【完結】すごいよ!! マサルくん   作:わへい

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 マサルVSレッドの中編です。



No.0101 傾国の怪物達

「ムゲンダイナはあたしのテラパゴスから学んだ……つまり、ムゲンダイナはワシが育てた! こんな遠回しにあたしへの愛を囁くとは……ふっ、やはりマサルにぃにが世界で一番信頼しているのはあたしだね!」

「モモワロウを僕に任せてくれたんだから僕の方がマサルさんに信頼されてると思うけど?」

「あれがマサルお兄様が最も尊敬しているポケモントレーナーのレッドさん……マサルお兄様ともレッドさんともやりたい! もう全員参加のバトルロワイヤルでいいんじゃないかな?」

 

 

 

「セレナ、君ならあのインテレオンにどう対処する?」

「マサルのインテレオンって私のゲッコウガより忍者してるのよね……まあでも、スピード勝負なら互角以上にやり合える自信があるわ」

「俺のマフォクシーはそもそもタイプ相性が悪い。いや、このレベルのバトルになればタイプ相性なんてあってないようなものだが……素直に範囲攻撃だな」

「カルネさんはどう思います?」

「私ならスピード勝負には付き合わない。しっかり守りを固めて天候操作とフィールド操作で確実に当てられる状況を作り出すわ」

 

 

 

「マサルさんのムゲンダイナをタイマンで仕留めるなんてあの赤帽子、何者なんすかねぇ?」

「カキツバタ、あんた各地方の代表くらいしっかり調べておきなさいよ。それにしても、レッドくんの意味わからなさについていけるなんてマサルも腕を上げたわね」

「……あれでガラル三位? バトルサブウェイも大概だと思ってたけどガラルはどんな魔境なんだ」

 

 

 

 

 

 

 各地方の代表達が冷静に戦いを見つめる中、フィールドの中心で対峙する二人は高速で思考を巡らせていた。レッドは生まれながらにして持ち得ていたその超感覚で相手が次に出すポケモンを正確に読み取り、マサルは最適解を出してくるという相(・)手(・)の(・)思(・)考(・)そ(・)の(・)も(・)の(・)を(・)読(・)み(・)取(・)る(・)ことで対抗する。故に、両者ともに相手が出してくるポケモンをわかっているのだが、二人が思考を巡らせているのはそ(・)の(・)先(・)。

 

 ポケモンを出してからの、その先の展開を、未来を、ありとあらゆるパターンを、数秒にも満たないわずかな時間の中でシミュレートする。いわゆる、超高速の並列思考。努力だけでも、才能だけでも決して身に着けることのできない超技能。だがその超技能を、各地方の代表である二十七人は当(・)た(・)り(・)前(・)の(・)よ(・)う(・)に(・)行使する。

 

 普通の人間の目には、ボールを構えた二人が静止して見つめ合っているようにしか見えないが、両者の間ではすでに次の戦いは始まっていた。

 

 そして。

 

「カビゴン!」

「バンギラス!」

 

 両者の選択は、互いに近距離での殴り合いを得意とするパワーファイター。互いにとって想定通りの選出であり、そこから先の展開は息つく間もないほど苛烈なものとなる。

 

「ふいうち」

 

 先手を取ったのはバンギラス。その巨体に似つかわしくない速度で一気に距離を詰め、カビゴンの顔面を殴りつける。

 

「カウンター」

 

 対するカビゴンは、よろめきながらもしっかりと踏ん張り、強烈な拳をバンギラスの無防備な腹部へと叩きつけた。

 

 バンギラスにとって格闘タイプは最悪の相性である。だが、先程カルムが言っていたように、このレベルのバトルにもなればタイプ相性だけで勝負が決まることなどあ(・)り(・)え(・)な(・)い(・)。

 

 バンギラスは体勢を崩されながらもしっかりと踏みとどまり、拳を握る。だがそれは、相手も同じ。攻撃直後の隙など微塵も見せないカビゴンが、バンギラスへ向かって再度拳を振り上げている。

 

「ばかぢから!!」

「ばかぢから!!」

 

