【完結】すごいよ!! マサルくん   作:わへい

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No.0017 せんれい!! イワークくん

 ワイルドエリアに足を踏み入れた俺達は、その広大な景色に圧倒され、心を奪われていた。見渡す限り自然豊かな平原、海をも彷彿とさせるような巨大な湖、樹齢数百年は経っていそうな木々が生い茂る森林。ここからは見えないけど、砂漠地帯や降雪地帯もあるとのこと。

 

 ああ、やべえなどうしよう……この胸の高鳴りを、抑えられない。

 

 いや、抑える必要もないな。浮かれっぱなしもまずいけど、だけどこの感情は今しかない感情なんだからしっかり味わっておきたい。……恋かな?

 

「すごいね~。ポケモンがたくさん歩いてるよ。ラルトスにトランセル……あっちにはディグダ! あ、ヤンチャムもいる!」

「……天然のサファリパークか」

 

 この辺を一通り歩き回るだけで図鑑が結構埋まりそうだな。

 

「うし、じゃあとりあえずエンジンシティに向かって歩くか。ナビも入れたし、エントリーまではまだ期限があるから……ちょっとくらい寄り道してもかまへんか……」

「さんせーさんせー! 私、巣穴に入ってダイマックスバトルもやってみたーい!」

「それは後でだな。まずはこの辺のポケモンを図鑑に登録しながらのんびり歩こう」

「えへへ、なんだかマサルとピクニックしてるみたいで楽しいね~」

 

 油断すると野生のポケモンに襲われるピクニックだけどな。一応、ゴールドスプレーはじいちゃんが大量に持たせてくれたから、最悪の場合はそれを使うけど……ジムリーダー戦に備えてある程度トレーニングを積んでおきたいのも本音だ。

 

 あと、絶対に炎タイプのポケモンを捕まえてやる!

 

 そんな風に気合いを入れ直してユウリと手を繋いだままのんびり歩き始めた俺達だったが、視界の先……約二十メートルほど先に巨大な蛇のような影があることに気が付いた。

 

 あいつは……

 

「イワークだーっ! おっきいね~」

 

 蛇って言う印象は間違いじゃなかったな。見つけたのは体長が十メートルはあろうかという巨大な岩の蛇。ゲームだと攻撃種族値がポッポと同じでネタにされてたけど……

 

 いやいやいや、あの巨体でポッポと同じ攻撃力っつーのは無理があるだろ。わかりきってたことだけど、ゲームの知識を頼りにし過ぎない方がいいな。

 

「あ、こっちに気付いたよ」

 

 そしてイワークは俺達の姿を発見するなり……猛スピードで俺達の方向へ突っ込んできた。

 

 は、速っ!?

 

 俺はとっさにユウリを抱きかかえ、横っ飛びでイワークのたいあたりだかとっしんだかを回避する。草の上をゴロゴロと転がりつつ、ボールを取り出してメッソンをその場に呼び出した。

 

「問答無用かよおい……だったらこっちも容赦しねえぞ」

 

 ユウリを庇うように前に出てイワークを睨みつけた。どうやら相手は俺達を敵と認識したらしい。上等だこの野郎。タイプ相性の差を思い知らせてやるからな。

 

「メッソン、みずのはどう!!」

「きゅわわっ!」

 

 相手が動くよりも早く技の指示を出す。やっぱメッソンってかなり素早さが高いポケモンだよな。もしかしたらヒバニーよりも。ただ、耐久に難はありそうだから、回避前提の高機動型の特殊アタッカーとして育てていきたい。

 

 俺がそう考えている内に、振動を帯びた水流がイワークの顔面へと襲いかかった。効果抜群だろこの野郎。上手くいけばこの一発で倒れ───

 

「ッ!? 左に飛べっ!! メッソン!!」

 

 しかし、イワークはみずのはどうを全く意に介していない様子でメッソンへとたいあたりをぶちかまそうとする。が、俺の指示がギリギリで間に合い、メッソンはどうにかイワークのたいあたりを回避した。

 

 振り返ったイワークと睨み合った瞬間、サーっと血の気が引いて背筋が凍るような感覚に襲われているのを自覚する。

 

 ……そういうことか!! そういうことかよクソったれ!!

