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【前回のあらすじ】
ホップ「大昔のヒスイ地方にマサルと全く同じボールの投げ方をする人がいたらしいぞ」
マサル「まじか(岩〇はポケモン世界からの異世界転生者だったのか!?)」
マグノリア博士の家でみんなでカレーを食べた翌日、再び博士の家にやってくると、マグノリア博士が一晩でホップとユウリのダイマックスバンドを作ってくれていました。仕事早すぎだろ。ジェバンニかよ。
「兄貴の推薦状も貰ったし、これでいつでも出発できるな! 二人とも、もう今からエンジンシティに行くか!?」
「気ぃ早すぎだって。荷造りは終わってんの?」
「そんなの昨日の内に終わらせたぞ!」
「わ、私なんにも終わってない……」
ある意味予想通りの二人だな。ホップはジムチャレンジに参加することを誰よりも心の底から待ち望んでいたから、昨日の夜はウッキウキで準備しとったんやろうなぁ……ユウリも予想通り。こいつは夏休みの宿題とかをギリギリまでため込んで本当に追い詰められるまでやらないタイプ。
俺も食料品以外の準備は終わってて、キャンプセットもじいちゃんが張り切って新品を買ってくれたからそんなに時間はかからないな。
「よし、じゃあ今日一日は準備にあてて明日の十時にブラッシータウンの駅前に集合にするか」
「わかったぞ! よーし、俺は今から二番道路でポケモン達を鍛えてくるぞ! また明日な、二人とも!」
そう言ってホップは草むらの中に飛び込んで行った。少しはじっとしていられんのかあいつは。
「あ、あのねマサル……」
「ん? どーした?」
ユウリが俺の服の袖をちょんちょんと引っ張って上目遣いで見てくる。俺に何かをねだる、というかお願いする時の目だな。あざといあざとい。ま、ユウリが何をお願いしたいのかなんてわかりきってるけどな。
「準備、手伝ってほしいんだろ? とりあえずブティックに行くか」
「あ、ありがとっ! でもなんでブティック?」
「ユウリ、まさかとは思うけど……スカートのままでワイルドエリアを歩き回るつもりか?」
「……あ」
ゲームだと女主人公は平気でホットパンツのまま草むらに突撃したりしてるけど普通に危ないからな。虫に刺されたり草で切れたりして生傷だらけになるんだよ。いくらユウリとはいえ、さすがに嫁入り前の娘さんをそんな目に遭わせるわけにはいかない。
「でも私……この服装気に入ってるんだけどな」
「街に滞在する間はそれでいいだろ。あとは……まあレギンスとかタイツでカバーすればスカートでもある程度は大丈夫か。理想は動きやすいパンツ系だけど」
今のユウリが着ている服は結構なお値段のブランド物だからな。どうも、なかなかこっちに来れないユウリパッパが娘に可愛くなってほしいという親心で旅先から色々送ってきてくれているらしい。親馬鹿、というかユウリにあまあまだな……俺も人のこと言えねえか。
「ま、何にせよブラッシータウンに戻って色々準備するか。食べ物とかは……ウチにある食材を大量に持っていけばどうにでもなるな」
「毎日マサルの美味しいカレーが食べられるんだね!」
「毎日は飽きる」
あとユウリの嫌いな野菜もいっぱい食わせてやるから覚悟しろよ。
呑気にふにゃふにゃ笑っているユウリの笑顔を見ながら俺は心に誓うのだった。
「ねえマサル! このデニムショートパンツ可愛くない? 私、これにする!」
「確かに可愛いな。でも、それだけだと怪我するからこっちのタイツも合わせて買っとけ。足を出していいのは街の中だけだ」
「うーん……タイツやレギンスでカバーすればこっちのワンピースも……」
「どっかで転んで俺にパンツを晒すことになるからやめとけ。まあ、ユウリが人にパンツを見せることに快感を覚える変態なんだったら止めないけどな」
「そんなわけないじゃん! っていうか、仮に変態だとしても止めてよ!」
ブティックにやってきた俺達はなんやかんや言い合いながらも服選びを楽しんでいた。昔のユウリは「服……あんまり興味ない」とか言ってたのに。成長したなぁ……ユウリ。
