【完結】すごいよ!! マサルくん   作:わへい

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 はじめましての方ははじめまして。

 お久しぶりの方はお久しぶりです。



first season 【幼少期】ハロンの三馬鹿編
No.0001 やばいよ!! ガラル人


「さあ、ガラルポケモンリーグ・チャンピオンカップ『セミファイナルトーナメント』もいよいよ大詰め!! 決勝に残ったのは()()()()()()()()()()()!! このバトルの勝者がジムリーダー達の待ち受ける『ファイナルトーナメント』へと駒を進めることができます!!」

 

 シュートシティスタジアムは凄まじい歓喜と熱気に包まれていた。ジムチャレンジを勝ち抜き、強力なライバル達を退け、この場に立つことができるのはわずか二人。ここに立っている時点で、彼らはポケモントレーナーとしては上澄み中の上澄みと言えるだろう。

 

 そして、そんな彼らを凌駕する化け物トレーナー達が蔓延るファイナルトーナメントへの挑戦権を得られるのはたった一人。

 

 ガラル地方において、歴代最強と名高いチャンピオン「ダンデ」への挑戦権を得られるのは化け物達の巣窟を生き抜いたたった一人。

 

 それらの挑戦権を賭けて、スタジアムの中心で喝采を浴びているのは───齢十四の子供達。

 

 十四の子供と侮ることなかれ。

 

 今日、この日

 

 彼らのバトルを目にしたものは皆、後にこう語る。

 

「間違いなく───ガラルの歴史に残る名勝負だった」と。

 

 

 

 

 

 

すごいよ!! マサルくん

 

No.0001 やばいよ!! ガラル人

 

 

 

 

 

「イヌヌヌワン!!」

 

 ガラル人の朝は早い。

 

 早朝四時、俺は生まれた時から一緒に生活している愛犬である「()()()()」の鳴き声と共に起床する。胸に心地よい重さと少しの圧迫感を感じながら目を開けると、俺の上に乗って舌を出しながら「へっへっへっ」と呼吸をしている愛犬がいた。

 

「おはよう、わたぱち」

「イヌヌワ!」

 

 俺は両手でわたぱちを持ち上げてあくびを噛み殺しながらベッドから起き上がる。「わたぱち」というのは俺が付けたニックネームで、本来は「ワンパチ」というお尻がとってもキュートな柴犬系ポケモンだ。しかも「ほっぺすりすり」とかいうくっそあざとい技も覚えるというね。

 

 なんで「わたぱち」っていうニックネームにしたかというと、()()で「わたパチ」っていうお菓子があったから。生産終了したけどな!! 悲しいね。

 

 そんなことを考えながら俺は伸びをして洗面所に向かい、顔を洗って牧場へ向かう。

 

 まずはウールー達がいる羊舎へ行って餌やりをしないとな。

 

 家を出ると見慣れた広大な牧草地が広がっていた。何ヘクタールとかは知らんがとにかくデカい。ハロンタウンで一番でかい牧場だ。多分、ガラル地方でも有数の広さなんじゃないかな。

 

「イヌヌヌヌヌヌワ!!」

 

 牧場に出ると同時にわたぱちが駆け出したので俺も走って追いかける。朝の少しひんやりとした空気が心地いい。牧場特有の動物臭さもあるけど、()()()()()()()()()五年も経てばもう慣れたな。

 

「おはよう、じいちゃん」

「おはようマサル。こっち側はワシとカイリキーでやっておくから反対側からやってくれるかの?」

「うん」

 

 羊舎へ入るとじいちゃんがすでにウールー達の餌やりを始めていた。俺もじいちゃんに言われた通りにバケツに餌をたっぷり入れて羊舎の反対側へと向かう。

 

「おはようカイリキー」

「グワオオン!」

 

 餌置き場にじいちゃんの相棒のカイリキーがいたので、あいさつ代わりに「とっしん」するとカイリキーは四本あるうちのたった一本の腕で俺の「とっしん」を容易に受け止めた。ぐぬぬぬ……()()()の身体じゃこんなもんか。いつか俺のとっしんでカイリキーを吹っ飛ばせるくらいにならねば。

