Blue Archive 〜藍の外典〜   作:roimi_mark2

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この話はVol.1-1. 第11話「再来の便利屋」の前後に読まれることをオススメします


アビドス廃校対策会議/先生、ちょっとお時間いただくわ!

 

 

 

 

 アビドス高校廃校対策会議

 

 

 

 

 

 世の中には、"責任"という言葉がある。

 

 人は自らの言動によって起こったことに対し、負わなければいけない責がある……という訳だ。それが罰則なりサポートなり、どんな形で伴うかは、今のところ関係ないので、今回は割愛する。要するに言いたいのは、人を導く者の責任は、その重みに関わらず、人に多大な影響を与えるということだ。

 

 今、私はとてつもない決断を迫られている。それも、5人の生徒の未来にまで影響する、重大な決断を……だ。そんな重責を背負いながら、私は静かに教室の声へと耳を傾けていた。

 

 

「ん、銀行を襲う 」

 

「いやいや〜、ここはバスジャックでしょ〜」

 

「いえ!!ここはアイドルです☆」

 

 

 ……いやぁ、ここはキヴォトスだなぁ。

 

 眠い頭に思い浮かぶのは、そんなちっぽけな感想だ。だが事態はそんな軽いものではない。彼女たちは今、どうにかして学校が抱える借金を返済しようと、その手段を話し合っていた。

 

 ……そう。手段(・・)を……だ。ここは銃撃戦が日常茶飯事のキヴォトス。喧嘩が起これば罵倒の代わりに弾丸が飛ぶ。私も多少はこの世界に慣れてきた物だと思ったが、やはりまだこの世界の倫理観には染まりきれていないようだった。

 

 だがまさか、借金返済のためにここまで過激な発言がとびでてくるとはおもわなかった。一発目に堂々とマルチ商法のチラシを見せつけ、あえなく撃沈したセリカが可愛らしく見えてくる。だがしかしここまではいい。問題はここからなのである。

 

 

「「「ね!先生はどれがいいと思う!?」」」

 

「…………………………」

 

 

 私は天を仰いだ。よりにもよって、その選択をこちらに委ねてきたのである。キラキラした目でこちらを見つめるシロコ・ホシノ・ノノミの3人に、「何とか説得をお願いします」と視線で訴えかけてくるアヤネ。そんな彼女たちの視線に対し、私は考え込むふりをしながら何とか時間を稼いでいた。

 

 まず、この状況はどちらかといえば喜ばしいことだ。いくら銃が身近なキヴォトスと言えど、学びの体系は元の世界とはそれほど変わっていないらしい。子供たちで考え、分からないことがあれば自発的に先生に聞く。年頃の高校生としては満点とも言えるだろう。

 

 だが、ここはやはりキヴォトスなのである。そのどれもが過激なものであり、とても生徒にやらせるものではない。それに下手に言ったらそれを実行できるほどの行動力があるのが厄介だ。例え冗談で言ったとしても、彼女たちなら即座に実行できるだろう。机の下に覆面を隠し持っているシロコがいい例だ。

 

 それでも、私はこの中から選ばなければいけない。であれば、せめてこの中から1番リスクの少ない案を選べばいいのだ。

 

 

 シロコの案:銀行強盗

 言うまでもなく、却下である。バッチリ犯罪だし、それで借金を返せたとしても、その事が巡り巡って禍根になるだろう。得意げに計画を力説していたシロコには悪いが、この案だけは選択してはいけない……。

 

 ホシノの案:スクールバスジャック

 正直、悪くないというのが初見の感想だった。ホシノの言う「生徒の数=力」というのは理解できるし、俗に三大校と言われるゲヘナ・トリニティ・ミレニアムも人は多い。

 だからこそ最初は感心していたのだが、生徒数を増やすためにバスジャックをするというのは犯罪だし、いささかリスキーな話でもある。他校には治安維持のための武力集団も居るし、話の流れで標的になったゲヘナには、キヴォトス最強とも謳われる風紀委員長が居る。流石に手練揃いのアビドスと言えど、数の暴力と最強の個には叶わない。

 そういう意味でも「生徒の数=力」というのは正しいんだなと感じるだけに、ホシノの案はとても勿体なく感じるのだった。

 

