なんでもないよ!それで状況は──」

 

 

 一瞬、セキちゃんが何かを言ったみたいだったけど、私の"耳"でもうまく聞き取れなかった。ただあまり重要なことじゃないのか、セキちゃんはそのまま静かにモモイちゃんの状況説明を聞いていた。

 ときおり私やミドリちゃんとで補足を入れながら、これまで起きたことを説明する。

 

 扉が開いた後、女の子が眠るこの場所に着いたこと。そして眠っていた女の子が起きたこと、その女の子が記憶喪失だったこと。それら全部を話した。

 

 

「──それで、今からこの子を部室に連れていくのに、外のオートマタが邪魔ってことですよね?」

 

「そうっ!だからセキの力が必要なの!」

 

 

 一通りの説明を終えると、セキちゃんは2、3度頷いてからえへんっと胸に手を当てた。

 

 

「もちろん!さっきは守れなかったから、今度こそみんなを守ってみせるよ!」

 

 

 本当に、セキちゃんは頼もしいなぁ。まるで本当に、童話の騎士様みたい。そうのんびりと考えている私たちだったけど、続く「けど……」というセキちゃんの言葉に雲行きが怪しくなる

 

 

「アイ先生。最初ここに来た理由もそうですけど、オートマタ(あいつら)とマトモにやり合うと弾薬が足りません」

 

 “ ……そうだ!弾薬問題を忘れてた……!!”

 

「はい。なので、やるにしても素早く、なるべく接敵を避けて移動しなきゃです」

 

 

 口元に人差し指を立てて「しー」っとジェスチャーをするセキちゃん。確かに弾薬の枯渇している今、あの大量のオートマタとやり合うのは得策じゃないね。

 つまり今からやるのはセキちゃんの言う通り、なるべくオートマタと接敵しないように移動して、何とかして部室へと戻る任務(ミッション)。それはつまり────

 

 

「つまり!メタリギアシリーズみたいなステルスゲーだね!!」

 

 

 モモイちゃんの言う通り、かの傭兵のようにスニーキングミッションが始まった。

 

 

 

 

 

 そう、最初は誰もがそう思っていた。

 

 見つからなければ良い、そうならないように移動する。かの伝説の傭兵も、そうして様々な修羅場をくぐり抜けたのだと。

 だがしかし、ここは現実。ゲームのように全てがプログラミングされた世界ではない。如何に彼女らがその伝説の傭兵の動きを模倣したところで、素人のする真似事など、不確定要素の溢れるこの世界には通用しないのだ。

 

 

「あーーーもう!!しつこい!!」

 

 

 そう悪態をつきながらセキは愛銃のハンドガンを乱射する。弾丸が飛翔する先には、またもや彼女らを追いかけるオートマタの姿があった。

 どうやら彼女らの予想に反して、あの廃工場に向かった時に追っていたオートマタがまだこの辺りを彷徨っていたようだ。それに加えて彼らが応援を呼んだのか、周囲のオートマタが続々と合流している。

 そのおかげで数はさっきの逃走劇の比ではない。数が増えたことで彼らの監視網が何重にも強化され、ステルスミッションどころの話ではなくなっていたのだ。

 

 

「もうっ!!見つかってもそいつをぶっ倒せば『目撃者なし(ステルス)』だと思ってたのに!!」

 

「お姉ちゃん!そんなこと言ってないで撃って!」

 

「撃ってるけど!!このままじゃ……!!」

 

「ジリ貧……だね!!」

 

 

 このままでは先にこちらの弾薬が尽きる。そう懸念するセキの嘲笑うかのように、手元のハンドガンから「カチカチ」と嫌な音が聞こえてきた。

 

 

「……まずい、弾切れ……!」

 

 

 そう言いながら腰のマガジンポーチへと手を伸ばすが、その手は虚しく空を切った。よく見るとそこには予備マガジンが2本しかない。どうやら彼女の想定より多くの弾薬を消費していたようだ。

 マガジン2本分──述べ30発の9x19mmパラベラム弾。それがセキに残された弾薬の数だ。対するオートマタは以前として数を増やしつつある。例え徒手空拳を織り交ぜたとしても、この数の敵を相手しながら撤退するのは至難の業だろう。

 

 …………となれば、残された手段は一つだけだ。

 

 

「先生!!"主砲"を使います!!!」

 

 

 このままでは埒が明かない。なら一か八か、主砲の斉射でオートマタの群れを殲滅する。もちろん、今の万全とは言えない状況で使えば様々なリスクがあるが、彼女はそれを百も承知で背中へと手を伸ばす。

 

 

 “ ……セキちゃん。わかったよ!!”