 

 こいつは……こいつは俺達を()()()()()()()()()()個体じゃない!!

 

「ユウリ、ヒバニーとワンパチを出せ!! ただし二体とも攻撃はしなくていい!! イワークの気を散らしてタゲを分散させるんだ!!」

「わ、わかった! おいで、ヒバニー! ワンパチ!」

 

 三対一だけど四の五の言ってられる状況じゃない。あのイワークは……あの個体は相当()()()。ゲームで言うところのレベル差があり過ぎる状態だ。だからメッソンのみずのはどうにも平気で耐えたし、あんなスピードで攻撃ができたんだ。

 

 これが───ワイルドエリアか。

 

 は、ははは……

 

 無意識の内に、俺の口角がつり上がっていた。

 

「そうこなくっちゃなあ!! ヒバニー! ワンパチ! お前らはイワークの攻撃を回避できる距離からヤツの気を逸らすだけでいい! 絶対に攻撃に当たるなよ!? 今のお前らなら当たれば一撃で落ちる!」

「ふぁーっ!」

「イヌヌワッ!」

「メッソン! アタッカーはお前だ! みずのはどうが届く射程ギリギリから容赦なく叩きこんでやれ!」

「きゅわーっ!」

「ユウリ! ヒバニーとワンパチが無茶しないかしっかり見て指示を出せ! 大丈夫、()()()()できる!」

「───うんっ!」

「っしゃあ! 行くぞ()()()()! 誰に喧嘩を売ったかあの岩っころにわからせてやれ!!」

 

 そして、ワイルドエリアに足を踏み入れて早々に死闘を繰り広げることになるのだった。

 

 

 

 

 

 

「ぐ、ぐおお……ん……」

 

 戦闘開始から約十五分、ようやくイワークが苦しそうな声をあげて地面に倒れた。て、手こずらせやがってこの野郎……!! 全滅させられるかと思ったわ!! 何発みずのはどうをぶち込んだと思ってんだよ!! タフ過ぎだろ!!

 

「ヒバニー! ワンパチー! お疲れ様~! すっごく格好良かったよ~!」

 

 ユウリは二体をぎゅーっと抱き締めて苦労をねぎらってやっている。いやほんと、あの二体がタゲを分散させてくれなかったら絶対勝てなかったわ。まじでありがとう。あとで美味しい美味しいモーモーミルクをたっぷりあげるからな。

 

「メッソン、ありがとう。お前は俺の期待通り……いや、期待以上にがんばってくれた。本当にありがとう」

「きゅわ~♪」

 

 地面にへたり込んでいるメッソンを優しく撫でて褒めてやる。本当にすごかったからなお前。その小さな体であの巨体に立ち向かって勝利をもぎ取ってきたんだから。出会った時にきのみが頭に当たって泣いてたとは思えねえな。

 

 出会ったのはたった二日前のことなのに、なぜかずっと昔からこいつと一緒に過ごしてきたような気分になってしまう。そんな自分がおかしくて失笑していると、突然メッソンの身体が白く輝き始めた。

 

「め、メッソン!?」

「どうしたのヒバニー!?」

 

 そして、それはヒバニーも同じ。ユウリに抱かれていたヒバニーの身体も白く輝き始めている。

 

 この現象に、俺は心当たりがあった。

 

 強敵との激闘を終えた直後にこの輝き……おいおい、まさかお前ら───

 

 瞬間、メッソンとヒバニーは太陽を思わせるようなより一層強い輝きを放った。

 

 俺とユウリはあまりの眩しさに思わず目を覆ってしまい、再び目を開けた時に輝きの中から現れたのは───進化したメッソンとヒバニー。

 

「メッソン……いや、お前は───ジメレオン」

 

 スマホロトムが自動的に図鑑のページを表示してくれた。

 

 ジメレオンはメッソンと比較して身体が一回り以上大きくなり、斜に構えたような瞳の片方は前髪……前髪? それとも触角? っぽいもので隠されている。それに対し、進化したヒバニー……ラビフットはタートルネックで口元を隠し、黄色いハチマキのようなものを巻いてジメレオンと同じく斜に構えたような瞳をしていた。

