Blue Archive 〜藍の外典〜   作:roimi_mark2

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 As soon as you get out.(お前が戦場に出たその時には……),Invaders will jump you with their stronger soldiers!(侵略者共が最強の兵士を送り込んでくるぞ!)

 ーskibidi toilet Ep.77 「titan tvman's plan」より







第10話「想定外の戦力」

 

 

 

 

 

 作戦は上手くいっていた。

 

 アリスが先行してあえて捕まり、相手に余裕と油断を与える。そして捕まったアリスを起点にハッキングを進め、カメラを偽装してマキとコトリを支援。支援を受けた2人が"仕込み"を使って自分たちごとアカネを分断する。

 その間にアリス以外のゲーム開発部が保管所へと向かい、それをアイが『シッテムの箱』で支援。途中でカリンからの砲撃に見舞われたものの、即座にセキが無力化して事なきを得た。

 

 全ては順調だった。……そうここまでは、だ。

 

 雲行きが怪しくなり始めたのは、ちょうどセキとカリンの戦いが始まった直後だった。

 

 

「アリスちゃん経由のハッキングも上手くいってる。もう少しで基幹サーバーに接続できそう」

 

 

 ミレニアムタワー麓の空き教室。作戦のために借りたその場所では、コタマとハレがアリスの持つ端末を介してハッキング作業を進めていた。

 作戦の第二段階。基幹サーバーにアクセスして、各施設への電力供給を断つ。そうすれば各セクション毎の防護シャッター以外の扉が開き、アリスが解放されてそのまま保管所に鏡を取りに行ける。

 ゲーム開発部が言うには、最悪プログラマー兼テストプレイヤーのアリスさえ逃げ切れば、『G-Bible』を使ってゲームを作れるらしい。ただ願わくば全員逃げ切って欲しいと考えていたその時だった。

 

 

 ピロンッ♪

 

「……おや?」

 

 

 ハッキング中のコタマの耳に、パソコンの通知音が飛び込んでくる。このタイミングで何だろうと少し億劫に思いつつも、コタマはその通知へと目を通した。

 

 

『パソコンのファイアウォールが無効化されました。この操作に心当たりがない場合は──────』

 

「………………はい!?」

 

「うわっ!?どうしたのコタマ先輩!?」

 

 

 突然響いたコタマの大声に、ハレの体がビクッと跳ねる。先輩のらしくない声に何事かとそちらを向けば、ハレの目にもその文面が飛び込んでくる。

 

 

「え!?ファイアウォール無効化!?コタマ先輩何かしたの!?」

 

「いえ!?私は何も!!突然無効化されました!」

 

「何でいきなり────」

 

 

 ハレの言葉を遮るように、再び「ピロンッ♪」と通知を伝える音が響く。しかも今度は、ハレの目の前にあるパソコンから……だ。

 まさか……。そう思いつつ、2人は一斉にパソコンの通知に目を通す。クリックして表示されたそこには、先程のコタマと同じように「ファイアウォールが無効化された」という文面が冷たく載っていた。

 

 

「まさかこれ!!逆ハックされている!?」

 

「不味いです!!早く押し返さないと!!」

 

 

 焦りを滲ませるその言葉とは裏腹に、2人は即座にそれぞれのパソコンに向き合うと、急いでハッキングへの対処を始めた。

 ここが乗っ取られてしまったら、そもそも作戦の前提が崩れる。ヴェリタスとして、ここだけは絶対に守りきらないといけない。

 だがしかし、最高峰のハッカー2人を相手取りながらも、相手の動きは止まらない。明確に進行は遅れてはいるものの、このままではいずれ乗っ取られてしまうだろう。

 

 

「この感じ……副部長を相手にしてるみたい……!」

 

「マキを呼び戻しましょう!3人なら確実に対抗できます!!ヒビキ!緊急事態です────」

 

 

 ミレニアムタワー内部で激しい攻防戦が繰り広げられる中。ここでもまた静かに激戦が繰り広げられていた。

 