 

 

 背負っていたガンケースから青いレールガンを取り出す彼女の姿を見て、アイもまた静かに理解する。セキの決意に応えるために、すぐさま『シッテムの箱』に周囲のマップを表示させた。

 戦闘支援システムを立ち上げ、3人へと接続。そして周囲のマップをサーチし、並行して敵の配置も確認。それらの情報を全て頭に叩き込んでから、アイは一息に指示を飛ばす。

 

 “ セキちゃん、スモークグレネード用意。3秒後に煙幕展開!モモイちゃん!ミドリちゃん!煙幕展開と同時に二手に分かれて敵を引き付けて!!”

 

「はい!!」

 

「わかりました!!」

 

「おっけー!!」

 

 

 3人の元気の良い返事と共に、セキのスモークグレネードが炸裂する。モクモクと周囲に白煙が満ちる中、煙幕を突っ切った弾丸がオートマタの体を撃つ。

 モモイとミドリ、2人が銃撃で気を引きながら煙幕から抜け出した。それに反応したオートマタの群れは少しの思考(ラグ)の後、綺麗に2つのグループへと分かれてから彼女たちを追撃する。

 

 

 “ セキちゃん!!私たちと一緒にマーカーポイントまで撤退!!”

 

「はい!!」

 

 

 それを確認してから、アイは次の地点へと移動を始める。その場所はさっきのマップ確認の時に見つけた地点。かつては廃墟の中心だったかもしれないスクランブル交差点だ。

 

 

 “ セキちゃんは交差点のど真ん中に!!君は私と一緒に隠れててね”

 

「はい!!」

 

「……命令、ならそうします」

 

 

 交差点の中央にセキを配置して、自分たちは近くの瓦礫へと身を潜める。少女を自身の背中で隠しておけば、これで迎撃準備は完了だ。

 あとは2人がオートマタを引き連れてくるのを待つだけ。そうして改めて状況を確認しているアイたちの元に、2つのグループが接近していた。

 

 

「こ、こっちです!!」

 

「やーいやーい!!こっちだよ〜〜!!」

 

 

 それぞれの先頭を走るのは、先程分かれていたモモイとミドリ。2人は背後から飛んでくる銃弾から逃げながら、時折牽制射撃を挟んでオートマタの群れを誘導していた。

 2人に引き寄せられたオートマタもかなりの数だ。その数はここに来るまでに接敵した数を優に超え、『廃墟』中のオートマタ全てが集まっていると言われても納得できるほど。その姿はさながら小魚の群れである。

 

 

 “ セキちゃん!!もうそろそろ来るよ!!”

 

「了解です!!!」

 

 

 それらの接近を前にして、セキもまた主砲の発射体制に入る。膝を着き、ハンドガードに左手を添えて、右手はグリップをしっかりと握り、その指をそっと引き金(トリガー)にかける。

 準備は万端。それを確認してから、セキは力強く宣言した。

 

 

「主機直結、給弾用回路解放!!」

 

 〘────────────!!!〙

 

 

 その宣言と同時に、再び周囲に鯨の咆哮が轟いた。セキのヘイローが山吹色に変わり、彼女の主機(しんぞう)から神秘が溢れ、それが腕を、手を、グリップを通して『Unser Wille』へと流れ込んでいく。

 神秘が流れ込んでいく感覚。それはセキにとって、血を抜かれている感覚に近い。先程から目眩が襲ってきているし、手足の感覚が遠のいていって、神秘の動線上にある心臓と右腕、そして『Unser Wille』だけが暖かい熱を放っている。

 

 迎撃準備は万全、そして獲物の方もまた、仕込みが整いつつあった。それを示すように、交差点の少し手前にある十字路の左右からモモイとミドリが飛び出してくる。

 

 

「先生!!誘導してきました!!」

 

「でもちょっとやりすぎちゃったかも!!!」

 

 

 大声でそう叫ぶ2人の背後では、引き連れていたオートマタが1つの群れを成していた。合流した大量のオートマタの群れは、まるで津波のようにゾロゾロとこちらへと進軍してくる。

 だが、時は来た。煌々と輝く砲口。限界ギリギリの神秘を流し込まれた『Unser Wille』から青い光が漏れ出ていた。その暖かい熱がセキの手を伝って、発射準備が終わったことを静かに告げている。

 

 

「先生!!こっちは何時でも撃てます!!!」

 

 “ わかった!!モモイちゃん!ミドリちゃん!思っきり横に飛んで!!!”

