【完結】すごいよ!! マサルくん   作:わへい

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【前回のあらすじ】
・おぱんちゅまりぃ



No.0026 むきむき!! ヤローさん

「うっし!」

 

 更衣室でジムチャレンジ用の白いバトルユニフォームに着替え、姿見の前で俺は気合いを入れ直した。背番号151……151……このユニフォームに袖を通すのは開会式以来だけど、やっぱり心にくるものがあるよな。

 

 更衣室を出てロビーへと戻ってくるとどうやら本当に俺達が最後のジムチャレンジャーらしく、他の参加者は誰もいなかった。代わりにターフタウンの住人やコアなジムチャレンジファン、仲良くなったちびっ子のヒマリちゃんとハルトくんが応援に駆けつけてくれている。

 

 よーし、おじさんがんばっちゃうぞー!

 

「あ、マサルー! ねえねえ、私の頭変じゃない?」

「お前の頭がおかしいのはいつものことだろ?」

 

 着替え終わったユウリがそんなことを尋ねてきたので適当に答えると俺にとっしんして頭をぐりぐり押し付けてきた。なにしとんねん。

 

「髪型の話!」

「今まさに乱れまくったけどな」

 

 しょうがないので手櫛でぱぱっとユウリの髪を整えてやる。一応、ガラル全土に放送されるからな。身だしなみはちゃんとしとけ。

 

「それではマサル選手、ミッションステージへの入場をお願いします!」

「わかりました。じゃあユウリ、行ってくるわ」

「うん、いってらっしゃい!」

 

 俺がひらりと手を振ると、ユウリは胸の前で両拳をぎゅっと握って俺を送り出してくれた。

 

 ジムミッションの内容は予習済み。ヤローさんの使うポケモンも戦い方も把握してる。俺の手持ちはしっかり回復して元気いっぱい。朝ご飯はモリモリ食ってきた。やり残したことはないな、ヨシ!

 

 そして俺は、ターフジムのミッションステージへと足を踏み入れた。

 

 

 

 

 ミッションステージは一言で言えば「牧場」だった。ステージ一面に広大な牧草地が広がり、ウールー達がのんびりすごしている。牧草地の左右には仕切り壁。ステージ奥には牧草ロール。うん、他の参加者とやることは変わらないみたいだな。

 

 はぁ~、この雰囲気……ハロンタウンを思い出して落ち着くわぁ~。

 

「ターフタウンポケモンジムのミッションはーーーっ!! ウールー達をーーーっ!! あちらの牧草ロールまで追い込みまーーーす!!」

 

 俺が故郷を懐かしんでいると、黒ベースに白のラインが入った特殊なユニフォームを着た金髪の元気なおっさんに声をかけられた。

 

「あ、ちなみに私……ダンペイと申します。レフェリーや試合結果の報告を担当しています」

「どうも、チャレンジャーのマサルです。よろしくお願いします」

 

 俺は頭を下げてダンペイさんと握手する。礼儀は大事だし、どのスポーツにも言えることだけど審判の印象が良いに越したことはない。

 

 審判……可変式ストライクゾーン……ノーボールツーストライクからの次の投球は絶対ストライクにはならない……甲子園の判官贔屓ジャッジ……うっ、頭が……

 

 前世の記憶が軽く蘇っていた俺だったが、この時の俺は全く予想だにしていなかったんだ。

 

 これから先のジムミッションは、俺とミッションとの戦いだけではなく、俺と()()()()()()()()()()()()()()()との戦いであると同時に───ダンペイさんとの戦いである、ということに。

 

「ウールー達を牧草ロールまで追い込む……道具を使うのはありですか?」

「今回のジムミッション()ありです!」

「わかりました。ありがとうございます」

 

 ルールを確認した上で俺は牧草エリアをぐるっと見回す。ウールーは二十体で牧草ロールまでは五十メートルくらいか。

 

 楽勝だな。俺が実家で毎日どれだけの数のウールーを相手にしてきたと思ってるんだよ。

 

 しまった! このままだと「俺TUEEEEEなろう主人公」になってしまう! 