 もはやそれは、原始的な殴り合い。力と力の真っ向勝負。読み合いや超高速の並列思考など介入する余地がな(・)い(・)よ(・)う(・)に(・)見(・)え(・)る(・)暴力に支配された世界。

 

 至極わかりやすいバトル展開に、スタジアムはさらに熱狂する。が、二人はそんな熱に微塵も当てられることなく、そんな熱を意に介さない程に冷静に思考する。常人ならば確実に見落としてしまうような、気付かないような些細とも言えない変化を見逃さないために。

 

 激しい殴り合いの末、先に異変を見せたのはバンギラスだった。ほんのわずかにバンギラスの拳が鈍ったのをレッドは、そしてカビゴンは見逃さない。

 

 だが、ここで。

 

 ここで、レッドとカビゴンの間でほんの一瞬、極めて、極めて小さな認識のズ(・)レ(・)が生じた。

 

 隙を見せたバンギラスに追撃を仕掛けるカビゴン。マサルを警戒するあまり、バンギラスの隙自体がマサルの罠ではないかと思考するレッド。だが、即座に気付く。そう思考させることそのものがマサルの策であるということに。

 

 そして、その認識のズレをマサルが最大限に利用───するよりも早くレッドとカビゴンが強引に軌道修正にかかる。が、マサルにとっては想定内。彼はこの程度でレッドの裏をかけるなどとは微塵も思わない。

 

 そもそも、レッドとカビゴンの間に認識のズレをを生じさせた時点で、マサルの策は成っていた。

 

「ギガ───」

「───インパクト!!」

 

 両者が選択した技は、奇しくも同じ。ズレを力技でなかったことにするレッドとカビゴン。力技での勝負に引きずり込んだマサルとバンギラス。一見、マサルの方が優位に立ったように思えるが、いや実際に、この瞬間だけはマサルがほんのわずかに優位に立っていた。

 

 だが、カントー最強の男とそのポケモンを相手には。

 

 ここまでやっても、技の破壊力は全くの互(・)角(・)。

 

 互いの拳が衝突し、その衝撃波で正反対の方向に吹き飛ぶカビゴンとバンギラス。が、この程度で彼らは倒れない。空中で体勢を整え、着地と同時に相手を見据え───

 

「はかい───」

「───こうせん!!」

 

 三度(みたび)の同じ技。莫大なエネルギー波がフィールドの中心で衝突し、大爆発を起こす。

 

 爆発の余波で砂煙が舞い、互いが互いを認識できなくなった瞬間。

 

「なみのり」

 

 大気中の水分を圧縮し、津波を引き起こしたカビゴンの一撃が砂煙を晴らした。

 

 視界がクリアになり、フィールドの状況が観客達の目にも一目でわかるようになったが、その状況に観客達はどよめいた。

 

 フィールドに立っているのはカビゴン一(・)体(・)の(・)み(・)であり、バンギラスの姿が消えている。

 

 バンギラスが戦闘不能になりマサルがボールへ戻したということはあり得ない。両者の合意による交代時を除けば、戦闘不能状態が明らかになっていない状況でポケモンをボールに戻すという行為はレギュレーション違反であるからだ。

 

 故に。

 

「……後ろだ!!」

「アイアンテール!!」

 

 地(・)中(・)か(・)ら(・)カビゴンの背後へ勢いよく飛び出してきたバンギラスが、その勢いのまま尾を振るう。カビゴンは振り返った際にその一撃を顔面に受け身体をぐらつかせるも、倒れることなくバンギラスの尾(・)を(・)掴(・)み(・)、バンギラスの巨体をフィールドに叩きつけた。

 

「ちきゅうなげ」

 

 カビゴンは叩きつけたバンギラスを羽交い絞めにしたまま高く高く高く、飛び上がる。

 

 そして、落下。

 

 カビゴンとバンギラス、二体の総重量は650kgを超えている。そんな超重量物が50mもの高所から自由落下した際の衝撃力はいかほどになるのかは想像しがたいが、下(・)に(・)な(・)っ(・)て(・)い(・)る(・)バンギラス……つまり、その衝撃によるダメージを全て受けることになるバンギラスはまず間違いなく戦闘不能になるだろう。

