【完結】すごいよ!! マサルくん   作:わへい

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【前回のあらすじ】
・マリィは可愛い!



No.0021 ちゅうに!! サイトウちゃん

 いつ以来だろう。こんなにも気分が高揚しているのは。

 

 視線の先にいる少年の顔を見て、私は恋慕にも似た熱い熱い感情が心の中を支配していることを自覚する。

 

「俺は君達を───待っていた」

 

 チャンピオンダンデが言う。待っていたのは、あなただけじゃない。彼らを……彼をずっとずっと待っていたのは私も同じだ。

 

 七年前の、小さな子供の頃に交わした約束を果たすまであと一歩。

 

 私は生き残りましたよ、マサル。

 

 ジムリーダーになって三年。

 

 最初の一年目はマイナーから始まり、二年目にメジャーへ昇格。三年目の今年はオニオンくんやメロンさん、他の屈強なジムリーダー達を退けて私はメジャー残留を勝ち取った。

 

 次はマサル……あなたの番です。

 

 ヤローさん、ルリナさん、カブさん。この三人から勝利を掴み取らない限り、約束を果たすことはできません。

 

 正直、本当に……本当に厳しい戦いになると思います。ジムチャレンジャーの半数以上はカブさんに勝つことができず、ジムチャレンジをリタイアしているのですから。

 

 マサル、私はあなたのポケモントレーナーとしての力量を全く知りません。

 

 だけど、今日。

 

 あなたの顔を見て、目を見て理解しました。

 

 子供の時にはわからなかったこと。電話越しではわからなかったこと。

 

 それは───

 

 あなたの心の奥底には燃え盛る炎のような闘志が秘められていること。

 

 それを見せてくれたのは、ほんの一瞬。ほんの少しだったけれど、私はちゃんと気付きました。

 

 あなたのその闘志が何に起因しているものなのか、私にはわかりません。

 

 だけど、それでも───

 

 今日、あなたのその目を見られただけで……あなたを推薦した価値はあった。

 

 私はそう思います。

 

「サイトウ、マサルに声をかけなくていいのか?」

 

 開会式が終わり、ジムチャレンジャー達が退場していく中でダンデさんが私に声をかけてきた。

 

 彼の顔を見て、思う。

 

 こんなにも楽しそうな笑顔を浮かべているチャンピオンを見るのは初めてだ、と。

 

 私達とのバトル……いいえ、キバナさんとのバトルでもこんな表情をしていたことはないのに。ああ、そういえば、ダンデさんの弟もジムチャレンジに参加しているんでしたね。それと、ネズさんの妹も。

 

 やはり、自分にとって特別な相手がジムチャレンジに参加しているのはチャンピオンにとっても喜ばしいことなのでしょう。それが、肉親であればなおさら。

 

「……マサルに声をかけたいのは山々です。たまに電話はしていましたが、直接会うのは数年振りですし」

「だったら、声をかけるといい。君が出会った頃と、マサルは()()()()()()()()()()からな」

 

 何一つ変わっていない、という言葉がやけに意味深に聞こえてしまった。まるで、マサルの大きな変化を期待しているような……

 

 考え過ぎかな?

 

「やっぱり、遠慮しておきます。こういう場で声をかけるとメディアに変な誤解をされそうですし。それに……」

「それに?」

「ラテラルスタジアムで『待っていましたよ───マサル』って意味深な笑顔を浮かべて待ち構えている方が格好良いじゃないですか!」

 

 私がそう言うと、ダンデさんは一瞬ポカンと間の抜けた表情になり、数秒後にお腹を抱えて笑い始めた。な、なんでそんなに笑うんですか! 私は本気ですよ!?

