Blue Archive 〜藍の外典〜   作:roimi_mark2

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 番外編なので、本編とは若干時系列が違います。今回のイベストを見て突発で書き出したから許して☆

 あと「ACE COMBAT 8:Wings of Theve」及び「ACE COMBAT 7:SKIES UNKNOWN DLC」のネタ要素(ネタバレ)が織り込まれております。







ゲヘナカップ編:前編「私らの轍を記録に刻む」

 

 

 

 

 

 

 それは、ある晴れた日のことだった。

 

 

「........ゲヘナカップ」

 

 

 アビドス砂漠に居を構えるカタカタヘルメット団のメンバーたち。その中の1人である佐山ユウは、大地を照りつける太陽を眺めながら、ポツリとそう呟いた。

 

 

「........どうしたんだい佐山。まだ昼なのに黄昏れるなんて、らしくないじゃないか」

 

 

 彼女らしくない惚けたその様子に、隣で作業をしていたリーダーの少女──伊佐波メイは手を止めて声をかける。

 

 

「リーダー。ゲヘナカップってのは知ってるか?」

 

「ん?知らないな。佐山が知ってるってことは、戦車関連の何かかい?」

 

 

 長年の付き合いから、メイはそう判断する。佐山ユウはカタカタヘルメット団のサブリーダーであり、団員一の戦車通だ。その技術は戦車戦で大いに生かされ、メイ直々に戦車長に任命されるほど。

 そんな佐山からの話ともなれば、必然戦車関連の話が多くなる。特に普段しっかり者の彼女が惚けるほどとなると、なおのこと。

 

 

「ゲヘナカップ──。それはキヴォトス中の戦車が集う、いわば戦車の祭典!戦車同士のカーチェイス!熾烈な砲撃戦!そして手に汗握るチームの駆け引き!!」

 

 

 そう語る佐山の瞳は、キラキラと輝いていた。そうしてしばらくゲヘナカップの魅力を語っていた佐山だったが、ある程度話し終えたのか、一旦話を切り上げて本題に入った。

 

 

「要するにだよリーダー。私も是非1度出場したいなと思ってるってわけさ」

 

「なるほどね。確かにあたしらは戦車を持ってるし、それなりに戦える練度はあるね」

 

「でしょ?だからさ、私らも出よう────」

 

「ダメだ」

 

「ええええええええーーー???なんでさ!!!?」

 

 

 あっさりと提案を切り捨てたメイ。それに対してメイはプンスコと怒りながら理由を問い詰める。

 

 

「戦車もある!練度もある!あとは何が足りないのさ!?」

 

「頭を冷やしな、佐山。そもそもうちの戦車、どこのやつだったか覚えてるかい?」

 

 

 メイのその言葉で、佐山も思い出したようだ。そもそも今カタカタヘルメット団が有している戦車「Flak 41改」は、元々カイザーグループから供与されたものだ。

 カイザーがシャーレにボコボコにされたことでうやむやになったからまだ使えてるだけで、もしカイザーにバレたら、言いがかりをつけられるかもしれない。

 

 

「............要するに、私らは戦車を持っていないと同義....ってことか」

 

「まぁそうなるね。だから参加したいなら、まずは戦車の調達から始めないとね」

 

「........リーダー。それ本気で言ってるのか?」

 

 

 その言葉に、メイは肩を竦めてみせる。そもそも、カタカタヘルメット団は財政難である。傭兵や軽めのバイトをこなしてはいるが、それでも団員全員を何とか養うので精一杯という有様だ。

 そんな彼女たちに、戦車を調達する金なんてあるわけない。要するに参加は諦めろと、メイは暗にそう伝えているのだ。

 

 

「まぁタイミングが悪かったんだ。参加はもう少し先、また別の機会に────ん?」

 

 

 しょぼくれる佐山を尻目に話をまとめていたメイ。その表情が手元のスマホに落ちると同時に、心底怪訝な声が漏れた。そして次の瞬間には、「ははっ」と乾いた笑いが零れる。

 

 

「──訂正するよ、佐山。すこぶるタイミングが良い。これを見な」

 

 

 そう言って彼女が見せたのは、モモトークの画面だった。その相手は先日シャーレに旅立って行った門守セキで、最新のトークには彼女からある画像が送られていた。

 

 

「何だ....。『試作戦車のテスターを募集中 。ミレニアムの ──新素材開発部&エンジニア部』?」

 

「読んだとおりさ。今あの子はミレニアムにいるらしくてね。そこであんたのことをポロッと零したら、こんな話が来たらしい」

 

「....!!つまりこれを使えば!!」

 

「あぁ、出られるんじゃないか?幸いにも戦車の規格に制限はないらしいし、予選を勝ち残ればやれるだろうさ」

 

 

 どうやら、メイも少し乗り気になってるらしい。件の試作戦車が気になるのか。あるいは、愛娘の知り合いが増えていることが喜ばしいのか。どちらにせよ、このタイミングを逃す手はない。

 

 

「よしリーダー!やってやろうじゃん!」

 

「やる気を出すのは構わないが、メンバーは絞るんだよ。全員分の交通費なんて出せないんだからね」

 

「もちろん!よーし!やってやるぜ!!」

 

 

 リーダーであるメイの許可も得た。夢に見た憧れの大会への出場のため、佐山は重畳な気分で準備へと向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────そして、迎えたゲヘナカップ当日。

 

 

「さぁ!やって来ましたゲヘナカップ!実況は私、元宮(もとみや)チアキが!解説にはイブキちゃんと、シャーレの先生2人をお呼びしています!!」

 

「わーい!よろしくね!」

 

「解説なんてできるか分からないけど、やれるだけやってみるよ」

 

 “ それにしても、色んな学園からたくさんの戦車が来てるね!どんな勝負になるかワクワクしてきた!”