 

 バンギラスは空中ではまともに身動きも取れず、凄まじい怪力を誇るレッドのカビゴンを振りほどくこともできない。

 

 観客達の誰もがこう思っただろう。「勝敗は決した」と。

 

 だが。だが。

 

 極一部のトレーナー達は気付く。

 

 落下しているバンギラス、そしてそれを従えるマサルが。

 

 不敵に笑っていることを。

 

「想(・)定(・)内(・)だ(・)」

 

 バンギラスとカビゴンがフィールドに落下。その瞬間、落下の衝撃だけでは説(・)明(・)が(・)で(・)き(・)な(・)い(・)ほ(・)ど(・)の(・)大(・)穴(・)が空き、レッドは目を見開いた。

 

「……さっきのあなをほる!」

 

 そう。バンギラスは何もただカビゴンの背後を取るためだ(・)け(・)に「あなをほる」を使ったわけではない。地中を縦横無尽に掘り進み、フィールドの地盤そのものを崩れやすくするためだった。

 

 本来の固い地盤のままであったならば、バンギラスは確実に戦闘不能になっていただろう。しかし、「あなをほる」によって地盤を柔らかく、崩壊させやすくしていたことにより落下の衝撃を緩和。

 

 バンギラスは見事に危機を回避した。

 

 と同時、レッドは気付く。

 

 バンギラスの「あなをほる」。その真の目的に。

 

 フィールドが崩壊し、大穴へと落下していくカビゴンとバンギラス。当然、二体の周囲は固(・)い(・)地(・)盤(・)に囲まれていた。

 

「……ここは!?」

 

 そう。

 

 この、四方を固い地盤に囲まれている状況を作り出すことこそが。

 

「狩(・)場(・)だ」

 

 マサルの真の目的。

 

 

 

 

 

 

「ストーンエッジ・吭(ごう)」

 

 

 

 

 

 

 周囲を取り囲む固い地盤から生成される鋭利な巨岩群。全(・)方(・)位(・)か(・)ら(・)襲い掛かるそれらは、確実にカビゴンを仕留める。

 

 は(・)ず(・)だ(・)っ(・)た(・)。

 

 そう。つまり。

 

 レッドとカビゴンの対応は、マサルのさらに上を行く。

 

「は(・)か(・)い(・)こ(・)う(・)せ(・)ん(・)」

 

 大穴から光の柱が立ち昇る。バンギラスと接触した状態での、ゼロ距離での「はかいこうせん」。自傷すら厭わない捨て身の一撃。絶対的な信頼関係の上でしか成り立たない光景に、マサルは乾いた笑みを浮かべることしかできなかった。

 

『戦闘不能!! バンギラス、カビゴン共に戦闘不能です!! 超重量パワーファイター同士による凄まじい殴り合いでした!!』

『大穴って言うかクレーターじゃないですか!? この後もたくさんバトルがあるのにフィールドが滅茶苦茶になっちゃいましたよ!!』

『ガラルでは日常茶飯事なのでフィールド整備専門のドリュウズ部隊なら十五分もあれば元通りにできます』

『……ガラルってヤバいところですね』

『キョウヘイくんキョウヘイくん! メイちゃんが本気を出せば五分で直せますよ!』

『メイはすごいね』

 

 

 

「おいおいおい。一回戦の第一試合から激熱バトルすぎるだろ。くっそー、俺も出たかったなー! あそこでカルムさんに負けてさえなけりゃ……」

「あのテンションなら第二回以降もあるでしょ。次こそはあたしとキョウヤでカロス代表に……」

「このワールドチャンピオントーナメントは私のスーパーユカリトーナメントを参考になさったマサル様が開催しました。つまり私が開催したといっても過言ではありませんわ!」