 

 カイリキーとの心温まる交流を終えて俺はウールー達に餌をあげていく。餌は牧草では取れない栄養を摂取できる配合飼料とパイルの実の搾りかすだ。

 

 このウールーっていうポケモンはまんま羊みたいな見た目をしていて、コロコロと転がりながら移動する。俺は初めてこのウールーを見た時、メリープと勘違いしちゃったんだよな。だって仕方ねーじゃん。俺がやったことのあるポケモンにウールーなんていなかったんだから。俺はBWまでしかやったことないんだよ。

 

 メリープ……思い出すと何もかも懐かしい。金銀時代は必ずデンリュウを旅パに入れてたよ。大変お世話になりました。

 

「じいちゃん、こっち終わった」

「おう、ありがとうなマサル。放牧はワシがやっておくから(せがれ)の方の牛舎を手伝ってくれるか?」

「うん、わかった」

 

 じいちゃんにそう言われて羊舎を出ると、入り口でわたぱちがおとなしくちょこんと座って待っていた。全く愛いヤツめ。牛舎まで競争だ。

 

 

 

 

 

 

「よう、キテルグマ! おは───へぶぅっ!?」

 

 牛舎へ走って向かっていると、父さんの相棒であるキテルグマが牧場内の見回りをしていたので、さっきのカイリキーと同じようにとっしんをぶちかますと、メガトンパンチで吹っ飛ばされてしまい俺は牧草の上をゴロゴロと転がる。

 

 このキテルグマとかいうポケモンは、見た目はテーマパークにいる着ぐるみみたいなくせして、とにかく凶暴でアローラとかいうリゾート地方では五本の指に入る危険なポケモンらしい。

 

 仲間と抱き締め合う癖があって背骨をへし折られたトレーナーもいるとか。命を落とすトレーナーもいるとか。

 

 そんなやべーポケモンにメガトンパンチを食らっても平気なのかって?

 

 もちろん平気です。なぜなら俺はスーパーガラル人だから。

 

 俺はあっさりと起き上がり、怪我がないことを確かめてキテルグマに手を振って牛舎へと向かう。

 

 じいちゃん曰く「ポケモンに背骨を折られるようなトレーナーは真のトレーナーじゃない」そうだ。頭ガラルだな。じいちゃんならカイリューの「はかいこうせん」を真正面から受け止められるに違いない。

 

 じいちゃんは七十歳を超えてるんだけど家族の誰よりも元気で見た目はショー〇・コネリーみたいなセクシーじじいだ。毎日毎日農作業をやっているから、筋肉だってすごい。しかも昔のじいちゃんは「ラテラルタウン」のジムリーダーだったらしい。だけどばあちゃんに一目惚れしてジムをお弟子さんに譲ってこの牧場に婿入りしたとかなんとか。ロックな生き様してやがる。

 

「おう、おはようマサル」

「おはよう父さん」

 

 牛舎には全盛期のシルベスター・〇タローンを彷彿とさせるゴリゴリマッチョマンがいた。もちろん俺の父さんだ。相棒のキテルグマやじいちゃんのカイリキーと毎日組み手をしているスーパーガラル人2。ちなみに父さんよりもじいちゃんの方が強いからじいちゃんはスーパーガラル人3だ。

 

 そんな二人の血を引いている俺も立派なスーパーガラル人。前世では「スーパーマサラ人ww」とかネットでよくネタにされてたけど、実際にポケモンの存在する世界で生きていく身としては身体が頑丈に越したことはない。ゲームだとわからないけど、ポケモンって普通に危険生物だからな。

 

 ただ、俺はじいちゃんや父さんから丈夫な体を受け継いだけど顔立ちは母さん似だ。じいちゃんや父さんは北斗の拳に出てもおかしくない見た目だから……顔は母さんに似て良かったよ。

 

「餌やりはもう終わったから奥から順番に搾乳していってくれ」

「あいあい」

 

 牛舎の中にはたくさんのミルタンクがいる。ミルタンク……よく、金銀の「アカネのミルタンクはトラウマ」って言われてたけど、俺はあんまり苦戦した記憶がないんだよな。交換したワンリキーかマグマラシでごり押ししてた気がする。「ころがる」の威力が上がる前に倒しきればええんや!