 

「は、はははっ! そうかっ……! そうかっ……! その方が、格好良いか! くくっ……まさか、サイトウの口からそんな言葉を聞けるとはな!」

「わ、笑い過ぎですよぉ!」

「悪い悪い。馬鹿にしたつもりはないんだ。格好良いのは大事だからな」

「そうですっ! すっごく大事ですっ!」

 

 バトル前の口上でも、あえて多くは語らない。あとは───戦いの中で語り合いましょう。

 

 くぅ~っ!! 格好良い!! 格好良過ぎますぅ!! そ、それで……バトルが終わったら二人で固い握手と熱い抱擁を───

 

 はっ!? い、いけないいけない! また変な妄想に支配されるところでした! ギリギリセーフ!

 

「サイトウちゃんが推薦したトレーナーのマサル選手……あれは良いファーマーオーラを纏ってるんだなぁ。僕のジムミッションをどうクリアするのか楽しみだ」

 

 ヤローさんがマサルを見て感心したようにうんうん頷いている。ふぁ、ファーマーオーラ!? 私にはわかりませんが、同じファーマー同士通じ合うところがあるのでしょうか?

 

 ……ずるいです。

 

「僕も彼とのバトルが楽しみだよ。できるなら、彼の闘志に本当の火をつけてあげたいね」

 

 カブさんもマサルに興味を!? そういえばマサルはカブさんの熱狂的なファンで、七年前にシュートシティでカブさんにサインを貰ったと言ってましたね。

 

 むむむっ! わ、私もマサルがラテラルタウンに来たらサインあげるもんっ!

 

「まさか、私が現役の間にあの()()()のお孫さんがジムチャレンジに参加するとは、時の流れは早いねぇ……。パッと見た感じ、ピンクではなさそうだけど何やら根深いモノを抱えていそうだ。いいねえ、そういう異質さがないと人間に深みが出ないよ」

 

 ポプラさんまで!? はっ!! 確かマサルのおじい様はポプラさんと同期で現役時代は一度も勝てなかったとお父様が言っていました! そして、マサルのお父様もジムチャレンジャー時代、ポプラさんに勝てずにリタイアしたとか……

 

 す、推薦した私より因縁がある人が多過ぎませんか!?

 

「私はダンデの弟とネズさんの妹が気になるわね。二人の弟と妹ってだけで注目されるだろうし、周りからのプレッシャーも半端ないわよ。そんな中でどれだけのパフォーマンスを見せてくれるのか楽しみね」

 

 ど、どうやらルリナさんはマサルに対してそれほど興味を持っていない感じですね。

 

 よかった……って! なんで私は安心しているのですか!? べ、別にルリナさんがものすごく美人でマサルが誘惑されるとかそんなこと考えてないですからね!

 

「僕はローズ委員長が推薦したトレーナーが気になりますね。委員長の人を見る目は確かですから。確か、孤児院で才能を見出して直接ポケモンを与えたとかなんとか……あれ? でもいないですね。もう退場したのでしょうか?」

 

 マクワさんの言葉で思い出しましたが、ローズ委員長の推薦……ダンデさんのジムチャレンジもそうでしたよね。と、となると今年のジムチャレンジャーは相当にレベルが高いのではないですか!? むー……でも、私が推薦したマサルが一番ですからね! ファイナルトーナメントまで勝ち進むのはマサルですっ!

 

「おいおい、お前ら。サイトウや委員長の推薦だの、ダンデやネズの弟、妹だの……本当にちゃんと見てんのかよ? どう見ても、参加者の中でぶっちぎりでヤバいのは()()()だろ?」

 

 あのキバナさんに「ぶっちぎりでヤバい」と言われる参加者……マサル以外で? そ、そんな人いましたか? ダンデさんとポプラさんとカブさんは意味深に笑ってて……あーっ! ずるいっ! ずるいですっ! そ、そーやって「私は気付いてますよムーブ」は格好良くてずるいです! 私にも教えてください!

 

「今年のチャンピオンカップは面白くなりそうだ。……なあ、ダンデ?」

「誰が勝ち残ろうとも───最後に立っているのは俺だ」

「はんっ。そうはいかねえよ。お前の弟もネズの妹も委員長の推薦トレーナーもあのやべーヤツも()()()()T()()()()()()も、ここにいる全員も蹴散らして俺様が勝つ!」

 

 私だって負けませんよ! 確かに、ここ数年のチャンピオンカップの決勝カードはキバナさんとダンデさんですが、今年こそ私がそこに割って入りますからね!