 ノノミの案:スクールアイドル

 ここに来てようやくまともな案が出た。いや、他2つ(セリカの分も含めれば3つか)がだいぶぶっ飛んでるだけで、こちらも十分やばい代物だ。だがシロコとホシノに比べれば犯罪でもないし、他校と対立する危険性もない。選ぶのであれば、間違いなくアイドル案だろう。

 だがこれはこれで他2つとは違うリスクが伴う。アイドルと言えばファンの数が重要になる。特にアビドスが借金返済を掲げる以上、言い方は悪いが金を落とすファンの数を増やさなければ、目的の達成は難しい。そうなると必然的にファンの母数を増やさなければいけないわけで、母数が大きくなるにつれて"厄介なファン"の割合も高くなるだろう。

 元いた世界でもアイドル関連のいざこざは闇が深い。それがキヴォトスではどのような形になるかは想像もつかないが、まだ10代の女子高生達にその世界を見せるのは気が引ける。よってこれも、あまり選びたくない案なのである。

 

 

 総じて、ここまで全ての案が何かしらのリスクを孕んでいて、安易に選択しがたいのが現状だ。どれを選んでも危ないし、かと言ってこれ以外に選択肢は……。いや、ないことも無いのだが……。

 

 ……背に腹はかえられぬ。彼女たちが危ない目に遭う道しかないなら、私が新しく道を作るしかない。

 

 

「……みんな、その前に私の意見もいいかな?」

 

 

 正直かなり気が引けるが、私が何かしら代替案を出して誤魔化すしかない。生徒たちのためにラインを引いて過干渉は避けてきたが、今回ばかりはそうもいかない。私はこの子達の顧問だ。その責任を果たす。

 

 

「アビドスにはランドマークが少ないよね。なりそうなものはアビドス高校と、柴関ラーメンもそうかな」

 

「言われてみればそうかも……」

 

「……うん、まぁ確かにそうだね。おじさんが1年生の頃には、もうこんな状態だったしねぇ」

 

「つまり先生は、アビドスに新しくお客さんがやって来そうなモノを作りたいってことですか?」

 

「その通りだよノノミ。だから、アビドスを象徴するような立派なモノを作ろうと思うんだ!アビドスの魅力を十分に生かしたランドマークがあれば、人もどんどん増えるかも」

 

 

 私の意見に、対策委員会の反応は概ね良さそうだった。シロコ・ホシノ・ノノミの3人や、安堵したように息を吐くアヤネ。机に突っ伏しているセリカでさえ、そのケモ耳を動かしてこちらの話に耳を傾ける。よし、これであれば元の3択に戻ることは無いだろう。後はこれを上手く通せれば……!

 

 

「いいですね!!では先生、具体的にはどんなのがいいと思いますか?」

 

「それはね……スフィンクスだよ!!」

 

 

「「「「「………………へ?」」」」」

 

 

 その時、教室の空気が一気に凍りついた。別にスフィンクスが分からないわけではない、分からないのは何故ここでスフィンクスなのかという話だ。

 

 この時の彼女たちは知る由もなかったが、この日でセツナは5徹目に到達していて、いよいよ脳が限界を迎えていたのだ。まだ会話が成立する方が奇跡だが、それでももうまともに思考する余力は残っていない。故に今のセツナは、ただ思ったことがそのまま口に出ている状態なのである。

 

 

「本当は別の案があるんだけど、今は置いといてね。この校舎にも負けないくらいの大きなスフィンクスを作ってちょっと可愛らしくデフォルメしたりすれば、きっとみんなも見に来てくれるよ。名前はそうだね……『ハンニャ──

 

「そこまでです!!!!」

「バッッッ!!!」

 

 

 ペラペラと思考を垂れ流すセツナ目掛けて、アヤネの手刀が勢い良く振り下ろされた。頭部にその一撃を受けたセツナは悲鳴をあげると、そのまま力無く項垂れる。ピクリとも動かないあたり、どうやら完全に気絶しているようだ。

 

 そんな大人を横目に見ながら、シロコたちはその下手人であるアヤネの方へと視線を移す。その表情は俯いていて伺えないが、どうやら完全にお冠らしい。

 

 

「先生も先輩方もふざけないでください!!銀行強盗とかマルチ商法とかそんなことばっかり言って!!」

 

「うっ…………」

 

「ん………………」

 

「いい加減真面目にしてください!!!!」

 

 

 渾身の叫びを轟かせながら、アヤネ必殺のちゃぶ台返しが炸裂するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

先生、ちょっとお時間いただくわよ!