「とても良い殴り合いでした。やはりパワーこそジャスティス!」

「マサルお兄ちゃんがんばえー。……カナリィなんかテンション低い?」

「いや……改めてマサルってすご……やべーヤツだったんだなーって。というかなんで相手の男はあんな雌顔になってんすか!? ユウリすらあんな顔見せなかったっすよ!」

「マサルお兄ちゃんは男をヒロイン化させることに定評がある。カナリィがああなる世界線があったかもしれない」

「僕がマサルに惚れるなんてユウリがカレーを嫌いになるくらいあり得ないっすよ」

「ごめんカナリィ私カナリィのこと好きだけど私の中ではマサユウが正義なんだよねユウリさんって一見クソ雑魚幼馴染負けヒロインだけどああいう女の子がちゃんとヒロインしてるのがどうしようもなく尊いんだというかマサルさんヤバすぎあんなマジ顔のマサルさんを拝めただけでありがてえありがてえそんなマサルさんのマジ顔を引き出してくれた対戦相手の男の子にも感謝感激雨嵐」

「……セイカキモイ」

「キモイっす」

 

 

 

「ヨウくん見た!? バンギラスもカビゴンもガンガン殴り合ってズドーンってなってドガーンってしてて! でもあれくらいで倒れるようなんてまだまだ修行が足りない証拠! ロイヤルマスクならあそこから立ち上がってジャーマンスープレックスをお見舞いするくらい余裕だよ!」

「ミヅキは相変わらずロイヤルマスクが大好きなんだね。ククイ博士、どう思います?」

「い、いや~……さすがのロイヤルマスクもあそこから立ち上がるのは無理なんじゃないかな~」 

「そんなことないですよククイ博士! ロイヤルマスクを過小評価し過ぎです! ロイヤルマスクが本気を出せばムゲンダイナやミュウツーにだって勝てるんですから! やはり筋肉! 筋肉は全てを解決する……。そういえばマサルくんって前に会った時より良い身体になったよね。ヨウくんもやろう! 筋トレ!」

「ハウとグラジオが興味あるって言ってたよ」

 

 

「ナイスマッスル! う~ん、それにしてもマサルくん……しばらく見ない間にいやらしい身体になったね!」

「マオはまだまだわかっていません。マサルさんは肉付きこそ素晴らしいですが黒光りが足りません。やはりククイ博士がベストなのです!」

「マオもスイレンもなーに言ってるのかな? 前にマサルがシローさんの写真送ってきてくれたでしょ? あれこそが筋肉の最高到達点だよ!」

「兄様、ハウさん。やはり私は一見すると華奢だけど脱ぐと実はすごいというギャップこそ至高だと思うのですがいかがでしょう?」

「(いざとなればヨウとハウを生け贄にして俺だけは助かるから)いいんじゃないか?」

「(いざとなったらヨウとグラジオを生け贄にして俺だけは助かるから)いいんじゃないかなー?」

 

 

 

 

 

 マサルはここまでレッドのポケモンと全て相打ちとなっていたが、互角に戦えているとは全く思っていなかった。確かにマサルは読みを通し、レッドの想定を上回る場面もあった。しかしレッドは、たとえマサルが想定を上回ろうともさらにそれを越えていく。ただ、レッド自身にも余裕があるわけではない。

 

 ポケモントレーナーとしての実力がマサルよりも遥かに優っていようとも、ここまでの結(・)果(・)は(・)イーブン。それ以上でも、それ以下でもない。

 

(あの状況で「はかいこうせん」……他の近接技なら良(・)く(・)て(・)相(・)打(・)ち(・)にしかならなかった。だけど、ゼロ距離の「はかいこうせん」で自(・)分(・)ご(・)と(・)周(・)囲(・)の(・)岩(・)盤(・)を(・)巻(・)き(・)込(・)む(・)こ(・)と(・)で、「ストーンエッジ」の威力を軽減させたんだ)

(……本当は「はかいこうせん」の自傷ダメージだ(・)け(・)を受けさせてカビゴンだけを生存させるはずだったのに、バンギラスの「ストーンエッジ」の威力は僕の想定を上回っていて相殺し切れなかった)

 