 

 

 

 

 そしてそれとほぼ同時刻。

 

 ミレニアムタワー上階でアカネを分断していたマキとコトリもまた、想定外の事態に見舞われていた。

 

 

「あれ?やっぱり開かないよ?」

 

「おかしいですね……。ちゃんとエンジニア部(わたしたち)が作った操作盤なのですが……」

 

 

 シャッターに閉ざされた空間の中で、2人は目の前の機械の確認している。これはエンジニア部が作った防護シャッター用の操作盤だ。

 緊急事態──例えば閉じ込められた場合には、指紋認証を行うことでシャッターを解放することができる。そのシステムを作ったのは他でもないエンジニア部だった。

 

 本来はセミナーとその関係者しか使えないのだが、今回事前にエンジニア部が襲撃に参加することを知っていた(・・・・・)セミナーは、万が一を考えて全ての操作盤を取り替えていた。

 しかしそれを想定していたエンジニア部は、あえて性能の低い操作盤を名前を隠して送っておいたのだ。その目論見は見事にハマり、セミナーはまんまとその操作盤を組み込んでいた。

 

 だからあとは仕込んでおいたバックドアを使って認証を書き換え、アカネを置いて自分たちだけ離脱する算段だったのだが……。

 

 

「バックドアが無い!?なんで!?ちゃんと仕込んだはずなのに!?」

 

「どういうことですか!?確かにこれは、私たちが作ったもののはずですよ!?まさか作戦がバレてたんですか!?」

 

 

 閉じ込められて出られない。想定してなかった事態に、2人の表情がみるみる曇り始める。2人があわあわとパニックを起こしかけている中、突然閉ざされたシャッターの向こう側から轟音が聞こえてきた。

 

 

「……………………ダメですか」

 

 

 爆風で吹き荒ぶ煤から身を守りながら、C&Cのコールサイン03、室笠(むろかさ)アカネはそう独りごちる。彼女の視線の先では、もうもうと煙を上げる防護シャッターがあった。

 彼女にとっての想定外──閉じ込められた場合の打開策の1つ。それがアカネの十八番である爆弾だ。緊急事には防護シャッターごとぶち抜くつもりだったのだが、持ってる中でも高い火力を持つ物を使ってこれだ。表面が煤けた程度で、多分傷1つついてすらいない。

 

 

「やってくれましたね」

 

 

 エンジニア部製の操作盤を交換する時に改修されたと聞いていたが、まさかこれ程のものとは……。その改修を提案した首魁の顔を思い浮かべて、アカネは珍しく悪態をつく。

 そもそも、アカネはあの人が苦手だった。久しぶりに会ったと思ったらいきなり身体中まさぐらて、挙句の果てには「少し肉付きが良くなったね」だ。あの人にはデリカシーというものが全く無い。

 

 

『あーもしもし?無事かなアカネ君?』

 

 

 ……噂をすればなんとやらだ。今アカネが抱えている全ての不機嫌の原因。そのご本人の登場に、自然と口から特大のため息が漏れる。

 

 

「はぁ……。これはススム先輩の仕業ですね?」

 

『ため息とは非道いじゃないか。どうだい?我が新素材開発部──というか、私の最新作は。依頼通り(・・・・)、最強の爆弾にも耐える耐久性さ』

 

 

 インカム越しに伝わる喜色の籠った声に、アカネの口からまたため息が漏れる。それに対して向こうの人物──新素材開発部の新田ススムは特に応えた様子はない。

 

 

「素晴らしいですね。そのおかげで私は出られなくなってるのですが?」

 

『まぁそう怒らないでくれ。私は別に君を嘲笑うために連絡した訳じゃないんだよ。この作戦が始まる前、チヒロが君のスマホに入れたアプリを覚えているかい?』

 

 

 ススムのその言葉を聞いて、アカネはその出来事を思い出した。確かに作戦が始まる前に、ヴェリタスの副部長から謎のアプリをインストールされていた。すぐにポケットからスマホを出して、そのアプリを探し出す。