「ま、マサルマサル! これ見てこれ! すんごいの見つけたよ!」
「なんだよ『すんごいの』って」
俺も自分用の小物をいくつか買った後に店内を物色していたら、興奮気味なユウリが俺の背中をバンバン叩いてきた。何を見つけたんだよ。過激な下着とかだったら頭ひっぱたくからな。
そう思いながらユウリについてくと……視界に飛び込んできたのは確かに「すんごいの」だった。
「こ、これはまさか……『でんせつTシャツ』……!? 入荷していたのか……!?」
「ね? すごいでしょ! 三万円もするんだよこれ!」
ユウリが見つけたのは某ネット掲示板で一時期話題になっていた「でんせつTシャツ」だった。ウインディのどアップに南国っぽい背景……しかもお値段が三万円という強気設定。某有名ブランドのお金をかけた全力の遊び……超限定販売のレア物で着ている人を一度も見たことがないという半分都市伝説と化していた代物。
まさか実物をブラッシータウンで拝めるとは……
「マサル、買う?」
「買わねえよ。記念に写真だけ撮っとくわ」
SNSにあげたらバズリそうだなと思い、スマホでパシャリ。ユウリも俺と同じように写真だけ撮っていた。
「あ、でもこのデザインを考案したのがカブさんだったら全財産をはたいてでも買わねば……」
「マサルって相変わらずカブさんが絡むと気持ち悪くなるよね」
失礼なヤツだなおい。俺は将来カブさんのような格好良いおっさんになってアオキさんのように好き勝手生きるんだ。
「そうだユウリ、これやるよ」
「ほえ……?」
俺はそう言って紙袋の中をがさがさと漁り、ユウリのために買ってあげたグリーンのニットベレー帽をかぶせてやる。今のユウリはピンクのリボンワンピースの上からグレーのニットパーカーを羽織っているから、それに合いそうな色合いの帽子を買ったんだ。
「ポケモン初ゲット記念のお祝いだ。大事にしろよ?」
「う、うん……」
ユウリは俺があげた帽子を触りながら、顔を赤くして俯いてしまった。今さらプレゼントくらいで何を照れてんだよ。毎年誕生日は盛大にお祝いしてるだろーが。
「あ、あのねマサル……じ、実は私も、その……これ……」
そして、ユウリは顔を赤らめたまま恥ずかしそうに俺に袋を差し出してきた。不思議に思いながらも、袋の中身を取り出すと……
「ワッチキャップ?」
「う、うん……今日、買い物に付き合ってくれたお礼……あ、き、気に入らなかったら別に無理しなくても……」
「んなわけねーだろ? さんきゅーなユウリ。俺もちょうど新しい帽子が欲しかったんだ」
不安そうな表情だったユウリは、俺が笑顔で帽子をかぶると途端に表情を輝かせた。普段は帽子なんてかぶらないけど、お洒落でフワフワの手触りで柔らかくて結構良いな。これなら寝癖も隠せるし。
「買い忘れたもんはないな?」
「うん、大丈夫……だよ?」
「不安になるような返事すんなよ……」
まあ、もし何か買い忘れがあったらその都度別の街で買い足せばいいか。街ごとにブティックの品揃えは違うらしいし……よーし、ジムチャレンジで行く街のブティックを完全制覇してやる。
「じゃあ、帰るか」
「うんっ!」
そしてブティックを出ようとしたところで、不意にユウリが俺の手をそっと握ってきた。どうしたいきなり?
「あ、あの……い、嫌だった?」
「うんにゃ。嫌じゃねーよ。こうすんのも久しぶりだなと思っただけ」
「あ、えへへ……よかった……」
それこそ昔はユウリがどっかに行かないように手を握って行動するなんて当たり前だったからな。何度首輪とリードをつけてやろうと思ったことか。
そんな風に、昔の話をしながらユウリと手を繋いで帰路につくのだった。
「マサルー、明日出発するんじゃろ? ばあちゃんがええもん買うてきてやったからの~」
「ありがとーばあちゃん! 何買ってきてくれたの?」
「今日、ぶてぃっくに行って『孫が
「伝説って……大袈裟だなぁ、ばあちゃんは~……え……?」
「ええTシャツじゃろ?