 二人はポケモン達をボールに戻しながら思案する。互いに互いの想定を超えていくバトル展開でありながらも、二人は至極、至極冷静だった。傍から見ればただの真っ向勝負にしか見えなかっただろうが、その裏には幾重もの思考の積み重ねと読み合いがあったということを極一部のトレーナー達は理解している。

 

(残り三体……ここからは後半戦だ。俺の出すポケモンは決まったが、レッドさんの手持ちの内、残(・)り(・)二(・)体(・)の(・)どっちが出てくるかがわからねえ。が、もし次にあ(・)の(・)一(・)族(・)を出してくるのなら……次のバトルはこれまでとは全(・)く(・)違(・)っ(・)た(・)展(・)開(・)になる)

(……マサルが次に出してくるポケモンはわかってる。それならもう、僕が出すポケモンはあの子一択だ。僕の想定通りなら……次のバトルはこれまでとは全(・)く(・)違(・)っ(・)た(・)展(・)開(・)になる)

 

 そして二人の想定通り、次のポケモン達の攻防はあ(・)る(・)意(・)味(・)で一番の盛り上がりを見せるになる。

 

「ニンフィア!!」

「エーフィ!!」

 

 二人が選んだポケモンは互いにイーブイの進化形。見る者を皆虜にするような愛くるしい姿の彼女達がフィールドの中心で向かい合った。

 

 だが、動かない。

 

 マサルもレッドも、ニンフィアもエーフィも、互いに相手を観察するだけで動こうとはしなかった。その異様な光景にスタジアムはざわめき、トーナメント参加者のトレーナー達は、二人が見えないところで高度な読み合いを繰り広げているのだろうと考えていたが。

 

 何とこの瞬間、マサルもレッドも高度な読み合いなど全(・)く(・)繰(・)り(・)広(・)げ(・)て(・)い(・)な(・)か(・)っ(・)た(・)のである!!

 

「レッドさん」

「……マサル」

 

 では一体、この二人は何を考えていたのか。

 

「俺は、ブ(・)ル(・)ー(・)ベ(・)リ(・)ー(・)学(・)園(・)で───天啓を得たんです」

「……聞こう」

 

 それは。

 

 

 

 

 

 

「可愛いが!! 最強だということを!!」

「……百理ある」

 

 

 

 

 

 

「可愛いが最強? つまりあたしが最強ってことだよね!! かぁ~~~~っ!! マサルにぃにがあたしのことを好きすぎる!!」

 

 

 

『可愛いが最強? つまりポケウッドの大女優であるメイちゃんが最強ということですね!! かぁ~~~~っ!! マサルさんがあたしのことを好きすぎる!!』

 

 

 

「可愛いが最強? つまり私が最強ってことだよね!! かぁ~~~~っ!! マサルが私のことを大好きすぎるんだよなぁーーーっ!!」

 

 

 

「可愛いが最強? つまり私が最強ってことだよね!! かぁ~~~~っ!! レッドが私のことを大好き過ぎてつれーーーっ!!」

 

 

 

 

 

 

 どよめく観衆やイキリ散らかしている自惚れ女共を他所に、マサルとレッドは熱い眼差しを向け合っていた。

 

「俺は!! ポケモン達の強さだけじゃなく!! 俺のポケモン達の可(・)愛(・)さ(・)も世界中に知らしめたい!!」

「わかる」

 

 拳を強く握り、熱く宣言するマサルに対してレッドは腕を組んでうんうんと頷く。

 

「だからこそ俺は証明してみせる。俺のニンフィアが世界で一番可愛いことを!!」

「……それは聞き捨てならない。僕のエーフィが世界一可愛い」

「ピカチュウは?」

「ピカチュウも世界一可愛い」

「ふっ。どうやら俺達は、ここだけは相容れないようですね」

「……僕、マサルのことは大好きだけどここだけは絶対に譲れない」

 

 対峙する二人に残された道はただ一つ。己のポケモンの可愛さを以て───相手のト(・)レ(・)ー(・)ナ(・)ー(・)を「ひんし」にさせること。

 

「ニンフィア!!」

「エーフィ!!」

 

 ニンフィアをエーフィは駆け出し、そのまま互いの隣を素(・)通(・)り(・)した後、相手トレーナーの目の前にやって来た。

 

「あまえる!!」

「あまえる!!」

「ふぃあ~お♡」

「ふにゃ~お♡」

「ぐふぅ!?」

「ぐふぅ!?」

 

 マサルとレッドに こうかはばつぐんだ!