 

「ははははっ! 何だお前、ずいぶん格好良くなったな! なんつーか、あれだ。世間を斜めに見てる拗らせダウナー系バンドマンみたいだ!」

「ぎゅわ~♪」

 

 ジメレオンの頭を撫でてやると嬉しそうに笑っている。……よかった。反抗期っぽい見た目してるから言うことを聞いてくれないかと思ったけど、笑い方はメッソンのままだ。

 

「ラビフットすごーい! 進化してますます男前になっちゃったね! あ、でもこの子は雌だったか……ううん! そんなのかんけーない! ラビフットは可愛さと格好良さの両方を追求していくのだ!」

「ふぁっふぁー!」

 

 ラビフットはあれだな……完全にサマーウォーズのキングカズマだな。これからカズマさんって呼んでいいか?

 

「ワンパチはまだ進化しないんだねぇ」

「俺のわたぱちも進化するのにだいぶ時間がかかったからな。まあ、焦らずゆっくり行こうな」

「イヌヌワン!」

 

 強敵との激闘を終え、進化したポケモン達。新たな力を身につけた彼らの旅はまだまだ続く───おいおいアニメのエンディングかよ。

 

 それにな~、どうせなら進化BGMの王道である「brave heart」を流したかった!!

 

「ユウリ、とりあえず一旦ワイルドエリア駅に戻ろう。ポケモンを回復させてくれるおば……お姉さんがいたから」

「そうだね。進化した喜びで忘れたけど、みんな満身創痍だもんね……」

 

 そうして俺達は早々にワイルドエリア駅に戻る羽目になるのだった。

 

 

 

 

 

 

「あなた達あのイワークを倒したの? やるじゃない! あのイワークはね、ワイルドエリアにやってきた新人トレーナー狩りをすることで有名なのよ~」

「あれ、入り口付近にいていい強さじゃないでしょ? 全滅するかと思いましたよ」

「わ、ワイルドエリアではあの強さが標準なんですかぁ?」

 

 駅の入り口にいた女性にポケモン達を回復してもらいつつ、話をすることにする。あのイワークは完全に初見殺しだったからな。今後こんなことがないようにワイルドエリアに詳しそうな人からしっかり話を聞いておかないと……

 

 ソニアちゃんにも色々聞いておけばよかったな。ダンデくん? あの人の話は多分参考にならねえよ。

 

「まさかぁ、あのイワークよりも強いポケモンなんてゴロゴロいるわよ。このワイルドエリアにはね」

「はえー……」

「でも安心してちょうだい。そういう強いポケモンは、こちらから()()()()()()()()()()()()襲ってくることはないから」

「そうなんですか? でも、どうしてだろう。強いからこそ、襲ってきそうなのに……」

「多分、こういうことじゃねえの? 強いってことは()()()()()()()()このワイルドエリアを生き抜いてきたってことだ。つまり、長く生きている分、ポケモントレーナーの強さを、人間の()()を知っている。だからこそ、下手に襲いかかってこないんだろうよ。まあ、ポケモン同士の縄張り争いとかになると話は別だろーけどな」

「お姉さん、そうなんですか?」

「大体そんな感じね~。強いポケモンって戦闘力に比例して知能も高いから無益な争いは好まないのよ」

 

 なんにせよ、みんながみんな好戦的でないのはありがたい。今の俺達にはあのイワークを相手にするので精いっぱいだったからな。

 

「でも、逆に言えばあんまり強くないポケモンは襲ってくるってことですよね~?」

「そういうこと。でも、それってワイルドエリア以外にいるポケモンにも言えることでしょ?」

「あ、そっかぁ」

 

 お姉さんの説明にユウリは納得したようだ。俺達もポケモンを鍛える必要があるとはいえ、意味のない戦闘は避けたいから野生のポケモン達とのバトルに関してはバランスをしっかり考えないとな。

 