「な、なんでマサルが『でんせつTシャツ』を着てるのーっ!?」
「さすがだぞ! マサルの『伝説になってやる』っていう強い思いがひしひしと伝わってくるぞ!」
「ばあちゃんがわざわざ俺のために買ってくれたんだよ! 着ないわけにいかないだろ! それに、ばあちゃんの笑顔を見て俺は誓ったんだ! 俺は……俺はこのジムチャレンジでこの『でんせつTシャツ』をガラル全土に広めてやるってな!」
「ジムチャレンジの目的が予想外の方向にぶっ飛んでるよ!!」
「すごい気合いの入りようだぞ! 俺も負けていられないな!」
翌日、でんせつTシャツを身につけた俺が集合時間の十五分前にブラッシータウンの駅にやって来ると早速ユウリとホップに服装のことをツッコまれてしまった。だってなぁ……ばあちゃんのあんな嬉しそうな笑顔を見たら着ないわけにはいかないじゃん……俺、じいちゃんもばあちゃんも大好きなんだよぉ。
「Tシャツ単体でみると『ないわー』って思うけど、マサルくんが着てるとびっくりするくらいしっくりくるわね」
「ありがとうリコちゃん。可愛いポケモンの生息地を見つけたら教えてあげるからね」
「ほんと!? マサルくんのそういう優しい所好きっ! ぜーったい可愛いと強いを両立させてやるんだからぁ!」
昔から俺によく懐いてくれている金髪美少女のリコちゃんもお見送りに来てくれていた。可愛いと強いの両立……か。ブイズでパーティを組めば解決だな。
「クーッ!」
「キテルグマ……お前、何を腕を組んで『マサルはワシが育てた』みたいな後方支援者面してんだよ……」
「クックーッ♪」
お前とは数えきれないくらいどつき合いをしたよな。まどろみの森でもすごく頼りになったし、帰ってきたらまた拳で語り合おうな!
「マサル、しっかりの。あのフェアリー婆をぶちのめしてくるんじゃ。我が一族の悲願じゃからの」
「わかったよじいちゃん。どこかで鋼タイプを捕まえてラスターカノンをぶちこんでくるよ!」
「もしくはバレットパンチ連打で相手に反撃の機会を与えない戦法じゃな。あの時、ワシの手持ちにルカリオがおれば負けはせんかったのに……」
ひでーハメ技。でも、冗談抜きに鋼タイプは一体入れておきたいな。単体じゃなくて複合タイプなら戦術の幅も広がるし。
「わたぱち」
「いぬぬわ~……」
俺が呼ぶと、わたぱちは寂しそうな顔で俺に擦り寄ってくる。おいやめろ、そんな顔で俺を見るな! めっちゃ後ろ髪引かれるだろ……尻尾もペタンと垂れてるし……あかん涙出そうになってきた。
「いいか、よく聞けわたぱち」
「いぬわ~……」
「お前はウチの立派な牧羊犬なんだ。俺がいない間、ガーベラ牧場をしっかり守ってくれ。それに……たとえ何があっても、俺は必ずお前のもとに帰ってくる。だから、帰ってきたらたくさんたくさん遊ぼうな!」
「イヌヌワっ!」
「ああ、約束だ!」
そして俺はわたぱちをぎゅっと抱き締める。これからしばらくの間会えなくなるのはめちゃくちゃ寂しい、毎朝嬉しそうに俺を起こしに来てくれることもなくなるなんて……だけど俺は、それでも前に進まなくちゃいけないんだ!
「なんかわたぱちが一番ヒロインっぽい……」
「わたぱちは雌だからな」
俺が涙の別れをしている傍らで、ユウリとホップはそんなことを呟いていた。ユウリだってゴンベとしばらく会えなくなるから寂しがってただろうが!
「さあ、三人とも。そろそろ時間だから行きましょうか」
「え? ソニアも来るのか?」
「何よ? 私がいたら悪いわけ?」
あ、ソニアちゃんも俺達についてくる感じ? てっきりお見送りに来てくれたんだと思ってたわ。
「といっても、私は私で色々調べごとをするために旅をするんだけどね。旅なんてジムチャレンジ以来だから楽しみだわー!」
ほーん、調べごとか。多分、ダイマックスに関することなんだろうとは思うけど……マグノリア博士も結構な年齢だからな。気軽にフィールドワークができる身体じゃないし、ソニアちゃんにとっても良い経験になるだろう。
「よし、じゃあ行くぞみんな! 俺達の伝説の幕開けだ!」
「おーっ!」
「おーっ!」
ホップの号令に少女二人はノリ良く拳を握って手を上げる。俺はとりあえずトリプルアクセルからのリザードンポーズ十肆ノ型でもやっておくか。
そして俺達はたくさんの人達に見送られてブラッシータウンを出発した。このまま列車に乗ってエンジンシティに行ってジムチャレンジの開会式だ!