 

「くっ……やるなエーフィ……はぁ、はぁ……なきごえ!!」

「くっ……やるねニンフィア……はぁ、はぁ……なきごえ!!」

「ふぃあ~お♡」

「ふにゃ~お♡」

「ぐふぅ!?」

「ぐふぅ!?」

 

 マサルとレッドに こうかはばつぐんだ!

 

「ま、まだまだ……はぁ、はぁ、はぁ……ニンフィア! つぶらなひとみ!」

「ま、まだまだ……はぁ、はぁ、はぁ……エーフィ! つぶらなひとみ!」

「ふぃあ~お♡」

「ふにゃ~お♡」

「ぐふぅ!?」

「ぐふぅ!?」

 

 マサルとレッドに こうかはばつぐんだ!

 

 これまで動揺らしい動揺を全く見せなかった百戦錬磨の怪物達が、膝をつき、胸を押さえ、苦悶の表情を浮かべている。

 

 そう!!

 

 これはまさに!! 魂を削る戦い!!

 

 

 

 

 

 

『えー……我々は一体何を見せられているのでしょうか』

『いきなりポケモンコンテストが始まりましたね』

『トレーナーあるあるですよ! 誰もが「ウチの子が世界で一番可愛い!」って思ってるんですから!』

 

 

 

「なんでマサルはフェアリーが絡むとIQがあんなに下がると?」

「鋼が絡んでも頭がおかしくなるんだぞ」

「なかなかのピンクオーラですね。ま、僕には遥かに及びませんけど」

 

 

 

「ブイブイ!! ブイブイ!! ブイブーイ!!」

「うぉ……ボタンがいきなりテンション爆上げちゃんになりやがった」

「ふん、確かにマサルのニンフィアもまあまあ可愛いわね。まあ? あたしの方が百倍可愛いんだけど!」

「ねーちゃんより鬼様……オーガポンの方が千倍可愛い」

「ぽに~♪」

「はぁ~!? スグ! あんたそんなこと言ってただで済むと思ってるわけ!?」

「ねーちゃんのあしらい方はマサルさんに教えてもらったから何も怖くないべ」

「あのバカT男……スグに余計なことばっかり教えて……!!」

「可愛いが最強……可愛いが正義……ネリネにはまだまだ難しい概念です」

「ふふーん♪ マサルくんに可愛いが最強を刷り込んだのはこの私! つまり、マサルくんは私が育てました……どやっ!」

「た、タロ先輩も可愛い……っすよ」

「アカマツくん。私は今! マサルくんの話をしています!」

「あっはい……」

 

 

 

 

 

 

「はあ、はあ……どうやら、ニンフィアとエーフィへの愛は完全に互角みたい、ですね……」

「……悔しいけど、そうみたい。それにこのままじゃ、埒が……あかない」

 

 故に、二人は自身の元へニンフィアとエーフィを呼び戻す。観客達の大部分は盛り上がりつつも「何を見せられていたんだ」という反応を見せたが、ガラルでは定期的にトンチキバトルが展開されるので、ガラルの民は慣れたものだった。

 

「ミストフィールド!」

「サイコフィールド!」

 

 まずは互いにとって有利な状況を作り出すための基盤作り。が、環境の主導権を握る戦いは全くの五分。フェアリータイプとエスパータイプの力が混ざり合い、フィールド内が異様な気配に包まれた。

 

「リフレクター! ひかりのかべ!」

「リフレクター! ひかりのかべ!」

 

 続いて、自身の身を守るために周囲にシールドを展開させる。ニンフィアとエーフィは共にイーブイの進化形であるが、その特性は異なっている。二体とも物理攻撃に対する防御は苦手なものの、ニンフィアはそれを補って余りある特殊耐久力と特殊攻撃力、エーフィは素早さと特殊攻撃力に優れていた。