 

「「はい!!!」」

 

 

 指示を受けたモモイとミドリが、左右に分かれて近くの瓦礫へと飛び込んで身を隠す。無論、その様子を見ていたオートマタの群れは隠れた場所を攻撃するため、足を止めて瓦礫へと狙いをつけた。

 だが次の瞬間、彼らは気づいた。自分たちの正面。ほんの数十メートル先の高エネルギーに。しかもそれが今まさに、自分たちに向けて放たれようとしていることに。

 

 

「私の全力を──!!」

 

 

 そう叫ぶセキの身体を、身体の中が空っぽになるような感覚が絶えずセキを襲っていた。その感覚はあの時の──カイザーとの決戦で気を失った時と同じ感覚だ。

 きっとこの一撃を放てば、セキはまた気絶してしまうだろう。ココ最近続いている謎の神秘の不調。神秘解放の第3段階も使えない状態で主砲を使えばこうもなる。

 

 

 故に、2回目はない。これは一発限りの勝負。

 

 

 だから、この一撃に、全てを────

 

 

 

「私の!!全身全霊の光を──!!!」

 

 ドォォォォォォォォォォォォォォン!!!!!

 

 

 

 セキの叫びと同時に、『Unser Wille』の引き金(トリガー)が引かれる。それにより砲身に溜め込まれていた神秘が一気に放たれ、それは巨大な1本のビームとなってオートマタの群れを飲み込んだ。

 その光がオートマタたちを包む瞬間、彼らは本来感じるはずのない『恐怖』を感じたという。機械であり、データさえ無事なら半永久的に生きる彼ら。そんな彼らのデータすら、光は飲み込んで消していく。

 

 100体を優に超えるオートマタが消滅した頃、セキもまた意識を手放しつつあった。もはや砲身を抑えつけることすらままならず、砲撃の反動で砲口が上空へと跳ね上がっていく。

 上空へと伸びる青白い光の柱。まだ日は高い時間だが、もしも今が夜だったなら、その光は星々のように輝いていたかもしれない。そして光は周囲を燦然と照らした後、力なく萎むように消えてしまった。

 

 その様子をアイの背後から見ていた少女は、ポカンと口を開けてその光景に見入っていた。光の柱が消えた後、しんしんと降る光の残滓を眺める少女。その口からポツリと、無機質な声が辺りに響く。

 

 

「…………綺麗」

 

 

 そう口にした少女の瞳は、人間のようにキラキラと瞬いていた。

 

 

 

 

 









 ▽天守アイ
 よく動くため身体は多少丈夫。
 帰りはセキを背負って帰った。

 ▽門守セキ
 彼女の持つ"本質"とは何なのか。
 主砲を撃ったあとは無事に気絶した。

 ▽記憶喪失の少女
 ついに目覚めし眠り姫。
 "光"はしっかりと脳裏に焼き付いた。

 ▽才羽モモイ・才羽ミドリ
 この出会いが、世界を救う。
 MGS中、一発目にバレたのはモモイ。


 主砲『我らの意志(Unser Wille)』/種別:LG?
 黒服がセキに贈った特殊武器。 見た目はAAAヴンダーの主砲であるレールガンを、そのまま銃火器の形に落とし込んだもの。全体的なシルエットとしてはSRが近い。
 セキの神秘を流し込むことで駆動し、神秘をセキの思う形に成し、放出する機能を持つ。つまり厳密に言えばレールガンどころか、銃ですらないとも言える。
 その特性ゆえ、弾種・弾速・それに伴う威力などをセキの意思で調節可能。しかし今の彼女はまだ未熟なため、神秘を注いでぶっぱなす等の単純な動作しかできない。





あとがき

シンジ君and緒方恵美さん、お誕生日おめでとうございます!(滑り込み)
こちらはリアルがボロボロの中、カニをシバいたりしながら生き延びております。
なので6月末までまた投稿が不定期になりますので何卒何卒……。





 次回 第5話「世界の法則(ゲームルール)

努々(ゆめゆめ)、それを忘れぬよう……』




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