俺は生きるために死にたくない!   作:野犬です

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雪に触ってみよう!

 

誰もいない雪原に降り立つ。寒風が吹き荒び、まるで星そのものが命あるものを拒絶しているかのようだ。

 

『惑星への着陸完了。システム異常なし、周囲に生体反応なし。トラブルがなくて良かった』

 

外気温は氷点下をゆうに下回っている。

装甲が無ければ一時間と持たずに氷漬けになってしまいそうな極低温の中、こんな過酷な星に本当に仕事をくれる人間がいるのかと疑いたくなるが、この星に人間が街を築き生きているのは大気圏突入前に()()で確認済みだ。

今はサムを人に見られる事を避けるために人里離れた位置に着陸したが、街に近づいたら生身になる必要がある。

 

『...極低温の世界に生身で足を踏み入れるのは今回が初めてです。...寒いという感覚、少し気になりますが...』

 

ちらと雪原の端に目を向ける。

かつては人が住んでいたのであろう雪にまみれた廃屋と、人型の氷。だがシルエットをみるに、これは人間ではなくおそらくは裂界造物の類だろう。

万界の癌が齎す災厄さえ氷の内に閉じ込めてしまうような極寒にわざわざ身を投じる気にはなれなかった。

 

『...生体反応を確認。誰かがこちらに来る...』

 

だが何時までも怠惰スーツ(快適なゆりかごの中)を着たままではいられない。サム(星核ハンター)がカンパニーに指名手配され、その姿が知れ渡ってしまっている以上、詳細は違うとはいえ殆ど同じ顔の装甲を人様にお見せする訳にはいかないのだ。

 

『あの蛍野郎覚えとけよ...ッうヒィあァーーっ!?」

 

声も顔も知らない相手に憤りながら装甲を解除し、そのまま肌を刺す冷気に耐えられず声を上げる。

これが寒い!?とんでもなくキツい!てかもはや痛ぇ!寒いってか痛ぇ!

 

「ままま真っ白な星ががっがめめ目に付いたからって考えっ無しに突っ込むんじゃなななかった...!」

 

これはまずい、非常にまずい。今まで寒いという感覚を知らなかった所にあまりにもハード過ぎる寒さを急にブチ当てられ、蒼穹戦線で訓練を積んで手に入れた鋼の精神が既にヒビまみれで悲鳴を上げている。そして俺は他の鉄騎達と違って身体能力に自信が無い!

人の気配が近づいている。今更サムに戻ることはできない。だが俺の心身は完全に寒気に負け、体の震えが全く止まらない。なんだか眠くなってきたような気さえしてきた...

そして極限状態の俺は更にある事を思い出す。

 

(なんて言って街に入れてもらうかなんにも考えてねえ______!)

 

金がない焦りで無計画に元の星を飛び出し、行き当たりばったりでこの星に降り立った結果、今の俺は立派な不法入星者だ。

俺はアホなのか?大気圏外から見た時点でこういう環境であることは分かっていたはずだし、そもそも前の星で浪費なんかしてなきゃこんな事には、いやいやもっと思い返せば____!

 

そうしている間にも体は冷え、思考にモヤがかかっていく。バカアホマヌケの走馬灯を見つつ、俺の意識は闇の中へ消えていった...

 

 

「ちょっと!キミ、大丈夫!?」

 

 

 

 

 

 

_______近くにあたたかい熱を感じる。あの生命を喰らい尽くすような熱気じゃない。

_______何かの香ばしいいい匂いがする。あの肉と脂と蟲が混ざって焼けた酷い臭いじゃない。

 

「...........う.....」

「ん、目が覚めた?」

 

目を覚ました俺が最初に目にしたのは、熱と光を放つストーブと、その横で椅子に座ってこちらを見ている金髪の少女だった。

 

「そんなに酷い症状じゃなかったから命に別状は無いと思ってたけど、体温が急激に下がってたみたいだったから...はい、これ飲んで」

「あ、ああ...」

困惑を隠せないまま少女からカップを受け取る。中身は暖かい紅茶だ。

 

「....うまい」

「でしょ?寒い中で飲む暖かい飲み物は格別だよね」

 

そう言いながら少女も自分のカップに口をつける。どうやら彼女はこの極寒の環境に対してかなり慣れているらしい。

 

「...君が俺を助けてくれたんだよな?」

「うん、そうだよ。雪原に人が倒れてた時はびっくりしたけど、大事なくて良かった」

「そうか...ありがとう。君は命の恩人だ」

「気にしなくていいよ。それより、君はどうして雪原に来たの?普通の人が来る場所じゃないと思うけど」

 

俺が落ち着いてきた頃合を見計らい、少女は俺に疑問の視線を向ける。

内心俺はヒヤヒヤだ、だって理由なんかなんにもねーもん。

 

「あー...その、あれだ。俺は旅人でさ、別の星から来たんだよ。で、着いてみたら思ってた以上に寒すぎて、震えて動けなくなってた所を君に助けられて今に至るって訳」

 

結局俺は上手い言い訳も思いつかなかったので、そのまんま伝える事にした。

まあ?下手な嘘つくよりはよっぽど誠実だし?この子はいい子そうだから丁寧に話せばきっとわかってくれるはず...!

 

「別の星から来た旅人...そっか。じゃあとりあえず人のいる所まで案内するよ」

「本当か!?恩に着る!」

 

ほらな!!やっぱり人間嘘つかないで生きるのが一番イイんだよ!

俺は人生において素晴らしい選択をした自分を褒めたたえながら、テントの片付けをし始めた少女を慌てて手伝い始めたのだった...

 

 

 

 

 

 

 

「お前が雪原で倒れていたという不審者か」

「アッ...ス」

 

どうしてこうなった...?




凍った湖の上ででリンクスとワカサギ釣りしたいよね...
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