 

 ……まあ、たまにはええやろ。マリィに負けたばっかだし。

 

 さーて、普通にやっても問題なくクリアできるけど……これがただのミッションではなく、()()()()であることを忘れてはいけない。せっかくガラルの人達がテレビや配信で見てくれているんだからな。

 

 どうせなら、もっと面白くしてやろう。

 

「ダンペイさん。さっき、道具を使うのはありっておっしゃいましたよね?」

「はい、それが何か?」

「……あそこにある『ファームバイク』を使ってもいいですか?」

 

 俺が目を付けたのは、牧草エリアの壁際に不自然に停められているファームバイクだ。ご丁寧にキーも刺さっている。

 

 こんなのさぁ……使えって言ってるようなもんじゃん!

 

「……許可します」

「あざっす」

 

 ダンペイさんの許可ももらったし、俺は意気揚々とバイクへ向かう。なるほど、このメーカーのバイクか。牧草地とか荒れ地とか山道に強い農家の味方であるメーカーだな。さすがヤローさん、よくわかっていらっしゃる。

 

 そして俺はキーを回してエンジンをかけ、メットを被る。免許? ちゃんと持ってるに決まってんだろ。前世と違って免許が取れる年齢が低いからな。

 

 うっし、じゃあやるか!

 

 バイクに跨り、クラッチレバーとチェンジペダルを操作して右手でアクセルを回して加速する。うん、いいね。実家と同じ感覚でいけそうだ。

 

 そして俺はバイクを乗りこなし、ウール達の群れに突撃して進行方向を誘導し、指定された牧草ロールまで追い込むとウールー達は牧草ロールの山をたいあたりでふっとばした。あー! 牧草ロールがー!? また集草機で作らないと……

 

 はっ!? 完全に実家モードの思考になってわ!

 

『す、すごい! マサル選手、あっという間にウールー達を誘導して第一エリアをあっさりと突破しました!』

『一切無駄がない非常に慣れた動きですね。マサル選手のご実家はハロンタウンにあるガーベラ牧場なので、こういったことは日常だったのでしょう』

『しかし! 第二エリアからはそうはいかないぞ! キュートなお尻の妨害者がチャレンジャーの行く手を阻みます!』

 

 実況と解説も盛り上がってんな。まあ、実家ではこうやってバイクに乗って毎日わたぱちと一緒にウールーの誘導もやってたから楽勝よ。

 

 ……わたぱち、元気にしてるかな?

 

 っと、だめだだめだ。思考を切り替えないと。

 

 で、第二エリアのキュートな妨害者は……まあ、ワンパチちゃんですよねえ。

 

 第二エリアの広い牧草地を一体のワンパチが縦横無尽に走り回っている。ワンパチは牧羊犬だからな。考えなしに突っ込めば、ワンパチが妨害してウールーの群れが散り散りになってどうにもこうにもならなくなる。

 

 さーて、どうしてくれよう? 

 

 ……やっぱもっとミッションを盛り上げてやらないとなぁ!!

 

『おや、マサル選手……バイクを降りてエンジンを止めましたね。ここからはバイクを使わないのでしょうか?』

『何やら悪ーいことを考えている顔ですよ。私の息子も悪戯をする時はよくあんな表情になります』

 

 酷い言われようだな。別に悪いことなんて考えてないっすよ? ただ、もっとこのミッションを盛り上げてやろうと思ってるだけっすよ?

 

 俺は第二エリアの牧草地に足を踏み入れ、ウールー達から少し距離を取る。うん、これくらい離れれば大丈夫だな。

 

 そして、指をくわえてピューッと甲高い指笛を鳴らした。

 

 すると、音に気付いたワンパチが短い脚をパタパタと動かしながら俺の方へ走ってくる。近づいてきたワンパチを撫で回していると、お尻をフリフリしていたワンパチは最終的にお腹を見せてひっくり返った。

 

 お? お? ここか? ここがええのんか? ここが気持ちええんか?