 

 

 

 

 

「……っし!!これで終わりだ〜」

 

 

 張り詰めていた集中力を解きながら、綺麗に整えられた書類に判子を押す。その周囲には山のように積み上がる書類があって、これまでの自分の努力が分かりやすい。その殆どがシャーレの活動のために必要な書類。その処理はいつも大変だが、子供たちのためならなんのその。とりあえず今は、よく頑張ったと自分を褒めてやりたいところだァ。

 

 時刻はちょうど10時を回った頃。確か書類に手をつけたのが昨日の23時頃のはずなので、休憩込みとはいえまるまる12時間書類と格闘していたことになる。こういうのには慣れているとはいえ、流石に身体と脳みそが悲鳴をあげていた。少々はしたないが、来客用のソファーで少しだけ仮眠を取ろう。そう思って立ち上がった時だった。

 

 

 ドゴォォォン!!!

 

 

 私の目の前で、廊下へと繋がるドアが勢いよく吹っ飛んだ。その爆風にあおられて、書類の山や私の眠気がいくらか吹っ飛んでいく。シラトリ区はもう安定化していきなり爆破してくるような子は居なくなったはずだが……。

 

 ……いや、本当に何事だ?既に脳みそが限界なこともあり、今の私は目の前の事象を理解することを拒んでいた。だがそれを理解するよりも先に、煙の中から4人の少女たちが現れた。

 

 

「あっは!ハルカちゃん本当にやっちゃった!!」

 

「えっ?何か間違ってましたか!?死んだ方がいいですか!?わかりました死にます!!!」

 

「ハルカ、ここで撃つのはダメ。依頼主からの情報だと、先生は外の世界の人みたいだから」

 

「ハルカ社員。カヨコ課長の言う通り、今は控えなさい。なんたって、私たちの紹介がまだなんだから」

 

 

 何やら語り合いながら入ってきた少女たち。会話の内容を聞く限り、どうも彼女たちが扉をぶっ飛ばした犯人らしい。だが少なくとも私に危害を加えるつもりは無いらしく、むしろ私が怪我するのを避けるような動きを見せていた。いや……、だったら扉を破壊しないで欲しかったのだが……。

 

 そんな気の抜けたことを考えていたところ、4人組のうち、ロングコートを羽織った角持ちの少女が短く咳払いをした。

 

 

『改めて。初めまして、先生。私たちは「便利屋68」。依頼と金があれば何でもする、何でも屋よ!!』

 

 

 目を鋭く細め、不敵な笑みを浮かべるリーダーらしき少女。そして手元の名刺を先生の元へと差し出すと、今回シャーレを訪れた理由について語るのだった。

 

 

『今回は貴方の事を知るために、こうして会いに来たわ。勿論、こうして私たちのことを知ってもらうことも含めてね。だからまず私たちの質問に「正座」──へ?』

 

 

 セリフを断ち切る私の声に、少女が素っ頓狂な声を上げる。ここに来てようやく、リーダー以外のメンバーが何かに気づいたように表情を変えた。さらには少し遅れて目の前の少女も表情、徐々に青ざめたものになっていく。

 

 その理由は、きっと私の表情。今の私は、きっと怒りを隠せていないだろうから。別に睡眠を妨害されたことが原因ではない。ただ、わざわざ破壊する必要のない扉をぶっ壊して私の頑張った書類と睡魔を吹っ飛ばしたのは、少々注意をしなければならないだろう。

 

 私の睡眠時間を……じゃなかった。

 執務室の扉を……返せ!!

