VRMMO [AnotherWorld]   作:LostAngel

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第二十一話

[第二十一話」

 

 ちびドラゴンと少しじゃれてから、[AnotherWorld]の世界にログインした。

 

 昨日、緊急依頼が終わってすぐにログアウトしたので、王都の南門近くに湧く。

 

 なので、宿泊バフもなしだ。

 

 と言っても、今までついたことがなかったが。

 

 [AnotherWorld]の仕様の中に、快適な場所で一晩を明かすと、翌日に有効なバフが発動するというものがある。

 

 消費魔力軽減やスタミナアップなど、あると助かる効果が多いらしいが、発動の是非も効果の程度も完全ランダムらしい。

 

 わざわざ狙いに行くようなものではないな。

 

 さて、今夜は新しい依頼を受けつつ、ナオレ草五十本の方の依頼もクリアしていきたいと思う。

 

 ということで、最初は冒険者ギルドに行こう。

 

 早速、大通りを中央広場に向かって歩き出す。

 

 門から街の中央までは、意外と距離がある。

 

 時間の無駄になってしまうが、一個しか依頼を受けていない状態でフィールドに赴く方が非効率だ。

 

「いつかこの辺の店も覗いてみるか…」

 

 主にNPCが経営しているであろうレストランや雑貨屋、書店や装備屋を通り過ぎていくこと数分。

 

 特に何事もなく、目的地の冒険者ギルドに到着する。

 

 中に入ると、受付は人だかりになっていた。

 

 この時間帯は依頼の完了報告、手に入れた素材の清算にやってくる人が多い。

 

「……」

 

 喧騒の中、周囲を見回すと、クリステラさんがいた。

 

 早速、彼女の窓口に並ぶ。

 

 十分もかからず、前の数人の用事が済んで自分の番がやってくる。

 

「こんばんは、クリステラさん」

 

「こんばんは、トール様。今日は遅い時間帯ですね」

 

「そうなんです。昼間用事があったので。…今日は依頼を受けに来ました。アヤカシ湿原で受けられる採集の依頼ってありますか?」

 

「はい。現在受注可能な依頼はこちらになります」

 

 『フライ・スタンピード』のことを聞かれると気まずいし、クリステラさんも忙しいだろう。

 

 双方のためにならないので早々と話を切り上げ、依頼リストを見せてもらう。

 

 俺はその中から三つの依頼を選び、受注の手続きを行った。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 [依頼]:バクダンホオズキ二十個の納品

 

  〇発注者:ワルク・フィレース

 

  〇報酬:2000タメル

 

  〇詳細:お疲れ様です。王族祝辞花火師の、ワルクと申します。

 

      現在、緊急依頼『フライ・センチピード』の達成、

      及び亡くなられた方への慰霊をこめて特製の一発を

      作っている最中なのですが、火薬の原料となる素材が足りません。

 

      どなたか調達してきてもらえませんでしょうか。

 

      バクダンホオズキが自生するのはアヤカシ湿原となっております。

 

      行かれる方はどうかお気をつけて。

 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 [依頼]:ヨクナレ草三十本の納品

 

  〇発注者:メディス・ドラギスト

 

  〇報酬:3500タメル ↑報酬増額中!

 

  〇詳細:やあやあやあ!調薬師ギルドマスターのメディスだよん。

 

      今回は、湿原で冒険する冒険者さんたちに朗報だよん。

 

      実は、最近話題の日照りで繁殖したファングウルフによって

      うちのギルドでお抱えの、

      採集専門の冒険者がけがをしちゃったんだよん。

 

      でも上位回復薬の原料になるヨクナレ草は必要だよん。

 

      そこで冒険者のみんなだよん。

 

      報酬に色を付けるから、ヨクナレ草を三十本集めてきてほしいのねん。

 

      品質は問わないよん。よろしくねん。

 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

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 [依頼]:ネムレ草五十本の納品

 

  〇発注者:匿名希望者

 

  〇報酬:4000タメル

 

  〇詳細:皆様こんばんは。良い夜をお過ごしですかな。匿名希望の依頼主です。

 

      最近、よく眠れていますか?