 

『G.E.H.I.R.N(ゲヒルン)』

 

 そう銘打たれたアプリを起動してから、操作盤へと近づける。すると「ピピピ……」と小さな電子音が鳴り、続いて防護シャッターがゆっくりと開き始めた。

 あまりにもあっさりと解錠されたものだから、アカネの口から「まぁ……」と感嘆の声が漏れる。さすがヴェリタスの副部長。こういうこと(ハッキング)はお手の物のようだ。

 

 

『よし、これで君の問題は解決したね。基幹サーバーへのクラッキングもG.E.H.I.R.Nが対処中だし、データは上場と言った感じかな』

 

「ありがとうございます、ススム先輩」

 

『いや、礼には及ばないよ。貴重な実験の場を頂いてるんだからね』

 

「実験……ですか。私とユウカが話してた時もそう言って乗り込んできましたけど、その実験っていうのは何なんですか?」

 

 

 実験……。そう。その言葉がずっとアカネの中で引っかっている。最初に襲撃阻止作戦が決まった時、彼女の姿は影も形も無かった。

 ユウカとの話し合い中に突然現れて、「実験も兼ねて私たち(・・・)も協力する」と言いだしたかと思えば、妨害なのか支援なのか分からない動きをする。それが今の彼女の立ち位置だ。

 

 

『申し訳ないが、今回の依頼は守秘義務があってね。まぁ一言言うのであれば、シャーレも一枚岩ではないということさ』

 

「シャーレが……ですか?」

 

『これ以上は詮索禁止さ。さあ、シャッターは開いただろう?早く援護に行くといい』

 

 

 そう意味深なことを言い残し、ススムは通話を切ってしまった。彼女が自分の立ち位置をどう思っているのかは知らないが、少なくとも、それを訂正するつもりは毛頭ないようだ。

 

 

「……相変わらず、やりにくい人」

 

 

 のらりくらりとしたあの態度を思い返しながら、アカネはまたため息をつくのだった。

 

 

 

 

 

 そして場所は移り、ミレニアムタワー最上階。

 

 保管所を目指すゲーム開発部とアイたち。セキの援護や各地の陽動もあり、彼女たちは保管所まであと少しという所まで到達していた。

 だが保管所が目と鼻の先ということもあり、ここに来て最大の壁が彼女たちの前に立ち塞がっている。

 

 

「お姉ちゃん!!」

 

「おっけー任せて!!」

 

 

 ミドリとモモイ、2人の射撃が押し寄せるドローンの群れを蹴散らしていく。元は暴走を起こし廃棄予定だったドローンたち。それらを黙らせていると、その群れの中からヌルリと人影が現れる。

 

 

 “ モモイちゃん!!退がって!!”

 

「お姉ちゃん!!前ッ!!」

 

「えちょっ!!──うわっ!!」

 

 

 アイとミドリの声に突き動かされ、モモイは反射的に身を引く。すると直前まで彼女が居た位置に、銃弾が叩き込まれた。

 あと少し反応が遅れていたら……身震いするモモイの前で、攻撃を仕掛けたメイド服の少女は感心したように目を丸くする。

 

 

「おっ、やるねー!姉妹の絆ってやつ?それに2人とも、中々スジが良いね♪」

 

 

 コールサイン01、一之瀬(いちのせ)アスナ。事前の作戦会議では不在と思われていた要注意人物の1人だ。だが懸念されていた通り、何故かこの場所に現れてアイたちの行く手を塞いでいる。

 その実力は、"最強"からお墨付きを頂くほど。相手に動きを掴ませない奇想天外さと、恐ろしいほどの直感(・・)で動き続ける彼女に、アイたちは手を焼かされていた。

 

「あんたたち!それに先生も!!そろそろ降参しなさい!猶予をあげたのにこんなことするなんて!!今日という今日は許さないんだから!!」

 