 

 ……あれ? でも今、キバナさん変なこと言いませんでした?

 

「キバナさん、でんせつTシャツ野郎って……」

「あん? サイトウ、お前知らなかったのかよ。お前が推薦したマサルってヤツ……()()でんせつTシャツを着てエントリーしてたってSNSで話題になってんぞ」

 

 そう言ってキバナさんが私にスマホを見せてくれると……マサルがでんせつTシャツを着てエンジンスタジアムでジムチャレンジにエントリーしている画像がSNSにアップされていた。

 

 め、目に線が入ってて完全に不審者ですよ!?

 

 なんでマサルはこんなTシャツを着て───はっ!? わかりましたよ! つまりマサルは「俺がガラルの伝説になる!」ということをこのTシャツで主張しているんですね! さ、さすがマサルです……自分の思いを伝えるのに、もはや言葉は必要ないのですね。

 

「で、こいつを推薦したお前のことも書かれてるぞ。『サイトウはあのでんせつTシャツマンと共に伝説になってチャンピオンカップを蹂躙するつもりだ』って。やるなぁサイトウ……まさかこんな形で俺様達に宣戦布告するとは」

「な、なぁっ!? ち、ちがっ!! 違いますっ!! でんせつTシャツのことなんて……私、知らないっ!! き、キバナさん!! 訂正、訂正してください!! キバナさんのSNSアカウントで根も葉もない噂だという投稿を……!!」

「あいつ、本名より『でんせつTシャツマン』って二つ名の方が広まりまくってるから無理だな」

「ふ、二つ名……格好良い……!」

「感心するとこじゃねえだろ」

 

 ジムチャレンジが始まる前から二つ名が広まるなんて……ふふふっ、やはりマサルを推薦した私の目に狂いはありませんでしたね。

 

 俄然、彼と戦うのが楽しみになってきました!

 

 マサル! ラテラルタウンで待っていますからね! 

 

 わ、私にも二つ名とかつかないかなぁ……

 

 

 

 

 

 

「えー、開会式も無事に終わり……我がマサル組の今後の予定に関してだが」

「いつからあたしらはマサル組になったと?」

「一番隊隊長は私! 私だからね!」

「真っ直ぐターフタウンに行くぞ! 誰よりも早くジムを制覇するんだ!」

「二人共ノリノリ過ぎる!!」

 

 開会式を終え、これからの旅の予定を話し合うために俺達はバトルカフェへとやって来ていた。他の参加者の様子を見るに、そのほとんどが最初のジムがあるターフタウンへ向かっているようだ。

 

「正直に言う。俺は一旦、ワイルドエリアに行こうと思っている」

「ワイルドエリア? もうちょっとポケモンを鍛えると?」

「それもあるし、()()()()ジムに向けて電気タイプのポケモンを捕まえておきたいんだ」

 

 俺の今の手持ちはヒトモシとジメレオン。ヤローさんはヒトモシでどうにかして、対カブさんはジメレオンをメインで戦わせる予定なんだけど、ルリナさんのポケモンをまともに相手にできる手持ちがいないからな。汎用性を考えたら複合の電気タイプが欲しい。

 

「ただ、一番の理由はそれじゃない」

「これは……すごく真剣な顔してるけどくだらないこと言う時のマサルやね」

「マリィもわかってきたね~」

「マサル検定三級の合格も近いぞ」

「……あんた達が幼馴染やってる理由がよーくわかったよ」

 

 誰も俺が真面目なことを言うとは思ってないらしい。なんでや! 一応ちゃんとした理由があるんやぞ! 聞いたら絶対お前ら三人とも共感するからな!