 

 

 

「……もしかして、今はまずかったかしら?」

 

「いや、大丈夫だよ」

 

「いやいやいや!怒ってるわよね!?」

 

「ん?怒ってないよ?ただ……ちょっと"お話"しようか?」

 

「は、はい……………………」

 

 

 そうして、便利屋68と私の関係は、扉をぶっ飛ばしたことについての"お話"から始まったのだった。

 

 

 

 

 

「とりあえず、次やったら怒るからね。せめて事前の連絡をすること。そしたら、私も色々合わせられるから」

 

「はい……その……ごめんなさい」

 

 

 彼女たちをソファーに座らせ、"お話"すること数分。彼女たちに反省の色が"見える"ので、私はそこで話を切りあげた。特にリーダーの少女こと陸八魔(りくはちま)アルは深く反省しているようで、やったことの割には以外と素直な子なんだなと感心するほどだった。

 

 曰く、今回は依頼を受けて、シャーレの先生についての情報を集めるべく直接乗り込んできたようだ。その時に初対面の印象を良くするべく扉を爆破して登場しただったらしい。これに関しては煽った浅黄(あさぎ)ムツキと、制止する前に爆破した伊草(いぐさ)ハルカのせっかちさの方に原因がありそうだった。

 まぁ、本来ならちゃんと止めれてるんだろうから、この場でわざわざ指摘することでもないだろう。それよりも、こちらの話が終わったんだから、彼女たちの話に本題を移したい。

 

 

「それじゃ、質問があるんだっけ?答えられる範囲なら、いくらでも答えるよ」

 

「……意外だね。てっきりこのまま追い返すかと思った」

 

「まさか。本当に登場タイミングと方法が悪かっただけで、来たことそのものには怒ってないよ」

 

 

 鬼方(おにかた)カヨコの驚いたような反応に、包み隠さず本音を伝える。別に生徒に頼られたくない訳じゃないのだ。ただ本当にタイミングと登場時の刺激が不味かっただけで、基本的には大歓迎。それが生徒のためとなるなら、なおのこと。

 

 

「でもそうだね。気が引けるって言うなら、ちょっと雑談に付き合ってもらおうかな。君たちのことも、知っておきたいしね」

 

 

 そう言ってゆっくり立ち上がる。そして向かうは最近の夜の相棒──もとい、インスタントコーヒーの入った戸棚だ。

 

 

「飲み物を用意するからちょっと待ってて。と言っても、コーヒーしかないんだけどね。みんな!リクエストあったら色々聞くよ?」

 

「わーい!じゃあ私は甘いコーヒー!」

 

「……じゃあ私はブラックで」

 

「い、いいんですか?でしたら私も甘いのを……」

 

 

 私の問いかけに、今まで暗かった雰囲気が少しは明るくなる。まぁその原因は私な訳だが。注意してしまった分、彼女たちの仕事が上手くいくよう誠意を持って質問に答えよう。

 

 

「アル!何かリクエストはあるかい?」

 

「……ありがとう先生。なら私もブラックでいいわ」

 

「えぇ〜、アルちゃんブラックなんて飲めるの〜?」

 

「の、飲めるわよ!!」

 

 

 アルも多少気を持ち直したのか、名乗りを上げた時の元気が戻ってきてるみたいだ。それからは淹れたてのコーヒーを口にしながら、彼女たちとの談笑を始める。ちなみに、アルはさりげなく角砂糖を2つくらい追加で投下していた。今度出す時は、先に砂糖を足しておこうかな。

 

 

「それじゃ質問だけど。先生は外の世界から来たのよね?」

 

「そうだね。と言っても、鮮明には思い出せないんだけどね」

 

「思い出せないって、記憶喪失?」

 

「いや?覚えてはいるんだけど、意識しようとすると分からなくなる……みたいな?」

 

「へぇ〜、じゃあ家族構成とかは?」

 

「両親と、妹が居たね」

 

 

 当たり障りのない質問から始まって。

 

 

「つまり先生は、大きな学校の先生だったってこと?」

 

「先生と言うよりかは教授みたいな感じだったけど」

 

「ち、違いが分かりません……それも先生じゃないんですか?」

 

「……まぁ実際、君たちにとっては違いないものだと思うよ」

 

 

 ちょっと深いところまで聞かれたり。

 

 

「アルたちはちゃんと便利屋やれてるの?」

 

「もちろんよ!!ちゃんとオフィスだって持ってるんだから!!」

 

「色々やらかしてタダ働きになることも多いけどね〜」

 

「う、うるさい!!それでも実績は積み重ねてるわよ!!」

 

 

 逆にこっちから質問してみたり。

 

 

「つまり、ゲヘナの風紀委員の総数とその子の戦闘力は同じ……か。何それどんな冗談よ?」

 

「冗談じゃないんだよね……。でも、逆に風紀委員長がいない風紀委員会が相手なら、私たちでも何とかなるよ」

 