 

 アスナが舞うように戦う中、その後方ではユウカがドローン操作の片手間に怒号を上げている。ヴェリタスの部長から襲撃の話を聞いた時は信じられない思いだったが、実際に起こされてはたまったもんじゃない。

 しかしそれでも、アイたちにはやるべき事があるのだ。ゲーム開発部の廃部を回避するためには、どうしても"鏡"が必要だから。例え分厚い壁が立ちはだかっても、それを超えなければならない。

 

 

 “ ユズちゃんはそのままドローンを!モモイちゃんとミドリちゃんはその防衛をしつつアスナちゃんを牽制!”

 

「は、はい!」

 

「わかりました!」

 

「おっけー!!!」

 

 

 そんな相手を前に、アイは務めて冷静に指揮を執る。アスナの機動力は厄介だが、まだ対応できる範囲だ。今はひたすらドローンを叩き落として隠れ場所を潰し、その後は範囲攻撃でアスナを落とす。それが今取れる最短の道だ。

 ……そう、彼女たちには時間が無い。今もアイの耳元では、各所の悲鳴が聞こえてきている。ハレとコタマが、マキとコトリがそれぞれの場所で戦い、ヒビキが死にものぐるいでそれらをサポートしてくれている。

 頑張ってくれている彼女たちのためにも、早く決着をつけなければならない。大丈夫。目の前の壁をぶち抜くための切り札(ジョーカー)は既に切ってある。

 

 ズドォン!!

 

 久しぶりに聞く重い砲声。それと同時にユウカの背後の窓ガラスが砕けり散り、飛び込んできた砲弾が床を抉る。それは間違いなく、C&Cのスナイパー、角楯カリンによる一撃だ。

 

 

「…………………………」

 

「カリン!無事だったのね!ならそのまま援護を──」

 

 

 アスナが険しい表情を浮かべる中、ユウカがインカム越しの相手の無事を喜ぶ。だがしかし、次に聞こえてきた一言は彼女の表情を凍りつかせた。

 

 

「カリンちゃんなら倒したよ」

 

 

 淡々とそう告げる声。その声に聞き覚えがある気がして、ユウカはすぐさま後ろを振り返る。するとそこには砕けたガラスを踏みしめて立つ、1人の少女がいた。

 少し傷の増えたヘルメットを被り、頭上には翡翠色の二重円のヘイローを浮かべ、その空色の瞳はこちらを見定めるように鋭くなる。そしてその手には、どこか見覚えのある巨大なスナイパーライフルがあった。

 

 

「……それ、カリンちゃんの銃だよね?」

 

 

 アスナがその武器の本来の持ち主に気づいた頃、ユウカもまた突然現れた闖入者の正体に勘づき始めた。ヘルメットやケープなどで装いは違うが、その大きな白い翼や、澄んだ空色の瞳にも見覚えがある。

 

 

「貴方、セキさんね……!どこにいるのかと思ったら!!」

 

「ひえっ──ンンッ!!違うよ?私はただのヘルメット団員だから」

 

「嘘おっしゃい!!貴方も後でお説教よ!!」

 

「……う〜ん。それはちょっと困るね」

 

 

 そうは言いつつも、彼女の闘気は収まる気配ない。むしろその逆で、ユウカとアスナ、そして無数のドローンを前にしながら、ニヤリと妖しい笑みを浮かべる。

 

 

「それじゃ、先生たちは先に行ってください!私はここを抑えておくので。その代わり、後で一緒に怒られてくださいね!」

 

 

 カリンのスナイパーライフルを肩にかけながら、セキは右手でハンドガンを抜いた。それを目にしたユウカたちが戦闘態勢に入る中、アイは彼女にアイコンタクトを送ってから、ゲーム開発部と共に保管所へと急ぐ。

 

 

「……うん!わかった!!ここはお願い!!」

 

「頼んだよセキ!!」

 

「気をつけて……!!」

 

「ちょっと!!貴方たち────」

 