 

「俺は───行列が嫌いなんだ」

「マリィ! この『カップル限定パフェ』を二人で食べようよ!」

「こういうのは好きな人と一緒に食べんしゃい!」

「え? 私、マリィのこと好きだよ?」

「聞けやお前ら!!」

「俺はちゃんと聞いてるぞ」

 

 ユウリとマリィがいちゃいちゃし始めたので、俺が真っ直ぐターフタウンへ行きたくない理由を説明することにする。

 

 仮に、参加者のほとんどがターフタウンを目指している中、俺達もそれに合わせて向かったとしよう。だけど、参加者がどれだけいようともジムリーダーに挑戦できる人数は一度に一人。つまり、最初のジムは挑戦するまでにかなり待たされることが予想される。

 

 そこで時間を無駄にするくらいならあえてワイルドエリアで時間を潰し、他の参加者がいなくなってから意気揚々とジムに乗り込めばいいんだ。どうせ、参加者同士の足並みがそろっているのは最初だけだし、勝ち進めば進むほどリタイアする参加者が増えてくる。

 

 最初のジムでの出遅れは後からいくらでも取り返せるからな。

 

 ということを真面目に話すと三人は納得したように頷いていた。

 

「思ったより真面目な理由やったね」

「私も待つのやだな~。だから私もマサルと一緒にワイルドエリアに行くね」

「俺はターフタウンに行くぞ! もしも待たされるなら三番道路や洞窟でポケモンを鍛えていればいいからな」

「あたしも……先に進もうかな。他の参加者の様子も見られるだろうし」

「じゃあマリィは俺と一緒に行くぞ!」

「う、うん……」

 

 見事に意見が真っ二つに分かれてしまった。ホップは性格的に先に進むだろうなとは思ってたけど、マリィもそっち派だったか。まあ、ホップは良いヤツだしマリィを任せても大丈夫だろう。もしかしたらこの旅を通してマリィがホップに好意を抱いてユウリとマリィでホップを取り合うなんて展開に……あらー♪

 

 そして俺はそれを離れたところから腕を組んでうんうん頷きながら見ている後方支援者面をしておこう。

 

「えへへっ♪ またマサルと一緒だね!」

「そーだな。お前も別に俺に付き合わなくて先に行ってもよかったんだぞ?」

「えー、だって私も行列嫌いだし……それに、マサルが独りぼっちで寂しい思いをしないようにというユウリおねーさんの優しさなのだ!」

 

 何やらユウリがドヤ顔でアホなことを言っている。誕生日が俺より早いからっておねーさんぶりやがって。毎朝俺が起こしてやってるのに。

 

「んじゃ、とりあえずここからは別行動だな。次に会うのは……タイミング的にはこのエンジンシティか」

「そうだな。カブさんはジムチャレンジの鬼門だから先に行く俺達が苦戦する可能性も十分考えられるぞ」

「カブさんに勝てんようやったら、すぐそこのワイルドエリアでポケモンを鍛えることになるから……またここで会うことになるやろうね」

「二人とも、ワイルドエリアが楽しいからって……俺達がもう一度エンジンシティに戻ってくるまでワイルドエリアに籠ってたらだめだぞ?」

「保証はできない」

「前向きに検討します」

「二人ともどれだけワイルドエリアが好きなん!?」

「マリィ、この二人は三日間ワイルドエリアに籠ってて危うくジムチャレンジのエントリーが間に合わないところだったんだぞ」

「とんでもない前科持ちなんやね!!」

「失礼な。ちゃんと間に合ってるからセーフだ」

「そーそー。私達がエントリーの最後だったってだけで……」

「二人には定期的に連絡せんと……」

 

 マリィが本格的に俺達のおかんになり始めている。きっと元々面倒見の良い性格なんだろうな。ネズさんに溺愛されてたら甘えんぼになりそうだけど……甘えたがりのマリィ、ありですね。

 

「よし、それじゃあ二人とはしばらく会わなくなるかもしれないし……せっかくだからバトルするぞ!」

「私とホップは昨日エール団とバトルしたばっかりだよ?」

「だから今回は俺とマサル、ユウリとマリィがバトルすればいい。マサル! ワイルドエリアで鍛えたポケモン達を見せてもらうぞ!」

「んー……確かに、最近は野生のポケモンとしか戦ってなかったからな。ちょうどいいっちゃちょうどいいな」

「マリィがどんなポケモン使うのか楽しみ~」

「もうバトルするのは決定なんやね」

 