 

 だーっしゃっしゃっしゃっしゃっしゃ!! よーしよしよし!!

 

『ワンパチを撫で回してますね……ワンパチの気を引いたままウールー達を誘導するのでしょうか?』

『……いえ、きっとそれだけじゃないと思いますよ』

 

 正解。ワンパチの気を引いてその隙をついてウールー達を誘導する? そんな方法で攻略しても面白くないでしょうよ。

 

 だから……

 

「いけっ! ワンパチ!」

「イヌヌワンッ!!」

 

 このワンパチを()使()()()、ウールー達を誘導する!

 

『な、なんということでしょう!? このミッションの障害であるワンパチすらも利用してあっさりと第二エリアを突破したーっ!!』

『牧羊犬の扱いも非常に慣れていますね。ポケモントレーナーでありながらとても優れたファーマーとも言えるでしょう』

『し、しかししかし!! 次は難関である第三エリア!! このエリアは中央の障害物によって三つの通り道に分断されています!! しかも妨害者であるワンパチの数は二匹!! ここを越えられず涙を飲んで諦めたチャレンジャーも多数いました!!』

『マサル選手がどう攻略するのか……見物ですね』

 

 さてさて、これが第三エリアか。実況の人が言っているようにワンパチの数が増えてエリア自体も三つに分断されている。確かに、ただポケモンバトルだけをやっていた人やスクールに通っていた人なら苦戦するだろうな。

 

「あ、どうも。ワンパチの扱い……すごく上手だね」

「ウチの実家でも飼ってるんですよ」

「バトルは……する意味がなくなった、か」

 

 第二エリアの終わりにジムトレーナーさんが立っていた。話を聞くと、本来ならばジムトレーナーとバトルして勝ったらワンパチの妨害がなくなるはずだったらしい。でも俺はワンパチを手懐けたからそもそもバトルをする意味がなくなっちゃったとのこと。

 

 ゲームだと経験値のために喜んでバトルするけど……ヤローさんと戦う前に手の内は明かしたくなかったから丁度よかった。

 

 そして俺はさっきと同じように指笛を吹いて、第三エリアにいる二匹のワンパチを呼び寄せ&手懐ける。第三エリアにいるジムトレーナーさんの顔を見ると思いっきり苦笑していた。こんなエンタメ重視の攻略方法ですみません。でも、たまにはこういうチャレンジャーがいてもいいでしょ?

 

 まあとにかく、これで合計三体のワンパチを俺の支配下に置くことができた。

 

「せっかくエリアが三つに分断されてるから……お前は左、お前は真ん中、お前は右に行って三方向からきっちりウールー達を誘導するんだ!」

「イヌヌワン!」

「イヌヌヌワン!」

「イヌヌヌヌワン!」

 

 ワンパチ達は素直に俺の指示に従い、ウールー達を華麗に誘導して第三エリアも難なく攻略する。

 

 見たか! これが生粋のファーマーの力だ!

 

 次の最終エリアも同じように中央に障害物と、追加でワンパチが二体いたからそいつらも同じように手懐ける。

 

「整列! 左から番号!」

「イヌヌワン!」

「イヌヌヌワン!」

「イヌヌヌヌワン!」

「イヌヌヌヌヌワン!」

「イヌヌヌヌヌヌワン!」

 

 そして、ワンパチゴレンジャーを率いて最終エリアもあっさり突破した。俺は牧場育ちだから楽勝だったけど、普通のトレーナーにこのミッションはめちゃくちゃきついと思う。

 

 最初のジムから結構ふるいにかけてるんだな。

 

「ファーマー力20000……30000……馬鹿な!? まだ上がっていくだと!? くっ……『ガーベラ牧場』のマサル選手……名前は覚えたわよ!」

「ウチで作ってる蜂蜜キャンディーです。よかったらどうぞ」

「あら、ありがとう」

 

 最終エリアにいたミドリさんっていうお姉さんがファーマー力とかいう意味の分からんことを言ってきたので、飴ちゃんをあげて仲良くなっておくことにした。

 

 さーて、これでジムミッションはクリアしたし……あとはヤローさんとのバトルか。

 

 そう考えてステージから退場しようとしたところで、撮影用ロトムが俺に向かって飛んできていることに気が付いた。あれか「最後に視聴者の皆さんに向けて一言!」ってやつだな。任せとけ!