 

 それを逃すまいと、ドローンを差し向けるユウカ。しかしアイたちに近づいたドローンは、片っ端からハンドガンで叩き落とされる。

 

 

「行かせないよ!これも全部、あの子たちの為だから!」

 

「セキさん……!コレ(・・)がシャーレのやることなの!?そんな変装までして!!」

 

「……これは変装じゃないんだけどね」

 

 

 ユウカの言葉が気に障ったのか、セキがムスッとした表情でそう答える。それと同時に彼女の足元に藍い霧が集まり、唄声と共にユウカ立ちに向けて放たれた。

 霧散していく藍い霧。それらがユウカやアスナの頬を撫でた途端、彼女たちの体を悪寒が包む。武者震いのように震える体は霧のせいか、あるいは目の前の少女の鋭い眼差しのせいか。

 

 

「私は、頑張ってる子を助けたい。どうしようもない状況でも必死に足掻いて、希望の光を掴もうと手を伸ばそうとしてる子を助けたい。そのためのシャーレなの」

 

 

 片手で器用にハンドガンのマガンジンを交換しつつ、セキはそう答える。

 

「希望」。それが彼女がシャーレに望むもの。

 

 そして今この場において、彼女はゲーム開発部にとっての「希望」でありたいと思っていた。そのためなら、お叱りだっていくらでも受ける覚悟だ。

 

 

「ここは通さない。これは絶対だよ」

 

 

 長いリロードを終えて、改めてハンドガンを構え直すセキ。その眼光はまだユウカは見た事がなかった、本気で戦う時の鋭い眼だった。

 戦力差は1対多数。無数のドローンとC&Cのエリートを相手にしてなお、彼女は臆さない。それを肌で感じ取ったユウカも、仕方がないと意識を切り替える。

 

 

「……もう!アスナ先輩!相手はシャーレですが戦い(やり)ましょう!」

 

「…………」

 

「………アスナ先輩?」

 

 

 声が聞こえてこない。いつもの快活で溌剌としたアスナの声が。それを怪訝に思ったユウカが振り返ると、そこには変わらずアスナの姿があった。

 だがしかし、その顔は遠目でもわかるくらい真っ青になっていて、手足もまるであてられたようにガタガタと震わせている。間違いなく、それは普通の状態ではなかった。

 

 

「っ!!?アスナ先輩!!大丈夫ですか!!」

 

「何……!?どうしたの……!?」

 

 

 彼女の容態の急変に、状況はもはや戦闘どころではなくなってしまった。ユウカだけではなくセキも張り詰めていた緊張を解き、また別の緊張を張り詰めさせる。そして心配して駆け寄る2人に向けて、「来ないで!!」と鋭い声が飛ぶ。

 

 

「嫌……!!何っ……これ!?怖い……!!」

 

 

 腰が抜けてしまったのか、そのまま膝から崩れ落ちるアスナ。自分の体を抱き竦めて怯えているその姿は、まるで恐ろしい何かに直面したようだった。

 

 

「セキさん!何をしたの!?」

 

「ひえっ!?私は何もしてないよ!?」

 

「そうだけど!貴方が来るまではなんともなかったのに……!」

 

「でも私は────」

 

 

 そう言いかけたところで、セキは口を噤んだ。何もしてない……ことはない。実際さっき話してる間に、彼女たちに向けて神秘の衝撃波を放ったからだ。

 ただその衝撃波は、これまで何度も使ってきた。セツナ先生を筆頭に、アビドスの対策委員会、便利屋68やゲヘナの風紀委員会にも。数え切れないほど使ってきた中で、こんな状態になるのは初めてのことだった。

 

 

「嫌……怖い……来ないで………!」

 

 

 ポロポロと言葉を零すアスナ。その姿を前にして、セキは自分の手のひらを見つめる。最近、ようやく使い方を学び始めたこの神秘(ちから)。しかしそれが何なのか、彼女は全く知らなかった。

 

 

『セキさん。あなたの心臓……いえ、心は特別です。他の者達とは違う、神に近い無限の可能性を秘めています。その心に集中し、自らの使命を理解できれば……あるいは…』

 

 

 かつて黒服に言われた言葉が、セキの中で蘇る。彼女の中に眠る特別な力。それに伴う、彼女の使命。それは何なのか。彼女はアビドス決戦で決めていたはずだった。

 だからこれは違う。セキの望むものじゃない。だがもし……。もしこれがそう(・・)だと言うのなら………。

 

 

 ダダダダダダダダッ!!!!!