 ということで、近くのバトルコートへ向かうことにします。

 

 

 

 

 

 

 ホップとのバトルは……なんやかんやハロンタウンでの一戦以来か。たしかあの時は俺がメッソンだけに対してホップはウールーとサルノリの二対一で結局俺が負けたんだよな。

 

 で、今回のホップの手持ちは……ウールー、ココガラ、サルノリの三体は確定。他にも増えてる可能性もある。

 

 それに対して俺はヒトモシとジメレオンのみ。

 

 ……なんとかしよう。

 

 とりあえず、ホップの性格的にいきなりサルノリを出してくる可能性は低い。ダンデくんに憧れてるホップはエースを最後に出したがるだろうからな。だったらこっちは初手ジメレオンで行くか。なるべくサルノリにはヒトモシをぶつけたいし。

 

「いけっ、ウールー!」

「ジメレオン」

 

 互いにボールを投げ合い、一体目をその場に呼び出す。なるほど、ホップの初手は一番長い付き合いの相棒ウールーか。ジメレオンで正解だったな。ウールー相手ならゴリ押しでいける。

 

「ジメレオン、みずのはどう」

 

 ウールーは耐久型のポケモンだが、どちらかというと物理防御を得意としている。特殊防御も決して低いわけではないのだが、ジメレオンの火力とスピードの方が上だ。

 

「さすがだぞ! もうメッソンを進化させていたのか!」

 

 難なくウールーを倒したらホップは嬉しそうにそう言った。こうやって相手をしっかり褒めてくれるのがホップの良いところだよな。

 

「次はお前だ! ココガラ!」

 

 二体目はココガラ。まだこいつも進化はしていないらしい。まあ、俺達がワイルドエリアでいきなり強個体のイワークとやり合って進化したのがおかしいだけで、ホップの育て方が普通なんだろうけどな。

 

「先制攻撃をかましてやれ! ついば───」

「───ふいうち」

 

 ココガラが攻撃態勢に移る一瞬の隙を突いてジメレオンが一気に距離を詰めて奇襲する。ジメレオンは高機動型特殊アタッカーだけど、物理も別に苦手じゃないんだよ。

 

 それに、このふいうちはあくまで次の一手のための布石だからな。

 

「体勢が崩れたな。これでとどめだ。みずのはどう」

 

 ふいうちをまともに食らって動けないココガラに容赦なくみずのはどうを浴びせる。

 

 ゲームでもそうだったけど「ふいうち」って結構凶悪な技だよな。リアルだとそれがより一層顕著になる。まあ、相手の方が早かったら回避されてこっちが逆に追い詰められるけど。

 

「ピンチ? 違う違う! ここから俺が勝つのが最高なんだよ!」

 

 ホップはどんな時でも前向きだ。お前のそういう性格……ほんとに尊敬できる。

 

 でもなぁ、()()()()()()()()()()()()()()()こともあるんだよ。

 

「サルノリ!」

「交代だ。ヒトモシ」

 

 ヒトモシのトレーナーデビュー戦。ワイルドエリアで鍛えて火力が大幅アップしたからな。スピードはないけど、固定砲台としての実力……見せてもらおうか。

 

「はっぱカッター!」

 

 サルノリの先制攻撃。これは想定内だ。ヒトモシはあんな小さな体で意外と耐久力があるからな。しかも相性の良い草タイプなら十分耐えられる。

 

 さて、せっかくだし……悪魔のコンボをお見せしよう。

 

「ヒトモシ、おにびだ」

 

 言葉と同時、ヒトモシは青紫色の不気味な炎を纏い、それをサルノリへ向けて放つ。周囲を舞っていた葉を全て焼き尽くし、サルノリは炎に包まれた。

 

「見た目の割にダメージはほとんどない……反撃だサルノリ! もう一度はっぱカッター!」

 