 

 金銀をプレイしていたことを懐かしみながら俺は搾乳機を操作する。五歳児にやらせるようなことじゃないと思うけど、この世界自体の就業年齢が低いことに加えて俺は前世では二十歳で死んで、こっちの世界に来て五年経ったから実質二十五歳の大人なんだよな。もちろん、家族は前世うんぬんは知らないけど。だって今の俺はハロンタウンの「マサル」だから。

 

 搾乳が終わると、父さんがジョッキに搾りたての牛乳をたっぷり注いで渡してくれる。本当は搾りたての牛乳って腹を壊すからあんまり飲んじゃいけないんだけど、スーパーガラル人は腹なんか壊さん!

 

 俺はジョッキを受け取って新鮮な「モーモーミルク」を一気に飲み干した。

 

 あ^~っ! この美味さを知ってしまったら前世の安い低脂肪乳がいかにクソだったかってのがわかるわ~。これだけ美味かったらそらポケモンの体力も回復するよ。

 

 搾乳後はミルタンク達を広大な牧場に放牧して自由に牧草を食べさせる。このストレスの少ない環境が美味しい牛乳を生み出す秘訣なのだ!

 

 ちなみにウチはウールーの毛を使った羊毛業やミルタンクのモーモーミルクを使った酪農(チーズやバター、ヨーグルトなんかも作ってる)の他にミツハニーを飼育した養蜂業も営んでいる。牧場は観光にも利用していて、ミルタンクの乳搾り体験やウールーの毛刈り体験なんかも積極的にやっているんだ。

 

 おすすめは自家製ソフトクリーム(ミツハニーの蜜がけ)とハニートースト。カロリーお化けだけど美味過ぎて飛ぶよ?

 

 あー……食い物のことばっかり考えてたら腹が減ってきたな。今日の朝飯は何だろう?

 

 俺はミルタンクがいなくなった牛舎をせっせと掃除しながら腹の虫と熱いバトルを繰り広げるのだった。

 

 

 

 

 

 

 朝飯を腹いっぱい食べた後もまだまだ仕事は続く。ウールーとミルタンクを放牧して空っぽになった羊舎と牛舎の掃除の続きだ。ちゃんと綺麗にしておかないとストレスが溜まって病気になったり、感染症で殺処分しないといけなくなるからな。たかが掃除、されど掃除。

 

 めちゃくちゃ体力がいる仕事だけどスーパーガラル人たる俺は無限の体力を手に入れたのでこのくらい屁でもないわ!

 

「マサルー。今から草刈りするがトラクター乗るかの?」

「乗るー!」

 

 掃除を終えて牧場でわたぱちと戯れていると、草刈り用のバカでかいトラクターに乗ったじいちゃんが声をかけてくれた。俺は大喜びでわたぱちを抱えてトラクターに乗り込む。男の子はね、いくつになってもでっかいマシーンが好きなんだよ。

 

 このクソデカトラクターはめちゃくちゃ格好良くてガンダムのコックピットに乗ってるみたいでテンションぶち上がりだわ。ガンダムシリーズは一切見たことないけど。

 

「じいちゃん、俺も運転したい」

「ペダルに足が届かんじゃろうが。十歳になったら教えちゃるけえの」

 

 十歳で運転させてくれるんかい。でも確かに前世で農家の友達が免許なんかなくても家の農地で乗り回してたとか言ってたよな。一応、前世でMTの自動車免許は持ってたけど……MT車なんて教習所以外で乗ってねえよ。

 