 

「ハロンタウンのガーベラ牧場をよろしくお願いします! 名物はカブさんも絶賛したモーモーミルク! ネット通販も受け付けていますから『ハロンタウン』『ガーベラ牧場』で検索してください!」

 

 ロトムに向かって笑顔で手を振ってそう言った。これでウチの牧場のアピールもばっちりだな! ヨシ!

 

『ジムチャレンジで実家のアピールをするチャレンジャー……初めて見ましたよ』

『次に挑戦するユウリ選手もハロンタウンの出身でマサル選手と幼馴染のようですね。となると、彼女もこんなとんちきな……おほん、失礼。()()()()攻略をするのでしょうか? 彼女の挑戦が楽しみですね』

 

 なんか勝手にユウリに対する期待度が上がってるけど……まあええやろ、ユウリやし。俺知ーらない。多分今頃ロビーで「マサルのせいでハードル上がった!!」とかなんとか言いながら一人でぎゃおんぎゃおんしてるに違いないな。

 

 

 

 

 

 

「マサルのせいでハードル上がった!!」

「ユウリちゃん、がんばってね~! でんせつTシャツマンみたいにね。面白いことやってね!」

「ヒマリもユウリちゃんの面白い所見た~い!」

「ちびっ子達の期待が重いよぉ……」

 

 ちなみにユウリは無難にジムミッションをクリアした。

 

 

 

 

 

 

「マサルのせいで! マサルのせいでなぁ! 私までダンペイさんに変な目で見られたんだよ! なんか実況と解説の人も途中からちょっとテンション下がってたし! 普通にクリアしたのにどういうこと!? ねえどういうことマサル!! 何か弁明は!?」

「ファーマー力……たったの5か……ゴミめ……」

「ふしゃーっ! ふしゃしゃーっ!! ふしゃしゃしゃーっ!!!」

 

 ジムミッションをクリアし、選手控え室のベンチで待機中だった俺はじゃれついてきたユウリを適当に宥めつつ、バトルスタジアムの準備が整うのを待っていた。ユウリは俺にとっしんして抱き着いたまま俺の腹にぐりぐりと頭を押し付けている。

 

 すまんなユウリ。ちょっと俺がエンタメに全振りし過ぎたんだ。ユウリは普通にジムトレーナーをバトルで倒してワンパチをおとなしくさせてからクリアするっていう正攻法だったからな。俺がユウリの後から挑戦すればよかった。まあ、ユウリの予想通り過ぎる面白い反応が見れたからよしとしよう。

 

「もう今日はマサルと一緒に寝てあげないからねっ!」

「別にいいけど? イーブイ抱っこして寝るから」

「あおおーん!!」

 

 あっさり答えると、俺はそのままベンチに押し倒され、ユウリが俺に馬乗りになってほっぺたをぐにぐに引っ張ってくる。年頃の娘さんが男を押し倒して馬乗りになるとか……俺とユウリだし別に問題ないか。

 

「お待たせしました。マサル選手、入場……を……?」

「あ、準備が終わったんですね。ありがとうございます。すぐにスタジアムに向かいます」

「は、はい。よろしく……お願いします」

 

 俺とユウリが仁義なき戦いを繰り広げているところにリーグスタッフがやってきて、怪訝なリアクションをしつつも準備が終わったことを教えてくれた。傍から見たら盛ったジムチャレンジャーに見えるよな。どうもすいません。後でユウリに言っておきますんで。

 

「ユウリ、降りろ。ヤローさんとバトルしてくるから」

「むー! むー!」

「……悪かったよ。今回のジムミッションはあまりにも俺向きだったからテンション上がっただけなんだ。次はもっとまともにクリアするから」

「しょーがない! 優しくて可愛いユウリちゃんはマサルのことを許してあげようじゃないか!」

「ははーっ、ありがたき幸せ」

 