 

「痛ッ!!」

 

 

 突如、セキの体を無数の弾丸が打つ。頭を狙った無数の一撃に一瞬怯むセキだったが、即座に防御姿勢に移行しつつ、神秘の衝撃波で索敵を行う。

 すると撃ってきた人物はすぐに分かった。だがその人物は差押品保管所に繋がる廊下────すなわち、アイたちゲーム開発部が向かっていった方向から撃ってきていた。

 

 

(まさか、先生たちが抑えられた!?でもそんな通信来てないはずだけど……)

 

 

 嫌な予感にセキの表情が曇る。しかし相手はそんなことなど意に介さず、ゆっくりとセキたちの方へ歩みを進める。

 

 

「へぇ?アタシが武者震いするなんていつぶりだ?」

 

 

 彼女が一歩進むにつれて、月明かりが彼女を照らし出す。メイドらしいホワイトプリムの乗った茜色の髪。アスナやカリンと同じメイド服の上には、龍の意匠が施されたスカジャンを羽織っていた。

 そして彼女の緋色の双眸が、壊れたドローン、弾痕まみれの廊下、ユウカ、アスナへと順に向けられ、最後にセキへと向けられる。その鋭い眼光には、間違いなく強い敵意が宿っていた。

 

 

「お前が依頼(・・)のターゲットだな?随分派手に暴れてくれんじゃねぇか!」

 

 

 そう言って持っていた2丁のサブマシンガンを構える少女。こちらに向けて飛ばされる殺気。そして何より……強者特有の重い重圧。それを前にセキも戦闘態勢に入るが、彼女の中でずっと警鐘が鳴り続けていた。

 自分よりずっと小柄なのに、押しつぶされそうな威圧感を感じる。この圧はアビドスのピンク髪の先輩や、ゲヘナの風紀委員長と同じもの。それに彼女の見た目と事前の話が合わされば、もう言われずとも誰なのかがわかる。

 

 

「……あっは。左腕壊さない方が良かった……」

 

 

 半ば諦めたように笑うセキに、相対する彼女も凶暴な笑みを浮かべた。

 

 

「コールサイン00(ダブルオー)。掃除を始める!!」

 

 

*ミレニアム"最強"。美甘ネルが現れた。

 

 

 

 

 

 









 ▽門守セキ
 図らずとも希望の船であろうとする。
 だがそれが、不和の始まりでもあった。

 ▽天守アイ
 兄と違ってアフターケアは苦手。
 ネルとの邂逅はなんとか切り抜けた。

 ▽早瀬ユウカ
 普段のセキなら頭が上がらない人。
 襲撃にシャーレも関わってて胃が痛い。

 ▽一之瀬アスナ
 直感で彼女を感じてしまった。
 この段階で知るべきことではないのだが……。

 ▽新田ススム
 場を乱すサイエンティスト。
 何か目的があるらしいが……。




あとがき

あ〜エスコン楽しい^〜(地上目標を掃討する音)
脳汁出るおかげで小説も進みますよ
なんなら今週はロア編の供給とブルアカらいぶも来ますからね。もう止まらんですわ

ただ今は例の件で色んな所がメンテしたりしてますね。まさかPixivも対象だとは思わなんだ。皆様もアカウントの2段階認証とかで防衛しましょ。




 次回 第11話「Maid vs Knight」


「状況は最悪だけど、私にとっては最高かな」




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