 じいちゃんとトラクターに乗ってしばらく草刈りをしていると、昼飯の時間になったので家に戻って風呂に入ってから昼飯を食べる。今日の昼飯はカレーだった。ガラル地方はなぜかカレー文化が栄えていて、週に三回くらいカレーを食ってる気がする。日本だとご飯とみそ汁の組み合わせだけどガラルだとご飯とカレーなんだよな。

 

「じいちゃん。俺、ナン食べたい」

「ナンか……窯があればええけど、作るか」

 

 じいちゃんは俺に甘々なので大抵の我儘は聞いてくれる。後日本当にじいちゃんが窯を作ってくれたので、俺は母さんとばあちゃんと一緒にナン作りに励むのだった。やっぱりチーズナンは最高やな!

 

 

 

 

 

 

「マサルー!」

「今行くー! ちょっと待っててホップ」

 

 カレーを三杯おかわりして自室で寝ころんでいると外から俺を呼ぶ声が聞こえてきた。窓から外に顔を出すと、お向かいさん兼友人のホップとその兄であるダンデくんがいた。この褐色兄弟も俺と同じスーパーガラル人でポケモン大好き兄弟だ。俺は基本的に牧場の手伝いは午前中だけで、午後からはホップやダンデくんとほぼ毎日一緒に遊んでいる。あともう一人、仲の良い可愛い女の子がいるんだ。どうだ羨ましいだろう。

 

「ホップ、ダンデくん。今日はどうする?」

「マグノリア博士の研究所に行くぞ! 今日もポケモンの勉強をするんだ!」

「そうだな。マサル、今日こそ最強のポケモンの生息地を見つけよう」

 

 マグノリア博士は隣町である「ブラッシータウン」に研究所を構えているガラル地方を代表するポケモン博士だ。まさにガラルのオーキド枠。そんなすごい人の研究所に気軽に行っていいのかって話なんだけど、マグノリア博士はめっちゃ優しいおばあちゃんで博士の孫娘とも俺達は友達だからいつも温かく歓迎してくれる。実際、俺達も子供ながらに真面目にポケモンの勉強をしてるしな。

 

「よし、じゃあブラッシータウンに行くか。ダンデくん、今日は迷子になんないでよ?」

「大丈夫だ。ちゃんと二人の後を付いて行く」

 

 ダンデくんは俺とホップよりも三歳年上の八歳だ。だけど、極度の方向音痴で()()()()()()()()()()()()()隣町のブラッシータウンに辿り着くことすらできない。方向音痴とかってレベルじゃねーぞ。

 

 だからダンデくんを単独行動させちゃダメだというのがハロンタウンの住人の鉄の掟だった。何度迷子になって捜索したことやら。でも、ダンデくんもスーパーガラル人だからなんやかんや怪我一つなく帰ってくるんだよな。

 

「俺、知ってるぞ。兄貴のきそーほんのーってヤツだ」

 

 どこの野生児だよ。いや、野生のポケモンの方がダンデくんより賢いかもしれない。少なくともウチのわたぱちはブラッシータウンから家までちゃんと帰れるから……うん、ダンデくんは将来道案内ができるポケモンを相棒にすればヨシ!

 

 そして俺達三人と愛犬わたぱちはマグノリア博士の研究所へ向かうのだった。

 

 

 

 

 

「こんにちはー! マグノリア博士はいらっしゃいますかー?」

 

 迷うことなく(迷う方がおかしい)ブラッシータウンへ到着し、研究所のドアを開けて俺は大きな声であいさつをする。すると、眼鏡をかけた初老の女性……マグノリア博士が柔和な笑顔を浮かべて二階から降りてきた。

 

「三人ともこんにちは。今日もポケモンのお勉強かしら?」

「はい。お邪魔にならないよういつもの勉強スペースをお借りします!」

「マサルはいつも礼儀正しいわね。後で紅茶を淹れてあげましょう」

 

 マグノリア博士が優しく俺の頭を撫でてくれる。まずいな、博士にこうされると前世で死んだばあちゃんのことを思い出してちょびっとだけセンチメンタルな気分になってしまう。