 

 つまり、耐久面はニンフィアに軍配が、火力とスピードにはエーフィに軍配が上がる。

 

「サイコキネシス!!」

「マジカルシャイン!!」

 

 強力な技同士の衝突。数秒の間は拮抗していたが、エーフィとの純粋な火力差に押し切られ、ニンフィアがエネルギー波に飲み込まれた。

 

「……固い」

 

 だが、レッドの表情は優れない。シールドが展開されているとはいえ、「サイコキネシス」はエスパー系でも最上位に位置する高火力技。それを受けてもなお、ニンフィアは悠然と佇んでいる。

 

「やっぱ火力勝負じゃ分が悪いな……」

 

 対して、マサルの表情も優れない。いくらニンフィアが耐久に秀でているとはいえ、こうもあっさり自慢の技が押し切られた上、シールドも破壊されたのだ。

 

(スピードと火力は敵わねえ。だったら別の方法でアプローチするだけだ)

(耐久力は敵わない。だったら別の方法であの守りを突破する)

 

「ひかりのかべ!!」

「ワイドフォース!!」

 

 ニンフィアは新たにシールドを展開するも、フィールドのエネルギーを収束させたエーフィの強力な一撃がそれをたやすく粉砕する。と同時、エーフィは自慢の機動力を発揮してニンフィアとの距離を詰めてきた。

 

「リフレクター!!」

「サ(・)イ(・)コ(・)フ(・)ァ(・)ン(・)グ(・)!!」

 

 レッドの選択はあえてエーフィの不(・)得(・)意(・)な(・)物理技。対してマサルは物理技を読み切ったかのように「リフレクター」を展開させる。

 

 だが、エーフィの一撃が。

 

 物理攻撃力に長けているわけではないエーフィの一撃が。

 

 堅牢な守りを突破し、その牙がニンフィアへと届(・)く(・)。

 

 ニンフィアは耐久力に優れているポケモンではあるが、物理防御力は決して高くはない。それを補うための「リフレクター」。しかしレッドは、レッドのポケモンは、決して得意ではない物理攻撃でいともた(・)や(・)す(・)く(・)それを破壊する。

 

(……待って。いくらなんでも、簡(・)単(・)す(・)ぎ(・)る(・))

 

 瞬間、レッドの首筋に悪寒が走った。

 

 と同時に、気付く。

 

「エーフィ!! 止ま───」

「───遅い」

 

 エーフィの牙が、ニンフィアに届いてし(・)ま(・)っ(・)た(・)。

 

 その一撃を受けたニンフィアは苦悶の表情を浮かべるも、即座に飛びのいてエーフィから距離を取る。だが、エーフィの機動力をもってすれば、その程度の距離は一秒と掛からず詰められるだろう。

 

 しかし、しかし。

 

 エーフィは、ニンフィアの後を追わなかった。

 

 否。追(・)え(・)な(・)か(・)っ(・)た(・)。

 

「ニンフィアに───触(・)れ(・)ま(・)し(・)た(・)ね?」

 

 その異変に、誰よりも早く気付いたのはレッド。攻撃を受けたわけではないエーフィの身体が小刻みに震え、呼吸を荒げている。

 

「俺のニンフィアは老(・)若(・)男(・)女(・)を(・)問(・)わ(・)ず(・)魅了する。が、相手が異(・)性(・)な(・)ら(・)その効果は同性の比じゃない」

 

 魅惑的で蠱惑的な笑みを浮かべるニンフィアは、ゆっくりとした足取りで再びエーフィに近づき。

 

「ゆうわく」

「ふぃあ~お♡」

 

 エーフィの耳元で甘く囁いた瞬間、エーフィはレッドが指示をするよりも早く、自(・)ら(・)ニンフィアから大きく距離を取った。

 

 だが、ニンフィアからの追撃はない。なぜなら、ここで下手に攻撃を加えてしまえば、エーフィを追い詰めるために作り上げたこの状況が瓦解しかねないから。

 