 再びサルノリの周囲を葉が舞い始め、ヒトモシに襲い掛かる。

 

 だが。

 

「さっきよりも……葉の枚数が少ない!?」

 

 おにびは相手のポケモンを「やけど」状態にし、攻撃力を半減させる技だ。耐久のないポケモンがこの技を使っても手数で押し切られる可能性が高いけど、今のサルノリの攻撃力とヒトモシの耐久なら問題ないみたいだな。

 

「ヒトモシ───たたりめ」

 

 先ほどの鬼火よりももっと禍々しい紫色の炎がサルノリに襲い掛かった。たたりめは状態異常のポケモンに大ダメージを与えるゴースト技。傷口に塩を塗り込むようなゴーストタイプらしいえげつない技だ。

 

 やけどになっていたサルノリは、ヒトモシの特殊攻撃力も相まって戦闘不能になってしまう。

 

 さあ、次はどうするホップ? まだ手持ちはいるのか? ジメレオンもヒトモシもまだまだ元気だぞ?

 

「さすがだぞマサル! ワイルドエリアでの修行の成果が存分に発揮されていたな! うーん……これは気を引き締めないとマズいぞ」

 

 どうやらホップの手持ちは三匹だったらしい。これでホップとの戦績は一勝一敗か。

 

「さんきゅーホップ。やっぱトレーナー戦って野生ポケモンとのバトルとは全然違うから良い練習になったよ。ヒトモシのコンボと火力も試せたしな」

「おにびからのたたりめって……凶悪過ぎるぞ。まるでカブさんみたいな戦い方だな」

「照れるぜ」

 

 実際、カブさんのやり方を参考にしたところはある。このコンボが有効なのもわかったし、ヒトモシの火力は十分ヤローさんにも通用しそうだ。

 

「マサル……強かったんやね」

「ふふんっ! でしょー?」

 

 なんかユウリがすっげー誇らしげだった。お前まで「マサルはワシが育てた」とか言い出さないよな?

 

 そしてその後はユウリとマリィがバトルし、ユウリが圧勝した。マリィはモルペコとズルッグという悪タイプ中心のパーティらしい。悪タイプ……ネズさんと同じか。

 

「悪タイプだとサイトウちゃんとポプラさんが鬼門か。毒やフェアリーと複合してるポケモンを手持ちに入れることを考えておいた方がいいかもな」

「うん。私もタイミングを見てワイルドエリアを色々探索してみるよ」

「一緒に美味しいカレーを食べようね! 私、カレー図鑑をコンプするのが夢だから!」

 

 どんだけカレー好きなんだよ。伝説のカレーを追い求めてるついでにサラッとチャンピオンになってそうだなこいつ。

 

「じゃあ、俺達はこのままターフタウンに向かうぞ。マサル、ユウリ、また会おう!」

「落ちてるものを拾って食べたりしたらいかんよ? あと、夜はちゃんと歯磨きすること」

「マリィママ~♪」

 

 ユウリがそう言ってマリィに抱き着いていた。まずいな、ユウリを甘やかす人間がまた増えた。これからは俺がちょっと厳しくしないといけないかもしれない。

 

 そして、別れの挨拶もそこそこにホップとマリィはターフタウンへ続く三番道路へと向かっていった。ま、そのうち会うだろ。もしかしたらあっさりターフタウンで追いつくかもしれないしな。

 

「マサル、私達はワイルドエリアに戻ろっか!」

「そうだな。俺が欲しいポケモンがいる場所はキャンプキングに聞いてるから……このまま真っ直ぐ向かうぞ!」

「マサルの欲しい電気タイプのポケモンってなぁに?」

「ふっ……聞いて驚け。かつて、あのピカチュウさんよりも人気になったポケモンなんだ!!」

「ぴ、ピカチュウよりもっ!? ど、どんな可愛いポケモンなんだろう……楽しみだなぁ♪」

 

 ユウリは期待に満ちた表情を浮かべて自然と俺の手を握って歩き出す。

 