 

「博士! 最強のポケモンは見つかったか!?」

「ふふっ。ダンデ、あなたの考える最強のポケモンは一体どんなポケモンなのかしら?」

「もちろん、全てのタイプに有利な攻撃ができて全てのタイプから受けるダメージを半減できるポケモンだ」

「あと、体力と攻撃力と防御力と素早さがとてつもなく高いポケモンだぞ!」

 

 最強過ぎる。小学生レベルの「ぼくのかんがえたさいきょうのポケモン」やんけ。でもよく考えたらダンデくんもホップも小学生くらいの年齢なんだよな。

 

「そんなのいるわけないでしょっ!」

 

 俺が二人にツッコむ前に幼い少女の声が研究所内に響いた。オレンジ色の長い髪をサイドテールにした、とっても可愛らしい女の子が呆れ顔で二階から降りてきている。

 

「なぜだソニア。ポケモンにはまだまだわからないことがたくさんある。いないと決めつけるのはよくないな」

「そうだぞ。何かの本で読んだけど『いないと証明すること』は『いると証明すること』と同じくらい難しいんだぞ」

 

 彼女はマグノリア博士の孫娘のソニアちゃん。ダンデくんと同い年の八歳で、俺達三馬鹿によく振り回されている苦労人枠。

 

「そんなポケモンがいたら世界が滅んじゃうわよ。厄災よ厄災! マサルもそう思うでしょ?」

「いや、世界を滅ぼすレベルのポケモンならいると思うよ。海底洞窟とかに」

「怖いこと言わないで」

 

 具体的に言うとグラードンとかカイオーガとか。世界中の海を干上がらせたり、世界中の大陸を海の底に沈めるポテンシャルを持ったポケモンだからな。そしてその二体のポケモンの争いを沈めたとされる伝説のポケモンレックウザ。ホウエン地方とかいう魔境よ。

 

 初めてルビーをプレイしてグラードンが復活した後の緊張感はやばかったな。世界の終末感がすごくて子供ながらにめっちゃドキドキしながらプレイしてた記憶がある。グラードンを捕まえるために何度リセットしたことか。最終的に全部のボールを使い切って一縷の望みを託したタイマーボールでゲットできた時の感動は今でも忘れない。なお、カイオーガの方がバチクソ強かった模様。ほ、ほら、グラードンには溜めなしソーラービームがあるから……カイオーガの必中かみなりも大概だけどな!

 

「マサルがそう言うのなら……ホップ! 洞窟に住むポケモンについて書かれた本を探そう!」

「わかった! 俺は向こうの棚を探すから兄貴はそっちの棚を任せるぞ!」

 

 そして褐色兄弟が我が物顔で本棚を物色し始めるとソニアちゃんは大きなため息を吐いていた。どんまいソニアちゃん。俺がぽんぽんと肩を叩くとジト目でこっちを見てきた。ジト目ソニアちゃん可愛いね。

 

「ダンデくんの言う最強のポケモンはともかく……マサル、あんたはどのタイプのポケモンが一番強いと思う?」

「また戦争になりそうな話題を……タイプって単体で? それとも複合もあり?」

「複合もありで」

「だったら……一番強いというか、一番戦いたくないのは『鋼・ドラゴン』かなぁ」

 

 鋼もドラゴンも耐性が多くて相手にしたらめっちゃ面倒臭いんだよ。初代のドラゴンは技が「りゅうのいかり」しかない(しかも固定ダメ技)上にれいとうビーム一発で落ちるから不遇だったけどシリーズが進むにつれて頭角を現したからな。ルビー、サファイアでボーマンダを育てた人は多かったと思う。第三世代には「りゅうせいぐん」がない? 「ドラゴンクロー」があるだろ!