 故にマサルは、直接的な攻撃ではなく、ある意味そ(・)れ(・)以(・)上(・)に(・)性(・)質(・)の(・)悪(・)い(・)攻撃で、エーフィをゆっくりと、しかし確実に、逃げ場のない底なし沼へと沈めていく。

 

 

 

 

 

 

「あちゃ~……マサルくんのニンフィアちゃんがあのモードになっちゃったらどうしようもないかもね~」

「性(・)別(・)の(・)な(・)い(・)僕のメタグロスでさえ惑わされかけたからね」

「マサルの、っつーかニンフィアの『メロメロ』は反則だよな。下手すりゃパーティーが機能不全になっちまうんだから。……やりすぎてバトル中にマ(・)サ(・)ル(・)が(・)機(・)能(・)不(・)全(・)に(・)な(・)っ(・)て(・)自(・)滅(・)し(・)た(・)こともあったけど」

 

 マサルのニンフィアの恐ろしさを、その身を以って痛感したホウエン代表の三人は語る。

 

 ホウエン地方は、世界で最もポケモンコンテストが盛んな地方であり、ポケモンの強さだけでなく、その魅(・)力(・)を最大限引き出すことに長けている地方だと言っていい。

 

 そんなホウエン地方のチャンピオンにして、ポケモンコンテスト絶対王者ハルカ。

 

 その絶対王者ハルカから唯(・)一(・)、「可愛さ部門」のグ(・)ラ(・)ン(・)プ(・)リ(・)を(・)奪(・)っ(・)た(・)ポケモン。

 

「それがマサルくんのニンフィアちゃんなんだよね~」

 

 故にハルカはこう語る。

 

 マサルのバンギラスがその破壊力を以って物理的に国を崩壊させる「傾国」であるならば。

 

 ニンフィアはその魅力を以って内部から国を崩壊させる「傾国」であると。

 

 

 

 

 

 

 レッドは見た。

 

 確かに見た。

 

「傾国」の怪物を従える青年の背後に。

 

「さあ」

『さあ』

 

 少し太めの眉が特徴的で、桃(・)色(・)の(・)髪(・)を(・)し(・)た(・)少(・)女(・)の姿を。

 

 

 

 

 

 

「可愛いが最強であることを証明しましょう」

『可愛いが最強であることを証明しましょう』




 物理的に傾国させるバンギラスと精神的に傾国させるニンフィアのバトルです。ニンフィアVSエーフィの決着は次回に持ち越し!

 最後のシーンでマサルの背後に現れたのはタロちゃんの幻影です。タロちゃんは大いなるピンクの力でマサルを「可愛いが最強」に洗脳し、ニンフィアが傾国の怪物になるきっかけを与え、フェアリータイプの不思議な力でバトル中に顕現するマサルのスタンドとなりました。このタロちゃんスタンドを認識できるのはマサルと対峙したトレーナーか大いなるピンクの力を持つ者だけです。

 ミヅキはロイヤルマスクファンが高じて筋肉の使徒に目覚めました。ククイ=ロイヤルマスクという真実には微塵も気付いていません。この子はアローラガールズが筋肉フェチになった元凶でもあり、いつかロイヤルマスクVSマキシVSシローVSシバVSマサルのドリームマッチを実現させようと目論んでいるやべー女です。

○マオ:マサル派
○スイレン:ロイヤルマスク派
○アセロラ:シロー派
○リーリエ:ギャップ派
○ミヅキ:全てを等しく愛する派
※筋肉の話です。
 
 ちなみにアローラ男トリオは女子連中が自分達をいやらしい目(筋肉の話)で見ていることに気付いており、三人ともいざとなれば他の親友二人を生け贄にして自分だけは助かる策を講じるという素晴らしい信頼関係を気付いています。

 これをガラル男トリオに置き換えるとマサルとホップはお互いに庇い合い、二人でビートを生け贄に捧げる感じですかね。

 おそらく次回でマサルVSレッドが決着します。レッドさんの残り二体が何なのか色々予想してみてください。

 ではでは、ここまでお読みいただきありがとうございました!

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