 

 

 実況・解説の席に座るセツナとアイは、スタート地点を見下ろせるその場所から、集結してきた戦車たちを感心しながら眺めていた。

 開催地であるゲヘナだけではなく、レッドウィンターやトリニティ、さらにはアビドスやミレニアムまで。キヴォトスにある全ての学園が参加していると言っても過言ではないその規模に、ただただ驚くことしか出来ない。

 そしてそんな戦車の祭典も、間もなく開幕を告げようとしていた。これ以上の参加はない。そう思っていた実況メンバーの耳に、重い地鳴りのような振動が伝わり始める。

 

 

「……ん?何だ?戦車の移動音?」

 

 “ 戦車って言っても、誰も動いてないけど”

 

 

 アイの言う通り、スタート地点に居る戦車たちは全員がその時を今か今かと待ちわびている。少なくとも、彼女たちの中に振動の原因がいる訳では無いようだ。

 ……それどころか、彼女たちの表情に緊張が走っている。この振動が、戦車乗りの勘が、この音の原因を警戒しろと警鐘を鳴らしているようだった。

 

 

「なんだろー?かいじゅうさんかな?」

 

「怪獣って、そんな報告は届いてないけど……」

 

 

 そう言って辺りを見渡すチアキ。運営の1人としてこの状況を把握しようと務める彼女の耳に、会場の警備に当たっていたメンバーより報告が入った。

 

 

『チアキちゃーん。今から参加者がそっちに行くよ』

 

「ん?エルちゃん?参加者って?あ!!まさかこの音──」

 

 

 チアキが事を理解したのとほぼ同時。

 

 

 バキッ!!ゴシャァァァァァン!!

 

 

 会場へと繋がる入場門が音を立てて崩壊した。そのゲートはゲヘナカップに参加する戦車を外から搬入する時に使ったやつだ。

 さっきの話の通りなら、開始ギリギリに新たな参加者がやってきたことになるが……。なんだか様子がおかしい。全員が固唾を飲んで見守る中。舞い上がった粉塵を突き抜けて、それは姿を表した。

 

 先の話通り、それは戦車だった。ギュラギュラと重い音を響かせる履帯に、凹凸の少ない車体。そしてその上部には、巨大な主砲を構えている。

 それだけ見ればただの戦車だが、その姿にこの場にいた全員が圧倒されていた。やがて衝撃から立ち直った先生2人が、この場にいる全員の思いを代弁する。

 

 

「“…………デカすぎんだろ……(デカすぎじゃない?)”」

 

 

 そう、それは大きすぎたのだ。普通の戦車の2倍はあろうと言う巨躯に合わせ、履帯も主砲も、通常の戦車とは圧倒的に大きさが違う。

 さらにいえば主砲の様子も変だ。普通の戦車であれば単装のはずのそれは、横に二門の砲が並んだ連装砲だった。これではもはや戦車ではなく、陸に上がった戦艦だ。

 

 

「わー!すごい!おっきーーー!!」

 

「…………はっ!!いけないけない!あんな大きな戦車初めて見た。どこのやつだろ…………」

 

 

 イブキの歓声で我に返ったチアキが、あの戦車の乗り手が誰なのかを調べ始める。あんな常軌を逸した代物、用意できるところは自然と限られてくる。

 恐らくは三大学園のどこかか、もしくは閉鎖されたと噂のSRT特殊学園秘蔵の兵器か。ワクワクと共に調査(サーチ)するチアキの傍らで、セツナが「あ……」と間抜けな声を漏らす。

 

 

 “ ん?どうしたのお兄ちゃん”

 

「いや、今日さ。セキが『用事があるんで!』って言って休んでるよな」

 

 “ うん。そうだね”

 

「…………あれ、見えるか?あの戦車の、前の方」

 

 

 そう言って彼女に双眼鏡を手渡すセツナ。それを受け取ったアイは、彼が指差す方──即ち、巨大戦車の乗車口らしい箇所を覗き込む。

 

 

 “ ……あ”

 

 

 そしてそこに仁王立ちしている天使の姿を見つけて、彼女もまた間抜けな声を漏らすのだった。

 

 

 

 

 

 

「良いな。世界に名だたる戦車乗りたちが、こうして一堂に会するなんて」

 

 

 外の喧騒など露知らず。会場へと乗り込んだヘルメット団の戦車『ターパン』の車内で、佐山は満足気に頷いている。

 その背後では呆れた様子のメイが控えていて、やれやれと言った様子で肩を竦めていた。

 