 

 鋼はもう……ね? とにかく面倒臭い。物理防御も特殊防御も高いポケモンが多いから削りにくいのなんのって。おい、てめーのことやぞダイゴさんのメタグロス。バシャーモのブレイズキックとオーバーヒートでごり押しじゃい。

 

 そんな面倒臭い二つのタイプが複合したポケモンがね……ガラルにもいるんですよ。ジュラルドンくん、てめーだよ。ディアルガくんは許す。どうせガラルにいても遭遇しないし。シンオウでのんびりやっててくれ。

 

「『鋼・ドラゴン』ね。確かに相手にすると面倒臭いかも」

 

 ソニアちゃんはそう言いながら俺の足下にいるわたぱちのお腹を撫でている。

 

「ワンパチ、可愛いわよね。欲しくなってきたわ」

「すぐそこの二番道路にいるから捕まえるなら付き合うよ」

「ありがとね。じゃあ、お願いするかも」

 

 仮にソニアちゃんがワンパチを捕まえても俺のわたぱちの方が百倍可愛いけどな! よっしゃ。ことあるごとにマウントを取ってやろうそうしよう。

 

「兄貴! 見つけたぞ! カントー地方のハナダシティにある洞窟について書かれた本だ!」

「あまりにも強いポケモンが生息しているためポケモンリーグが管理している……ここに最強のポケモンがいるに違いない!」

 

 ハナダの洞窟じゃねえか!! え!? 待って待って俺も見たい!! 第一世代最強のポケモンがいる洞窟について書かれた本だろ!? そんなん赤緑青をプレイした世代にとったら聖書(バイブル)じゃん! ソニアちゃんの相手してる場合じゃねえ! 可愛い女の子よりもミュウツーだ!

 

「ホップ! 俺も! 俺も見るっ!」

 

 そうして野郎三人でハナダの洞窟について書かれた本を読み漁るのだった。残念ながらミュウツーに関する記載はなかったけど、ゲームじゃわからないこともたくさん書かれていて、カントー地方のチャンピオンとハナダの洞窟のポケモン達との生々しいバトル描写が写真付きで詳細に記載してあったからめちゃくちゃ興奮した。いつかカントー地方に行きてーなー。

 

 これが、俺と幼馴染達の日常。

 

 農作業してホップ達と遊んで勉強してよく食ってよく寝て……前世よりもだいぶ健康的な生活を送ってるな。まあ、前世は大学生だったし、大学生なんて不規則な生活を覚えるための人生の夏休みだから。

 

 

 

 

 

 

「明日お隣さんが引っ越してくんの?」

「そうよ。新しくお家が建ってたでしょう? 三人のご家族でお父さんは別の地方に単身赴任していてお母さんと娘さんの二人で引っ越してくるらしいわ」

「ほーん」

 

 夕食をモリモリ食べていると母さんがそんなことを言い出した。確かに、牧場の隣に綺麗な一軒家が建ってるなとは思ってたけど……そっか、明日引っ越してくるんだな。

 

「その女の子、マサルと同い年らしいわよ。仲良くしてあげてね」

「ウチのモーモーミルクとチーズとバターとヨーグルトと蜂蜜で餌付けするか」

 

 あ、でも乳製品が嫌いな子だったらどうしよう。……いや大丈夫だ。ウチのモーモーミルクを飲めば乳製品嫌いは一発で克服できる! 最悪、蜂蜜キャンディーもあるしなんとかなるだろう。あとはわたぱちをモフモフさせてあげれば仲良くなれるな! ヨシ!

 

 

 

 

 

 

 翌日、俺は母さんと一緒にカイリキーとキテルグマ、わたぱちを引き連れて、途中でホップと合流してお隣さんへのご挨拶兼引っ越しのお手伝いへと向かう。カイリキーもキテルグマもパワーは有り余ってるから引っ越しのお手伝いには最適だ。ちなみに今日はキテルグマに渾身の「とびひざげり」をぶちかまそうとしたけど、普通にメガトンパンチで返り討ちにされました。俺がキテルグマに勝てる日は来るのか!?