───と、思っていたんだけど……
「はっはっは……まさかウールーが線路を塞いでワイルドエリア駅で降りることになるとは思わなかったぞ」
「俺はどっちみちワイルドエリアで炎タイプのポケモンを捕まえる予定だったらちょうどよかったけどな」
「ほえー……広ーい……これが、ワイルドエリア……ねえソニアちゃん、あの赤い光の柱ってなあに?」
「あそこの根元にはポケモンの大きな巣穴があってね。ダイマックスに必要なガラル粒子が特にたくさん集まっている場所なの。だからあの巣穴ではダイマックスが使えるし……住んでるポケモンもダイマックスしてるのよ」
とんでもねーところだなおい。つまりあの巣穴には常時デカいポケモンがいるってことだろ? いやでも、考えようによってはチャンスか。ジムリーダーと戦う前に実際にダイマックスを使っておきたかったし。エンジンシティに着く前に一回くらいは巣穴に入っておくか。
「ワクワクしてきたぞ! よーし、ダイマックスしたポケモンと戦いまくって伝説の一ページにするぞ!」
ホップは俄然やる気になっている。かくいう俺もワイルドエリアを目の前にしてテンションが上がっているんだけどな。いやー、ほんとに冒険って感じで胸が躍るわ。
はっ!? 待てよ……幼馴染三人、いやソニアちゃんも入れれば四人か。こ、これはBWの幼馴染三人組がやっていた「せーの!」で最初の一歩を踏み出すヤツができるんじゃ───
「待ってろポケモン達! 今行くぞーっ! うおおおおおおっ!」
そんなことを考えていたらホップが一人で突っ走っていき、あっという間にその姿が見えなくなってしまった。
おい。
おいっ……!
「それじゃあ私も行くね。二人とも、開会式に遅れないようにするのよ。ダンデくんったらワイルドエリアに籠り過ぎてエントリーがギリギリになってほんとに危なかったんだからね」
「うん、わかった。あ、ねーねーソニアちゃん。ソニアちゃんの調べごとってなぁに?」
「あ、そういえば言ってなかったわね。各地のダイマックスできるスポットの調査と、ユウリ達がまどろみの森であった不思議なポケモンの調査よ」
「おー……なんか博士っぽい。格好良い……」
「ふふっ、ありがとユウリ」
尊敬の眼差しを向けるユウリの頭をソニアちゃんが照れ臭そうに笑いながら優しく撫でている。姉妹っぽいよなぁこの二人……あっ、てかソニアちゃんはあのポケモンについて調べるのか。どうしよう……一応伝えておいてあげるか。
「あのさ、ソニアちゃん」
「どうしたの?」
「まどろみの森の不思議なポケモンのことなんだけどさ……多分、じいちゃんがなんか知ってるっぽい」
「え!? そうなの!?」
灯台下暗し、だよな。というか、あのポケモンについて調べるならまずはハロンタウンに昔から住んでる老人達に話を聞くところから始めればよかったんじゃないの? 仮にそれが町の秘密だったとしても、マグノリア博士の孫であるソニアちゃんからのお願いなら無下に扱われないだろうし。
「じ、自分の足で調べることに意味があるから……じゃ、じゃあ私も行くわね! エンジンシティで会いましょう!」
そう言ってソニアちゃんは恥ずかしそうな表情で足早に去っていく。しまったぁ~、もっと早く教えてあげればよかったな。まあでも、ソニアちゃんの可愛い姿が見れたからヨシ!
「マサルっ! マサルっ!」
「なんぞね?」
ユウリは眩しいくらいの天真爛漫な笑顔で俺の名を呼び、手を差し出してきた。
「最初の一歩……『せーの!』で一緒に踏み出そっ!」
ユウリ……お前……お前って本当に、本当にごくたまーに、俺の心にクリティカルヒットすることを言ってくれるよな。
こうかはばつぐんだよちくしょう。
その提案が本当に……どうしようもなく嬉しくて、俺はユウリの手を優しく握る。
そして───
「「せーのっ!!」」
俺達は、小さくて大きな一歩を踏み出した。
「マサルさんに伝説プリーズ」という感想をいただいたので、ご要望通りマサルには「でんせつTシャツ」を着て各ジムを巡ってもらいます。
実は元々マサルにはどこかのタイミングででんせつTシャツを着せようと思っていたので、この感想をいただいた時に丁度良いなと思ってああなりました。ちなみに私は剣盾二週目で男主人公を選び、ずっとあのTシャツ一枚で冒険していました。
あと、ユウリとマサルがお互いにプレゼントしあった帽子はゲームでデフォで被っている帽子です。エモいよね。こういうの好き。
前回、岩〇のフォームがウォロと被っているという感想をいただきましたが、これは私が完全に忘れていただけです。というものレジェアルは買わずにYouTubeでプレイ動画だけ観て満足していたんですよね。
マサルの投球フォームは変えませんが、どこかのタイミングで「インテレオン、打破せよ!」って言わせたいなと思います。
そして、いよいよワイルドエリアに到着! 次回ようやくマサルが二体目を捕まえます。皆様色々と感想で予想されていてめちゃくちゃニヤニヤしてます。いつも感想ありがとう!
ではでは、ここまでお読みいただきありがとうございました!
次回もよろしくお願いします!