 楽しみにしてろよユウリ。俺が次に捕まえるポケモンは───

 

 

 

 

 

 

「コイル! ゲットだぜ!」

「嘘ついたな! ピカチュウよりも人気だったって嘘ついたな!」

 

 キャンプキングに教えてもらったワイルドエリアの一角で俺は目的のポケモン───コイルをゲットしていた。

 

 嘘は言ってねえよ。このコイルさんはなぁ……かつて人気投票でぶっちぎりの一位を獲得するも大人の事情で二位にされてしまった伝説のポケモンなんだ! まあ、あれはネットの悪ふざけのせいでもあるからな。懐かしい。

 

「はぁ~~~~っ!! コイルとか……コイルとか……もう絶対あれじゃん! マサルがナンジャモに媚び売ってるだけじゃん! どうせナンジャモの頭にコイルがくっついてるから手持ちにしようと思ったんでしょ!? それで『俺もコイル使ってますよ』とか動画にコメントしてあわよくばナンジャモと仲良くなろうっていう魂胆が見え見え! はぁ~~~~~っ!! いやらしいいやらしいいやらしい!! もうね! マサルのね! 下心にはね! がっかりだよね!」

 

 コイルをゲットするなりユウリは不機嫌そうにぷんすかしている。おいおい、コイルさんに謝れよ。正直、ナンジャモは全く関係ないからな? 純粋に「電気・鋼」の複合が優秀だからこいつにしたんだよ。ルリナさん対策と同時にポプラさん対策にもなるからな。

 

 ということを言ってもユウリは全く聞く耳持たずだった。

 

「どーせマサルは私よりナンジャモの方が可愛いって言うんでしょ?」

「そうだな」

「ぎゃおおーんっ!!」

 

 ユウリは謎の雄叫びを上げながら俺にたいあたりし、そのまま抱き着いて俺の胸にぐりぐり顔を押し付けている。

 

「ナンジャモはあんなダボダボな服着てるくせにインナーはめっちゃエロくて意外とおっぱい大きいもんねー! えっちなマサルくんはナンジャモの方がいいんだよねー! 私よりナンジャモの方が好きなんでしょー!? ナンジャモのおっぱいで『夜のおはこんハロチャオ♪』してほしいんだろー!?」

 

 ナンジャモに対する可愛いはテレビに出てる女優やアイドルに対する可愛いと同じなのに何を意味不明な誤解をしてんだこいつは。

 

「は? 何言ってんだ? お前の方が好きに決まってんだろ?」

 

 俺がそう言うと、ユウリは一瞬呆気にとられた表情になった後、途端にだらしない笑顔を浮かべた。




 三体目の手持ちはコイルです。

 絶対当てられないと思ったのに、前回投稿してから約十分後の感想でいきなり当てられてビビりました。十五年以上前のネットでの人気投票なのに知ってる人多過ぎでしょ!?

 それと、コイルはゲームではワイルドエリアに出現しませんがご容赦ください。さすがにヨロイ島に行かせるわけにはいかなかったので。

 前半はサイトウ視点で、最初は格好良いサイトウにしようと思ったんですが、サイトウって二つ名とか厨二っぽいのが好きそうだなと思って最終的にギャグになりました。

 ホップやマリィとは別行動になりましたが、あの二人は性格的に(マリィも背負ってるものを考えたら)さっさと先に行くだろうなと思ってああいう展開にしました。ビートくんの出番はもうちょっと先かな。はやくわからせてあげないと(使命感)

 次回はメインヒロインであるユウリ視点のお話にしようと思います。

 でも、あまあまイチャラブにはなりません。自惚れユウリちゃんの調子に乗った内面を描写したギャグ話になるでしょう。

 あと、もしかしたら「あのイケメン」が登場するかもしれません。そこまで話が進めばですがね。

 ではでは、ここまでお読みいただきありがとうございました!

 次回もよろしくお願いします!

 ナンジャモのおっぱいで「夜のおはこんハロチャオ♪」してほしい人はここをぽちぽちしてくださいね!

 
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