 

      私は、日中の激務とそれによるストレスで

      眠れない日が続いております。

 

      そのため、よく眠れる睡眠薬をもらいに薬師の元を訪ねたのですが、

      王都の人に眠れない人はいないから

      睡眠薬は狩猟用のものしかない、と言われてしまいました。

 

      仕方なく私は、自分で調薬しようと思い立ちましたが、

      とてもネムレ草を取りに行けるほどの狩りの腕前がなく…。

 

      どなたかお願いできませんでしょうか。

      

      ネムレ草はアヤカシ湿原に生えています。

 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 ここで聞き慣れないフレーズがいくつか出てきたので、解説を入れようと思う。

 

 まずはバクダンホオズキ。

 

 こいつはアヤカシ湿原に生える植物で、採集ポイントで採取行動をとると手に入れることができる。

 

 しかし、とても不安定なこの実はちょっとの衝撃で爆発してしまうため、慎重に枝からもぐ必要がある。

 

 もし爆発してしまうとアイテムとして得られないのはもちろん、採取者にダメージと、確率で『火傷』の状態異常が付与されてしまう危険な植物だ。

 

 次に、一つ目の依頼主のワルクさんの職業、王都祝辞花火師について。

 

 王都祝辞花火師とは、王都で行事が催されるときに上げる花火を作る職人のことだ。

 

 王族お抱えで一人しかなれず、十年に一度の選抜会で選出されることは花火師にとって大変名誉なことらしい。

 

 だがこれについては、あんまり重要じゃない。ただの冒険者である俺が出会えるような相手ではないからだ。

 

 一騎当千の活躍をして名を上げることができれば、知り合える可能性は無きにしも非ずだが、今のところ望み薄だろう。

 

 続いて、ヨクナレ草。

 

 これは単に、ナオレ草の上位版と思ってくれていい。

 

 こいつをナオレ草の代わりに使うことで、回復ポーションの回復効果が上がるらしい。

 

 中級以上の調薬師たちには御用達の素材だが、経験の浅い俺には持て余す品だと思う。今はまだ。

 

 その次に、三つ目の発注者欄の匿名希望者だ。

 

 といっても説明することはあまりなく、依頼は匿名で発注することができるってだけ。

 

 プレイヤーで気にする人は少ないが、名前や身分を知られたくない人が好んで利用する制度になる。

 

 そして最後に、ネムレ草だ。

 

 これも読んで字のごとく。摂取した者に『睡眠』の状態異常を与える植物だ。

 

 戦闘で使われることが専らだが、素材のままでは効果が薄く、レベルの高い相手にはさらに効きづらい、というお決まりはこのゲームにも存在する。

 

 そのため、ほぼ調薬に使われる素材アイテムになる。

 

 ネムレ草から作られた睡眠剤は魔物に盛られることもあれば、依頼のように不眠の治療、麻酔や暗殺などに用いられることもあるらしい。

 

 覚えておこう。配合のバランスを極めれば、俺でも何かに使えそうだ。

 

 以上、初見のキーワード解説でした。

 

 

 ※※※

 

 

 アヤカシ湿原は湿気の多い低地に、ところどころ濁った水で満ちた沼が広がる湿原、といったロケーションをしている。

 

 ガルアリンデ平原の南に位置するフィールドになる。

 

 ということでこれから、何度目かの南門訪問が行われるというわけだ。

 

 俺は冒険者ギルドからとんぼ返りし、見慣れた古い門の前に到着。

 

 詰め所の前で立ち止まり、検問を受ける。

 

 相手はガンケンさんだった。

 

「よお、若いの。緊急依頼では活躍したそうじゃないの」

 

「討伐隊が来るまで死なないように耐えて、コロニーの場所を案内しただけです。あんなの、活躍のうちに入りませんよ」

 

 本当に何もしていないので、謙遜でも何でもない。

 

 むしろ黒幕だし、今すぐ謝って自首した方が賢明ですらある。

 

「依頼を見たが、これからアヤカシ湿原に行くんかい?」

 

「はい。いくつか採取しにがてら、フィールドがどんな感じか見に行こうかなと思ってます」

 

「うーん。止めはしないが、気をつけろよ。あそこでは近頃、『キュウビノヨウコ』が目撃されてる」

 

「きゅうびのようこ?」

 

 くたびれたおじさん騎士の口から、初めて聞く単語が飛び出した。

 

 アヤカシ湿原は妖の湿原という意味だろうし、漢字は九尾の妖狐か。

 

 名前からして、とんでもなく強そうな魔物だな。

 

「ああ。アヤカシ湿原の主、『キュウビノヨウコ』だ。普段は滅多にお目にかかることはない、本当にいるかどうかすら疑わしい魔物なんだが、最近人前に姿を現すことが増えてきている」

 

 あっ、これダメなやつだ。

 

 こんな話を聞いてしまったら…。

 

「くれぐれも、遭遇しないようにな」

 

 …絶対に遭遇するやつじゃないか。

 

「だ、大丈夫でしょう。あまり長居しないようにするので」

 

「そうか?まあ、死ぬなよ」 

 

 検問を終え、いつの間にか真面目な表情になったガンケンさんと別れる。

 

 口ではそう言ったものの、この後迫りくる”死亡フラグ”に絶望しながら、俺は平原南部へと足を踏み入れるのだった。

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