 

「こんにちは~。お隣の───と申します。これ、ウチの牧場で作ってる製品なんですけど、よかったら召し上がってください」

「わざわざご丁寧にありがとうございます」

 

 母さんとお隣の若くて美人で眼鏡がセクシーな奥様が談笑し始めたので、俺が奥様に一言断りを入れてカイリキーとキテルグマに指示を出して荷物の運搬を手伝わせていると、家の玄関からひょっこりと顔を出してこちらを用心深く観察している茶髪の少女がいることに気が付いた。この子が娘さんだな。

 

「ほら、ユウリ。こっちにきてあいさつしなさい」

 

 美人な奥様───ユウリちゃんママがそう言うと、ユウリちゃんはおっかなびっくりといった様子で警戒しながら俺達の方へ近づいてくる。でも、知らない人ばかりで緊張しているみたいでママのズボンをぎゅっと掴んで不安そうな表情で俺達を見ていた。

 

 五歳児が知らない人ばかりの空間に放り出されたらそうなるよな。ホップやダンデくんのコミュ力がおかしいんだよ。あの二人は「人見知り」って言葉をお母さんのお腹の中に置いてきたに違いない。

 

 とはいえ、これは予想していたことだったので俺は幼女の警戒心を解くためにポケットからあるものを取り出す。

 

「これ、ウチの牧場で作ってる蜂蜜キャンディーなんだ。美味しいよ」

「あ、ありがとう……」

 

 ユウリちゃんは差し出された飴玉と俺の顔を交互に見て、恐る恐るといった様子で飴玉を受け取った。彼女はそのまましばらく飴玉を掌に乗せてじーっと観察していたけど、警戒しながらゆっくりと包装紙を解いて琥珀色の飴玉を口に入れる。

 

「……美味しい」

「だろ?」

 

 途端にユウリちゃんの表情がぱぁっと明るくなって笑顔を浮かべてくれた。可愛い幼女の笑顔は世界を救える。餌付け作戦大成功やな。

 

「俺はマサル、よろしく!」

「俺はホップ。いつかガラルのチャンピオンになる男だ!」

「……私、ユウリ。よろしくね」

「ああ、よろしくだぞ! そうだ! マサル、これからユウリにハロンタウンを案内するのはどうだ?」

「いいな。ダンデくんやソニアちゃんも紹介したいし、ウチの牧場も見せたいし」

「そうと決まればまずは俺の家に行くぞ! 兄貴とソニアがいるはずだ!」

 

 ホップはそう言って一人で駆け出して行ってしまった。ホップはダンデくんみたいに道に迷うことはないけど、ああやって勝手に突っ走る癖があるからな。

 

 ユウリちゃんを見ると、ホップが走り去るのを口を開けてポカンとした表情で見ていた。うん、ごめんな。展開が急すぎてついていけないよな。ちょっとホップー。女の子を置いていくなんてガラル紳士の風上にも置けねーぞー? なお数年後、ホップは立派なガラル紳士になる一方で俺は変わらずキテルグマとどつき合いを繰り広げる野蛮人になる模様。

 

「行こうか、ユウリちゃん」

 

 俺が手を差し出すと、ユウリちゃんは俺の手と顔を交互に見比べてゆっくりと手を取ってくれた。

 

「……うんっ!」

 

 

 

 

 

 

 これが、俺とユウリの───未来の嫁さんとの出会いだった。




マサルさん「いいかラビフット。これが『放課後キャンパス』だ」
ホップ「さすがだぞ! 自ら実演してみせることでポケモンが技を覚えやすくしているんだな!」
ユウリ「私のポケモンに変なこと教えないで!」

 最初は本物のマサルさんを主人公にしてこんなギャグ話にしようと思ってましたが、出オチで終わってネタ切れエターコースになりそうだったので没に。あと、マサルさんが自らポケモンと戦い始めて最終的にマサルさんがユウリの手持ちになってセクシーコマンドーを駆使してムゲンダイナを倒す話になりそうだったので没になりました。

 誰かこの設定でお話作ってください。私には扱いきれません。

 ではでは、ここまでお読みいただきありがとうございました!

 次回もよろしくお願いします!

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