「あ、お姉さん。この辺に炎タイプのポケモンって生息してます?」

「うーん……駅付近では見たことがないわねぇ。もう少しエンジンシティに近づかないといないと思うわよ。もしくは、どこかの巣穴に潜ってみるとか」

「なるほど……色々教えていただいてありがとうございました!」

「こちらこそ、たくさんおしゃべりできて楽しかったわ。またいつでも立ち寄ってちょうだいね」

「はい! あ、これウチの牧場で作ってるモーモーミルクです。よかったらどうぞ」

「あら、ありがとう。じゃあ、頂くついでに一つ聞いてもいいかしら?」

「なんですか?」

「その『でんせつTシャツ』……どこで手に入れたの?」

「……ブラッシータウンです」

「着てる人、初めて見たわ……」

 

 でしょうね。

 

 よーし、じゃあ次に目指すのは……エンジンシティ付近の巣穴だな。ダイマックスの試運転もできるし、運が良ければ炎タイプのポケモンをゲットできる!

 

「マサル、これから行く先々でTシャツのことツッコまれそうだね」

「俺はもう───運命を受け入れたからな」

「その恰好だと何言っても締まらないよ」

 

 そして俺達は()()()()に別れを告げて再びワイルドエリアへ歩みを進めるのだった。

 

(不思議な空気を持つ子達だったわね。それこそ、七年前にやってきた───チャンピオンダンデを思わせるような……)

 

 

 

 

 

 

「あー! マサルーっ! あれ見てあれ! モモンの実がたくさんなってる木があるよ!」

「お、ほんとだな。採っていくか」

「よーし、木を揺らしていっぱい採るぞー! 行くよ、ラビフット! ワンパチ!」

「熟れてないヤツは採るなよ~」

 

 駆け出していく一人と二体の背中に声をかけると、ユウリが「わかってるよ~」と返事をした。

 

 モモンの実は甘くみずみずしい果実でユウリの大好物だ。もちろん俺も好きで、皮ごと丸かじりするのが一番美味しい食べ方だと思う。手がベタベタになるけどな。

 

「わーい! 落ちてきた落ちてきた! ラビフット、ワンパチ! まだまだ揺らすよ~!」

「ふぁーっ!」

「いぬぬわ~!」

 

 きゃっきゃと騒ぎながら一人と二体は楽しそうに気を揺らしている。ワンパチも雌だったから女三人寄れば姦しいってのはこのことだな。ちなみにジメレオンは雄。

 

「もう……いっぱぁーつ!」

 

 最後にユウリが木にたいあたりして激しく揺らした瞬間、木の上からモモンの実ではない大きな影が降ってきた。俺とジメレオンはとっさに身構え、戦闘態勢に入る。

 

「え? なになになに!? 何が落っこちて……って!! なにこのでっかいリス!!」

 

 木の上から降ってきたのはヨクバリス……ホシガリスの進化形だ。

 

 進化したポケモン……こいつは、()()()だ? イワークと同じ長年生きてきたタイプのポケモン? それとも普通に襲いかかってくるようなポケモン? 後者はともかく、前者だとしたら厄介だ。

 

 なんせ、今の俺達はヨクバリスの住処を荒らした犯人っていう状況なんだから、いつ襲いかかられてもおかしくはない。

 

 最大限警戒する俺達だったけど、その警戒は全く違う形で裏切られることになる。

 

 というのも、俺達の姿を間抜けな顔で見ていたヨクバリスは───目にも止まらぬスピードで、落ちていたモモンの実を()()口の中に放り込んで一目散に駆け出していってしまったからだ。

 

「……ほえ?」

 

 全く予想していなかった怒涛の展開に、ユウリだけじゃなく俺も、ジメレオン達も呆気に取られてしまう。

 

「あーーーっ!!??」

 

 しばらくなんとも言えない気まずい沈黙がその場を支配していた中で……唐突にユウリが叫び声をあげた。なんぞ?