 ようやくユウリが俺の上から降りてくれた。うっし、じゃあヤローさんと熱いファーマーバトルを繰り広げてくるとしますか。俺の手持ちはバレてないし、一気に押し切ってやる。

 

「マサルっ!」

 

 立ち上がってスタジアムへ続く通路へ向かおうとしたところでユウリに呼び止められた。

 

「応援してるからね!」

 

 にぱーっと小さい頃から何ら変わらない天真爛漫な笑顔でユウリが言う。

 

 ……お前って、そういうところがずるいよな。

 

 

 

 

 

 

「僕のポケモンジムは初めのジムなので、次々にチャレンジャーが来るのです。ですから、ジムミッションも割と厳しめにしとるのですが…… マサルさんはちゃんとジムミッションをクリア! さすがの一言だわ!」

 

 通路を抜け、歓声が巻き起こっているスタジアム内へ足を踏み入れると、すでにヤローさんがスタジアムの中心で柔和な笑顔を浮かべて待ち構えていた。

 

「あのジムミッション……バトルのことしか勉強してこなかったトレーナーには厳しかったでしょうね」

「その通り。トレーナーに必要なのはバトルの才能だけではないんだな。何よりも、ポケモンに対する深い理解が必要なんですわ」

 

 改めて目の前でヤローさんを見るとガタイやべーな。父さんと同じくらいムッキムキじゃん。顔はめっちゃ優しそうなのに肉体とのギャップがすごい。きっとこの人ならワタルのカイリューのはかいこうせんだって真正面から受け止められるだろうな。

 

「そして、君は良いトレーナーであると同時に良いファーマーでもある。ワンパチやウールーの扱い、見事でしたわ」

「ジムトレーナーさん曰く、俺のファーマー力は30000以上らしいです」

「……ミドリだな。これはますます負けられんなぁ」

 

 ヤローさんの雰囲気が、一変する。穏やかな表情ながらビリビリと肌を刺すような闘志が俺に向けられていた。

 

 なるほど、これがジムリーダーか。

 

 ()()()()感覚を思い出しながら、俺は自然と自分の口角が少しだけつり上がっていることに気が付く。どうやら、多少なりとも気分が高揚しているらしい。

 

「さあ、始めようかマサルさん! トレーナーとして、ファーマーとしてのプライドを懸けた戦いを!」

 

 俺達二人はスタジアムの中心から互いに十歩程下がって距離を取る。

 

 そして───

 

 

 

 バトル、開始。

 

 

 

「ヒメンカ!」

「ヒトモシ!」

 

 ヤローさんの一体目は黄色い花びらが特徴の可愛い草ポケモンヒメンカ。うん、他のトレーナーの時と変わらない。それなら、ヒトモシがやることは一つだけ。

 

「ヒメンカ、マジカルリーフ!」

「ヒトモシ、かえんほうしゃで()()()()!」

 

 ヒメンカとヒトモシは二体とも素早いポケモンではない。むしろ素早さだけなら下から数えた方が早いくらいで、ヒメンカはヒトモシよりもさらに鈍足なポケモンだ。

 

 だから、ヒメンカがかえんほうしゃを避ける可能性は限りなく低い。だが、その限りなく低い確率を引いてしまうのがポケモンバトルでもあるので、俺は念には念を入れてヒトモシにあることを教えていた。

 

 それは、かえんほうしゃを直線ではなく()()()()()()こと。

 

 直線的に放つだけでは、左右に横っ飛びするだけで回避されてしまう。これだけ二体の間に距離があるならなおさらだ。だからこそ、ある程度()()()()()()()()()()でも相手がかえんほうしゃを回避できない選択を取った。

 

 例えるならあれだ。「風の谷のナウシカ」の巨神兵が王蟲の大群に放った「薙ぎ払え!」ってヤツ。格好良かったから一回やってみたかったんだよな。

 