「ま、風紀委員長以外にも強い子はいるけどね〜。帰宅部のエルちゃんとか!」

 

「そうなのよ!エルは基本的にゲヘナから出てこないけど、逆にゲヘナの中だとあの子の気まぐれで襲われるし……」

 

「お陰でゲヘナの不良生徒はめっきり減ったみたいだけどね」

 

「ゲヘナは魔境なんだね……。D.Uとは大違いだ」

 

 

 彼女たちの母校について聞いてみたり。

 

 

「こことか、こことか、ここもおすすめだよ」

 

「あ、あの。もしよろしければ、私はここを、オススメします。私なんかのモノサシですが、と、とっても美味しかったです」

 

「ありがとう。カヨコ、ハルカ。でもゲヘナって、自治区の広さの割には飲食店が少ないような……」

 

「あ〜それはね〜。美味しくない店は文字通り跡形もなく爆発しちゃうからだよ!」

 

「え、何それ怖い」

 

「あとはそうね。野生の温泉があるわ!」

 

「野生の温泉!?」

 

 

 最終的にはよく分からない話にまで発展したが、中盤からは互いに笑顔溢れる会話になっていたと思う。最初の雰囲気はどこへやら、日が落ちたのにも気が付かないほど、私たちは雑談に興じていたのだった。だがしかし、流石に周囲が真っ暗になれば、嫌でもこの時間の終わりを悟ってしまう。

 

 

「さて、そろそろ私達もお暇しましょうか」

 

「え〜、ムツキちゃんはまだここに居たいな〜」

 

「ダメ。帰るよムツキ」

 

「コーヒーとお菓子、あ、ありがとうございました!」

 

 

 明かりが灯りつつあるビル群を眺めながら、アルたちがゆっくりと席を立っていく。唯一ムツキだけは少々ごねていたようだが、カヨコに諭されながら渋々といった様子で席を立つ。

 

 

「また来てね。連絡さえくれれば、私は何時でも歓迎するよ。もちろん、いつでも相談してくれていいからね」

 

 

 そう言って私は自分のスマホの画面を見せる。そこには先程交換したモモトークの連絡先、それもちゃんと4人分の連絡先が映っていた。これで何時でも彼女たちと会話することができるようになったのだった。

 だが、まだ彼女たちにシャーレの当番募集用紙は渡していない。彼女たちも便利屋の仕事が忙しいだろうし、今の状態ではきっと彼女たちにかなり頼ることになってしまうだろうから。せめてもう少し人が増えて、負担を分担できるようになった時に、改めて呼ぼうと思う。

 

 

「ありがとう先生。それで早速なんだけど、ちょっとお願いがあるの」

 

 

 しかし、テーブルの上を片付る私の背後から、帰ったはずのアルの声が聞こえてくる。振り返ってみれば、そこにはやはりアルが居て、その後ろにはアルのことを微笑ましげに見つめるムツキ・カヨコ・ハルカの姿もあった。

 そんな彼女達に見守られながら、アルは私に手を差し伸べて、あるお願いをするのだった。

 

 

「先生!私たち、便利屋68の経営顧問になってくれないかしら?」

 

 

 自分たちを、導く大人になって欲しい……と。

 

 

「私たちの仕事を見守ってもらうには、それに相応しいふさわしい人が必要なの。先生となら、きっと上手くやって行けると思うわ!」

 

 

 そう語るアルの表情は、純粋な笑顔だった。その表情には裏はなく、混じり気のない想いを持って、私に初めてのお願いをする。

 

 ……君がそう想うなら、私にそれを断る理由はない。

 

 

「それが、君たちの望むことなら」

 

 

 そう言って、私も彼女に向けて手を差し伸べる。

 

 

「よろしくね、便利屋68のみんな」

 

「えぇ!よろしく頼むわ、セツナ先生!」

 

 

 そうして私達は固い握手を交わすのだった。

 

 

 

 

 







第11話「再来の便利屋」の方に入れたかったけど、入れれなかった小噺になります。あの話、ちょっとペース配分をミスったので、色々と乱雑な作りになってしまったと静かに反省しております。
便利屋の話でセツナの様々な事情を説明できたので、本編セツナのイメージ図に追加していただければと思います。


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