 

「……一応言っておくが。やりすぎるんじゃないよ、佐山」

 

「もちろんだとも……。さて、戦車乗り(タンククルー)諸君」

 

 

 メイからの忠告をしっかりと聞き入れながら、佐山は眼前のモニターへと向き直る。

 

 

「前進だ……。準備が出来次第、前進せよ!!」

 

 

 その一言で、佐山の纏う雰囲気が変わる。その変わりようは凄まじいもので、観測手の1年生、桐谷は隣に座る先輩の白河に静かに耳打ちする。

 

 

「……なんか佐山先輩、いつもと様子がおかしくないですか?」

 

「アレだ。あいつアレなんだ。ハンドルを握ると人が変わるタイプ。だからリーダーがお目付け役で乗ってるんだ」

 

 

 彼女もまた、数少ない同期の1人。佐山の悪癖(・・)については十分承知している。普段は陽だまりのような性格だが、一度ハンドルを握れば、それは熱砂のような熱を伴う。

 だからこそ白河やメイを始めとした同期は、これから起こることに不安を感じているのだ。逆にそれを知らない桐谷たち下級生は、逆にワクワクした表情でここに居るのだった。

 

 それは今車内へと戻ってきた天使も同様だ。

 

 

「それにしても、ゲヘナカップってすごいですね。あっちにもこっちにも、戦車がいっぱいです」

 

 

 ガチャン!とハッチを閉めたセキが、目を輝かせながらそう感想を漏らす。セキもシャーレ所属となってから様々な学園を見て回ったが、ここまで戦車が揃う光景は初めてだった。

 だからこそ、佐山はこの催しに魅入られているのだ。最高の戦車たちが、それを操る最高のメンバーが、一堂に会する夢のような機会。そんな場所に、今自分たちも参加している。見た目では分からないが、彼女の胸には熱い闘志が燃え滾っていた。

 

 

「ここは最高の戦車と最高の乗組員が揃う場所だ。正しく戦車道の祭典であり、最高の戦車を決める戦い。しかしそれ以前に、この水上戦車『ターパン』の進路を塞ぐものは誰一人としていない……」

 

 

 そう呟く佐山。外では間もなくレースが始まるようで、万魔殿(パンデモニウム)の生徒がバサバサとスタートフラッグを翻している。

 それを合図に、スタートラインに並ぶ戦車たちが一斉にエンジンを震わせる。その中でも佐山たちの操る『ターパン』は、低く重いエンジン音を響かせて、その時を今か今かと待ちわびていた。

 

 そしてついに、その時が訪れる。

 

 

 

『START YOUR ENGINE!!』

 

 

『GEHENNA CUP IS ABOUT TO BEGIN!!』

 

 

『ARE YOU READY?』

 

 

『──3──』

 

 

『──2──』

 

 

『──1──』

 

 

『──GO!!──』

 

 

 目の前の電光掲示板にそう表示され、エンジンの大合唱に負けないほどのブザーが響く。それを合図に各車が待ってましたとばかりに一斉に飛び出した。

 無限軌道とエンジンの轟音を轟かせ、各々が最初の砲撃目標へと突貫する。だがターパンだけは例外だった。その巨体が故、他の戦車よりスタートダッシュが遅れたのだ。

 

 

「先輩!!」

 

「佐山!!」

 

 

 先に発進した戦車の姿が遠のいていく。焦った白河と桐谷がそう呼び掛ける中、当の本人は不敵な笑みを浮かべ、焦るメンバーに冷静に指示を送る。

 

 

「稲山!ギアを6速へ!全速前進!!白河!第1砲撃地点到達後、副砲(・・)射撃準備!」

 

「ギア6速!!全速前進!!よーそろー!!」

 

「佐山、それで本当に勝てるのか?」

 

「当然だ。他の戦車を圧倒できるだけの火器が、私たちにはある!!」

 

 

 自信に満ちた佐山の声とともに、水上戦車『ターパン』はゆっくりと前進を始める。一歩、また一歩と前進する度に、巨大な履帯が地面に大きな轍を刻んでいく。

 

 

 それが、佐山の……いや、彼女たちの挑戦の始まりとなる足跡だった。

 

 

 

 

 

 









 ▽佐山ユウ
 カタカタヘルメット団のサブリーダー。
 ある理由で戦車道に魅入られた人。

 ▽伊佐波メイ
 カタカタヘルメット団リーダー。
 仲間の願いはなるべく叶えてやりたい。

 ▽白河ミナミ
 カタカタヘルメット団の参謀役。
 暴走しがちな佐山を抑える腐れ縁の親友。

 ▽桐谷ユリナ
 カタカタヘルメット団の救護・補給担当。
 1年生にして補給・救護を1手に担っている。

 ▽稲山ミレイ
 カタカタヘルメット団の戦車隊メンバー。
 佐山が信頼を寄せているタンクドライバー。


あとがき

ゲヘナカップのイベストを読んで、「カタカタヘルメット団」の文字が見えた瞬間このストーリーを構築しました。
この話と昨今のあとがきを見れば、うちが今どのゲームにハマっているかよく分かるでしょう。



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