 ……とまあ、そんなしょーもない例えは置いておこう。

 

 俺がヒトモシに教えた広範囲かえんほうしゃの効果だが……俺の想像を遥かに上回っていた。

 

 ヒメンカが放とうとしていた無数の葉を全て焼き尽くし、一撃でヒメンカを戦闘不能にする。

 

 ヒメンカはどちらかというと防御や特防に優れたポケモンで、ヒトモシは正反対に特攻に優れたポケモン。かえんほうしゃという強力な技の威力とヒトモシの特攻の高さがヒメンカの守りを上回ったんだ。

 

 ヒトモシ自身も、マリィに負けたことが悔しくて気合い十分だったもんな。

 

「……かえんほうしゃ。長いことジムリーダーをやってますが、最初のジムでその技を使うトレーナーを見たことはなかったんだな。よほどワイルドエリアで鍛えてきたのですな。なるほどなるほど、挑戦がここまで遅くなった理由も頷ける」

 

 ……半分は行列に並ぶのが嫌だったからなんです。

 

「こりゃあ手強い! だけど勝負はここからよ! 一つ尋ねようマサル選手! 農業に大事なことは!?」

「気合い! 根性! 忍耐力! よく食ってよく寝る! そして何より───」

「「粘り腰!!」」

 

 うむ。どうやら俺とヤローさんはいいファーマー友達……ファートモになれそうだな。

 

「さあ、いくぞワタシラガ!! ダイマックスじゃ!!」

「ヒトモシ、ダイマックス!!」

 

 俺達二人は互いにねがいぼしの力で巨大化したモンスターボールを遥か後方に投げ飛ばし、ダイマックスさせたポケモンをスタジアムに召喚した。

 

 会場が割れんばかりの歓声に包まれ、一番の盛り上がりを見せている。やっぱり、ダイマックスポケモン同士のバトルは見応えがあるよな。

 

 だけど、申し訳ない観客の皆さん。

 

 次の一撃で、幕だ。

 

「ワタシラガ!! ダイソウゲン!!」

「ヒトモシ!! ダイバーン!!」

 

 ワタシラガが巨大な種子のようなものをヒトモシの周囲に植え付け、その種子が一瞬で成長し、巨大なキノコや樹木が一斉にヒトモシへ襲い掛かる。

 

 が、ヒトモシが全身に纏った獄炎は一切合切を焼き尽くした。

 

「ぶちかませ!!」

 

 そして、ヒトモシがダイマックスしたワタシラガに向けて()()()()()獄炎を放った。回避も防御もできなかったワタシラガはその強力な一撃を受けて、倒れる。

 

 と同時、ガラル粒子が宙を舞い、ダイマックスが解けて()()()()()()()()()()()()()()()()()がスタジアムを包み込んだ。

 

 それら全てが意味することは───

 

「草の力がみんなしおれてしもうた……なんというジムチャレンジャーじゃ……」

 

 俺の、勝利。




 というわけで、ようやく一つ目のジムを攻略です。ここまで26話もかかりました。当初の予定ではもうバッジを半分は手に入れてて50話くらいで完結かと思ってたんですが、100話くらいまでいきそうです。

 私は前作から何も学んでないな!!

 ジムミッションに関しては、ぶっちゃけ牧場育ちのマサルが苦戦する理由がないのであっさり突破です。その代わりにバイクを乗り回したりワンパチを手懐けたりとやりたい放題です。

 今後のジムミッションもゲームではできないとんちきな攻略法を駆使します。きっとダンペイさんがツッコミで過労死することでしょう。

 そして次回はついに……ついに満を持して()()が登場します!!

 次回「でんせつTシャツマンVS謎の非公認コスプレ不審者ボル~」 ファイッ!!

 ここまでお読みいただきありがとうございました!

 ターフジムのジムミッションでトレーナーを倒せばワンパチがおとなしくなる仕様に気付かずにそのままゴリ押しした結果ウールーが散り散りになって大惨事になるという私と同じミスをやらかした人はここをぽちぽちしてくださいね!

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