 

「私のっ……! 私のモモンの実が全部取られちゃったぁ~~~っ!!」

 

 そんなことかい!? 怪我がなかったんだからそれで満足しろよ……って思ったけど、モモンの実はユウリの大好物だからなぁ。あーあー、ユウリのヤツ、しゃがみ込んで露骨にショックを受けてやがる。ラビフットもワンパチもユウリを献身的に励ましちゃってるし……

 

 はあ、しゃーない。

 

「ユウリ、ほれ」

「……あえ?」

 

 俺はユウリに近づいて隣に座り、リュックの中から()()()()()を取り出した。

 

「お前が(モモンの実を)好きだからたくさん持ってきておいたんだよ。これ食って元気出せ」

「マサル……ましゃる~~~っ!!」

「はいはい、残念だったな。次はもうちょっと木の上に注意を向けような」

 

 ユウリが抱き着いてきたので頭を撫でて慰めてやる。まあ、今回のことは良い経験になったろ。木の上にいたのがヨクバリスだったからよかったけど、ハッサムやらヘラクロスがいたら苦戦必至だったからな。

 

「まーさーるっ! これ、剥いて?」

「しょーがねえなぁ……」

 

 モモンの実をミネラルウォーターで軽く洗い、果物ナイフで皮を剥いてユウリに渡してやる。するとユウリは胡坐をかいている俺の足の間に座って嬉しそうにモモンの実を頬張り始めた。

 

 お前ってガキの頃からここに座るのが好きだったよな。

 

「ほら、お前らも食べろ。ブラッシータウンで仕入れた新鮮な一品だからな」

 

 そう言って俺がジメレオンとラブフットとワンパチの三体にもモモンの実を分け与えると、三体は仲良く身を寄せ合って楽しそうに食べていた。あー、この光景めっちゃ和むわー。

 

「マサルっ! マサルっ!」

「今度はなんぞ?」

 

 尋ねると、ユウリは笑顔で食べかけのモモンの実を俺の口元に持ってきてこう言った。

 

「一口あげるっ♪」

 

 差し出されたモモンの実を齧ると、みずみずしい甘さが口の中いっぱいに広がった。

 

 

 

 

 

 

「この赤い光の柱の根元にある洞窟……ここがソニアちゃんの言ってた、ダイマックスできる巣穴だね」

「でけえ入口だな。中も相当広そうだ」

 

 ヨクバリスの一件以降はトラブルらしいトラブルもなく、順調にワイルドエリアを探索することができた。そして、ダイマックスの試運転と炎タイプのポケモンがいないかという淡い期待を込めて、ダイマックスポケモンがいるであろう巣穴へと足を踏み入れる。

 

 入り口はとても広く、大型トラックが余裕で通れるくらいの広さがあった。さすがに洞窟内部は暗いのでスマホロトムで周囲を照らしながら慎重に進んでいく。

 

 そして、一本道を歩くこと約五分……突如視界が開け、広大な空間が俺達の目に飛び込んできた。

 

「うわぁ……ひっろぉい。これ、スタジアムよりも広いんじゃない?」

 

 巣穴の奥は開けた空間になっており、高い天井とスタジアム以上の広さの平地が広がっていた。なるほど、確かにこれだけの広さがあればダイマックスだって余裕だろう。なんなら、()()()()のダイマックスもできそうだ。

 

 だけど俺は、そんなことよりも視線の先にいるポケモンに目を奪われていた。

 

 淡い淡い期待を込めてやってきた巣穴。正直、駅のお姉さんが言っていたことも話半分に聞いていた。

 

 そう簡単に、欲しいポケモンには巡り合えないだろうと思っていた。

 

 だけど、だけど、だけど……

 

「マサル! 蠟燭(ろうそく)だ! 蝋燭のポケモンがいるよ!」

 

 そう。視線の先にいたのは……俺が欲しがっていた炎タイプのポケモン───

 

 

 

 

 

 

 ひ、ヒトモシちゃんらぁ~!!

 

 お、おきゃわわわわわわわわわわわわっ!! かわっ!! 可愛すぎるだろあのビジュアル!! 片目しか見えてないの可愛いね♡ ジメレオンとお揃いだね♡ 俺も髪型をアシメにしてお揃いにしようかな♡ 

 

 ふー……だいぶキモイな、落ち着け俺。

 

 ヒトモシ……進化したシャンデラは全ポケモン中トップクラスの特攻の持ち主。BWでは大変お世話になりました。そして今回の旅もお世話になります。俺がヒトモシに軽く一礼をするとユウリは首をかしげていた。

 

「ユウリ……俺、あいつが欲しい」

「見るからに炎タイプだもんね~。よーし、じゃあ一丁やってやりますかぁ!」

 

 そして、俺とユウリがモンスターボールを構えると……俺達の闘気に気付いたヒトモシがダイマックスした。

 

「でっっっっっっっっっっか!! でっかい蝋燭だねマサル!」

「見たまんまだな……俺達もやるぞ、ユウリ」

「おうよ!」

 

 言葉と共に、俺とユウリのダイマックスバンドにガラル粒子が集まり、光り輝き始めた。これが……ねがいぼし、ガラル粒子の力かっ……!

 

「ジメレオン───ダイマックス!!」

「ラビフット───ダイマックス!!」

 

 巨大化したモンスターボールを投げ、ダイマックスした二体のポケモン達を呼びだした。

 

 悪いなヒトモシ。俺の一番の親友が言ってたんだよ───戦いは数だ、ってな!

 

「ダイストリーム!!」

「ダイバーン!!」

 

 津波をも彷彿とさせる全てを飲み込むような水流と、全てを焼き尽くすような獄炎がヒトモシに襲いかかった。ダイマックス技には天候を変えるほどの力があったものの、今回は真逆のタイプの技を使ったため、後から発動した「ダイバーン」の影響で「ひでり」状態になるのだった。

 

 しまった……同時にダイマックスをするとこういう欠点があるのか。その場に出すポケモンのタイプ相性は普通のダブルバトルより気を使いそうだな。良い経験になったよ。

 

「も、もしもし~……」

 

 そして、二つのダイマックス技を受けたヒトモシはひとたまりもなくその場に倒れ……それと同時にヒトモシのダイマックスが解けてしまう。

 

 それじゃあ後は……

 

 俺はリュックからボールを取り出し、構えた。

 

 かつてパリーグの打者から、メジャーリーガー達から数多の三振を奪い取ったレジェンドピッチャーの投球フォーム。

 

 アウトコースにもインコースにも投げ分けができる精密なコントロール。

 

 俺の指先から放たれたボールは、糸を引くような真っ直ぐなストレートは───

 

 美しい軌道を描き、的確にヒトモシをとらえた。

 

 地面に落ち、ボールが揺れる。

 

 再び、ボールが揺れる。

 

 三度(みたび)、ボールが揺れる。

 

 そして、ボールが───止まった。

 

 と同時に、俺の身体が震え始める。

 

 その意味を、ボールが止まったその意味を文字通り、体感した。

 

「ヒトモシ───ゲットだぜ」

 

 無意識の内に、俺はそんな言葉を口にする。

 

 その言葉を聞いたユウリは、俺の隣で笑顔を浮かべて拍手をしてくれた。




 というわけでマサルの二体目の手持ちは「ヒトモシ」です。感想で当てられてちょっとビビりました。当てられない自信があったので。有識者しゅごい……

 BWではシャンデラにお世話になった人は多いと思います。BWの旅パで炎タイプを選ぶとしたら、エンブオーを除けばシャンデラかダルマッカの二択になりがちですね。

 ヒトモシが手に入るのは「日照り」のエンジンリバーサイドのランダムエンカウントと序盤で行くのはキツイレア巣穴だった気がしますが、本作では普通の巣穴でゲットしたことにします。二次創作だからね。許して。あと、マサル達にはジム戦の前にダイマックスバトルを一度は経験させてあげたかったので。

 次回はエンジンシティに到着します。開会式までやれたらいいな。多分やれないけど。

 ちなみに……

【初めてワイルドエリアに来た私】
「お、イワークやんけ。ちょっと経験値稼がせてもらおか!」→「レベル26!? ふええ、ちゅよいよぉ」→「ワイルドエリア駅のお姉さん回復して!」

【初めてきのみの木を揺らした私】
「お、きのみめっちゃ採れるやんけ。ガンガン揺らしたろ!」→「なんかガサガサが早くなってきたな」→「このクソリス! きのみ全部持っていきやがった!」

 はい。誰もが通る道だと思います。

 ではでは、ここまでお読みいただきありがとうございました!

 次回もよろしくお願いします!

 
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